新着情報(定期協議)

日韓金属労組定期協議(2013年10月23日、横浜)

2013年10月25日

日韓金属労組定期協議

定年制、労働時間、最低賃金など、

日韓の金属労組が直面する課題について討議

20131023日、横浜で開催

日韓金属労組定期協議(2013年10月23日、横浜)

金属労協は、20131023日、神奈川県横浜市「ワークピア横浜」において、金属労協(JCM)とFKMTU(韓国金属労連)との定期協議を開催した。会議には、韓国側からは、韓国金属労連(FKMTU)のキム・マン・ジェ委員長、ジョン・イル・ジン副委員長、キム・ソンス事務局長をはじめ32名が出席、日本側の金属労協からは、西原浩一郎議長をはじめ三役、加盟産別・単組から42名が出席した。定期協議では、政治・経済・社会情勢をはじめ最低賃金など日韓の金属労組が直面する課題について報告と質疑応答を通じた討議を行った。

【開会】

西原議長

キム・マン・ジェ委員長

開会にあたり、両国金属労組を代表して、金属労協(JCM)西原議長および、韓国金属労連(FKMTU)キム・マン・ジェ委員長が挨拶を行った。金属労協を代表して西原議長が、韓国金属労連代表団の訪日を歓迎する挨拶を述べた後、韓国金属労連を代表して、キム・マン・ジェ委員長は、「インダストリオール結成によって国際レベルの連帯の輪が広がったが、韓国国内の加盟組織間ではまだ具体的な議論はなされていない。韓国化学産業労働組合連盟や韓国電力労働組合と話し合いは行っているが、現時点では連帯の枠組みだけ確認したところである」、「2014年1月にFKTU(韓国労働組合総連盟)の委員長選挙が予定されている。3~4組の委員長・首席副委員長・事務局長が立候補すると見られており、FKMTUからも候補をたてるかどうか決断の時期にある。このような時期に政治的な議論ができるのは非常に有意義であると考えている。熱のこもった議論を期待している」と述べた。

議題1「日韓両国の政治・経済・労働情勢について」

若松事務局長

相原副議長

眞中副議長

 

ジョン・ジョン・ドク政策企画本部長

議題1では、日韓両国の政治・経済・労働情勢について相互に報告と質疑応答を行った。JCMから若松事務局長が日本の最近の政治・経済・社会情勢について報告し、相原副議長(自動車総連会長)が自動車産業について、眞中副議長(JAM会長)が機械産業について補足の報告を行った。

 韓国からはジョン・ジョン・ドク韓国金属労連(FKMTU)政策企画本部長が、韓国の政治・経済・労働情勢について報告した。政治情勢については、朴政権が改憲後直接選挙によって選ばれた6人の大統領のうち、もっとも低い40%の支持率でスタートしたが、本年9月に入ってからは、60%の高い支持率をみせている。その理由としては、スタート時期には、国家情報院の大統領選の介入疑惑、景気の低迷、経済民主化と福祉公約の後退、増税騒ぎ、賃貸家賃の高騰など、悪い状況が続いたが、北朝鮮に対する政策、外交分野での成果が状況を押さえたことが高い支持率に結びついているというのが、世論調査や専門家の分析だ。経済情勢については、①実物指標の伸び悩み、②内部回復の遅延(その理由として、家計負債、不動産バブル)、③うち続く低成長、④経済成長率は伸び悩み、などについて言及した。労働情勢については、①2013年上半期の改正法規、②「通常賃金」に対する判例の変化、③労働時間短縮の動向と争点、を中心に報告した。①の改正法規については、事業主が定年を60歳以上と定めるよう義務化した「雇用上の年齢差別禁止及び高齢者雇用促進に関する法律」、「下請負取引公正化に関する法律」「派遣労働者保護などに関する法律」などについて、言及した。

 質疑応答では、日本側から「法律によって定年が60歳以上にすることが義務化されたとのことであるが、実際に60歳まで働くことができるのか?」との質問に、韓国側からは、「立法化はされたが、遵守されるか疑問である。ただ定年60歳制は、賃金ピーク制の導入が前提となっており、また2016年施行であるので、それまでに労使で検討していくことになる」「FKMTUでは5年前に賃金ピーク制についてアンケートを行った。当時でも定年は5657歳となっていたが、実際は50歳までに希望退職制度で退職することが多く、その中身も実際はほとんど整理解雇と同じようなものである。韓国には整理解雇に関する法律があり、経営側がそれを利用している。現在の韓国の賃金制度は完全な年功制であるが、ある一定の年齢で年齢に応じた昇給を止めるという賃金ピーク制度の導入をめぐってトラブルになることが考えられるし、法制化された60歳定年制が本当に守られるか疑問である」との考えが示された。このほか、韓国側からは、日本の安倍政権の賃上げをはじめとする労働政策の労働者や労働組合に与える影響について質問が出されるなど、活発な意見交換を行った。日韓関係について質疑では、韓国側から「日韓関係は過去の歴史認識問題と、貿易上の競争関係があり、そこに中国との関係が加わっており、複雑な関係となっている」との考えが示された。

