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インダストリオール・ニュース「ヘッドライン」第11号(2012年9月19~20日)

パキスタンで災害再発を防止する最善の手段は労働組合

2012-09-20

 インダストリオール・グローバルユニオンは、結社の自由と労働組合が職場事故の再発を防止する最善の方法だと主張している。パキスタンのアリ・エンタープライズ工場では、わずか数週間前に著名な監視団体の認証を受けていながら火災を防止できず、300人近い労働者が死亡、犠牲者の多くは出口に鍵がかかっていたために脱出できなかったことが明らかになった。

 2012年9月20日付の『ニューヨーク・タイムズ』の記事(http://www.nytimes.com/2012/09/20/world/asia/pakistan-factory-passed-inspection-before-fire.html)によると、業界から多額の資金供給を受けている著名な監視団体、社会的説明責任インターナショナルの検査官は先月、2回にわたってパキスタンの衣服工場を視察したが、わずか数週間後に工場が火災に襲われ、300人近くの労働者が死亡した。

 この記事はパキスタンの認証プロセスを分析し、多国籍の被服会社やエレクトロニクス企業が開発途上地域における低コスト・サプライヤーの利用を承認するために採用している工場監視システム全体に疑問を呈している。
 カラチのアリ・エンタープライズ工場に発行された有名なSA8000認証の一部であるはずの条件(安全衛生、最低賃金、児童労働禁止に関する規定など)の多くが尊重されていなかった。組合代表もおらず、労働者は非常口のない密室で働かされ、窓には鉄格子がはまっていた。
 この惨事のあと労働者に話を聞いたところ、認証プロセス中に工場内の状況について真実を語らないよう経営側から強く口止めされていたとのことだった。労働者は、結社の自由に対する権利をはじめ、基本的な権利を行使することができなかった。安全な労働環境の唯一の条件は、労働者が自由に選出された代表を通して自分たちの関心事を率直に表明できることである。

 ユルキ・ライナ・インダストリオール・グローバルユニオン書記長はパキスタン首相への書簡で、「日々工場で働く労働者が報告の手段を与えられず、報告にあたって使用者から保護されなければ、このような悲劇がどんな形にせよ再発する大きなリスクが常にある」と述べた。
 ライナは、遺族だけでなく登録・未登録を問わず工場労働者全員への補償を要求し、調査と労働者への補償の分配に労働組合を適切に関与させるよう強く主張している。
 ライナは次のように付け加えている。「140カ国5,000万人の産業労働者を代表するインダストリオール・グローバルユニオンは、パキスタン政府が安全と労働条件を改善するにあたって協力し、工業立地としての評判を取り戻せるよう手助けします」

 それに先立ってインダストリオールとLabourStart.orgは、パキスタンの繊維工場で安全を要求する抗議キャンペーンを開始した。このキャンペーンを支援するには下記リンクを参照:

http://www.labourstartcampaigns.net/show_campaign.cgi?c=1570

 

ロンミンで賃金交渉妥結も、南アフリカの鉱業部門で労働不安続く

2012-09-20

 ロンミン所有のマリカナ鉱山で6週間に及ぶストと流血の騒動が発生し、45人が死亡したあと、労働者は職場に復帰した。

 8月16日にスト中のロンミン鉱山労働者34人が警察に殺害されたあと、1カ月に及ぶ緊迫した交渉と持続的な労働争議を経て、賃金交渉が妥結を見た。月給1万2,500レアルの要求をストの主眼に掲げていた削岩工は、賃金が22%アップの1万1,078レアルになり、一時払いの復職ボーナスも受け取ることになった。

 この妥結は賃上げ要求の先例を作り、この部門で新しい賃金基準を設定する可能性があり、鉱業部門で労働不安の波及効果を広げることになるかもしれない。ゴールドフィールズ社のKDCウェスト事業では、すでに1万5,000人の金鉱労働者が、マリカナの労働者と同様の要求を掲げてストライキ中だ。アングロ・プラチナム社は労働不安の拡大を見越してルステンブルク事業を閉鎖し、9月18日に警察が鉱山の外で抗議行動参加者を追い払うために催涙ガスとゴム弾を使用した。インパラ・プラチナム社の労働者も、今回の妥結に刺激を受け、同様の要求を打ち出そうと騒動を起こしている。

