広報ニュース

第48号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2016年2月18~25日)

航空宇宙――MENA地域の好調部門

2016-02-25

 航空宇宙部門は中東・北部アフリカ(MENA)、特にチュニジアとモロッコで活況を呈している。比較的新しい部門だが、すでに両国で数千人の労働者を雇用している。両国の地理的な位置、労働供給、政府の投資誘致政策を考えると、航空宇宙産業は引き続き拡大すると予想される。

 ケマル・ウズカン・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長はこうコメントしている。「この拡大している新興部門の経済的重要性が高まっていることは明らかだ。したがって、チュニジア、モロッコ両国において産業レベルで労働者の発言権を強化し、その意見を主張することが絶対に欠かせない。インダストリオールは今後も両国の加盟組織と協力し、産業レベル交渉で加盟組織の立場を強化していく」

航空宇宙――モロッコの戦略的産業

 

モロッコでの航空宇宙産業部会ワークショップ

モロッコでの航空宇宙産業部会ワークショップ

 2015年11月18日、モロッコの両ナショナルセンターUMTとCDTの航空宇宙労働者を代表する約20人の組合幹部が各社から集まり、カサブランカでインダストリオールのワークショップを開いた。

 初めて会合を開いた組合幹部たちは、産業レベル交渉が実施されていない状況を踏まえて、この急成長を遂げる部門で組合の力を強化することの必要性に関する主な課題と見解を共有した。

 使用者がモロッコ航空宇宙産業協会(GIMAS)を結成しているのに対し、労働者は組合の部門別活動や訓練をほとんど実施していない。

 参加者とGIMASによると、航空宇宙部門は2000年に活動を開始し、当時からモロッコの新しい戦略的産業の1つとみなされていた。現在、モロッコにはEADS、サフラン、ボーイング、ラビナル、SNECMA、アルコル・マロック、ステリア・マロック、ボンバルディア、インタートロニック、ゾディアックなど、航空宇宙会社が100社以上あり、その多くがカサブランカに拠点を置いてい。 GIMASによると、この産業には8,000人の有資格作業者がいるが、実際の人数はそれよりもはるかに多いと組合幹部は言う。

 参加者は以下の主要課題を確認した。

●組合幹部の解雇
●組合に対する労働者の認識を高める必要性
●組合の要求をめぐる使用者による真剣な交渉の欠如
●労働者の組合設立を妨害しようとする使用者側の圧力
●派遣労働者と各種の不安定雇用の幅広い利用
●さまざまな企業における団体交渉の停止
●労働組合員に対する虚偽の告発
●賃金・昇進差別
●不十分な安全衛生措置
●労働者は、GIMASが組合活動家をブラックリストに載せ、活動家の評判を傷つけ、この部門で将来就職しにくくしていると考えている。

チュニジアにおける労働者の発言権の強化

 

チュニジアにおける航空宇宙産業ワークショップ

チュニジアにおける航空宇宙産業ワークショップ

チュニジアの航空宇宙産業は好調で、メカニー、ステリア、サベナ、テクニクス、ゾディアック・エアロスペース、エアロリアをはじめ約65社が活動している。これらの企業は合計約7,500人を雇用しているが、組合幹部によると、この部門にはもっと多くの労働者がいる。

   2015年11月30日、航空宇宙各社とインダストリオール加盟組織チュニジア金属一般労連(FGME-UGTT)指導部から約22人が集まり、チュニジアの航空宇宙部門における組合の力の強化に関するワークショップに参加した。

 参加者たちは、この産業の労働者が直面している課題に焦点を当てて主要企業を洗い出し、共同作業ガイドラインを作成した。モロッコの場合のように、さまざまな航空宇宙会社の労働組合員が初めての共同活動で顔を合わせた。多くの参加者にとって、これは新しい組合活動経験だった。

 労働者が直面している課題の多くはモロッコと同様である。しかしチュニジアでは、金属労組は産業レベルで産業別協約か枠組み協約を締結しているが、航空宇宙部門の組合は現在のところ使用者団体のチュニジア航空宇宙産業協会(GITAS)と直接交渉していない。

