金属労協 2022~2023年度 運動方針

1.はじめに

 2021年度運動方針では役員改選期とのかかわりから運動期間を1年間として提起したが、今回提起する2022~2023年度運動方針は運動期間を2年間に戻し、以降2年間を運動期間とする運動方針を提起する。2021年度運動方針で提起したとおり、「活動と組織の改革」の実現目標を2024年度(2023年9月~)に置き、2021年度運動方針と2022~2023年度運動方針をあわせた3年間を、新しい金属労協のあるべき姿に向けた具体的改革の準備期間と位置付けている。この位置づけを強く意識しながら、2年間の運動方針を提起することとする。

2.基本的な考え方

2.1 運動項目と進め方

 組織財政検討プロジェクトの示した方針では、「新しい金属労協」の活動分野を、国際労働運動と人材育成の2点に絞り込み、さらなる充実とそれに向けた体制や運動の進め方の改革を行うこととしている。一方、この2点以外の春季生活闘争(JC共闘)、産業政策、労働政策などの活動については、順次整理しながらその活動主体を金属労協から連合の共闘組織や部門別組織等に移していくこととしている。
 国際運動については、基本的にこれまでの活動を踏襲し、さらに充実を図る。特に、国際的な観点からの産業政策や労働政策については、国内における労働政策・産業政策との連携や取り組みを推進するための体制の強化について取り組みをすすめる。
 人材育成・教育については今後拡充する活動に位置づけられるが、既存の労働リーダーシップコースや各種研修会について、Webセミナーを活用しながら変革を図る。さらに、産別・単組役員の能力向上に資するため、時宜に即した小回りの利くセミナーや金属労協として重点をおくべきテーマについて息の長い研究会的なセミナーを実施するなど、実現可能性を模索しながら取り組みを進める。
 春季生活闘争、産業政策、労働政策の活動については、この2年間の活動期間の中で、産別を横断する組織としての位置づけと、連合や産別等の他組織との役割分担を考えながら、活動の絞り込みや進め方の変更、産別の参画のありかたなどについて検討を進める。
 これらの改革を行う際の予算の策定方法や金属労協事務局の人員の配置、各産別から参画する各種委員会のありかたなどについても、2年の準備期間の中で検討する。なお、この検討を待たずに実施可能なものについては、機関会議等の承認を得たうえで適時実施することとする。また、今期の予算については、現状の方針をもとに策定するが、改革に向けた準備を進める中で想定外の支出が見込まれる場合は、常任幹事会の承認を得た上で予備費から支出する。

2.2 直面する主な課題について

 これまでなかなか進まないと言われてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)は、COVID-19が2年の変革を2か月に短縮したと言われているほど急速な変革を起こしており、産業の軸足を変え、産業の壁を融解させる事態となっている。中でも、金属産業の中核をなす自動車産業は、CASEMaaSへの対応を迫られている中、さらにEVHVFCVなどの比率が高まってきており、これまでに類を見ない大変革期を迎えている。さらにこの変革は、自動車産業のみならず、これに関わる素材産業や部品産業などへも大きな影響を与えている。
 このような変革がグローバル規模で進む中、日本が世界に取り残されているのではないかという危機感が増している。新型コロナウイルス感染症対策に関してみても、感染者実態把握や接種状況管理へのデジタル技術の活用遅れや、肝心のワクチン開発が日本国内では行われていなかったことが明らかになった。また、自動車をはじめとする金属産業の生み出す製品の多くに半導体が利用されているが、この需要ひっ迫に対し機動的に対応しきれていないことなど、様々な面において危機感は現実のものになってきている。現場組織・企業がそれぞれの合理性で活動することは当然のことであるが、日本国全体としてどう取り組むのかという、国を挙げての戦略とそれに対する実行力のある対応が今求められているのではないか。
 これらの課題意識のもと、この大変革期において、労働組合の立場から取り組みを推進するにあたり、意識すべき主な課題は次のとおりである。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する取り組み

 世界規模での感染蔓延は終息する時期が全く予測できない状況である。日常生活の面からは、ワクチンの接種状況や緊急事態宣言による人の流れのコントロールなどに注目が集まっている。また、私たちの働く産業の視点からは、産業への影響を懸念せざるをえない。
 中国における感染拡大による部材調達や市場停滞の影響にはじまり、欧州や米国などのロックダウンによる需要の縮小を避けきれず、業績も低迷せざるを得ない状況にある。しかしながら、デジタル技術の活用による事業を中断させない努力や、製造現場での感染拡大を防止のための様々な対策を行っており、生産能力の低下を最小限に抑えていることにより、市場の回復に合わせて生産量も回復しつつあり、COVID-19の終息後には迅速に元の状態に戻ることが期待される。金属労協として産別を超えて必要とされる府省や地方行政に対する要請などを、政治顧問とも連携を図りながら進める。
 グローバルサプライチェーンに対する影響も甚大である。産業による差はあるものの、COVID-19により、グローバルサプライチェーンの脆弱性が浮きぼりとなった。これに対応するため、生産現場を国内に回帰する動きがあることは歓迎すべきではあるが、海外展開していた各国にとっては、雇用を生み出す産業を失うことになりかねないため、慎重に進めることが求められる。この状況に対応するためには、進出先各国における建設的労使関係の構築が必要不可欠である。特に、アジア地域におけるこれまで築いてきたネットワークを生かしながら、各企業グループ別労組ネットワークの確立に向けた取り組み支援をさらに推進する。
 また、WithコロナからAfterコロナへと経過する中で、テレワークや時差出勤など働き方が緊急避難的に導入されているが、今後このような働き方が永続的なものになることも充分考えられる。具体的な対応については産別主体で取り組むことになるが、産別共通の課題として金属労協全体として取り組むべきものがあれば、JC共闘の枠組みを活用しながら取り組みをすすめる。
 さらに、グローバルレベルにおいても、COVID-19に対する働く立場からの対応について議論が進みつつある。各産別・単組における現場での取り組みに資するため、海外の先進的な取り組み事例の紹介などを進めるとともに、日本における取り組みについても世界に向けて発信する。

DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応

 DXへの取り組みについては、2019年度以降掲げてきたデジタル革命への対応方針をDXへの対応の基本方針として継承する。具体的には次の3点である。

  • デジタル革命を好機ととらえ、積極的に推進する立場を明確にし、生産性の向上や働き方の改革につなげる。
  • すべての人が仕事の変革に対応できるよう、教育・訓練や人材の適切な再配置などの、公正な移行(Just Transition)を前提とする。
  • 職場から企業、産業、国のレベルに至るまでの労働組合と経営や政府との対話を行う。同時に、働く側についても意識の改革を図る。

 この基本方針をもとにした取り組みとして、金属産業政策の軸の一つをDXへの対応に置く。DXの利活用によって、各々の産業活動が発展し、さらに職場や各々の生活における安全と安心や快適につながるものとするため、個々の産業を越えた施策を検討し、必要に応じて提言を行う。
 また、この分野における人材育成・教育は重要な運動項目のひとつとして位置付けられる。この観点から産別・単組の執行委員を対象とした基本的な知識獲得から専門家レベルを対象としたものまで、セミナーや研究会的な場や国際的な動向を知る機会を提供する。これによって、DXに関する会社提案や労使協議への対応に役立てるとともに、DXを働く立場にメリットのあるものにしていくことを期待する。

カーボンニュートラルへの対応

 2050年に温室効果ガスの排出量と森林などによる吸収量がバランスするいわゆるカーボンニュートラルの達成を目指す政府方針のもと、様々な施策が動きはじめている。
 金属産業は、製造する製品が温室効果ガスを発するものや製造過程において温室効果ガスを発するものがある一方、製品が排出する温室効果ガスを削減するための製品開発研究や温室効果ガスを発生させない製造方法の開発に取り組むなど、産業全体がカーボンニュートラルの達成に深くかかわっている。カーボンニュートラルの達成という目標は、資源採取から製造、廃棄に至るまですべての工程を包括し(LCA;Life Cycle Assessment)、日本国全体で評価されるべきものである。これを実現するためには、研究開発や人材確保など、社会実装のために企業や産業だけでは対応しきれない規模のリソースが必要であり、国をあげての取り組みが求められる。金属労協としても、金属産業全体を俯瞰し、産業を横断する産業政策課題のひとつとして位置づけ、政府に対する政策提言などを行う。
 また、温暖化ガスの排出を伴わないエネルギー源として、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が進みつつあり、また、水素などの新しいエネルギー源についても様々な産業分野での利活用が期待されており研究開発が進められているが、エネルギー源のひとつとして原子力発電の果たす役割はひきつづき大きい。今後、温室効果ガスの排出を伴って製造された製品の輸出が極めて困難になるということも想定されており、エネルギー源を何に求めるかは我々産業にとって重大な課題である。安全で安心であることを前提に、装置の製造、運用保守から廃棄にまでかかわっている金属産業で働く立場から、科学的で冷静な理解をもとに、関連産別とも連携をとりながら提言や必要な要請を行う。

貿易・産業政策への取り組み

 わが国においては、TPP11をはじめとして、EU、ASEAN、米、英などとの19の経済連携協定(EPA, FTA)が発効しており、RCEPに関しては昨年11月に署名を終えている。TPP11への英国の加盟や米国の復帰など、自由で開かれた国々における経済連携協定の拡大が重要課題となっている。金属産業はグローバルに展開していることからも、金属労協としてもこれらに関心をもたざるを得ない。インダストリオールにおいても、「貿易・産業政策:開発と国際労働基準に対する影響」が発行されているが、自由貿易体制の拡大が発展途上国の経済発展にとっても重要であり、それを働く人々の生活の向上につなげるためには中核的労働基準の確立は必須である。
 金属労協としても、貿易・産業政策の観点から経済連携協定などに関して調査・研究を行い、同じ考えを持つ海外友好組織との連携を深め、国内外における課題提起や必要な要請活動を行う。
 また、インダストリオールのアクション・プラン2016-2020では、その基本目標の一つに「持続可能な産業政策の促進」を掲げており、第3回世界大会で採択予定の次期アクション・プランでも、「持続可能な産業政策」として引き継がれている。金属労協として今後継続的に取り組むことになるグローバルな観点からの産業政策を強化するため、インダストリオールの産業部門部会活動はもとより、現在取り組みを進めつつあるテレワークに関する取り組みやバッテリーサプライチェーンへの対応などの産業横断的な活動に積極的に参画し、金属労協としての考えを明らかにするとともにグローバルな動向を金属労協の活動に生かす。

