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第56回協議委員会・西原議長挨拶(要旨)

2013年12月12日

金属労協・第56回協議委員会・議長挨拶要旨

「人への投資」は「未来の投資」

デフレ脱却、経済成長を確実にするためには

働く者全体の賃金・労働条件の改善が不可欠

JC共闘を強化し金属労協全体で交渉結果の社会的波及に努める

   金属労協議長 西原浩一郎 

1、        はじめに

 金属労協・JCM第56回協議委員会に参集の皆さん。大変ご苦労様です。

 なお本日はご来賓として、先の連合定期大会において、新たに事務局長に選出された基幹労連ご出身の神津連合事務局長にご出席いただきました。神津事務局長には後ほどご挨拶をいただきますが、引き続き会長に選出された電機連合ご出身の古賀連合会長ともども、選出結果としてナショナルセンター連合のかじ取りの重責を、金属部門出身のお二人が担うこととなりました。

 グローバル経済が加速し、少子高齢化が進み、非正規労働者の皆さんの雇用者全体に占める割合が40%に近づくなど我が国、労働運動を取り巻く状況には容易ならざるものがあります。特に昨年末の政権交代、および本年7月の参議院選挙により、国政において安倍自民党政権は与党として圧倒的に強力な立場を確保し、今や、あまりにも経営よりのスタンスに立った幅広い分野での雇用・労働に関る規制緩和、すなわち労働者保護ルールの改悪を進めようとしています。既に労働者派遣法等、労働政策審議会で審議が進められている案件もありますが、連合は、これらの動きに毅然と対峙し、社会的な共感を得るための運動展開により、全ての働く者を代表し、その責任と役割を果たすべき極めて重大な局面にあります。

 連合2014年春季生活闘争も含め、ある意味、労働運動全体が正念場にあるとの自覚をもって、金属労協全体として、連合運動をしっかりと支えていかなければなりません。古賀会長、神津事務局長の、連合の掲げる目指すべき社会像である「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けたご奮闘を心から祈念するとともに、連合の幅広い領域での活動展開にあたり、金属労協加盟の5産別が、連合を支え、その役割をしっかり果たすとの決意を表明したいと思います。

2、        国際窓口機能の一本化に向けて

 さて本日の協議委員会は、金属労協の2014年闘争方針を決定する場となります。したがって議長挨拶は闘争関係に絞って所見を述べたいと思いますが、冒頭、一点、金属労協が加盟する国際産業別組織インダストリオールとの関係で、同じ日本加盟組織である化学・エネルギー関係のインダストリオールJAFさん、および繊維産業のUAゼンセンさんとの連携強化に向けた動きに関し報告したいと思います。

 IMF・国際金属労連とICEM・国際化学エネルギー鉱山一般労連、ITGLWF・国際繊維被服皮革労働組合同盟の3組織統合によるインダストリオール結成から約1年半が経ちました。インダストリオールは、結成以降の次期大会までの4年間を移行期間と位置付け、結成大会で確認したアクションプログラムに沿って活動を展開するとともに、組織体制や活動基盤の整備・強化を進めています。当然、各国で国内における旧3組織の統合・連携強化が強く求められており、各国毎に検討が進みつつあります。アジアでも既にインドネシア・タイ・バングラデシュが旧3組織による協議会設置に至っており、他の国においても組織体制も含めた連携強化が加速しています。協議会といっても、活動面での機能統合は順次進めるというのが大方の実態ですが、このような状況を踏まえれば日本加盟組織として、一歩踏み込んで検討を進めるべきと判断し、先月、日本の加盟3組織の代表者・事務局長レベルでの率直な意見交換を行いました。

 本件は、運動・活動面での機能統合を展望するということになれば、金属労協の将来的なあり方に直結する重大な問題となります。特に金属労協は、国内活動を基盤とした国際活動の強化という方針で、国内外の諸活動を一体的に進めており、例えば国際機能のみを切り分けて3組織の統合を進めることさえも容易ではなく、その検討は金属労協にとり、本質的な協議会のあり方そのものの検討に直結します。したがって結論的に申し上げれば、3組織の間で、まずは国際窓口機能の統一化を目指す方向で、検討を加速することで認識の共有化を図りました。国際活動を中心とする連携強化と活動の効率化を、これまで同様、進めるとともに、窓口機能の統一自体、様々な課題・手法が想定されることから、金属労協の機関会議に諮りながら、検討を進めてまいります。議長としては明年5月にタイでの開催が予定されているインダストリオール・アジア太平洋地域大会で、日本としての一定の方向性を表明できればと考えています。

 3、        2014年闘争の取り組みの意義

 さて本日の主要議題の2014年闘争については、後ほど若松事務局長より取り組み情勢および具体的方針について提案いたしますが、ここで今次闘争の基本認識および取り組みの意義を中心に何点か触れたいと思います。