 チュニジア、モロッコ両国のワークショップ参加者は最後に、強力な労働側交渉パートナーを生み出して産業レベルで労働者の要求を協議し、政府や使用者団体と交渉できるようにするために主要優先課題を定めた。例えば、組織化や教育、部門別組合活動に関する航空宇宙労組の能力強化をめぐるインダストリオールとの共同作業である。

 行動計画に従って、インダストリオールとFGME-UGTTは2016年2月10~11日、航空宇宙労働者の組織化技能向上に関するワークショップを開いた。インダストリオール執行委員のタハール・ベルベリFGME-UGTT書記長は言う。「この部門の労働条件改善を目指す行動計画を是非とも実施したい。能力強化と組織化は、チュニジアの航空宇宙部門で組合活動を促進する大きな効果がある」

 ウサーン・アッバーシUGTT書記長はワークショップの開会の辞で次のように述べた。「今、チュニジアの航空宇宙部門で組合の能力を強化することが重要だ。この部門は若者と女性を大勢雇用しており、彼らの組合技能を開発する必要がある」

 

インドネシアの組合、女性代表40%の割り当てを採択

2016-02-25

 

FSPMI大会で連帯の挨拶をするライナ・インダストリオール書記長

FSPMI大会で連帯の挨拶をするライナ・インダストリオール書記長

インドネシアのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織FSPMI(インドネシア金属労働組合連合)は、2016年2月10日の大会で指導部における女性比率40%の割り当てを採択した。

 この金属労組による画期的な決定に先立って、2015年9月にウィーンで開催されたインダストリオール女性世界会議において、インダストリオールの組織機構で女性参画率40%を支持する決議が採択されている。

 FSPMI女性委員会は40%の割り当てを達成するために熱心に運動しており、定期的に会合を開き、FSPMI全国本部と会長に働きかけてきた。2015年11月には、女性参画率40%の要求を強化するとともに、女性に対する差別的課税を撤廃させるために、200人を超える女性が集まった。

大会に参加したインドネシアの女性組合員

大会に参加したインドネシアの女性組合員

インドネシアの労働組合の女性は、2014年5月のインダストリオール・アジア太平洋女性会議でも、インダストリオール組織機構における40%の割り当てに賛成票を投じている。

 モニカ・ケンペール・インダストリオール女性担当部長兼書記次長は次のようにコメントした。「この先駆的な一歩を踏み出したFSPMIと、それを可能にした女性たちを祝福する。女性代表の促進によって、より多くの女性がFSPMIに加入して組合活動に参加し、疑う余地のない女性の団結力・指導力を活用できるようになる」

FSPMIは次のようにコメントした。

「組織機構で女性の人数が増えれば、FSPMIならびに労働者の権利を保護するためのFSPMIキャンペーンが強化される」

 

イラン労働者の課題と公正を求めての闘争

2016-02-25

イラン金属・機械労組のマジヤール・ギラニネジャド氏

イラン金属・機械労組のマジヤール・ギラニネジャド氏

イラン金属・機械労組(UMMI)のマジヤール・ギラニネジャドが、イランの労働者の課題と闘争、核取引が経済に及ぼす可能性のある影響について語る。(インタビュー)

Q:イランの経済情勢は悲惨な状況にある。失業率もインフレ率も高く、基礎食品や家賃が高水準にあり、国民は過度の負担を強いられている。組合の観点から見て、このような状況をもたらしている原因は何か。

MG:イランの経済政策は無制限の金融資本主義に基づいているため、物価と失業率が急上昇している。ラフサンジャニ政権下では、世界銀行とIMFの指令を実行することが政府の政策の重要な要因になった。最近、イラン経済はこれまで以上に金融資本を受け入れるようになっている。

 イラン・イラク戦争が終わってから25年が経ち、鉄鋼や発電、水、石油化学製品のような最大規模の基幹産業が危機に瀕しており、規制されていない輸入のせいで国内産業が低迷している。我が国は今、かつて輸出していた製品を輸入している。

 現在、労働者の40%以上が失業しているか、不安定な疑似的雇用に就いている。少なくとも300万人が雇用保険で生活している。昔は中東で並ぶもののない工場があったが、これらの産業は今、危機的状況にある。

