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第116号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年11月30日)

電力労組が相互支援を誓約

2020-11-27

<JCM記事要約>

  • 11月25日にオンラインで開催された電力ネットワーク会議にて、世界中の電力労働者を代表する労働組合員が参加し、パンデミック下で仕事を続けた経験を共有するとともに、電力部門の傾向をめぐり議論を行った。
  • パンデミック下でも電力部門は需要は減少せず、労働者は必要不可欠とみなされている。また将来に向けては、ピーク需要に備えてエネルギーを蓄積するべく、バッテリーやエネルギー貯蔵システムの開発への大規模投資などが予想される。
  • インダストリオールは、バッテリーサプライチェーンを組織化するための活動を紹介し、電力労働者がそのネットワークに加わることが重要であり鉱業の川上のサプライチェーンを精査して組織化することが欠かせない、と強調した。

※インダストリオール・JAF共有記事

 

世界中の電力労働者を代表する労働組合員60人以上が11月25日、パンデミック下で仕事を続けた経験を共有するとともに、電力部門の傾向をめぐり議論し、支え合って行動するためにオンライン会合を開いた。

この電力ネットワーク会議では、カナダのグウェン・ファレル部門副共同部会長が開会の挨拶に立ち、パンデミックを受けて一般の人たちの間で一斉に連帯が生まれている状況について語り、お互いに助け合う必要があると念を押した。

ディアナ・ジュンケラ・キュリエル・インダストリオール・エネルギー担当部長が、パンデミック下における電力部門の状況について話した。ロックダウンにもかかわらず、電力の世界的需要は今年2%しか減少していないため、この部門は他の部門ほど大きな影響を受けていない。電力労働者は必要不可欠とみなされており、在宅で任務を果たすことができない人々は、ロックダウン下でも出勤しなければならなかった。エンジーやエネルなど、インダストリオールがグローバル枠組み協定を締結している会社も含めて、いくつかの企業はうまく対応し、全世界で社員全員に生命保険と健康保険を提供、具体的な安全対策を導入した。

ジュンケラは、この部門における将来の傾向について話した。電力はより多様なエネルギー源、特に太陽光エネルギーによって生産されるようになり、電力網は供給の変化に対処するために柔軟性を高める必要がある。そのためには大規模なインフラ開発が必要であり、組合は政府・企業に圧力をかけてエネルギーの未来に投資させなければならない。

特に、グリッド能力の大幅な拡大と、ピーク需要に備えてエネルギーを蓄積する手段が必要とされる。これにはバッテリーやエネルギー貯蔵システムの開発が含まれる。考えられるシナリオとして、エネルギー企業によるバッテリーへの大規模投資や、需要が低い夜間に充電される電気自動車の能力向上の利用が挙げられる。

これを受けてオーストラリアのマット・マーフィーが、これまでの経験から、組合が全国送電線網で強固な基盤を確保することが重要だと分かったと述べた。スペインのヘスス・クレスポ・トーレスが、企業が再生可能エネルギーに移行しているが、この移行の社会的側面を確保するのは組合の責任だと指摘した。スペインの代議員たちは、スペインで炭鉱や火力発電所が閉鎖されたこと、労働者にとって公正な移行を保証するためにスペイン政府および企業と共同で優れた協定を取り決めたことを話した。

フランスの組合代議員は、EDFとエンジーの分離売却や組合が11月26日に起こした共同行動について話し、欧州委員会、フランス政府および企業に行動を要求した。世界中から集まった代表がフランスの労働者との連帯を表明し、多くの代議員が自分たちも同じような問題に直面していると述べた。

グレン・ムプファン・インダストリオール鉱業担当部長が、電力と鉱業とのサプライチェーン関係に触れ、コロンビアのセレホン鉱山の事例を挙げた。この鉱山では、労働者が劣悪な新条件の押しつけに反対して、80日近く前からストを実施している。この石炭は主にヨーロッパとトルコに発電用として輸出されている。

ケマル・ウズカン書記次長が、インダストリオールがバッテリーサプライチェーンを組織化するために実施している活動と、電力労働者がそのネットワークに加わることの重要性について語った。

「バッテリーの重要性が高まっているため、鉱業の川上のサプライチェーンを精査して組織化することが欠かせない」と書記次長は述べた。

 

労働組合、RCEPに対する懸念を表明

2020-11-23

<JCM記事要約>

  • アジア太平洋のグローバル・ユニオンは共同声明を発表し、RCEPは不平等を深刻化させ、労働者と社会全体を犠牲にして資本家階級の経済・政治力を強める恐れがあるとし、RCEPへの署名決定を断固として非難している。
  • 締結にあたり労働者組織との社会的対話の場が提供されないまま、組合が当初から要求してきた労働者の権利や労働・環境基準を保護する条項が含まれていない。自由化によりグローバル・バリューチェーンがさらに統合され、発展途上国の労働集約型部門で底辺への競争が発生し、雇用に悪影響が及ぶ恐れがある。
  • インダストリオールは、RCEPが労働・環境基準に触れていないこと、ILO中核的条約を批准しておらず、労働権・人権記録が最悪の部類に入る国々が参加していることを深く憂慮しており、他のグローバル・ユニオンと共にRCEPを非難している。