3.運動をとりまく情勢

3.1 国内情勢

(1)経済情勢

 2020年度のわが国の実質GDP成長率は、新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言に伴う経済活動の自粛などにより、大幅なマイナスとなった。2021年度の実質GDP成長率予測は、2021年7月時点の予測で、政府は3.7%、日銀は3.8%、民間調査機関の平均は3.6%となっている。
 鉱工業出荷は、2020年5月以降回復傾向となっている。設備投資の先行指標である機械受注統計(船舶・電力を除く民需)は、一進一退が続いている。
 経済活動の動向を敏感に観察できる人々に対するアンケート調査である「景気ウォッチャー調査」は、2020年10月以降、一進一退が続いている。
 輸出金額は、2020年はマイナス11.1%となったものの、2020年末以降前年比プラス傾向となっており、2021年6月はプラス48.6%となっている。
 消費者物価上昇率は、2020年度平均はマイナス0.2%となった。2020年10月以降前年比マイナスで推移したところ、2021年6月は前年比プラスに転じている。
 完全失業率は、2019年に2.4%だったのが2020年には2.8%に上昇した。2021年1月以降は2%台後半で推移していたが、6月は2.9%となっている。有効求人倍率は、2020年は1.18倍と前年の1.60倍から大きく低下し、2021年1月以降は1.10倍程度で推移しているものの、引き続き求職よりも求人の多い状況となっている。新規求人数の増加率は、2021年4月以降に前年比プラスとなり、金属産業の増加率は産業計のそれよりも大きい。
 倒産件数について、産業計は2020年度7,314件と2019年度の8,480件から13.8%減少し、そのうち製造業は、2020年度796件と2019年度976件から18.4%と減少しており、全体よりも減少幅が大きい。
 製造業の企業業績について、2021年6月調査の日銀短観を見ると、2021年度は増収増益の予想となっているが、コロナ禍、半導体不足に加え、景気回復を背景に原材料、エネルギー価格が高騰しており、企業収益を圧迫するリスクが高まっている。

(2)政治情勢

 2020年8月、安倍首相が総理大臣を辞任する意向を表明したことで、8年ぶりに首相が交代することとなった。菅義偉前内閣官房長官が第99代内閣総理大臣に任命され、同月、新内閣が発足した。内閣支持率は、NHKの世論調査によると、2020年9月の発足時には62%であったが、2021年5月以降、「支持しない」が「支持する」を上回り、7月は「支持しない」46%、「支持する」36%となっている。
 2020年10月に菅総理が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。同年12月の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、10年間で2兆円の基金を造成することや、税制支援、規制改革・標準化、国際連携など、あらゆる政策を総動員するとしている。
 「経済財政運営と改革の基本方針2021」では、成長を生み出す4つの原動力の推進として、グリーン社会、官民を挙げたデジタル化の加速、日本全体を元気にする活力ある地方創り、少子化の克服・子どもを産み育てやすい社会の実現を掲げている。財政健全化については、2025年度基礎的財政収支黒字化を堅持し、EBPM(証拠に基づく政策立案)推進のため、「経済・財政一体改革エビデンス整備プラン(仮称)」を策定するとしている。最低賃金については、より早期に全国加重平均1,000円とすることを目指し、2021年の引上げに取り組むとしている。
 2021年7月、中央最低賃金審議会は、A~D全ランク同額28円とする2021年度地域別最低賃金額改定の目安を取りまとめた。2021年度の目安は、一部の地域の事例を除き、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額となる。また、全ランクで有額かつ同額の目安が示されたのは、時間額に統一された2002年以降初めてとなる。
 2021年7月、東京都議会議員選挙が行われた。自民党は議席を選挙前の25から33に伸ばし第1党となったものの、公明党と合わせて過半数には届かなかった。立憲民主党は、1、2人区を中心に共産党と候補者を一本化し、議席を8から15に伸ばしたが、この結果は、次期衆院選に大きな影響を与えるものと思われる。国民民主党は、4名の候補を擁立したものの、議席獲得には至らなかった。

3.2 国際情勢

(1)経済情勢

 世界経済は、先進国を中心に新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、経済活動の制限が緩和されてきたことなどにより、2021年のGDP成長率の見通しは6.0%となった。一方、先進国以外のワクチン接種の遅れ、変異ウイルスの拡大などにより、景気回復ペースの遅れが懸念されている。
 米国は、2020年の実質GDP成長率はマイナス3.5%となったが、。家計への現金給付やワクチン普及を背景に2021年1~3月期は前期比年率6.4%となった。こうした状況を受け、FRB(米連邦準備理事会)は、2023年中にゼロ金利政策を解除する方針を示したが、雇用の回復を確実にするため、金融緩和を粘り強く続ける姿勢を示している。
 ユーロ圏は、2020年の実質GDP成長率はマイナス6.5%と大幅マイナスとなったが、活動制限の緩和が進む中、2021年1~3月期は前期比年率マイナス1.3%とマイナス幅が縮小している。2021年7月、ワクチン接種などの条件を満たせばEU域内の移動が自由になるワクチンパスポート(EUデジタルコロナ証明書)が本格導入されたことも景気回復の追い風になると見られている。
 中国は、2020年4~6月期以降、実質GDP成長率は前年比プラスが続いており、2021年4~6月期は7.9%となった。先行きについては、雇用・所得環境の改善と政府の消費刺激策に加え、世界の需要がワクチン普及と経済対策により持ち直していくと見られることから、堅調に回復すると見込まれている。
 東南アジアでは、2021年はじめは輸出を中心に回復傾向となっていたところ、5月以降、新型コロナの変異ウイルスが広がったことで、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムなどで活動制限が行われ、一部では工場も停止している。

(2)政治情勢

 2021年1月、米国ではバイデン新政権が誕生した。外交面では、国際秩序の立て直し、同盟国との関係修復を掲げ、日本やEU、オーストラリア、インドなどとの連携を強める動きが加速している。人権問題や世界における民主主義の後退に強い懸念を示しており、2021年3月に中国が香港で民主派を排除する選挙制度の導入を決めると、米国は、2020年7月に成立した香港自治法に基づき、中国と香港の当局者24人を新たに制裁対象とした。2021年6月のG7サミットの首脳宣言では、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調したほか、新疆ウイグル自治区や香港情勢などで、人権や基本的な自由を尊重するよう求めた。
 加えて、中国のハイテク分野の企業や研究機関を安全保障上問題がある企業として、事実上の禁輸措置を発動し、軍事面では、中国のミサイル攻撃を見据えてインド太平洋地域における米軍の拠点を分散させていく方針を示すなど、新冷戦下における対決姿勢をさらに鮮明にしている。
 中国に対する欧米からの制裁が続く中、2021年6月、中国では、外国から制裁を受けた場合に報復するための法律である「反外国制裁法」が成立した。
 2021年2月、ミャンマー国軍のクーデターにより、国家の司法・立法・行政の権限が大統領から国軍司令官に委譲され、2011年に民政移管されてから10年足らずで軍政が復活することになった。これに対し大規模なデモが開始されたものの、国軍の弾圧により750人を超える死者が出ていると現地の人権団体は発表しており、国際社会から強い批判が起きている。
 欧州各国でサプライチェーンにおけるデュー・ディリジェンスに関する立法化が進んでおり、EUレベルでも、2021年秋までに指令案を提案する予定となっている。EUに進出する日系企業も対象となる可能性がある。