 ザグロスやサーベーのような製鋼所が閉鎖され、廃業したタイヤ製造工場も5カ所を超えている。製錬所や鋳造所の生産は40%未満に落ち込み、自動車メーカーは製品の質の低さで有名だ。

 金融資本が政府に取り入り、大規模な資産剥奪を促進している。製造工場は倒産に追い込まれ、市場価格以下で民営化されている。明らかに、これらはグローバル資本の強い要請によって我が国で実施されているIMFの処方箋だ。IMFはイランのような国に対し、石油だけを生産する政策を規定している。石油以外はすべて輸入しなければならない。

 私たちの提案は、製造業の再建・刷新・近代化、富裕層とその所得に対する税金の体系的な引き上げ、イラン国内で生産されている商品や生産できる商品の輸入禁止だ。

Q:労働者はどのように問題に対処しているのか。

MG:労働者は、自分たちの働く産業が製品を売って賃金を支払うことができず、日ごとに労働者の購買力が低下している中で、抗議の声を上げている。当局に手紙を書いたり抗議したりしており、最終的には、自分たちの意見を主張するためにストや生産停止に訴えるしかない。金融資本は抗議行動に弱い。憲法第27条は労働者の抗議行動を認めているが、警察や治安部隊はあらゆる抗議行動を妨害している。

 ここ何年か、ILO第98号条約と第87号条約が完全に無視されており、労働組合は厳しい制約を課せられている。フージスターン州の司法省事務所は4カ月前から、訴訟によって労働者の抗議行動を阻止しようとしている。

 現在、数人の労働運動家と教員が投獄されている。テヘラン・郊外バス会社労組(Sherkat-e Vahed)のダビッド・ラザビ執行委員とエブラヒム・マダディ会長は、民事裁判所ではなく革命裁判所に召喚された。革命裁判所は扇動を裁くために利用される。

 チャドルマル鉄鋼山の労働者代表も革命裁判所で裁かれ、イスファハンのポリアクリル労働者数人が有罪判決を受けた。カトゥーン・アバド銅山の労働者代表28人が逮捕されたが、関連組合とインダストリオール・グローバルユニオンが抗議した結果、全員が保釈された。

Q:イランは核プログラムをめぐる交渉後、共同包括的行動計画(JCPOA)に同意した。多くの人々が、制裁解除で経済情勢が改善することを望んでいる。あなたの意見は?

MG:制裁解除が積極的な成果であることに疑問の余地はない。しかし問題は、それをどう利用するかだ。輸入と工場閉鎖を続けるのか。抗議している労働者は世界中に1人もいない。労働者が制裁解除に満足していることは間違いない。だが、政府の経済政策が変わらない限り、何も変化しないだろう。

 JCPOAは外国投資をもたらす。役に立つ技術の輸入に反対する者はいない。ちゃんとした計画に基づいて適切な産業を導入すれば開発・発展が進み、労働者の技術知識が向上し、雇用も増える。これは組合にとって好ましいことであり、組合員数が増えて交渉力が高まるだろう。産業開発は経済成長を促進し、良質な雇用の創出と賃上げを後押しする。ところが権力者の中には、国の開発は自分にとって何の利益にもならないと考えている者がいる。

Q:JCPOA成立後、イランと西側諸国、特にアメリカやEUとの関係が友好的な段階に入ると期待できるか。その状況は長く続くだろうか。

MG:現在、イランと隣接する3カ国が戦争をしている。すなわち、アフガニスタン、イラク、そして今度はトルコがシリアの戦争に巻き込まれた。イランを別の戦争に引き込もうとする試みがなされて久しい。イランの過激派はアメリカとの衝突を意に介さず、グローバル資本の構成分子は地域の地政学地図を塗り替えるためにイランを戦争に引き込もうとしており、リビアやイラクに対してしたのと同じことをイランにもしている。

 この策略に理性的に対抗する必要がある。イランの労働者は外交政策の緊張の高まりに反対し、異議を唱えている。これは問題の一面だ。しかし、もう1つの面は、私たちは自国の平和を維持するだけでなく、他国にも戦争をさせないようにしなければならないことだ。サウジアラビアとの関係を悪化させてはならない。私たちは、この地域で中国とロシアの同盟国であるなら、ロシアによるトルコへの対応から自制を学ばなければならない。

