新着情報(「海外での健全な労使関係構築」労使セミナー)

第11回海外労使紛争防止セミナー(2012年11月30日)

2012年11月30日

インドネシアの労働事情及び労使関係の実態
などについて研鑽

金属労協加盟労使166名が参加

金属労協/JCMは、2012年11月30日午後1時半から、東京・全国家電会館で第11回「海外での健全な労使関係構築」労使セミナーを開催した。セミナーには金属労協加盟産別・単組・企業から労使166名が参加した。

今回は、国別事例としてインドネシアを取り上げ、減速するアジア経済の中で安定成長を続ける一方、労働組合による大規模なデモや、最低賃金や派遣労働などがクローズアップされている労使関係の状況について理解を深めた。

西原議長の挨拶の後、小尾吉弘氏(元インドネシアMM2100工業団地開発会社社長)から「インドネシアの経営環境」と題して講演を受けた。

続いて、岩井伸哉JCM国際局部長から「最近の海外労使紛争事例と海外労使関係、国際労働運動の動向」について、報告を行なった。このあと、全体の質疑応答・意見交換を平川秀行JCM事務局次長のコーディネートのもと、小尾氏、岩井国際局部長をパネリストに、フロアからの質問、意見も受けながら行なった。最後に、若松英幸JCM事務局長がセミナーのまとめを行い閉会した。セミナー詳細は以下の通り。

主催代表挨拶/西原浩一郎金属労協議長(要旨)

  • 金属労協がこれまで扱ってきた海外労使紛争のほとんどは、労務問題・労使問題に関して、現地労使の「お互いの顔が見える」直接対話ができていないなど、日頃からの労使コミュニケーションがうまく機能していないことに起因することが多い。とりわけ、アジアを中心とする新興国では、経済発展、労働基本権の法制化、労働組合の組織拡大が進む一方で、経営と労働運動の認識のギャップが目立っている。大切なことは、現地労使が十分に納得のいくコミュニケーションを通じて、労使双方の信頼関係を高め、建設的な労使関係を構築していくことである。
  • 日本の親会社の労使である我々は、同じ企業に働く現地生産拠点の健全な労使関係の醸成を手助けし、企業が発展し、働く者が幸せになる「WIN-WIN」の関係をグローバルに作っていく重要な役割を担っているということを強く認識していくことが重要である。
  • 今回のセミナーでは国別事例として、グローバル経済の中での堅調な経済発展を続けており、また、日系企業の活動のプレゼンスも大きいインドネシアについて取り上げる。インドネシアの労働組合は、健康保険制度や社会保障制度の改正、最低賃金の引き上げと制度の抜本的な見直し、違法なアウトソーシングや派遣労働の廃絶を政府や使用者に訴え続けてきた。今年2012年10月3日には、インドネシア全国で200万人(主催者発表)を動員した抗議行動を展開し、これにより企業活動にも大きな影響を与えたとの報道もある。現在、政労使で協議が行われているが、最低賃金引き上げでは労使の主張に大きな差異があるなど、予断を許さない状況となっている。今回インドネシアを取り上げることは、時宜を得たものである。
  • 各産別・企連・単組においては、海外事業拠点における労働問題、労使関係について、状況の把握を行い経営側との情報交換、情報の共有化を行い、日本の労使が連携していくための取り組みを、本セミナーを参考にしていただきながら、ご検討いただければありがたい。

【講演要旨】「インドネシアの経営環境」小尾吉弘 丸紅株式会社開発建設事業部副事業部長/元インドネシアMM2100工業団地開発会社社長

  • 1982年に丸紅に入社してから、都合15年間インドネシアに駐在してきた。この間、2003-7年と2009-12年の間、工業団地の社長を務めた。
  • 最低賃金については、2012年の最低賃金決定の際、地域によっては最低賃金の決定が政府と労組のみの賛成で決められ、これに対して経営側が反発し、手続きに問題があるとして裁判所に提訴するといった動きも見られた。
  • 最低賃金は「適正生活水準」に基づいて決められるが、2013年からこれを算定するための調査項目が増やされた。基本的に、調査項目が増えると最低賃金も上昇する。水準は、現状の約15,000円程度から標準で16,700円程度、最高で2万円程度へ引き上げられる予定である。結果として、ほぼ組合の要求通りとなっている。賃金を上げることで消費を伸ばして、これを経済の発展につなげようという政府の意向が働いていると言われている。
  • ストライキに関する労働法の規定は曖昧なところがあり、経営側はまだ交渉途中だと考えていても組合側がストライキに入ってしまうことがある。
  • 解雇は厳しく規制されている。また解雇した場合にも企業から手当が支給されることになっている(失業保険がないのでその代替という側面がある)。
  • アウトソーシングについては、業務をコア業務とノンコア業務に分け、コア業務については派遣労働者を使用できないことになっているが、何がノンコア業務であるかは法律上非常に曖昧であった。最近、ノンコア業務を明確にする省令が出された。尚、アウトソーシングと言う言葉自体の内容が曖昧であるため、現在では派遣・請負と表記するようになっている。
  • 労使紛争解決法が2004年に制定され、紛争を労働裁判にかけることが出来るようになった。しかし、専門的な裁判官が不足していることもあり、うまく機能しているとは言えない。また、判決が出ても実際に執行するのは困難という面もある。
  • インドネシアの国民性にも配慮することが必要である。集団主義による横並び意識が強い。
  • インドネシアでは賃金上昇だけが注目されることが多いが、インフラの問題、例えば道路が混んでいるとか、許認可に時間がかかるとか、賄賂等の慣行の方がむしろビジネスコストとしては問題がある。
  • 開発途上国ではあるが、税制の優遇等の投資インセンティブが少ないことにも注意が必要である。