議題2「最低賃金について」

井上事務局次長

ジョン・テ・ギョ広報局長

 議題2「最低賃金について」では、まず、日本側から井上昌弘金属労協事務局次長が「日本の最低賃金の動向と課題」について、①最低賃金の概要、②地域別最低賃金の概要と動向、③産業別最低賃金の概要と動向、④労働組合の取り組み、⑤未組織労働者への波及、⑥春季生活闘争の取り組み、を中心に報告した。続いて、韓国側のジュン・テ・ギョ韓国金属労連(FKMTU)広報次長が、韓国の最低賃金制度の概要と実態と課題について、コンビニで働く大学生アルバイトの生々しい実態などを含めて報告を行った。この後の質疑応答では、日本側から「最低賃金違反には罰則規定まであるのに、コンビニのアルバイトに対し、おにぎりなどの現物支給があるなど、なぜ違反が見逃されているのか。最低賃金の監督業務の実態はどうなっているのか」との質問に、韓国側から、「勤労監督官(注:労働基準監督官)が仕事をしていないという批判もあるが、監督官の数が少ないことと、罰則が甘いということもある。監督官の人数を増やすこと、勤務体系を改善することが求められている。また、若者たちの権利意識が低いため、最低賃金以下で働いていることを申告しないことも問題である」との答えがあった。韓国側からは、「最低賃金の適用基準はどう定められるか、背景を知りたい」との質問に対して、日本側から「地域別最低賃金はすべての労働者に適用される。産業別最低賃金は18歳以上65歳未満の労働者で、基幹的労働者に適用される。基幹的労働者とはその業務内容が軽作業以外の労働者ということである。この適用基準は各都道府県や産業によって異なる。たとえば東京都の鉄鋼と神奈川の鉄鋼では適用基準は少し異なっている」「地域別最低賃金では、地域ごとの物価や賃金などをどのようにして公正に取り扱うかが重要である。産業別最低賃金は、産業内の労働条件を企業の競争条件にしてはならないという考え方である」とのコメントがあった。また、韓国側から、「日本では、最低賃金を論議するときに、地域別格差や産業別格差は大きな問題にならないのか」との質問には、日本側は「地域別最低賃金の地域間格差はわれわれも問題視している。産業別最低賃金のベースは地域別最低賃金である。基本的な生活は地域別最低賃金に支えられている。その上で産業の賃金水準はどうあるべきか、ということを産業労使が決定していくということである」とコメントした。このほか、活発な質疑応答を行った。

【閉会】

 最後の閉会の挨拶では、韓国金属労連(FKMTU)より2014年の秋に定期協議を韓国側で受け入れるとの申し出があり、日程や場所の詳細についてはFKMTUとJCMの事務局で調整するということとなった。

日韓金属労組定期協議を終えて全員で記念写真

日韓3産業別協議も開く

電機・電子産業、鉄鋼・造船・非鉄産業、電線産業の3分野別に協議

この金属労協(JCM)と韓国金属労連(FKMTU)との協議終了後昼食休憩となり、その後電機電子産業、鉄鋼・造船・非鉄産業、電線産業それぞれで産別協議を行った。

電機連合とFKMTU電機電子分科との「日韓電機産業労組定期協議」では、①両国電機産業の動向及び産業政策の取り組みについて」、②「両国の労働法制の動向とその対応について」、③「組織拡大の取り組みについて」をテーマに論議した。

基幹労連とFKMTU鉄鋼分科・造船分科・非鉄分科との「日韓鉄鋼・造船・非鉄産業労組定期協議」では、「両国の鉄鋼・造船・非鉄産業の動向と展望」を主要議題に論議した。

全電線とFKMTU電線分科との「日韓電線産業労組定期協議」では、「電線産業の動向と2013年春闘の結果」を主要議題に論議した。

日韓電機・電子産業労組定期協議

日韓鉄鋼・造船・非鉄産業労組定期協議

日韓電線産業労組定期協議