 協定の締結とその協定の実施は別物だ。協定の相手方に、あらゆる義務をうまく履行させなければならない。石油会社との契約は透明でなければならない。プジョーが制裁解除後に欧米企業として初めてイランと契約を結んだとき、この契約は侮辱的なものであり、国益に反するという噂が流れた。フランスやアメリカを非難するのではなく、しっかりした交渉戦略を立てなければならない。イランが支配権の大部分をロシアに譲渡した1828年のトルコマーンチャーイ条約のように、植民地主義的な取引を強制されてはならない

 金融資本は混乱に乗じて国有財産を接収できるので、戦争や混乱を支持し、そのような状況をもたらすために画策している。私の意見では、我が国のマフィアのような資本主義は、私たちの主権と繁栄に配慮しない外国資本と協力し連携している。

Q:JCPOA合意後、イラン政府が数百億ドル分の接収資産を取り戻し、この資金で経済を救済するという噂がある。UMMIは、近年経営難に陥っていた生産工場が稼働を開始し、それによって労働者の状況が改善されることを期待しているのか。

MG:ロウハニ大統領は、基幹産業の現状に取り組むことが優先課題だと述べている。私たちは、政府がこの資金を製造・生産工場に投資し、景気を刺激して労働者の暮らしを改善することを願っている。

 私たちは数カ月前に発行した声明で、現下の危機から脱却するための計画を概説した。関連産業を復活・再生させて最新技術を適用するために全力を尽くさなければならない。

 オイル・ダラーを使って技術を輸入すべきだ。イランで生産されている商品や製品の輸入を禁止しなければならない。地域全体と中東のニーズを満たすことができるハフト・タッペー・サトウキビ工場のような産業を再活性化させなければならない。ロシアは現在、この工場の製品を何としても必要としている。5万人以上を直接雇用することができ、その結果、10万人以上が間接的に雇用されるだろう。

 鉄鋼部門では自給自足を達成し、アフガニスタンやイラク、トルコ、アラブ諸国のような市場の支配権を得ることができる。イランはアジアとヨーロッパの交差路という戦略的な地域にあり、鉄道・道路輸送への投資によって素晴らしい国際輸送ルートを提供することができる。石油化学産業を拡大して、世界中の国々を我が国の石油化学派生物や石油化学製品に依存させることができる。これは言うまでもなく石油・ガスにも当てはまる。

Q:労働組合、特にUMMIは、イランへの外国人投資家の流入についてどう考えているか。

MG:政府が金融資本に譲歩し続ければ、私たちは外国投資の利益を得ないだろう。IMF(国際通貨基金)はイランに対し、外国人投資家に規制されない低コスト労働力を提供するよう求めている。1997年のハタミ政権以降、イラン政府はその要求に応えており、労働法が適用されない特別貿易通商区域を設立している。

 政府は第6次開発計画で、賃金や退職・医療・失業給付の法的規制撤廃を目指している。これは外国人投資家に「イランに来て労働者を好きなようにしてください」と言っているようなものだ。

 外国投資の流入は我が国への最新技術の輸入につながるのか、それとも、私たちはナットとボルトを締め続けるだけなのか。ブラジルと中国の例がある。両国は自国への外国投資を利用し、雇用を創出して失業を減少させるとともに、計画どおりの開発と成長を達成することができた。イランもそうなるだろうか。成り行きを見守らなければならない。

Q:来年の最低賃金は労働者にとって最も重要な問題だ。最低賃金の増額についてどう思うか、使用者や当局はそれにどう対処しているだろうか。

MG:憲法と労働法によると、最低賃金はイランの勤労者世帯が快適に暮らすために必要な金額だ。憲法第43条と労働法第41条は、これを明確に規定している。現在、労働者の賃金は貧困水準の4分の1だ。こんなことが憲法に定められているだろうか。さらに、狡猾な使用者は今年のインフレ率だけに基づいて翌年の賃金を決めており、これは明らかに略奪だ。