【本部報告】「最近の海外労使紛争事例と海外労使関係、国際労働運動の動向」岩井伸哉 JCM国際局部長

  • 本部報告では、金属労協(JCM)が作成した「海外労使紛争および紛争解決に関する事例集Ⅱ」の紹介と併せ、日系企業に係わる海外の労使紛争事例について報告を行うとともに、海外拠点における中核的労働基準の確立、健全な労使関係の構築に寄与していくことを目的に、新国際産業別組織「インダストリオール」における多国籍企業労組ネットワークやGFA(グローバル枠組み協約)の動向などについて紹介した。
  • 「海外労使紛争および紛争解決に関する事例集Ⅱ」の紹介では、これまで発生し、金属労協が解決に向け関与した日系企業に係わる海外の労使紛争の事例を分類・分析し紹介した。また、多国籍企業における労働組合ネットワークの構築事例、GFAの日本における締結事例について説明を行なった。

【パネルディスカッション・要点】小尾氏、岩井国際局部長、コーディネータ:平川事務局次長

パネル討論では、小尾氏、岩井氏の講演・報告内容を踏まえ、インドネシアにおける社会保障、最低賃金、派遣労働などを今後の動向をどう見るべきかについて、また、労働運動に対する社会的な受け止め等について、討論をおこなった。

パネル討論での主な論点

・インドネシアで問題となっている、社会保障、最低賃金、派遣労働などの今後の動向をどう見るべきか。
・インドネシアの大規模な労組の運動に対する社会の受け止め方。

質問に関するコメント

・最低賃金は政府としてある程度容認の姿勢を見せているので、今後も一定の幅で上昇して行くであろう。
・派遣労働については、政府の省令で派遣労働者を使用できる範囲の明確化が図られるので、経営社団体からの反発等はあるものの、規制強化の方向で収まっていくものと考える。
・社会保障については、組合側は労働者の負担分を認めないとしているが、これはやはり一定部分は労働者も負担していくべきものと考える。今後の議論となるが、何らかの落としどころは見つかると考えている。
・労組の運動についての社会の受け止めであるが、工場に関連して働く様々な人々(飲食店、産廃業者等)もストライキ・デモ等について当初は理解を示していたものの、工場の停止が頻発することで彼らの生活を圧迫することとなり、現在では地域社会の理解を得にくくなりつつ状況もある。
・また、地域社会の変化を受けて、これまで厳格に取り締まりを行ってこなかった警察も、今後は取り締まりを強化するのではないかと言われている。

【セミナーまとめ要旨】若松事務局長

  • 今後ともこのような機会を是非利用して、海外の状況をご理解いただければ幸いである。
  • 金属労協としては、このような日本の労使を対象としたセミナーに加え、インドネシアでは現地の労使を対象にしたワークショップを開催する等、海外事業体における健全な労使関係の構築に取り組んでいる。
  • 労使関係は話をすることが大切。わかり合う努力をすることで、労使関係の発展の基礎が作られる。またそれが企業の発展につながる。話し合い重視の労使関係を日常から大切にして欲しい。

【参考:参加者アンケート結果からの抜粋】

・国内における組合活動も、世界に目を向けた方向性に変えていかなくてはいけないと思った。
・東京以外からの参加であったが、時間をかけても参加するだけの意義があった。
・現地ローカルとのコミュニケーションの取り方など、取り入れる必要がある。
・労使紛争がなぜ起きたのか、どうすれば防げるのか、具体的に勉強したい。
・組合の立場で何をすべきか、具体的に指導いただけると取り組みやすくなる。
・良好な関係にある海外の企業があれば、その労使関係のあり方や良好な労使関係を築くポイントを聞くことで、労使にとり良いアドバイスになると思う。
・労使紛争が起きた日系企業の一つに日本サイドに労組がなく会社側も対応に困っていたとの報告があった。改めて、労組が存在することの価値や国際連帯の必要性を認識できた。
・最も関心が高かったことは、多国籍企業における労組ネットワークの構築であった。事例を参考にしながら、海外でのグループ会社の組合のネットワーク構築の必要性を感じた。
・今回参加して、様々な人的ネットワークを築くことが出来た。
・金属労協の活動はグローバル化の進展に伴い、ますます重要性を増すだろう。
・最終的には、労使の話し合いが大切であることがわかった。意外に経営側の行き過ぎた対応によるものが多く、労組が過激すぎるためではないこともわかった。