 

インダストリオールを含むアジア太平洋のグローバル・ユニオンは共同声明で、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)への署名決定を断固として非難、RCEPは不平等を深刻化させ、労働者と社会全体を犠牲にして資本家階級の経済・政治力を強める恐れがあると強調している。

交渉開始から8年を経て11月15日に署名されたRCEPは、15カ国が参加するメガ地域貿易協定であり、アジア太平洋地域諸国の市場開放の約束をさらに深めている。RCEPには、物品・サービスの貿易、投資、知的財産、電子商取引、競争、政府調達などの貿易分野を対象とする20の章が盛り込まれている。

組合は、民主的プロセスの欠如とRCEP交渉を取り巻く秘密主義に対する懸念を表明した。各国政府は労働者組織との社会的対話の場を提供せず、交渉草案は11月15日の協定署名後に公表されたため、RCEPの影響をめぐる公の論議の機会が十分になかった。

RCEPには、組合が最初からずっと要求してきた労働者の権利や労働・環境基準を保護する条項がない。各国政府は、RCEP加盟国における労働基準の漸進的な低下をもはや無視することができない。自由化の約束の強化は域内におけるグローバル・バリューチェーンのさらなる統合への道を開き、いくつかの発展途上国の労働集約型部門で底辺への競争が発生し、雇用に悪影響が及ぶだろう。

アンドリュー・デットマー・オーストラリア製造労組(AMWU)全国会長は次のように述べた。

「COVID-19パンデミックで、特に医薬関連品の製造能力強化の必要性が浮き彫りになっている。自由貿易協定によって失業の増加、社会的保護危機、製造業部門の空洞化が進んでいる。RCEPが現在と将来にわたり多国籍企業を規制するための政策的余地を奪うことは容認できない」

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は次のように述べた。

RCEPが労働・環境基準に触れていないこと、ILO中核的条約を批准しておらず、労働権・人権記録が地域で最悪の部類に入る国々が参加していることを深く憂慮している。RCEP加盟国の人々がCOVID-19パンデミックの経済的・社会的影響に取り組んでいる中で、社会・経済・健康面で多様な危機に対処する各国の能力を損ないかねない協定を推進することは賢明ではない

「インダストリオールは他のグローバル・ユニオンとともに、この協定を非難する。RCEPは現在の形では、包括的開発と雇用創出、包括的ルールに基づく貿易制度とはほど遠い」

インド政府は2019年にRCEPを離脱し、この協定はインド国民のためにならないと述べた。RCEP加盟国は、インドが協定に参加する選択の自由を確保している。

RCEP加盟国は世界のGDPと人口の3分の1を占める。

 

インダストリオール執行委員会、連帯と団結を要求

2020-11-20

<JCM記事要約>

  • 11月19日、オンラインにてインダストリオール執行委員会が開催され、COVID-19パンデミックにおける組合の対応について議論がされた。
  • インダストリオールより、パンデミック下における各国の数々の問題が言及され、グローバル・サプライチェーンの脆弱性が明らかになったと報告があり、これまで以上に国際連帯と団結が必要である、と強調された。
  • また、ベラルーシの独立組合と連帯する決議が採択された他、来年9月に延期されたケープタウンで開催を予定していた第3回インダストリオール世界大会について、COVID-19の影響を踏まえ、オンラインで開催すると決定した。

 

執行委員会は11月19日にオンライン会合を開き、COVID-19パンデミックへの組合の対応が議題に上った。コロナ危機は、グローバル・サプライチェーンがいかに脆弱であるかを再び示している。労働者、特にサプライチェーンの底辺で働く労働者への影響は悲惨かつ劇的である。しかし世界中の組合が、反撃すれば勝てることを示している。

インダストリオールと独IGメタルの会長を務めるイェルク・ホフマンが開会の辞を述べ、パンデミックはグローバル・サプライチェーンの脆弱さを浮き彫りにしていると指摘した。低賃金労働力と環境軽視の組み合わせは持続可能ではない。

「このパンデミックは、すべての人々にとって終息するまで、終息したとは言えない。労働者は生き残れるかどうか心配している。全世界で行動する必要があり、インダストリオールはより公正な富の分配を求めて闘い続ける」

ホフマンは米大統領選の結果を歓迎し、この結果は至る所の右派ポピュリストに強いメッセージを送ると述べた。

「ボルソナーロ、オルバーン、ルカシェンコ――あなた方は余命いくばくもない」

3カ月前にベラルーシで抗議行動が始まってから、グローバルな組合運動は団結し、同国の民主主義を支援してきた。ベラルーシ国民は信じがたい組織力を示しており、労働者は弾圧に負けず民主主義を求めて闘い続けている。

執行委員会は、ベラルーシの独立組合と連帯する決議を採択し、暴力の撤廃、新しい公正な選挙、政治犯全員の釈放、解雇された労働者全員の復職、抗議行動の残忍な弾圧に加担した者の刑事告発を要求した。