 ラグファー教授のような経済学者によると、貧困水準は1カ月当たり300万トーマーン(約1,000米ドル)だ。憲法を守りたければ、最低賃金の基準をこの金額よりも上に設定しなければならない。小さい店には労働者にこれだけの金額を支払う余裕があるだろうか。交渉にあたっては通常、相手にどれだけの金額を支払う余裕や能力があるか考慮したうえで案を提示している。

 ロウハニ氏が大統領に就任し、法律と規則に従って労働者に対応すると約束してから、特に賃金に関しては何の措置も講じられていない。先ほどお話のあったドル資金についてだが、その一部を労働者の賃金に回すべきではないだろうか。

 ロウハニ氏就任初年度、最低賃金は間違って12%少なめに計算された。昨年の最低賃金増額は予想を17%下回り、労働者に対する脅しもあった。昨年承認された月4万トーマーン(約13米ドル)の住宅手当は無視され、支払いが承認されなかった。

 政府によると、インフレ率は今年12%で、来年は10%か9%になる。政府はこの率を巧みに計算し、それに応じて労働者に賃金を支払って、うそつき呼ばわりされないようにしている。最低賃金を60%引き上げるべきだ。

 労働者代表が交渉の場に行って、交渉後に労働者に経緯を伝えれば、政府が労働者と世論を恐れて、この増額にほぼ同意することは間違いない。

 政府が労働組合に対する制約を撤廃し、憲法第26条と労働組合の自由に関するILO条約の規定に従って行動すれば、労働者の交渉力は間違いなく強まり、賃金問題が解決するだろう。

 組合が関与すれば、賃金が実質水準で設定されるとともに、児童労働の問題が解決され、安全な労働環境の提供によって職場における労働者の死亡事故をなくすことができるだろう。労働組合は自己の利益だけを考えているのではなく、すべての人々の利益と国益を考慮している。

 政府は、現下の危機から脱却したければ市民社会の助けを借りるしかないことを認めなければならない。資本主義的アプローチから国民重視のアプローチに切り換え、国家的努力を払うことによって、問題を克服することができる。政治と経済の安定を達成するには、国民、特に独立労働組合の助けが必要だ。

Q:インダストリオール・グローバルユニオンが現在まで貴組合に提供している連帯についてどう思うか。今後の期待や希望を話してほしい。

MG:まず、インダストリオールと世界の労働組合運動に対し、ここ数年の厳しい状況の中でイランの労働者に連帯を表明してくれたことを感謝しなければならない。闘争中の労働者の要求に基づいて積極的・効果的かつ迅速に連帯を示すことは、労働者の国際連帯の最も重要な表明の1つだと思う。

 インダストリオールのような組合組織がイランの大統領や閣僚に書簡やメッセージを送り、労働組合活動家への圧力に抗議したり、国家機関によるILO条約や人権憲章の侵害に異議を申し立てたりすることは、イランの労働者を代表して公正を求める実践的で効果的な方法だ。実際、インダストリオールの支援はカトゥーン・アバド銅山労働者の釈放に役立った。

 当組合の同志はイランの大統領に書簡を送り、労働組合活動家の逮捕や虐待、人権侵害、拘留に抗議し、行政府の長としてこのような事件に介入するよう求めることができる。国内外の組合組織は外国訪問中の大統領や閣僚との会談を設定し、イランの労働者を代表して労働者のために公正や権利を要求することができる。

 我が国の労働情勢に関するニュースや見解を発表することにより、私たちの闘争に世論の支持を取りつけることができる。国際労働組合組織は、ILO条約に従って私たちイランの労働者を扱うよう、イランの労働大臣に直接要求したり、労働組合活動家の拘留や違法解雇に抗議したりすることができ、直接の支援あるいはILOへの提訴によって労働者を擁護できる。

 労働組合には、苦境の際にだけ労働者のことを考えるのではなく、日ごろから絶えず接触し、経験を交換したり学び合ったりし、お互いの問題を知っておいてほしい。私たちは労働者の話を聞き、労働者が直面している課題について知りたいと思っている。

 最後に、イラン金属・機械労組を代表して世界中のすべての労働運動家に挨拶し、彼らと一緒にこう言いたい――世界中の労働者の連帯がさらに広がりますように!