3.3 新型コロナウイルス感染症

 日本国内の新規感染者数について、2020年末には、全国で1日あたり4,532人、うち東京都だけで1,000人を超えるなど、年末年始に首都圏で感染が急拡大し、東京、神奈川、千葉、埼玉を含む1都3県を対象に2度目の緊急事態宣言が発出された。その後、感染者数はいったん落ち着いたものの、4月にふたたび急増したことに加え、従来のウイルスよりも感染力が強いとされる変異ウイルスが広がったことで、3度目の緊急事態宣言が発出された。その後、感染者数は減少傾向となったが、7月に東京都で感染拡大が続いたことで、東京都に対し、4度目の緊急事態宣言が発出されることとなった。これにより、開催が1年延期されていた東京オリンピック(2021年7月23日~8月8日)では、8割の会場において無観客で開催されることとなった。
 ワクチン接種について、日本国内では2021年2月に始まった。7月13日時点の国内累計接種回数は6,365万回となり、総人口のうち少なくとも1回接種した人は31.0%にとどまっている。海外では、2020年12月以降、英国をはじめ、先進国を中心にワクチン接種が広がっているものの、先進国以外では接種が遅れており、世界の人口のうち、少なくとも1回のワクチン接種を受けた人の割合は、2021年7月時点で25.4%となっている。アジア諸国はワクチン接種が遅れたことや、感染力の高い変異ウイルスが広がったことで、新規感染者数の大幅な増加が続いており、インドや東南アジア各国では活動制限が行われている。
 人口の一定以上の割合が免疫をもつと、感染者が出てもほかの人への感染が減って流行しなくなる「集団免疫」という状態になるが、WTOはその割合について、正確には分からないものの、世界の人口の70%を超える人がワクチンを接種する必要があるという見方を示している。

4.運動方針

4.1 国際連帯・国内外での建設的労使関係構築に向けた活動

国際連帯活動

目的
  • アジア地域における国際労働運動のリード役として金属労協がその運動を目指すべき方向へ導くべく、引き続き、インダストリオール台での発言力・影響力の維持・向上を図る。加えて、各国の労働・社会情勢に関する情報や、先進事例を収集し、国内情勢における課題解決にも資するべく、国際的な視野での活動推進に向けた海外友誼組織との交流も含めた国際連帯を、欠くことのできない金属労協としてのコアバリューとして継続する。
  • また、国際連帯活動推進の円滑化を求めた国内連帯、国内関係組織との定期的な交流・情報交換を進める。
課題・背景
  • 金属労協が加盟する国際産別組織インダストリオールは当初南アフリカで予定していた第3回世界大会をCOVID-19の影響で1年延期し、2021年9月にWebにて実施する。書記長の退任に伴う新しいリーダーシップのもと今後新たな4年間の活動が始まる。
  • 米中対立による世界情勢の変化、世界各国における民主主義への脅威・労働基本権の侵害、DX・カーボンニュートラルといった技術革新・グリーン化政策への対応の要請、COVID-19による世界的な市場・労働環境変化の変化が生じている。こうした中で、インダストリオールらしい、より産業横断的な政策実現、グローバルでの労働基本権の確保、社会的不平等の解消、女性の参画向上の実現に向けた活動が求められる。金属労協としてもこうした活動への適切な対応による公正な労働基準の確保、その実現に向けた建設的労使関係の確立の責任が国内外において期待される。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • インダストリオール世界大会に向けては規約改正議論を中心に活動へ積極参画する。リーダーシップにおいては、従前の副会長・アジア太平洋地域共同議長のポストを引き続き獲得する。加えて、本部への派遣メンバーを書記次長に据え、今後の活動において派遣組織としての役割と責任を果たす。また、東南アジア地域事務所への職員の派遣を通じたアジア地域におけるより強固なインダストリオール活動への参画を進める。
  • 「日韓金属労組定期協議」については、対面の代替となるWeb形式で開催する。北欧産業労連との定期協議」については、2022年度の現地渡航を伴う対面での開催と今後のあり方について検討するため、Web形式で意見交換を行う。また、「日独金属労組定期協議」は二か国間での双方の行き来が可能になることを前提に日本での対面での開催を検討する。また、IGメタルとの間ではWebを活用したデジタル化をテーマにした「対話フォーラム」の開催を検討する。「中国金属工会との交流」では、次回対面開催の実現に向けて双方の検討を推進する。
  • 第3次「男女共同参画推進中期目標・行動計画」に沿った活動を推進する。男女共同参画推進連絡会議において、2022年9月以降の活動のあり方について議論を進める。
  • 新たな体制の整備と共に、COVID-19の感染状況の改善を前提に、インダストリオール日本加盟組織協議会(JLC)・各地域事務所と連携をして、アジアの金属労組を集めた会合のあり方を今後につながるテーマの持ち方も含めて模索し、実施を検討する。
  • 友誼組織との交流は、対面での開催を前提に、「日韓金属労組定期協議」を韓国での開催を目指す。「中国金属工会との交流」は検討状況に応じた、双方への行き来をもとに対面で開催する。また、その他各友誼組織との交流について、対面のみにこだわらない「交流のあり方」を整理・検討し、組織間で調整する。
  • JLCとの連携を通じて、インダストリオール活動への積極参画を進める。特にアジア加盟組織との強固な関係を築くために、定期的な意見交換やアジアの関係労組のリーダー招聘などの活動を着実に進める。そのために、金属労協として求める活動の姿を明確化する。
  • 連合・GUF・JILAF・ILO駐日事務所や各省庁、在日大使館といった関係組織との協議・連携の場をもつ。