検討経過

 はじめに検討経過について申し上げれば、まずは9月に開催された金属労協定期大会での議長挨拶において、議長の立場から、「2014年闘争においては、金属労協加盟産別が足並みを揃え整斉と、賃金改善を行う方向で積極的な検討を進めていただく」ことを呼びかけました。 これは、2014年闘争の検討のスタートにあたり、経済・産業状況が全体として好転しつつあり、金融緩和の効果もあって、これまでの長期にわたるデフレからの脱却の兆しが表れつつある中、金属労協全体がその主体的な意思に基づき、賃金決定への一定の社会的波及力を自覚し、よりマクロの視点および社会的役割発揮の観点から、賃上げ、すなわち月例賃金の明確な引き上げに向け全加盟産別がベクトルを合わせて検討を進めるべき状況にあるとの思いがありました。以降、各産別には、この呼びかけを前向きに受け止めていただき、産別内の論議・検討を精力的に進めていただくとともに、金属労協の諸会議での論議・集約として、全加盟産別の闘争に向けた認識の共有化が図られ、本日の闘争方針案の提起に至ったわけであります。

2014年闘争の取り組みの意義

 2014年闘争のポイントについて何点か申し上げます。

①「人への投資」の重要性を前面に掲げる闘争に

 1点目は、基本認識として、日本経済は正念場を迎えており、賃金・労働条件の向上による家計の改善を通してGDPの6割を占める個人消費を活性化し、デフレ脱却と民間主導の内外需のバランスのとれた自律的な経済成長を確実にすることが求められているということです。

 金属労協は2014年闘争において賃金・労働条件への適正配分が、個人消費の喚起につながり、それが生産・投資の拡大を通して所得の向上と雇用の維持・創出を生み出す好循環を重視するとともに、引き続き闘争の基調として「人への投資」の重要性を前面に掲げることといたします。産業・企業の将来展望を切り拓く原動力であり、国際競争力の礎となる国内事業基盤の維持・強化を支える「人への投資」は働く者のモチベーション向上と能力発揮、人材確保に寄与し、企業の持続的発展への好循環の起点となる意味において、今日、最優先の投資項目であるべきと考えます。特に金属産業では大震災以降の復旧・復興過程でも証明された働く者の献身的努力とモラルの高さ、チームワーク、自律的な判断力、創意工夫・改善力、継承すべき技能・技術の質、これらを守る意味からも「人への投資」は、「未来への投資」と考えます。

②月例賃金の引き上げを最重点において取り組む闘争に

 2点目は、2014年闘争では賃上げ、すなわち月例賃金の引き上げを最重点において取り組むことといたします。

 なお要求水準は連合方針を踏まえ賃金構造維持分を確保した上で、JC共闘全体で1%以上の賃上げに取り組むことを基本とし、中堅・中小をはじめ産業間・産業内の賃金格差是正および水準是正・復元に取り組む組合には、賃金実態を踏まえた問題認識に基づき、より積極的な方針で取り組みを進めていただきたいと思います。なお2013年度の生鮮食品を除く消費者物価上昇率が、10月の日銀の予測で0.7%、11月の民間調査機関40社平均で0.61%となるなど物価上昇局面に入りつつある中、組合員の暮らしを守る観点で、実質生活水準を維持するためには物価上昇分を確実に補うことが重要です。加えて税・社会保険料負担の増も含めた実質可処分所得低下への影響にも留意しつつ、生産性に相応しい生活向上分への反映等を総合的に考慮すべきと考えます。

 また要求根拠への物価の取り扱いは、運動の継続性の観点から過年度物価上昇率としましたが、来年4月の8%への消費税引き上げにより2014年度の物価上昇率は、相当大幅な上昇が想定されます。このことは2014年闘争の取り組み経過と結果が、次の闘争に大きな影響を与えることを意味しており、交渉における労組の主張として、実質生活水準確保の考え方、物価の取り扱いも含めた要求根拠について、労組の主張を経営側に認識してもらわなければならないし、何としても来春の闘争でしっかり交渉結果を引き出さなければならないと考えます。

 ③デフレ脱却と経済成長を確実にするために働く者全体の賃金・労働条件の改善が不可欠

 3点目として、デフレ脱却と経済成長を確実なものとするためには未組織労働者・非正規労働者を含めた働く者全体の賃金・労働条件の改善が不可欠です。金属労協として闘争上の位置づけを大きく高め、必要な取り組みを積極的に進めることといたします。金属労協全体で、交渉結果の社会的波及に努め、連合の進める労働者派遣法をはじめ関係する政策・制度の取り組みに積極的に参加することはもとより、未組織労働者・非正規労働者の賃金底上げも含めた処遇改善に向け検討を進め、産別・労組の要求方針の中で明確に位置づけ、ワークルールの徹底・改善をはじめ、可能な取り組みを強力に展開してもらいたいと思います。