 ストは終わっても、警察が暴力や不必要な武力を行使したことによる衝撃から、鉱業部門の変革が必要だという認識が高まっている。南アフリカ労働組合会議(COSATU)は、現在開催中の大会で次のように述べている。「8月16日の事件と打ち続く暴力で、搾取されている大衆が主な犠牲になっているが、この展開によって白金鉱業の主力企業から非難の焦点がそれていることが大いに懸念される。主力企業は組織ぐるみで団体交渉を弱体化させ、労働者の分断を助長し、唯一の稼ぎ手を奪われてしまった労働者世帯から陰湿な形で利益を吸い取っている」。COSATUの声明全文を読むには、ここをクリック。

 不安の根本的原因として広く取り上げられている鉱山労働者の労働・生活条件に取り組むために、なすべきことがまだ山積している。鉱山社会と下請労働者の苦況にも注目が集まっている。そこでCOSATUは、鉱業労働者を取り巻く過去および現在の雇用・社会情勢を調査するために、第2回独立調査委員会を招集した。この第2回委員会は、ロンミンの事故を調査するためにジェイコブ・ズマ南アフリカ共和国大統領がすでに任命した司法委員会と並行して活動する。

 白金鉱業の集中交渉を確立する計画が進んでいるが、組合代表と団体交渉プロセスに対する労働者の信頼を取り戻す必要がある。COSATUは、全国鉱山労組(NUM)を擁護する姿勢を明確にしている。

「NUMは先頭に立って、この産業の根本的な変革を求めてきた。しかしNUMの努力は、主力企業による一方的行動や分派組合設立のやみくもな奨励、職場代表ポストをめぐる競争、一部地域における部族制の復活、労働仲介の禁止に対する政府の抵抗によって妨げられている。COSATUは、あらゆる集団や個人が自分勝手に、苦境に置かれた労働者をご都合主義で政治的に搾取したり、暴力を煽り立てたりする行為を、これまでにない強い口調で非難する」

 

労働組合が不安定労働撤廃を求めて行動

2012-09-20

 全世界の組合が不安定労働を撤廃するために結集している。インドネシア、モーリシャス、ハンガリー、スロバキア共和国、ドイツ、タイ、フィリピン、コロンビア、南アフリカなど、多くの国々の労働組合からインダストリオール・グローバルユニオンに、この流れに対抗して組合員を動員するためにどのような計画を立てているかについて報告が入っている。

 インドネシアのインダストリオール加盟組織は総連合3団体KSPI、KSBSIおよびKSPSIとともに、9月25日から10月15日にかけて、10月3日の大集会をはじめ、外部委託に反対する大規模な全国ストと低賃金反対闘争を実施する。

 モーリシャスでは、2009年2月に2本の新しい労働法が公布されてから、民間部門労働者の既得権が危機にさらされている。CMCTEUは10月7日(日)、上部団体のCTSPとともに集団デモを実施する予定で、労働者とその家族に参加を呼びかけている。

 ドイツでは、IGBCEが10月7日にベルリンで開催される1日間の会議で、総連合DGBが計画している行動に加わり、不安定労働との闘いや労働組合権の侵害をはじめとする諸問題に対する認識を高める。

 南アフリカ、コロンビア、タイ、フィリピンでは、他の活動と併せてさらに多くの行動が計画されており、これらについてはインダストリオール・ウェブサイトで報告する予定だ。スロバキアとハンガリーの組合は、10月7日前後にハンガリーの国境付近で不安定労働の問題に関する合同会合を開く計画を立てている。

