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第45号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2015年12月)

各国政府が鉄鋼危機めぐり討議、中国は欠席

2015-12-03

スペインのアルセロール・ミッタル工場

スペインのアルセロール・ミッタル工場

 OECDハイレベル鉄鋼委員会はフランスのパリで最新の会合を開き、現在のグローバルな鉄鋼危機について議論した。鉄鋼部門にとって重要なこの時期、参加した政労使関係者140人以上の中に、ある国の政府当局者の姿はなかった――中国である。

 フェルナンド・ロペス・インダストリオール書記次長は次のように述べた。「どの国の政府であれ、自国の利益になると思う国際機関には加わり、難問を突きつける機関からは手を引こうとする態度は容認できない」

 この部門の最新情勢を見ると、全世界で発生している貿易問題の約30%が鉄鋼部門関連である。現在、鉄鋼部門は貿易を歪曲する措置の影響を最も大きく受けており、実施されたすべての措置のほぼ20%が鉄鋼部門に影響を与えている。

 鉄鋼にかかわる不公正取引事件は急速に増加しており、これまでにない高水準に達している。現在貿易措置が増加している主な原因は過剰生産能力で、その結果、世界の鉄鋼市場が供給過剰に陥り、貿易が混乱している。インダストリオールは2015年ピッツバーグ宣言で、中国は9,000万トンの鉄鋼を世界市場で投げ売りしているとの見方を強調した。

 中国、エジプト、パキスタン、インドネシア、インド、マレーシア、モロッコ、タイ、トルコなど、これまで一般に鉄鋼貿易救済措置を利用していなかった国々が、今ではそのような手段に訴えている。

 鉄鋼部門にとって重要なこの時期に、インダストリオールはOECDへの提出物の中で下記5項目の再生計画を示した。

1. OECDは現在行われている鉄鋼ダンピングをなくすために、より積極的な役割を果たし、WTOルールの尊重を確保しなければならない。
2. OECDは鉄鋼部門の状況を正常化するメカニズムを検討・勧告すべきである。そのようなメカニズムの1つは雇用調整税だろう(これは国境調整税のような機能を果たすだろうが、評価基準の中で現地の雇用に対する影響を調べなければならない)。
3. OECDは、ハイレベル鉄鋼委員会の関係者全員が責任を持って行動し、自らの措置に対して説明責任を負うようにすべきである。
4. 今後の会合の議題に必ず、進行中の貿易事件とその当事者に関する最新情報を盛り込むべきである。
5. OECD事務局は、現在の状況を放置した場合に、加盟国で鉄鋼業の今後の持続可能性にどのような影響があると予想されるか調査すべきである。

 ロブ・ジョンストンがインダストリオールを代表して発言し、参加者に以下のとおり伝えた。「この部門が直面しているのは、もはや単なる問題ではなく、危機と言っていいことは明らかだと思う。無策の代価として組合員は雇用や地域社会を失っている。行動が必要であり、今こそ行動を起こす必要がある」

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