国際連帯と団結は、これまで以上に重要になっている。そしてインダストリオール加盟組合は、逆境にもひるまず労働者の権利を求めて闘い続けている。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長が、報告の中で数々の問題に光を当てた――先ごろインダストリオール・ブラジルが創設され、さまざまな製造業部門の労働者1000万人を結集させたこと、アルゼンチン議会が第190号条約の批准を票決したこと、ウクライナの組合が結社の自由を損なう労働法案に抗議したこと、インドで政府の反労働者的政策に反対して全国的な抗議が行われたこと、インドネシアの組合が論議を呼ぶオムニバス法に反対したこと、ベラルーシ国民が8月の不正選挙に抵抗して抗議を続行し、激しい弾圧を受けたことである。

労働組合権を尊重する必要がある。ビジネスと人権に関する拘束力のある国連文書が必要だ。もっと多くの国々がフランスのようなデューデリジェンス法を採用し、多国籍企業にグローバル・サプライチェーンに対して責任を負わせる必要がある」とヴァルター・サンチェスは述べた。

「『パンデミック不当利得者』である億万長者たちは今年4兆米ドル以上も資産を増やしており、グローバル・ユニオンが提案しているように、普遍的な社会的保護基金の資金源となる福祉税を支払わなければならない。回復刺激策によって医療・介護産業を優先し、インフラを建設し、アクセス可能な高速インターネットを確保し、製造組織といわゆるグリーン・リカバリーを維持すべきだ」

パンデミックに伴い、家庭内暴力が増えている。家庭内暴力は家庭で始まるが、仕事の世界に影響を及ぼす可能性がある。執行委員会は、女性委員会が提案した決議を承認した。この決議は全加盟組織に対し、組合員を支援し、家庭内暴力に異議を唱え、使用者が仕事の世界における家庭内暴力の影響を軽減するための措置を講じるよう確保するために、行動を起こすことを求めている。

インダストリオールは、組合員の安全衛生を保護して労働者の権利、雇用および収入を守るために、引き続き政府・企業との対話を進めている。執行委員会は、すべての加盟組織に対し、組合の意見が聞き入れられないときに立ち上がって闘い、キャンペーンを実施する態勢を整え、以下のために結集するよう求めた。

  • 11月25日の女性に対する暴力撤廃の国際デー
  • 11月26日にインドで行われる反労働者的な法改正に反対する全国ストとの連帯
  • 11月27日にアマゾンをターゲットに実施されるブラックフライデーのインダストリオール/UNIグローバルユニオン行動
  • 11月30日にフィリピンの人権を守るために実施されるグローバル・ユニオン評議会の連帯行動デー

執行委員会は、将来の会合に対するパンデミックの影響について議論したのち、来年の大会を完全にオンラインで開催する責任があることに合意した。代議員は、できるだけ早く直接再会したいという願望を表明した。

このパンデミックは、インダストリオール活動のいくつかの面に影響を与えている。参加者は、組織に対するパンデミックの経済的影響をめぐり討議した。第3回インダストリオール世界大会は当初、今年10月にケープタウンで開催の予定だった。残念ながら、パンデミックが拡大し続け、多くの国々で旅行規制が続く可能性があるため、執行委員会は、大会を2021年9月にオンラインで開催することを決定した。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

 

グローバルな労働組合バッテリーサプライチェーン戦略を策定

2020-11-20

<JCM記事要約>

  • バッテリーサプライチェーンに関するウェビナーが開催され、組合や専門家、産業担当部長が参加し、デューデリジェンスや複雑なサプライチェーンの組織化機会について討議を行った。
  • デジタル化が進む中でバッテリー電源は日常生活に必要不可欠なものとなるが、低コスト化を目指す中でサプライチェーンの最下層の労働者が賃金・労働条件面で最もひどい状況に陥る危険があると報告された。
  • インダストリオールは、すべての力を使って、サプライチェーン全体で労働者の権利が確実に支持されるよう確保し、透明性の向上を強く要求しなければならない、と強調しウェビナーは締めくくられた。

 

バッテリー生産は今後、最も急成長を遂げる産業活動の1つになるだろう。組合、専門家ならびに産業担当部長がウェビナーに参加し、デューデリジェンスや複雑なサプライチェーンの組織化機会について討議した。

社会で電機・電子機器とのデジタル接続が進み、電気自動車が主たる原動力となっているため、バッテリー電源は急速に日常生活に必要不可欠なものとなっている。バッテリーサプライチェーンは複雑であり、不安定で極めて危険な零細鉱業から十分に組織された自動車製造業まで多岐にわたっている。

インダストリオールは、中国で実施されている事業を除いて、バッテリーサプライチェーン全体で労働者を代表しており、労働者の権利を確保して労働者を組織化するためにデューデリジェンス・プロセスに関与している。