 労働者と所属組合が不安定労働とのグローバルな闘いを支援するために10月7日前後に起こせる行動の形式に、制限はない。抗議デモ、セミナー、組合員の会合、記者会見、公開の会合、集会、職場行動、手紙書きキャンペーン、政府への代表団派遣といった行動を実施できるだろう。

press@industriall-union.orgにメールを送るか、不安定労働撤廃運動のウェブページを通して、インダストリオールと行動を共有してほしい。ツイッターでインダストリオールをフォローし、#STOPprecariousworkハッシュタグを使ってツイートしてくれれば、インダストリオールは皆さんの行動や写真をリツイートする。ここで各国語のポスターやリーフレットを入手できる。

 

フィジー政府がILOミッションを拒絶

2012-09-19

 昨年の逆行的な労働改革の影響を調査する国際労働機関(ILO)のハイレベル・ミッションは今日、フィジー政府から国外退去を命じられた。

 実情調査団はフランク・バイニマラマ暫定政権の事前同意を得て、9月16日(日)にフィジーに到着した。必要不可欠なサービスに関する法令によって、基本的労働権が大幅に削減された。この時代遅れの法律は指定産業において、すべての争議行為を事実上禁止し、既存の労働協約を無効にし、超過労働手当を制限し、賃金調整と特定の労働条件を取り消すもの。この法律は、徐々に拡大する組合・市民社会弾圧、主要労働組合指導者の逮捕、その他の法改正の一環として導入された。ここで過去記事を参照:http://www.industriall-union.org/goldminers-in-fiji-call-for-union-rights

 ILO代表団は月曜日に首都スバで労働組合との会合を開いたが、同じ日に予定されていた政府との会談は政権側によってキャンセルされた。代表団は今朝、直ちに作業を中止して今晩の香港行きの便で国外に去るよう求める命令書を受け取った

代表団を主導したのは、ILO条約勧告適用専門家委員会のメンバーである国際司法裁判所のアブドゥル・コロマ判事。その他のメンバーは、国際労働基準局のカレン・カーティス次長とクリスティン・バーダー担当官である。

インダストリオール・グローバルユニオンはフィジー労働組合会議(FTUC)とともに、ILOミッション追放決定を非難し、責任を持って行動するよう政権側に要求している。

 

スペインで緊縮政策に反対して組合主導の抗議行動

2012-09-19

9月15日、数十万人の集団デモが行われ、労働組合連合団体CCOOおよびUGTの各産業部会が主導する労働者も参加、2014年までに1,020億ユーロの社会的支出削減を目指すマリアノ・ラホイ政権の緊縮政策によるスペインの「破壊」を非難した。
 ラホイ率いる保守政党の民衆党(PP)は、主として医療、教育、福祉分野における過酷な削減と並行して、増税と大規模な銀行救済策を推し進めている。デモ参加者は「私たちの未来を守れ」と叫び、削減を続行すべきかどうかスペイン国民に問う国民投票を要求した。

 政府が最近実施した措置は、年収の7%に相当する公務員のクリスマス手当の削減だった。労働改革と超過労働手当の撤廃も、現在労使関係で力が弱まっている労働者に打撃を与えている。スペインではPPが権力を握って以来、ほぼ100万人の雇用が失われた。
 労働者は土曜日の午前にシベーレス広場に集まり、産業省があるコロン広場に向かって行進した。
 インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織3団体、すなわちCCOO、UGTおよびMCA-UGTが、CCOO建設労組とともに組合員を動員した。
 社会・政治グループ数百団体も支持者を呼び集め、デモ隊はそれぞれ異なる色の服を着て六手に分かれた。労働者は赤い服を着た。
 CCOOとUGTは、失業と生産性低下をもたらす欠陥のある経済危機対策であるサービス・社会権削減に対抗して、引き続き政治動員をかけることを共同で約束した。
 政府に対する要求は、真の産業政策を実施し、質の高い雇用を生み出す強力かつ多様で競争力のある産業を通して、スペイン経済を発展させられるようにすることである。