多国籍企業労組ネットワーク構築

目的
  • 海外事業体における建設的な労使関係の構築に向けて、海外労組と日本の労組とのネットワーク構築の推進と労使の理解促進を求める。特に、日系企業が多く進出するアジア各国において、現地労使の理解促進と現地労組の育成を図る。
  • また、それを将来におけるインダストリオールが推進するGFA(国際枠組み協定)の締結に向けた必要条件として推進する。
  • 個別企業の労使紛争案件については、現地組織や地域事務所との連携を強化する。特に、オンラインでの活動も活発化させ、複雑になりかねない情報の動きに素早くかつ適切な対応を図る。
課題・背景
  • 金属産業のグローバル化が進んで久しいが、今なお海外現地事業体における労使による対立、経営側による労働基本権の侵害が報告されている。金属労協としても産別・単組と連携し、解決に至る活動を推進してきた。引き続き、金属労協に対しては、個別の紛争案件への適切な対応と共に、目指すべき海外事業体における建設的な労使関係の構築が期待される。また、海外労組も成熟とともに世代交代も進み、属人的な活動の限界も目立ち始めている。その運動の持続可能性は日本の労働組合としても看過することはできない。さらに、グローバル化の一層の進展、産業の変革等を背景に海外を拠点とする多国籍企業との合従連衡も進むことも想定される。このような動きにともなった現地日系企業における労使紛争も徐々に目立ち始めており、建設的な労使関係の構築が求められるフィールドは広がりを見せている。
  • 一方で、産別・単組における国際活動の推進も一定の枠内での活動にとどまってしまっている現実もある。よって、国際労働運動をこれまで推進してきた金属労協による活動の一層の後押しの期待は高まり続けている。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • タイ・インドネシアにおける労使ワークショップをCOVID-19の下で実現可能な形式も含めて検討し、開催する。開催にあたっては、より現地労使の理解が深まることを目指して新たな枠組みを検討する。特に開催の計画を通じ、現地産別との連携の強化および建設的な労使関係構築への理解促進を並行して進める。
  • 2022年度に実施されたタイ・インドネシアにおける労使理解に対する活動を踏まえて、現地への渡航も含めたあるべき姿を検討する。Webを活用した現地会場とのハイブリッド開催を行うなど、日本国内からの積極的な産別からの参画をもった現地での活動を開催する。
  • 労使紛争への支援要請に対して、Webも活用した適切な情報が入るネットワークを構築する。これにより、産別・単組およびその労組ネットワークを通じた問題の早期捕捉、迅速な解決を支援し、中核的労働基準の遵守につなげる。
  • 産別とも連携しながら、具体的な活動の取り組み事例を収集し、産別・単組が実践に一歩踏み出せるような資料の整備や必要に応じた個別企業労使における活動支援を行う。

国際人材育成

目的
  • 幅広いメンバーが国際労働人材として広く活動できるよう、基礎的な素養を養う教育活動の継続的に実施する。また、活動の助け・即戦力となる人材の育成に資する海外労働組合・労働運動情報を組織の資産として効率的なストック・活用を目指す。
課題・背景
  • 建設的な労使関係の構築を一層推進するにあたっては、金属労協・産別のみならず、単組に至るまで活動を理解し、推進できる人材を継続的に維持ないし裾野を拡大していくことが基盤整備として求められる。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 海外への渡航が制限される中で、国際労働研修プログラムについては、対象国を特定しない国内での座学による国際労働講座を代替として開発し、実施する。
  • 2022年度の労働講座参加者を中心に対象とした現地渡航前提の国際労働研修プログラムを実施する。また、Webを活用して国内からも参画できるパートを設けて人材育成の裾野を広げる。
  • 海外の組織・人物情報、労使紛争の過去経緯等を収集したJCMペディアを継続整備し産別を巻き込み、積極的に活用する。

日本の労使への建設的労使関係構築の理解促進

目的
  • 加盟産別・単組の労使双方が、中核的労働基準の遵守や建設的労使関係構築の重要性に関する理解を深め、進出先の現地労使における日頃からの円滑なコミュニケーションの確保を図る。あわせて、現地労組とのネットワーク構築実現に向けたバックアップを推進する。
課題・背景
  • 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の国別行動計画(NAP)が日本国内においても策定・公表され、人権デュー・ディリジェンスの取り組み、中核的労働基準の確保がサプライチェーン上も含めて企業に求められる動きが高まりを見せている。その実効性ある取り組み推進としての建設的な労使関係構築の重要性に対する日本の労使の理解促進は、金属労協の目指す海外現地事業体における活動推進の基盤として期待される。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 「海外における建設的な労使関係の構築に向けた国内労使セミナー」をWeb形式にて継続的に開催する。特に昨年度より取り入れた活動の進捗に応じたステージ分けを引き続き取り入れ、実践ステージではWebを活用し双方向性も取れ入れるなどして労使理解を促進させる。
  • 「海外における建設的な労使関係の構築に向けた国内労使セミナー」を継続的に開催する。開催形式はWeb形式にとどめることなく、対面でのディスカッション形式を取り入れるなど実践につながるコミュニケーションの可能性を検討する。