 

 

ヨーロッパの組合、スト権求めて闘争

2016-02-23

 ILOで何とか使用者によるスト権攻撃をかわした直後に、イギリスとスペインの労働組合は闘争開始を余儀なくされている。そして、この闘いは他国にも広まる可能性がある。

 スト権は数十年前から政労使三者に広く受け入れられてきた。それにもかかわらず使用者グループは、この権利は国際法で定められていないと主張し、3年間にわたって国際労働機関(ILO)の活動を停滞させた。労働組合のグローバル・キャンペーン実施後、使用者側は2015年2月、ついに譲歩した。

 しかし、闘いは終わっていない。イギリスの保守政権は2015年11月、スト権を著しく弱体化させる労働組合法案を提出した。この法案はピケと抗議を制限するだけでなく、スト中に正社員の代わりに派遣労働者を利用できるようにする。公共部門では、組合員の50%が投票し、全組合員の40%が賛成票を投じなければならない。最低承認基準は80%ということになる。

 イギリスの労働組合は、2月に革新的な#heartunionsキャンペーンで数百万人と接触し、労働組合と組合員が職場や社会で実施した積極的な活動を称賛するとともに、労働組合や組合員にダメージを与えようとする政府の試みをはねつけた。

 スペインでも、当局がフランコ独裁時代の旧法を利用してスト参加労働者を起訴したため、労働組合は行動を起こさなければならなかった。スペインの裁判所は2月16日、2010年に平和的なストに参加したことを理由に、それぞれ禁固8年3カ月を求刑されていたエアバス労働者8人に無罪判決を言い渡した。しかし、スペインの刑法第315.3条を廃止し、他の同様の訴訟を取り下げさせるために闘いが続いている。

 スト権に対する攻撃は他国に広まる可能性があるため、引き続き警戒しなければならない。

 すでにいくつかの右翼政権が、世界経済危機を口実に労働者の権利や社会的保護を削減している。ルーマニアでは、2011年に国際通貨基金(IMF)が同国政府に対し、議会を通さずに不安定雇用を拡大するとともに、団体交渉を廃止し、スト権を制限するよう圧力をかけ、かつてない規模で権利が大幅に削減された。

 アイルランド、ポルトガル、スペイン、ギリシャ、キプロスでも、最悪の危機を受けて団体交渉が禁止された。アイルランド政府とスペイン政府は現在、交渉制度の再建に同意している。

 これらの例は、労働組合運動発祥の地であるヨーロッパにおいてさえ、労働組合権が自明の権利ではないことを示している。労働者の権利に対する攻撃は明らかにイデオロギー的なものであり、国民よりもビジネス・アドバイザーの声に耳を傾ける政府が実施している。そして企業は往々にして、厄介な交渉に入ろうとせず、黙って言われたとおりにする従順な労働者を確保しようとしている。

 労働組合権の保障は常に、民主主義と社会的公正に基づく社会を構築するための価値観と政治的意思をめぐる闘いになる。その闘いのために、組合の力の強化に向けて引き続き労働者を組織化し、動員する必要がある。

インダストリオール・グローバルユニオン書記長  ユルキ・ライナ

 

インダストリオール、IOCで日産に抗議

2016-02-22

 

インダストリオールは2月22日、ローザンヌの国際オリンピック委員会前で日産に抗議するデモを実施

インダストリオールは2月22日、ローザンヌの国際オリンピック委員会前で日産に抗議するデモを実施

インダストリオールのユルキ・ライナ書記長(中央)とモニカ・ケンペール書記次長(右)

インダストリオールのユルキ・ライナ書記長(中央)とモニカ・ケンペール書記次長(右)

インダストリオール・グローバルユニオンは今日、スイス・ローザンヌの国際オリンピック委員会(IOC)でピケを張り、日産の2016年リオ五輪スポンサーシップに抗議した。