低カーボンエネルギーへの転換用のバッテリーに不可欠な原料(コバルト、リチウム、銅、ニッケルなど)の需要は、川上需要サイド(鉱業)で人権の侵害や受け入れがたい環境への影響(児童労働、先住民の居住環境の破壊、環境破壊、水不足など)を助長することになるだろう。

ベンチマーク・ミネラルズのアンディー・リーランドが、より安い電気自動車や中古バッテリーを求める動きが底辺への競争を招き、サプライチェーンの最下層の労働者は賃金・労働条件面で最もひどい状況に陥る危険があることについて論じた。

さらにリーランドは、必要な原料への需要が新しい鉱業能力の創出よりも速く成長するため、あらゆる市場予測に反してバッテリーのコストが上昇する可能性があると説明した。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長が、衣料サプライチェーンでの活動経験をもとに、バッテリーサプライチェーンにおける部門横断的協力は、包括的で持続可能なサプライチェーン戦略のチャンスをもたらすと述べた。

「これはデューデリジェンス・プロセスの効果、労働者の権利と人権の行使、適正な労働条件の促進を改善する。サプライチェーンを下るにつれて、未組織労働者と標準以下の賃金・労働条件が増えていく。サプライチェーンの下部で活動している企業に圧力をかけるために、サプライチェーンの上部における私たちの影響力を検証する必要がある」

IRMA(責任ある鉱業のためのイニシアティブ)エグゼクティブ・ディレクターのエイミー・ブーランジェがウェビナーで発言し、今年初めにドイツの自動車メーカーBMWが加盟したことを歓迎。BMWの先例に倣って他の自動車メーカー(ワークショップの翌日、ダイムラーが新規メンバーとしてIRMAに加入)もIRMAに加わる可能性があると述べ、グローバルなバッテリーサプライチェーンにおけるサプライチェーン・デューデリジェンスの重要性を強調した。

グレン・ムプファン・インダストリオール鉱業担当部長が、低カーボンエネルギーへの転換にとっての鉱業部門の重要性を指摘し、調達におけるサプライチェーン・デューデリジェンス要件の出現は、労働者の権利を特に重視しつつESG(環境・社会・ガバナンス)におけるこの部門の業績を改善する強力な手段になり得ることを説明した。

松崎寛ICT電機・電子担当部長が、電気自動車バッテリーの80%を中国、日本、韓国のサプライヤー6社が製造していると説明した。

「これらの主要メーカーは現在、ドイツ、イギリス、アメリカ、東欧など、インダストリオール加盟組合が活動している中国以外の国々に投資している。この急速に拡大している産業の具体的な組織化戦略を策定することが重要だ」

ダイアナ・ジュンケラ・エネルギー産業担当部長が、すべての大手多国籍電力会社が、グリッドの未消費電力を蓄積・利用する手段として、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)に投資していると述べた。石油会社は電気自動車用の充電スタンドも設置している。

「インダストリオールは、これらの企業で労働者を代表しており、一部の企業とグローバル枠組み協定も締結している。そういうわけで私たちは、労働者の適正な労働条件を確保するために、サプライチェーンのすべての部分に接触することができる」

アルメレ・セビー・ジェンダーコーディネーターがこう述べた。

「ジェンダーに対応したアプローチを開発し、バッテリーサプライチェーンで既存の性別による不平等や暴力に取り組むことが重要だ。そのようなアプローチをデューデリジェンス・プロセスに統合すれば、女性の権利への悪影響を抑えるとともに、差別的な権力構造に系統的変化を導入することにもなる」

ゲオルク・ロイテルト自動車産業担当部長が、自動車メーカーはバッテリーサプライチェーンにおける社会的責任ある事業活動に関する責任の重要部分を担わなければならないという事実を指摘。自動車労組が、従来型のエンジン/トランスミッション工場の雇用喪失を補うために、可能な限り多くの雇用創出を望んでいることにも触れた。

「バッテリーを自製するか購入するかの決定には、まだ多くの動きが見られる。そして、これはセル製造のインソーシングだけでなく、いくつかの企業は原料自体の購入にも積極的になっている」

トム・グリンター化学部門担当部長が、このサプライチェーンへの化学労働者による主な貢献を概説した。化学会社は材料や技術、研究によって、この成長事業に多額の資金を投じている。この産業の重要企業であると同時に、世界中でインダストリオール加盟組織が強力に組織化している3社、すなわちBASF、ソルベイ、ユミコアが強調された。

インダストリオールは、2021年1月に始まる産業部門の垣根を越えたバッテリーサプライチェーン・プロジェクトの資金を申請した。インダストリオールは、パイロット・プロジェクトで企業、NGOその他の団体と協力し、そのようなアプローチがバッテリーサプライチェーン全体で労働者の状況を本当に改善するうえで、どれだけ役に立つ可能性があるかを調べることにしている。

私たちはすべての力を使って、サプライチェーン全体で労働者の権利が支持されるよう確保し、透明性の向上を強く要求しなければならない」とアトレ・ホイエは述べた。

 