4.2 次世代の加盟産別・単組の活動を担う役員の育成とスキルアップを支援するための活動

教育活動

目的
  • 労働リーダーシップコースでは、産別や単組の枠を超えた人材交流を通し、大きな時代の変革期に対応できる人材育成、産業社会の発展に寄与するため、基礎的教育を行う。
  • 金属労協のネットワークを活かして、産別・単組の役職員のスキルアップ、産別活動に資する時宜に応じたテーマのセミナー、ワークショップを参加しやすく効果的な形態で開催し、知識・情報を提供する。
課題・背景
  • 次代を担う人材育成は、労働運動の持続的発展のためにも重要であり、金属労協の特色を活かした教育・研修を実施することが求められている。
  • また、人材育成は新しい金属労協において主体的に取り組む活動の一つであり、労働リーダーシップコースをはじめ、各種研修会について、目的や対象者などを明確にした上で、内容や開催方法などについて整理していく必要がある。
  • 労働リーダーシップコースは多くの労働組合リーダーを輩出するとともに、産別・単組の枠を超えて人と人とをつなぐ交流の場として高く評価されている。これまでにもプログラムを改善するなど充実を図ってきたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、昨年の開催が延期になるなど、開催方法の検討が課題となっている。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 労働リーダーシップコースの目的や教育方針を堅持しつつ新型コロナウイルス感染症拡大防止対策に留意して開催する。対面とWeb、それぞれのメリットを活かしたプログラムで実施する。
  • 引き続き感染症対策に留意して開催する。時代のニーズに応じたプログラムの改善を検討する。
  • これまで開催してきた労働情勢検討会、政策課題研究会、Web講演会について、目的と対象を整理して、実施する。
  • 人材育成のあり方について検討するプロジェクトを設置し、新しい金属労協における具体的な活動を明確にする。
  • 講演会等で使用した資料や講演の動画などの活用可能性について検討する。

4.3 金属産業政策

産業横断特定テーマに関する金属産業政策立案・実現

目的
  • 新型コロナのワクチン接種も進み、一方で新冷戦が進行するといった環境変化の中で、DX、カーボンニュートラルなどの大変革において、産業の競争力強化に向け、金属産業の労働組合の立場から積極的に対応する。技術変化への対応に際しては、社会的対話と労使協議を重ねる中で、新たに必要となるスキルの習得・向上に向け教育訓練を拡充し、職種転換、雇用移動によってあくまでも雇用を維持する「公正な移行」を実現していく。
  • 優越的地位の濫用規制と下請法の強化、中小企業の生産性向上などにより、バリューチェーンにおける付加価値の創出・適正配分に寄与する。
  • グローバルな中核的労働基準の確立に向けて、わが国金属産業として責任を果たしていくよう、労働組合の取り組みを強化する。
課題・背景
  • 新型コロナ対応の経験を通じて、わが国におけるDXへの対応の遅れが浮き彫りとなっていることに加え、長期化が想定されている新冷戦への対応も含めたバリューチェーンの再構築、2050年カーボンニュートラルの実現など、金属産業は大変革の中にある。
  • 対外的には、TPP11への英国の加盟や米国の復帰など、自由で開かれた国々における経済連携協定の拡大が重要課題となっている。
  • 日系企業の海外事業拠点において、中核的労働基準に関わる労使紛争が多数発生している。また、欧州を中心に企業の人権デュー・ディリジェンスの法制化が進んでいる中、組合としても対応を検討する必要がある。
  • 2021年には、「民間・ものづくり・金属」の観点から、成長戦略、マクロ経済、DX、カーボンニュートラル、バリューチェーン、国際労働の各政策からなる「2021年政策・制度要求」を策定し、要請活動を展開した。
  • 政策・制度要求では、優先的に取り組むべき項目を明確にするため、重点化と項目の絞り込み行ってきたが、金属労協の限られたリソースの中で、民間・ものづくり・金属産業に働く者の観点に立った政策の実現力を一層高めていくため、政策立案・推進の運用方法を見直し、さらに強力な絞り込みを行っていく必要がある。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 要請項目については、わが国金属産業の命運を決するDXやカーボンニュートラルに関する政策を中心に据えていく。連合や各産別の政策要求との重複を避けつつ、
    • DX・カーボンニュートラル対応、バリューチェーンにおける付加価値の創出・適正配分などの産業政策
    • 金属産業における人材育成・確保のための政策
    • それらの環境整備のための政策
    などから3項目程度に絞り込み、「2022年産業政策要求」を策定し、要請活動を展開する。
  • 要請項目を3項目程度に絞り込み、「2023年産業政策要求」を策定し、要請活動を展開する。
  • 産業政策の策定に際しては、産別のみならず単組からの幅広い情報提供、提案を募り、意見集約を図る。具体的な方法については別途検討する。また、実際の政策策定作業を分担するワーキンググループ設置など、加盟産別との連携を強化する。
  • 「産業政策要求」で取り上げた項目以外に、緊急な産業政策対応が必要となった場合には、適宜、迅速に政策立案を行い、要請活動を展開する。(円高進行や雇用悪化、新たなパンデミックが発生した場合の対応など)
  • とくに重要な産業政策課題については、政治顧問との連携を図り、三役からの大臣要請などを展開する。宣材として政策レポート、リーフレットを作成し、府省、マスコミなど関係方面に配布する。(組織内はWeb展開)。
  • 当該年の要請項目の如何に関わらず、政策課題に関する各府省の担当窓口と定期的な意見交換・情報交換の場を設ける。
  • 金属産業に関係する団体との意見交換・情報交換の実施を検討する。
  • グローバル産業政策については、インダストリオールの活動に迅速かつ積極的に対応し、JLCとの連携のもと、インダストリオールやインダストリオール加盟組織に対する働き掛けを強化する。
  • 貿易・産業政策の観点から経済連携協定などに関して研究を行い、同じ考えを持つ海外友好組織との連携を深め、国内外における課題提起や必要な要請活動を行う。
  • 金属労協として、「人権デュー・ディリジェンス」に関する労働組合としての対応を検討する。