 日産は6,000人が働く米国ミシシッピ州カントン工場での攻撃的な組合差別によって、リオ・オリンピック・パラリンピックのスポンサー・ガイドラインに違反している。同工場の労働者は、インダストリオール加盟組織の全米自動車労組とともに組織化に取り組んでいる。
 インダストリオールはIOCに介入を求め、2016年リオ・オリンピック委員会に対し、日産にカントン工場で是正措置計画を立てさせるよう促している。またIOCに、日産がリオ五輪に求められる社会的責任を果たそうとしない場合、同社をスポンサーから外すことも要求している。
 日産のカルロス・ゴーンCEOは、先週フランス議会で組合差別について質問され、「同社が活動している世界各国で労働者は自由に労働組合に加入できる」と主張した。

抗議のスピーチをするライナ書記長

国際オリンピック委員会(IOC)前で抗議のスピーチをするライナ書記長(スイス・ローザンヌ)

 ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は、ローザンヌのIOC事務所前でのスピーチで、ゴーンCEOのフランス議会での主張に異議を唱え、次のように述べた。
「さて、ゴーンさん、私はミシシッピ州の日産カントン工場に行ってきたが、労働者の話はずいぶんゴーンさんの主張とは違っていた。労働者は威嚇され、組合を選んだら解雇するとか、工場閉鎖の脅しまで受けているという。結社の自由が確保されておらず、オリンピックのルールに反している。だから日産はオリンピックのスポンサーに適していない。日産が今すぐ行いを改めることを要求する。さもなければ、日産のオリンピック関与を阻止しなければならない」と。

IOCの責任者に抗議文を手渡すライナ書記長(右)

IOCの責任者に抗議文を手渡すライナ書記長(右)

 ユルキ・ライナとインダストリオール代表団はIOCのマーケティング・コミュニケーション責任者ベン・シーリーと会談、インダストリオールの懸念を表明する書簡をトーマス・バッハIOC会長に渡すとの約束を取り付けた。
 2月18日にブラジルで約200人の労働組合員がデモ行進したあと、連帯行動が行われた。労働組合指導者は、本年8月開幕予定の2016年リオ・オリンピックの主催者に、カントンにおける日産の行為に対する抗議文を手渡した。

 

ブラジルで労働3団体など対話とデモで日産労働者の要求を主張

2016-02-22

アメリカにおける日産の反労働組合的慣行を糾弾、社会的責任を果たすよう要求する数百人のブラジル労働組合員のデモ(2月18日、バラダチジュカ)

アメリカにおける日産の反労働組合的慣行を糾弾、社会的責任を果たすよう要求する数百人のブラジル労働組合員のデモ(2月18日、バラダチジュカ)

プラカードや横断幕を掲げ。アメリカにおける日産の反労働組合的慣行を糾弾する組合員たち(2月18日、リオデジャネイロ)

プラカードや横断幕を掲げ。アメリカにおける日産の反労働組合的慣行を糾弾する組合員たち(2月18日、リオデジャネイロ)