産別労組がインダストリオール・ブラジルを創設

2020-11-20

<JCM記事要約>

  • 11月17日、ブラジルの産別労組が協力し、労働者1000万人を代表するインダストリオール・ブラジルが設立された。当組織は、金属、化学、建設、繊維、衣料、エネルギーおよび食品部門の多数の組合の統括組織となる。
  • インダストリオール・ブラジルは、討議や提案、行動を一本化し、ブラジルの再工業化と雇用創出、適切な賃金を目指す産業・雇用政策の策定を促進する。また主題には、インダストリー0、低炭素世界への移行、循環型経済の促進、持続可能な開発の必要性などが含まれる。
  • インダストリオールは、全国組織を設立して歴史を残したことを祝福し、インダストリオール・ブラジルは私たちが正しい道を進めるようにしてくれる鍵になるだろう、と強調した。

 

組合連合団体のCUTと「労働組合の力」が協力してインダストリオール・ブラジルを創設し、さまざまな製造業部門の労働者1000万人を結集した。

11月17日に創設されたインダストリオール・ブラジルは、金属、化学、建設、繊維、衣料、エネルギーおよび食品部門の多数の組合の統括組織である。

「インダストリオール・ブラジルは、我が国の再工業化を視野に入れて創設された。パンデミックが原因で、また政府が真の産業・経済政策を立てていないために、多くの製造業雇用が失われた。他の組合組織に対し、雇用を保護して適正な賃金を確保するための闘いに加わるよう求める」とインダストリオール・ブラジルのアロアルド・オリベイラ・ダ・シルバ会長は言う。

インダストリオール執行委員のエドソン・ディアシュ・ビカーリョFEQUIMFAR書記長は、こう述べている。

「私たちは、インダストリオール・グローバルユニオンや『労働組合の力』、CUTに加わっていない他の重要な製造業部門を取り込もうとしている。ビジネスリーダーやブラジル全国会議と協力し、我が国の産業を立て直すためのプロジェクトを生み出したい」

「労働組合の力」に加盟している全国金属労組総連合の副会長で、インダストリオール・グローバルユニオン女性委員会の議長を務めるモニカ・ベローゾが、こう付け加える。

「インダストリオール・ブラジルには、持続可能な産業政策を開発するうえで重要な役割を果たし、合法的な組合代表を利用して労働者階級の人々が適正な生活の質を享受できるようにしてほしい。この新しい全国組織の目的は、ジェンダー関係に焦点を当てることによって権力を再分配することだ」

インダストリオール・ブラジルは、討議や提案、行動を一本化し、ブラジルの再工業化と雇用創出、適切な賃金を目指す産業・雇用政策の策定を促進する。主題には、インダストリー4.0、低炭素世界への移行、循環型経済の促進、持続可能な開発の必要性などが含まれるだろう。

インダストリオール執行委員会の共同議長で鉱業部門共同部会長のルシネイデ・バルジョンCNQ/CUT会長は言う。

「インダストリオールと連携しながらアクション・プランを作成し、ともに前進できるようにする必要がある。私たちの目的は、平等とILO第190号条約の批准を求める闘い、あらゆる形態の不安定雇用に反対する闘いにおいて、組合の力を統合することだ」

イェルク・ホフマン・インダストリオール/IGメタル会長は、新組織を歓迎している。

「インダストリオール・ブラジルの創設を称賛する。共通の目標を達成するには、力を合わせなければならない。ブラジルの組合運動は発足以来一貫して、まさにそれを実行する能力があることを示してきた。そして今日、皆さんは再びそれを示してくれた」

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。

ブラジルのインダストリオール加盟組織が、この全国組織を設立し、歴史を残したことを祝福する。この非常に困難な時期に、ブラジル政府は持続可能な産業政策を立てておらず、製造業部門を破壊している。仕事の世界が変化しており、正しい政策がなければ産業の空洞化から逃れることができない。この新組織は、私たちが正しい道を進めるようにしてくれる鍵になるだろう。皆さんはインダストリオール・グローバルユニオンの支援に頼ることができる。闘いは続く!」

 

家庭内暴力は労働組合の問題

2020-11-19

<JCM記事要約>

  • 新型コロナウイルスパンデミック下におけるロックダウンと経済的圧力により家庭内暴力が増加している。加害者は被害者を職場まで追いかけたり、ストレスやトラウマが発生するなど、被害者の仕事にまで影響を及ぼす可能性がある。
  • 使用者や同僚は、被害を受ける労働者に安全な場を提供し、さらに経済的自立を守ることができる。労働組合としても、ジェンダー不平等に対して強硬な態度を取り、家庭内暴力に対する労働組合行動の必要性に関して組合員を教育し、被害者との連帯を表明するよう要求することが求められる。
  • インダストリオール加盟組合は組合員に、家庭内暴力に関して利用できる支援を知らせている。また、窓口担当者を訓練して被害者・生存者を支援できるようにしたり、家庭内暴力に関する交渉者向けガイドを作成する組織もある。

 

