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第116号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年11月30日)

グローバルな労働組合バッテリーサプライチェーン戦略を策定

2020-11-20

<JCM記事要約>

  • バッテリーサプライチェーンに関するウェビナーが開催され、組合や専門家、産業担当部長が参加し、デューデリジェンスや複雑なサプライチェーンの組織化機会について討議を行った。
  • デジタル化が進む中でバッテリー電源は日常生活に必要不可欠なものとなるが、低コスト化を目指す中でサプライチェーンの最下層の労働者が賃金・労働条件面で最もひどい状況に陥る危険があると報告された。
  • インダストリオールは、すべての力を使って、サプライチェーン全体で労働者の権利が確実に支持されるよう確保し、透明性の向上を強く要求しなければならない、と強調しウェビナーは締めくくられた。

 

バッテリー生産は今後、最も急成長を遂げる産業活動の1つになるだろう。組合、専門家ならびに産業担当部長がウェビナーに参加し、デューデリジェンスや複雑なサプライチェーンの組織化機会について討議した。

社会で電機・電子機器とのデジタル接続が進み、電気自動車が主たる原動力となっているため、バッテリー電源は急速に日常生活に必要不可欠なものとなっている。バッテリーサプライチェーンは複雑であり、不安定で極めて危険な零細鉱業から十分に組織された自動車製造業まで多岐にわたっている。

インダストリオールは、中国で実施されている事業を除いて、バッテリーサプライチェーン全体で労働者を代表しており、労働者の権利を確保して労働者を組織化するためにデューデリジェンス・プロセスに関与している。

低カーボンエネルギーへの転換用のバッテリーに不可欠な原料(コバルト、リチウム、銅、ニッケルなど)の需要は、川上需要サイド(鉱業)で人権の侵害や受け入れがたい環境への影響(児童労働、先住民の居住環境の破壊、環境破壊、水不足など)を助長することになるだろう。

ベンチマーク・ミネラルズのアンディー・リーランドが、より安い電気自動車や中古バッテリーを求める動きが底辺への競争を招き、サプライチェーンの最下層の労働者は賃金・労働条件面で最もひどい状況に陥る危険があることについて論じた。

さらにリーランドは、必要な原料への需要が新しい鉱業能力の創出よりも速く成長するため、あらゆる市場予測に反してバッテリーのコストが上昇する可能性があると説明した。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長が、衣料サプライチェーンでの活動経験をもとに、バッテリーサプライチェーンにおける部門横断的協力は、包括的で持続可能なサプライチェーン戦略のチャンスをもたらすと述べた。

「これはデューデリジェンス・プロセスの効果、労働者の権利と人権の行使、適正な労働条件の促進を改善する。サプライチェーンを下るにつれて、未組織労働者と標準以下の賃金・労働条件が増えていく。サプライチェーンの下部で活動している企業に圧力をかけるために、サプライチェーンの上部における私たちの影響力を検証する必要がある」

IRMA(責任ある鉱業のためのイニシアティブ)エグゼクティブ・ディレクターのエイミー・ブーランジェがウェビナーで発言し、今年初めにドイツの自動車メーカーBMWが加盟したことを歓迎。BMWの先例に倣って他の自動車メーカー(ワークショップの翌日、ダイムラーが新規メンバーとしてIRMAに加入)もIRMAに加わる可能性があると述べ、グローバルなバッテリーサプライチェーンにおけるサプライチェーン・デューデリジェンスの重要性を強調した。

グレン・ムプファン・インダストリオール鉱業担当部長が、低カーボンエネルギーへの転換にとっての鉱業部門の重要性を指摘し、調達におけるサプライチェーン・デューデリジェンス要件の出現は、労働者の権利を特に重視しつつESG(環境・社会・ガバナンス)におけるこの部門の業績を改善する強力な手段になり得ることを説明した。

松崎寛ICT電機・電子担当部長が、電気自動車バッテリーの80%を中国、日本、韓国のサプライヤー6社が製造していると説明した。

「これらの主要メーカーは現在、ドイツ、イギリス、アメリカ、東欧など、インダストリオール加盟組合が活動している中国以外の国々に投資している。この急速に拡大している産業の具体的な組織化戦略を策定することが重要だ」

ダイアナ・ジュンケラ・エネルギー産業担当部長が、すべての大手多国籍電力会社が、グリッドの未消費電力を蓄積・利用する手段として、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)に投資していると述べた。石油会社は電気自動車用の充電スタンドも設置している。

「インダストリオールは、これらの企業で労働者を代表しており、一部の企業とグローバル枠組み協定も締結している。そういうわけで私たちは、労働者の適正な労働条件を確保するために、サプライチェーンのすべての部分に接触することができる」

アルメレ・セビー・ジェンダーコーディネーターがこう述べた。

「ジェンダーに対応したアプローチを開発し、バッテリーサプライチェーンで既存の性別による不平等や暴力に取り組むことが重要だ。そのようなアプローチをデューデリジェンス・プロセスに統合すれば、女性の権利への悪影響を抑えるとともに、差別的な権力構造に系統的変化を導入することにもなる」

ゲオルク・ロイテルト自動車産業担当部長が、自動車メーカーはバッテリーサプライチェーンにおける社会的責任ある事業活動に関する責任の重要部分を担わなければならないという事実を指摘。自動車労組が、従来型のエンジン/トランスミッション工場の雇用喪失を補うために、可能な限り多くの雇用創出を望んでいることにも触れた。

「バッテリーを自製するか購入するかの決定には、まだ多くの動きが見られる。そして、これはセル製造のインソーシングだけでなく、いくつかの企業は原料自体の購入にも積極的になっている」

トム・グリンター化学部門担当部長が、このサプライチェーンへの化学労働者による主な貢献を概説した。化学会社は材料や技術、研究によって、この成長事業に多額の資金を投じている。この産業の重要企業であると同時に、世界中でインダストリオール加盟組織が強力に組織化している3社、すなわちBASF、ソルベイ、ユミコアが強調された。

インダストリオールは、2021年1月に始まる産業部門の垣根を越えたバッテリーサプライチェーン・プロジェクトの資金を申請した。インダストリオールは、パイロット・プロジェクトで企業、NGOその他の団体と協力し、そのようなアプローチがバッテリーサプライチェーン全体で労働者の状況を本当に改善するうえで、どれだけ役に立つ可能性があるかを調べることにしている。

私たちはすべての力を使って、サプライチェーン全体で労働者の権利が支持されるよう確保し、透明性の向上を強く要求しなければならない」とアトレ・ホイエは述べた。

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