 ブラジルのナショナルセンター3団体は、対話とデモを併用して日産労働者の要求を主張している。デモを組織するとともに、リオデジャネイロで開催される2016年オリンピック・パラリンピックの組織委員会と会談。日産に公式スポンサーシップ契約の条件を守らせ、同社のサプライチェーンにおける人権侵害をやめさせるよう要求した。
 CUT、「労働組合の力」、UGT、全米自動車労組(UAW)およびインダストリオール・グローバルユニオンに加盟する組織の組合員数百人が、2月18日にリオデジャネイロのバラダチジュカで開かれた2016年組織委員会の会合でデモを行った。プラカードや横断幕を掲げ、アメリカにおける日産の反労働組合的慣行を糾弾し、社会的責任を持って行動するよう同社に要求した。
nissan_fotografo_4 「力を合わせれば、この多国籍企業に圧力をかけて米国ミシシッピ州で労働者を尊重させることができる。日産が反労働組合的慣行をやめなければオリンピックで同社を糾弾する」とインダストリオール・グローバルユニオンに加盟しているCNTM-「労働組合の力」のミゲル・トーレス会長は述べた。
 やはりインダストリオール加盟組織であるCNM/CUTのエドソン・ロチャ総務・財政担当書記は、同労組が以前アメリカで日産の行動を非難したことに触れ、「日産が労働者の団結権を尊重するまで、UAWの同僚と連帯して行動を続ける」と語った。
 デモの間、約20人の組合代表が組織委員会の制度関係委員を務めるアジェマル・サンクトス大使と会談、「日産労働者に対する威嚇は、2016年リオデジャネイロ五輪スポンサー向けの持続可能なサプライチェーン・ガイドに定める原則に反する」と訴える書簡を手渡した。
http://www.industriall-union.org/nissan-not-fit-to-be-an-olympic-sponsor)。
 大使はこの書簡に前向きな反応を示し、もう一度会合を設定することに同意、来週その日程を確認することになった。サンクトス大使は、日産経営陣に話をして組合による苦情への対応を求めることにも同意した。
 「この会合は非常に生産的だったが、組合側の意見を主張するために再度デモを行う用意がある。そして、必要があればデモを実施する」と、ブラジルで日産ディーラーの80%以上を組織化しているUGTのリカルド・パタ会長は述べた。
組合側はミゲル・ロセット労働大臣にも書簡を送ることにしており、委員会が是正措置計画を提示し、日産に直ちに実施させることを望んでいる。
 インダストリオール・ラテンアメリカ・カリブ海地域事務所のマリーノ・バニ副所長が書簡を手渡した代表団に加わり、デモにも参加した。同副所長は次のように述べた。
「私たちはオリンピックやオリンピック委員会に抗議しているわけではないし、日産に対してさえ抗議しているわけではない。労働者には例えば団結して交渉する基本的権利がある、と私たちは信じている。オリンピック最大のスポンサーに労働者の尊重を求める」
「アメリカの日産労働者との連帯は、同社にUAWと交渉させ、労働者が自由に団結できるようにすることを目指している。グローバル・ユニオンとして労働者を守り、このオリンピックが友愛に基づく公正でクリーンな大会になるようにすることは、インダストリオールの使命であり義務だ。サプライチェーンで反労働組合的慣行を続けている企業が製造した車に、オリンピックの聖火を運ばせることはできない」
「オリンピック開幕前に対話を開始し、進むべき道を見つけてアメリカの日産労使が和解できるよう願っている。同社が組合による組織化を認め、労働者の権利を尊重し、オリンピックの聖火が象徴する平和と尊重の精神の模範を示すことを望む」と。

 

スペインでエアバス8に無罪判決

2016-02-18

 

無罪判決後に記者会見を開いたエアバス8

無罪判決後に記者会見を開いたエアバス8

スペインの裁判所は2月16日の判決で、2010年に平和的なストに参加したことを理由に、それぞれ禁固8年3カ月を求刑されていたエアバス労働者8人に無罪判決を言い渡した。

 8人の労働者はインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織のCC.OOデ・インダストリアとMCA-UGTの組合員で、数百人の労働者とともに2010年9月のゼネストに参加し、緊縮政策とスペイン労働法改正に抗議したあと起訴された。

 8人は「暴力行為を働き」、「労働権を攻撃」した容疑を一貫して否認しており、2月12日に結審した裁判で「エアバス8」に無罪判決が言い渡された。

「今日は民主主義にとって素晴らしい日だ」とエアバス従業員代表委員会委員長で起訴された労働組合員の1人であるホセ・アルカサルは述べた。「これは8人にとってのみならず、我が国の労働運動全体にとっても重要な判決だ」

 8人の労働者、トマス・ガルシア、エンリケ・ギル、ロドルフォ・マロ、ホセ・アルカサル、ラウル・フェルナンデス、アルマンド・バルコ、ヘロニモ・マルティン、エドガル・マルティンは全員、ピケを張った労働組合員への懲役刑を認めているスペイン刑法第315.3条に基づいて起訴されている。

 この法律はフランコ政権時代にさかのぼり、労働組合ならびに労働運動によるスト権に対する攻撃とみなされている。

 スペインの労働組合は国際労働運動の支援を受けて、この起訴に強く抗議した。2月9日、インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパの代表を含む数千人がマドリードの街頭を行進し、裁判に抗議した。

「これはスペインの組合と、基本的権利を行使していた労働者にとっての勝利だ」とユルキ・ライナ・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は言う。「しかし、他の同様の裁判における起訴の取り下げと、スト権を刑事罰の対象としている第315.3条の撤廃を求めて、引き続き加盟組織を支援していく」