パンデミック下で家庭内暴力が増加し、ロックダウンと経済的圧力によって悪化している。新しいILO第190号条約は重要な文書であり、「政府、使用者・労働者団体および労働市場機関は、他の措置の一部として、家庭内暴力の影響を認識し、これに対応して取り組むために助力することができる」と強調している。

ILO第190号条約および第206号勧告に家庭内暴力に関する条項が盛り込まれたことは、個人的な問題と考えられていた家庭内暴力が、今では労働者、企業および社会全体に影響を与えると認識されるようになったという根本的変化を反映している。

家庭内暴力は仕事の世界に波及する可能性がある。加害者は被害者を職場まで追いかけたり、被害者の仕事用のコンピューターやメール、電話を使って嫌がらせあるいはコントロールしようとしたりするかもしれない。家庭内暴力のストレスやトラウマは、被害者の仕事に影響を与える

だが職場は、被害者が支援や保護を求めることができる安全な場所となり、被害者の経済的自立を守ることができる。

ILOは次のように述べている。

使用者や同僚は、安全と連帯の場を提供し、コミュニティーサービスへのつながりとなるだけでなく、暴力事件を確認することによっても、命を救うことができる。

ILO第206号勧告は、以下に対する意識向上を要求している。すなわち、家庭内暴力の影響、家庭内暴力の被害者・生存者のための休暇、柔軟な労働形態、解雇に対する保護の提供、職場リスク評価や労働安全衛生政策への家庭内暴力の盛り込みである。

労働組合には果たすべき重要な役割がある。組合員は家庭内暴力の被害者にも加害者にもなり得る。労働組合は、使用者が被害者に安全な職場を提供するとともに、ジェンダー不平等に対して強硬な態度を取ることと、家庭内暴力に対する労働組合行動の必要性に関して組合員を教育することによって、家庭内暴力に直面している組合員との連帯を表明するよう要求することができる」とジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長は言う。

南アフリカのNUMは2018年にキャンペーンを開始し、女性に対するあらゆる形態の暴力を非難した。意識向上キャンペーンは、意識向上キャンペーンは、被害者が率直に意見を述べ、傍観者が行動を起こすよう環境を作る。

カナダでは、USWが「傍観者にとどまらず、女性に対する暴力に関して沈黙を破ろう」というプログラムを開始、男性組合員を巻き込んで、虐待や暴力を目撃した場合にはっきり異を唱えさせ、仲裁させるようにしている。

いくつかのインダストリオール加盟組織は、法律で有給休暇条項を達成した。フィリピンとニュージーランドでは、法律によって家庭内暴力の被害者・生存者に10日間の有給休暇が与えられており、オーストラリアには5日間の無給休暇がある。カナダでは、連邦政府が規制する職場の労働者は、5日間の有給家庭内暴力休暇を取得でき、すべての州に休暇(有給および無休)を付与する法律がある。

インダストリオール加盟組織は組合員に、家庭内暴力に関して利用できる支援を知らせている。ウルグアイの組合はCOVID-19危機下にあって、ソーシャルメディアでホットラインの番号を伝えている。

労働組合は、家庭内暴力の被害者・生存者を特定して効果的にサポートする方法について、ガイドラインや手順を考案している。英TUCは、COVID-19期間中に家庭内暴力の被害者・生存者に関与する方法に関して、職場委員向けのガイドをまとめた。

いくつかの労働組合は、窓口担当者を訓練して被害者・生存者を支援できるようにしている。カナダでは、ユニフォーの女性提言プログラムが職場代表を訓練し、職場での嫌がらせ、家庭内暴力、虐待に関して女性を援助させている。

インダストリオール加盟組織は、家庭内暴力に関する交渉者向けガイドや、ユナイト・ザ・ユニオンの家庭内暴力・虐待に関する交渉者ガイドを作成しており、労働協約で家庭内暴力に取り組む方法に関するUSWの交渉ガイドは協約のモデル条項を提供している。

保護措置として、家庭内暴力の被害者が勤務スケジュールを調整したり、偽名を使ったり、フレックスタイム制で働いたりできるようにし、被害者の労働時間や勤務場所に関する知識を利用する虐待者から身を守るために、必要な変更を加えられるようにすることが挙げられる。

家庭内暴力の被害者・生存者専用の休暇は、被害者・生存者が訴訟手続きに対処したり、支援やサービス、救済策を利用したりできるようにするので重要である。従業員を解雇から保護する一時的措置は、家庭内暴力が原因で欠勤したり、業績に影響を受けたりする労働者にとって欠かせない。

貴組合が家庭内暴力に対して行動を起こしている場合はお知らせください!