4.4 労働政策

金属共闘

目的
  • 賃金の底上げ・格差是正および日本の基幹産業にふさわしい賃金水準確立をめざし、生産性運動三原則に基づく、「成果の公正な分配」、「人への投資」を追求する。
  • 心身の健康を維持し、家庭生活や地域活動、社会貢献、自己啓発など個人のための生活時間を確保して、生活の豊かさを追求するとともに、職場において生産性の向上を促す観点からも、働き方の見直しを図る。
  • 同じ職場で働く仲間として、同一価値労働同一賃金を基本に、非正規雇用で働く労働者の賃金・労働諸条件の改善を実現する。さらに、未組織労働者なども含めた金属産業で働く人全体の賃金の底上げ・格差是正に向け、労働組合としての社会的責任を果たしていく。
課題・背景
  • 「第3次賃金・労働政策」の下で、「雇用の安定を基盤とした多様な人材の活躍推進」「『同一価値労働同一賃金』を基本とした均等・均衡待遇の実現」「ワーク・ライフ・バランスの実現」の3つを柱に、実現に向けて取り組んでいる。
  • コロナ禍が収束に向かい、一方で新冷戦が進行するといった環境変化の中で、DX、カーボンニュートラルなどの大変革に積極的に対応し、金属産業の成長力を高め、競争力を強化するための人材確保が急がれており、継続的な賃上げによる「人への投資」をさらに強化していく必要がある。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 速報対象組合の取り扱いなど、各地域における闘争時の情報共有のあり方について、検討を進める。
  • JC共闘の一層の強化を図り、金属労協のあるべき姿の検討材料とするため、JC共闘の歴史的経過と理論を振り返り、整理する。
 
  • 金属産業において引き続き大変革が進行する中で、生活の安定と向上、産業の新たな発展基盤の確立、経済の持続的成長を達成するため、生産性運動三原則に基づく「成果の公正な分配」として、基本賃金の引き上げを基軸とした「人への投資」を追求していく。
  • 企業内最低賃金協定と特定最低賃金に対する理解を促進するため、交渉に活用できる教宣資料を作成する。
  • 労働諸条件の改善に向けて、統一取り組み項目の設定など、項目を重点化しつつ、共闘効果を高めるように検討する。
  • JC共闘内における闘争情報の共有や社会への発信について、多様な手法の活用を検討する。
  • 賃金の底上げ・格差是正、適正な労働時間の実現を前進させるため、個別賃金水準の実態調査と労働時間の実態調査を継続する。各種調査・集計に関して、産別との調整・連携を図るため、担当者レベルの会議を開催する。
  • JC共闘と連合の部門別共闘との一体化を模索し、連合本部との連携をさらに強化する。

特定最低賃金

目的
  • 特定最低賃金を金属産業の労働の価値にふさわしい水準に引き上げることによって産業の魅力を高め、人材を確保することで産業の競争力を高めるという好循環サイクルを構築する。
課題・背景
  • 「同一価値労働同一賃金」を基本とした均等・均衡待遇を確立するとともに、金属産業においてはグローバル化を理由とした賃金の下押し圧力が強い中で、産業内の公正競争確保とバリューチェーン全体の持続的な発展を図るため、労使対等の交渉によって決定された企業内最低賃金の水準を、特定最低賃金を通じて組合未組織企業や非正規雇用で働く者を含めた産業全体に波及させる必要がある。
  • 地域別最低賃金の3%程度の引き上げや使用者側の特定最低賃金廃止論により、地域別最低賃金と特定最低賃金が接近・逆転するケースが出てきており、今後さらに増加することが懸念される。地域別最低賃金をいったん下回った地域では、使用者側の反対により、 特定最低賃金の金額改正ができない事態が生じている。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 地域別最低賃金全国加重平均1,000円への到達が見込まれる中、金属産業の労働の価値にふさわしい水準をめざす。
  • 地域別最低賃金との水準差を維持・拡大するため、地域別最低賃金の引き上げ額以上の特定最低賃金の引き上げを継続的に実現していく。
  • 企業内最低賃金協定と特定最低賃金に対する理解を促進するため、交渉に活用できる資料を作成する。
  • 都道府県別に設定されているすべての金属産業の特定最低賃金について、金額改正の取り組みを行う。新設についても積極的に取り組む。
  • 産別本部の最低賃金担当者による「最低賃金意見交換会」を適宜開催し、産別間の情報共有と地域の取り組みを支援する方針の立案、教宣資料の作成を行う。
  • 地方最低賃金審議会の公益側委員、経営者団体の使用者側委員、都道府県労働局への働きかけを強化するため、地方連合会との連携を強化し、金属部門連絡会を活用した情報交換を進める。
  • 組織内外に対して、制度の意義・役割への理解を働き掛ける。
  • 具体的な取り組みについては、状況の変化に的確に対応し、「特定最低賃金の取り組み方針」「特定最低賃金の金額改正・新設に臨む確認事項」として示す。
  • 特定最低賃金の中期的な課題については、継続的に検討を進める。