 加えて働く者全体の賃金の底上げに向けては、零細・中小企業に働く者の賃金・労働条件の引き上げも不可欠であり、それを確保するためにも産別・大手企業労組には、金属産業・企業全体のサプライチェーンの中でその基盤として競争力の源になっている中小企業・関連企業等に働く者へ焦点をあてた協議を通して、産業・グループ内の付加価値の公正配分の観点からの、公正取引の確立と実効性の確保、特に4月以降の各取引段階での消費税引き上げ分の適正な価格反映への取り組みを進めてもらいたいと思います。

 なおJCミニマム運動における最低賃金の重要性を強調しておきたいと思います。金属労協は2014年闘争で、1%以上の賃上げを基本に取り組むことを踏まえ、企業内最低賃金の水準を月額156000円以上、もしくは2000円以上の引き上げを目指します。同時に現在4割程度に留まる締結率の締結拡大に積極的に取り組みます。企業内最低賃金の締結拡大と水準の引き上げは、金属産業が8割を占める特定最低賃金の引き上げにつながるものです。特定最低賃金は、同じ産業で働く未組織労働者・非正規労働者を含めた労働者全体に適用されることから、労働組合の社会的責任として、労使が協定した企業内最低賃金を特定最低賃金に波及させることは、賃金の底上げ、および正規労働者と非正規労働者の均等・均衡待遇に寄与します。本年度も、産別本部・労組・地域の連携の下で金額改正に取り組み、150件を超える最低賃金のほとんどにおいて、昨年を上回る引き上げを行うことができました。特に最前線で頑張っていただいた各都道府県の最賃委員の皆さんの奮闘に敬意を表します。

 しかしながら産別・労働側最賃委員の大変な努力にも関らず、東京都と神奈川県では、地域別最賃との逆転現象が起きている特定最低賃金において、「必要性ありに至らず」との結果となり、金額改正を行うことができませんでした。必要性審議のメンバーである使用者側代表が、当該労使の意思を尊重することなく、また客観的な賃金データに基づく審議に応じようとせず、制度廃止ありきで対応したことは、制度の趣旨である関係労使のイ二シアティブの重視を踏みにじるものであり、容認できるものではありません。使用者側代表には、自らの主張に正当性と合理性があるのか今一度、深く考えてもらいたいし、同時に未組織労働者・非正規労働者の賃金の底上げなくして、デフレ脱却は困難であるとの事実に向き合い、大局的な判断を行うことを強く求めます。

④ワーク・ライフ・バランスの実現は重要な取り組みとして着実に前進を

 4点目として、ワーク・ライフ・バランスの実現について触れたいと思います。ワーク・ライフ・バランスの実現は、男女を問わず働き方の満足度を高め、生産性向上に寄与するものであり、働くことの持続可能性を高めるための重要な取り組みとして着実な前進を図る必要があります。なお昨年の正社員の年休取得率が前年比2.2ポイント低下し47.1%にとどまり、年間総実労働時間もフルタイムの一般労働者は2030時間に達するなどの状況を踏まえ、総労働時間短縮に向けての制度面の充実や職場の意識・風土の改革についても留意していただきたいと思います。なおワーク・ライフ・バランスについては仕事と家庭の両立支援を含め、特に男性と比べ大きなハンディを負っている働く女性に焦点をあてた取り組みを進める必要があり、2014年闘争も含め男女共同参画推進の観点からも金属労協として引き続き、力を入れていかなければなりません。

⑤ 賃上げ・労働条件の決定はあくまで団体交渉を通じて労使自治で労使が責任をもって結果を出すこと

 最後に、政府は今春の2013年闘争過程も含め、また「経済の好循環実現に向けた政労使会議」をはじめ多くの場を通じて経済界に対し賃上げを強く要請し、経済界・経営者からも前向きな対応を示唆する発言が続いています。確かに経営側の姿勢に大きな変化が見られるのは事実ですが、しかしながら月例賃金の引き上げ、ましてやその要求水準との関係においても何か一定の労使の認識上の合意があって、容易に我われの目標が達成されるとは到底思えません。賃上げをはじめ基本的労働条件の決定は、あくまでも団体交渉を通じて決せられるわけであり、労使自治の中で労使が責任を持って、結果を出さなければなりません。我われが交渉体制を確立し職場の総意に基づく要求を提出し、経営はこの組合要求を真摯に受け止める。そして徹底した労使交渉を通じて職場の期待に応える結果を導き出すことは、これまでとなんら変わるものではありません。万が一、政府の主張と経営側の前向きな発言を追い風に交渉が優位に進むとの認識を我われが持てば、間違いなく、足元をすくわれます。

 今次春闘で労働組合として何としても結果を出さなければならないことから、我われは「JC共闘」を強化し、「連合共闘連絡会議」を前進させる方向で、徹底的に交渉を追い上げていかなければなりません。 なおJC集中回答日については、確認された連合の日程配置を踏まえ3月12日としたいと思います。正式には12月16日の第1回戦術委員会で確認します。

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