家庭内暴力は、最も広く見られる形態のジェンダーに基づく暴力である。この種の暴力は、加害者が被害者と同居しているかどうか、あるいは同居していたことがあるかどうかを問わず、家族もしくは家庭単位の中で、または元もしくは現配偶者もしくはパートナーの間で発生する、すべての身体的、性的、精神的または経済的暴力行為と理解することができる。

誰もが家庭内暴力の被害者または加害者になり得る。しかし、報告された事例の圧倒的多数は、男性による女性に対する暴力である。

ILOによると、家庭内暴力は男女間の不平等な力関係の現れである。COVID-19との関連で、不透明性の高まりが個人や家庭に影響を与えており、加害者が欲求不満をぶつけたり、再び支配権を主張しようとしたりしているため、女性が暴力の被害に遭う事件が増えている。

これらの認識と基準は家庭内暴力の容認や正当化を招き、女性は暴力を受けても仕方がないという被害者を非難する風潮をもたらしている。

家庭内暴力を正当化することはできない。女性の行動に罪はなく、全面的に加害者の責任である。

 

ウイグルの奴隷労働への取り組みが必要

2020-11-18

<JCM記事要約>

  • 中国・新疆地域は、世界の綿の20%を生産している。中国政府は地元住民を弾圧し、年間100万人以上を強制労働キャンプへ拘留しており、ここで生産された綿はグローバル・サプライチェーンに流入している。
  • インダストリオールとGFAを締結している企業の中に新疆地域での生産を維持している企業はない。しかしながら、サプライチェーンに関するグローバルな法的枠組みはまだないため、当該地域でのサプライチェーン不正行為が見過ごされる可能性がある。
  • インダストリオールは、ビジネスと人権に関する法的拘束力のある国連条約のように、サプライチェーンに関する首尾一貫した国際法や、よりよいビジネス実施方法を取り決めさせる遵守システムが必要だ、と主張した。

 

中国政府は、ウイグルの少数民族の組合員を強制労働キャンプに収容し続けている。これらの奴隷にされた労働者が生産する商品(特に綿)は、グローバル・サプライチェーンに流入している。

何世紀も前からテュルク系ムスリムが大多数を占める中国ウイグル地域は、世界の綿の20%を生産している。中国は、この地域を新疆(「ニューフロンティア」の意)に改称し、地元住民を弾圧して他地域からの移民を奨励している。

中国政府は、ウイグルの出生率を抑えるために劇的な措置を講じ、この集団の言語や伝統を根絶しようとしている。年間100万人以上が強制労働キャンプに拘留されている。

インダストリオール・グローバルユニオンは、ウイグルの強制労働をなくすためのグローバルな行動要請を支持している。この要請は、主要なブランドや小売業者が、ウイグル地域の強制労働を支持したり、それによって利益を得たりしないようにすることを要求している。

インダストリオールは、主要多国籍企業、特にグローバル枠組み協定(GFA)の締約企業に圧力をかけている。企業はGFAに署名する際、サプライチェーン全体で適正な基準を確保し、遵守を確実にするために監視システムの導入を約束する。

インダストリオールとGFAを締結しているH&Mをはじめ、いくつかの多国籍企業は地域のサプライヤー全社と関係を断った。極めて批判的なBBCの記事が指摘しているように、フォルクスワーゲンなど、それを拒否している企業もある。

インダストリオールは以前、フォルクスワーゲンとのGFAを停止した。同社が米国チャタヌーガ工場での組合つぶしを放置し、協定の条件に違反したからである。

インダストリオールと監視委員会が実施した調査の結果、インダストリオールとGFAを締結しているブランドの中に、新疆地域の生産との関連を維持している企業は1社もないことが確認された。しかし、グローバル・サプライチェーンが長く複雑になりすぎたため、完全に信頼できる監査を行うことは非常に難しい。

世界的なファッション・ブランドは、バングラデシュ、パキスタン、カンボジア、ミャンマーなど、域内各国の工場に既製服を注文している。これらの工場は織物工場に布を発注し、織物工場はバルクサプライヤーに綿を発注する。これを受けて綿サプライヤーは、多くの異なる供給源から綿を買い集める。サプライチェーンに関するグローバルな法的枠組みはまだないため、サプライチェーンの不正行為が見過ごされたり、サプライヤーが綿の供給元を隠したりする可能性がある。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。

「21世紀に入ってもなお、グローバル資本が綿畑などさまざまな事業分野で奴隷労働から利益を得ているのは恐ろしいことだ。事態が切迫しているため、短期的には、すべてのグローバル企業が行動要請に注意し、サプライチェーンを精査し、強制労働の証拠の有無にかかわらず、中国・新疆地域との関係を断つことが絶対に欠かせない」

「だが、これは短期的な解決策にすぎない。長期的には、現在交渉中のビジネスと人権に関する法的拘束力のある国連条約のように、サプライチェーンに関する首尾一貫した国際法が必要だ

生産・流通プロセスのすべての活動主体を集め、よりよいビジネス実施方法を取り決めさせる遵守システムも必要だ。これには世界的ブランド、グローバル・ユニオン、各国政府、全国レベルの使用者団体、支部組合が含まれる」

 