4.5 地方活動

地方ブロック活動

目的
  • 生産拠点が実際に存在し、従業員の生活の場でもある地元の活性化を促すことにより、基幹産業たる金属産業の持続的な発展を図る。
  • 地方自治体に対しても、「民間・ものづくり・金属」の立場からの政策実現を図る。
  • 特定最低賃金や地方産業政策の取り組みを進めるための意見・情報交換を行う。
  • 地域再生・活性化のために、金属・ものづくり産業の職場を代表する金属労協加盟の産別・単組の声を政策決定に反映させる。
課題・背景
  • 地方連合会の政策への盛り込みを主眼とする「地方における政策・制度課題」を策定し、地方組織の利用に供してきた。
  • 地方連合会金属部門連絡会など、都道府県単位の枠組みにおいて、最低賃金や「地方における政策・制度課題」に関する研修会については、Web開催も含めて提案し、実施地域も増えてきている。
  • 「地方政策実現に向けた取り組みの進め方」を紹介するなど、わかりやすさ、取り組みやすさの強化を図ってきたが、都道府県ごとの取り組みには差が見られる。
  • 組織改革推進チームで示された方向性にそって、地方における活動の意義と役割、地方連合会金属部門連絡会との関係について改めて明確化し、これからの地方活動の具体的あり方について検討する必要がある。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 「地方における産業政策課題2022」を策定する。
  • 新しい金属労協の組織と活動のあり方に基づく、これからの地方活動の方向性について各ブロックで議論を行う。
  • 地方連合会金属部門連絡会の設置状況、活動内容、予算などの現状を把握するため、各県役員からの意見聴取を行う。
  • 「地方における産業政策課題2023」を策定する。
  • 2024年度以降の地方活動のあり方について検討する。
  • 「地方における産業政策課題」の内容については、地方組織のニーズに応え、産業政策、人材育成・確保のための政策、およびそれらの環境整備のための政策に特化する。
  • 「地方における産業政策課題」の網羅的な検討を図るなど、地方連合会での政策策定への金属部門の積極的な参画を促すとともに、支援する地方議会議員との連携強化を促進する。
  • 各地域における「最低賃金」や「地方における産業政策課題」に関する研修会や諸会議における勉強会など、Webでの開催も含め具体的な提案を行う。
  • ものづくり教室については、新たに取り組む地方組織での開催支援を行うとともに、すでに取り組んでいる地方組織に対してもソフトウエアプログラミングの要素をもった工作キットを紹介するなど、内容のさらなる充実を提案する。
  • 地方ブロックのおよび各都道府県の活動内容に関する情報交換と共有化をはかるために、地方ブロック代表者会議を随時開催する。その際はWebを積極的に活用し、会議の頻度を高める。

4.6 情報発信

電子メディアに特化した情報発信

目的
  • 金属労協の方針や活動を周知し、加盟産別・単組の金属労協の取り組みに関する理解を深める。
  • インダストリオールや諸外国労組の活動や、国際的な課題、さらには時宜に応じたテーマに関する取り組みや論考を紹介し、加盟産別・単組の取り組みに活かす。
  • 春闘情報などを組織外に発信し、金属労協の社会的役割を果たす。
課題・背景
  • これまで金属労協から主に産別・単組に向けた情報発信ツールとして機関紙を年4回、機関誌を年2回発行してきた。また、ホームページを活用して、春闘情報やインダストリオールニュースなどをタイムリーに発信している。
  • デジタル技術の進化により、即時性、双方向性のある多様な情報発信ツールが活用される時代となり、金属労協の情報発信のあり方の見直しが迫られている。
  • 組織改革の議論においても、紙媒体から電子メディアを中心とした情報発信への変更が求められている。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • これまで発行してきた機関紙・誌、政策ニュースなど紙媒体での情報発信のあり方について、目的と対象を明確にし、電子媒体での発行に切り替えるための検討を行う。
  • 準備が整ったものから、順次電子媒体での発行に切り替えを進める。

4.7 財政運営

単年度収支均衡に向けた財政状況の改善

目的
  • 健全な財政運営により、持続可能な組織とする。
  • 金属労協に求められる役割に沿って、活動を効率的に実施できるような予算措置を講ずる。
課題・背景
  • 金属労協財政は、2013年度以降赤字が続いているが、組織財政検討プロジェクトの答申に基づく支出削減策などにより、赤字幅は着実に減少している。
  • 2020年度21年度はコロナ禍による海外出張の制限などにより、単年度収支が黒字となったが、これは特殊事情によるものであり、基調としての単年度収支均衡には至っていない。
  • 金属労協の支出の約半分を占めるインダストリオール会費については、スイスの物価上昇に合わせた調整による実質増や円安傾向などにより、財政に深刻な影響を与えることが危惧される。
具体的な
運動
2022年度の具体的運動 2023年度の具体的運動
  • 単年度収支均衡に向けて、引き続き支出削減に努める、
  • 新しい金属労協の組織と活動のあり方に向けて、柔軟な支出運営を図るため、常任幹事会の承認を得たうえで、予備費を活用する。
  • 活動の整理や予算のあり方についての検討状況を踏まえ、必要に応じて予算の組み換えを行う。
  • 2024年度以降の組織と活動にあわせた予算のあり方について検討を行う。

5.最後に

 「1.はじめに」で記載したとおり、この運動方針で提案する2年の運動期間は、新しい金属労協に向けた準備期間になる。2年後の2023年9月開催の定期大会において準備期間での成果を報告できるよう、これまでの運動を新しい金属労協の姿に向けて見直し、さらに新しく取り組むべきことに挑戦する期間である。何よりも、協議会という組織であることに立ち返り、産別との連携をこれまで以上に深める必要がある。産別の皆さんの積極的な参画を改めてお願いしておきたい。また、現時点で想定できない事態が発生し対応が必要な場合には、運動方針に書いた内容の変更や追加を行わざるを得なくなることについてはご理解いただきたい。
 また、連合の産業・部門別連絡会議のあり方等については、連合の運動方針にもとづいて議論されることになるが、金属労協としてもこの議論に積極的に参画し、我々の求める姿に近づけるよう努力したい。