韓国で退行的労働法に対する全国デモ

2020-11-18

<JCM記事要約>

  • 韓国の労働法改正をめぐり、労働者が韓国全土でデモを行った。50年前に労働者の権利を訴えて自己を犠牲にした、活動家のチョン・テイルの精神を偲び、労働者は退行的な労働法改正撤回の要求と同時に「チョン・テイル3法」を提案した。
  • 改正案は、結社の自由の原則の侵害だけでなく、ILO結社の自由委員会による既存の勧告にも取り組んでいない。法案には、団体交渉促進、使用者の不当労働行為を十分に抑止する制裁、結社の自由の原則に従わせるための刑法第314条(営業妨害)の改正が含まれている。
  • インダストリオールは、韓国国会に対し、改正案の即時撤回を要請し、韓国は以前の約束に従ってILOの基本条約を批准しなければならないと主張した。また、引き続き韓国の加盟組織を支援していく、と強調した。

 

11月14日に韓国全土で何万もの労働者がデモを実施、韓国の労働殉教者チョン・テイルの自己犠牲から50周年を記念して、文在寅政権に退行的な労働法改正の撤回と「チョン・テイル法」の制定を要求した。

インダストリオール加盟組織の韓国金属労組(KMWU)は、韓国民主労総(KCTU)傘下の姉妹組合とともに全国でデモや行進に加わり、首都ソウルで26回、各地で13回の集会を開いた。

ソウルでは、ガイドラインに従って、それぞれの街頭行進に99人の組合員だけが参加し、他の組合員は十分な距離を保って歩道で後に続いた。しかし警察は、「組合員が街頭行進に加わろうとするかもしれない」という仮定に基づき、公共の歩道で労働者の移動を妨害し、シールドで労働組合員の集団を包囲したため、組合員たちはソーシャルディスタンスを維持できなかった。

警察は隔離措置にも違反し、大勢の制服警官と私服警官を集中的に投入してデモ参加者を押し返した。

ピンクの看板:退行的な労働法改正に抵抗しよう! 緑の看板:すべての労働者に労働組合権を!

 

インダストリオール執行委員のキム・ホギュKMWU委員長は組合員に対し、韓国の全労働者の権利を求めて立ち上がるよう促している。

「韓国における民主的な労働者運動の歴史は、労働法改革をめぐる闘いと言っても過言ではない。この闘いは50年前、チョン・テイルが労働法のコピーを持って焼身自殺したときに始まった。ILO中核的条約批准とのバーターとしての政府による労働組合法改正は、労働組合を弱体化させ、労働組合の看板だけを残そうとしている」

「私たちは10年前『チュ・ミエ』労働法改正の阻止に失敗した。現在、数々の制約を課せられ、複数の組合交渉機構がある。だが私たちには、まだ闘争と抵抗の精神がある。団結しなければならず、力を合わせてこれに立ち向かわなければならない」

韓国は基本的労働組合権を繰り返し侵害しているため、EU自由貿易協定の「貿易と持続可能な開発に関する章」の効果に関する最初の試金石となっている。

労働者の権利をめぐる韓国とのEUの紛争処理は2018年に開始、2019年に専門家パネルに持ち込まれ、組合は人権組織と協力して同パネルにアミカス・クリエ意見書を提出した。しかし、韓国国会の環境労働小委員会による法案の最終的仕上げが2020年11月30日に予定されており、パネルの報告が再三にわたって延期されているため、報告書の提出は改正内容に関する小委員会交渉の結果を待ってからになりそうである。

この改正は、結社の自由の原則の侵害だけでなく、三者構成のILO結社の自由委員会による既存の勧告にも取り組んでいない。例えば、不安定労働者のための団体交渉促進、使用者の不当労働行為を十分に抑止する制裁、結社の自由の原則に従わせるための刑法第314条(営業妨害)改正などである。

全国労働者集会では、政府に2020年6月30日の労働法改正の撤回を求めると同時に、チョン・テイルの精神も偲んだ。チョン・テイルは、労働者の権利を利用しようとしたが果たせず、自分の体に火をつけ、「私たちは機械ではない!」「私の死を無駄にしないで!」と叫びながら工場地区を走り回ったあと死亡した。

解散後のソウルの集会会場で「チョン・テイル3法」と題する本を持つチョン・テイル像

 

労働組合は「チョン・テイル3法」を提案し、請願によって議会に法案を提出するために、9月に10万人以上の署名を集めた。とりわけ、「労働者」の定義を広げて不安定労働者も労働組合権を利用できるようにするとともに、抜け穴の「例外」をなくし、従業員4人以下の小企業にも最低基準・保護を適用できるようにすることを提案している。

国会本会議の環境労働委員会は11月12日、チョン・テイル3法案を小委員会に付託して審議にかけることを決定した。

組合は、自社の製品や生産プロセスに起因する産業災害や集団的死亡を招いている状況の是正を怠る企業に責任を負わせる法案を提出するためにも、10万人を超える署名を集めた。法案の人気にもかかわらず、与党は競合案の提出を決定した。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。

インダストリオールは、退行的な法案と闘う韓国の加盟組織と連帯している。韓国国会に対し、改正案の即時撤回を要請する。その代わりに韓国は、以前の約束に従ってILOの基本条約を批准しなければならない

「インダストリオール・グローバルユニオンは2019年5月の執行委員会決議に沿って、引き続き韓国の加盟組織を支援していく」