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第118号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年12月25日)

レポート:バッテリーサプライチェーンのデューデリジェンス

2020-12-21

<JCM記事要約>

  • バッテリーの需要・生産は今後増加の一途を辿るが、複雑化されたバッテリーサプライチェーンの中で新規雇用が生まれるものの、原料となる鉱物の採掘現場では既に存在する基本的な労働組合権や環境問題といった問題も増加していく。
  • 大手多国籍企業の自社所有の生産現場とは異なり、サプライチェーンの下流では労働組合権の侵害が急激に増える。精査を行い、サプライチェーン全体の労働者の声を聞き適切な労働条件及び労働者の権利を確保することが求められる。
  • インダストリオールでは、サプライチェーンの調査や専門家との戦略会合を含んだプロジェクトを進める。サプライチェーン全体でディーセント・ワークを達成するため、拘束力のある法律を通じた、国際レベル・国家レベルでの人権と労働権の義務的デューデリジェンスの規制を要求していく。

 

バッテリーの需要・生産は今後数十年にわたって増加の一途を辿る、と予想する報告が数多くある。ほとんどの研究が2030年まで15〜20%の成長率を予想しているが、正確な数字はともかく、大きく伸びることは間違いない。これは、インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織が組織化しているバッテリーサプライチェーンで、鉱業、化学、エネルギー、電子、自動車など、すべての産業部門に重大な影響を与える。

レポート
『グローバル・ワーカー』第2号(2020年11月)より

 

文:ゲオルク・ロイテルト
テーマ:バッテリーサプライチェーン

 

 

 

 


バッテリー生産は今後、最も急成長を遂げる産業活動の1つになるだろう。すでに現在、主な原料(コバルト、リチウム、銅、ニッケル)をめぐる闘いは、児童労働、先住民の居住環境の破壊、環境破壊、水不足など、人権および労働者の権利の甚だしい侵害と受け入れがたい環境的結果を招いている。

現在、中国、日本、韓国の少数の東アジア企業が世界のバッテリー製造を牛耳っており、原料のほとんどが中国の精製所で加工されている。原料の精製所が主に中国企業に支配されていることから、透明性が著しく不足し、大きな課題をもたらしている。

世界がCO2を削減するには、スマートグリッドや環境に優しい再生可能エネルギーを利用する電気自動車や蓄電池システムをはじめ、多様な製品にバッテリーを利用していかなければならない。

バッテリーサプライチェーンは関連企業数ベースでも生産量ベースでも拡大し、複雑になっており、バッテリー電源技術を支える鉱物への需要も増えるだろう。

バッテリーサプライチェーンは関連企業数ベースでも生産量ベースでも拡大し、複雑になっているため、バッテリー電源技術を支える鉱物への需要も増えるだろう。したがって、インダストリオールがデューデリジェンス・プロセスにかかわり、労働者の権利を確保してサプライチェーンで労働者を組織化することが戦略的に重要である。

サプライチェーンの全段階からの情報があれば、すべてのステークホルダーと協力し、現場の状況を具体的に改善する戦略を練り上げることができる。

バッテリーサプライチェーン

必要な原料、特にコバルト、リチウム、ニッケル、銅の採掘が激増し、新規雇用を生み出すだろう。だが、基本的な労働組合権、児童労働、環境、先住民の権利などをめぐって、すでに存在している問題も増加していく。

中国(CATL)、日本(パナソニック)、韓国(LG化学)の3大化学・電子企業がバッテリーセル生産を支配し、新興企業も市場に参入しようとしている。

自動車部門は、自製するか購入するかについて集中的に討議している。ほとんどの自動車メーカーが、バッテリーセルを購入してから自社でバッテリーパックを組み立てることを決定している。

エネルギー部門は、主に(グリーンな)エネルギーを貯蔵するための信頼できるソリューションを調べ、需要と生産の変動のバランスを取ろうとしている。この取り組みの主な焦点はスマートグリッドの設置であり、この文脈においては、例えばマイカー所有者からのバッテリーの統合・利用である。

鉱山から自動車に至る全段階で労働者の意見を聞かせる

「適正な労働条件とグローバル・サプライチェーンにおける人権および労働者の権利の実現は、インダストリオール・グローバルユニオンにとって最も重要であり、最も困難な主題だ」とアトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長は言う。

「鉱山からエンドユーザーに至る統合サプライチェーン・アプローチの開発・実施によって、成長するバッテリー市場の勢いを利用したい」

大手多国籍企業は自社所有の生産現場ではうまく整備されているが、サプライチェーンを下ると労働組合権の侵害が急激に増える。サプライチェーンに対する多国籍企業の責任は、国連ビジネスと人権に関する指導原則を通して十分に確立されているが、強制力のある国際・国内規制がなければ、多国籍企業に責任を負わせることはできない。

グローバル・サプライチェーンの精査は、私たちがグローバルな連合団体として、多国籍企業のサプライチェーンのどこで労働組合権の侵害に関する影響力を持っているかを知るために重要である。世界的な自動車会社は、自社のコバルトやリチウムがどこで採掘されているか、どのように自社のバッテリーが製造され、エネルギーが貯蔵されているかに配慮しなければならない。

インダストリオールは、サプライチェーン戦略を開発するためにFESプロジェクトを申請した。これにはサプライチェーンの調査・精査、専門家との戦略会合、サプライチェーンを組織化している組合とのグローバル会合が含まれる。

「目的は、主要ステークホルダーとの社会的対話の制度やプラットフォームを構築し、サプライチェーン全体で万人のためのディーセント・ワークを達成すること。インダストリオールは、世界中の組合を調整し、バッテリーサプライチェーンを中心にディーセント・ワークを達成する政策に貢献できる唯一のグローバル・ユニオンだ。国際労働組合運動は、これまでになく重要になっている」とアトレ・ホイエは言う。

インダストリオールの狙い:

  • サプライチェーンのすべての段階で労働者の意見を聞かせる(そして、まことしやかな持続可能性報告を超える)真のデューデリジェンス
  • 現場の労働条件の改善
  • 部門の垣根を越えた協力

持続不可能なグローバル・サプライチェーンの規制と製造業雇用の確保は、パンデミックを受けたインダストリオールの戦略的活動の鍵である。

製造業は国民経済の原動力であり続けなければならない。今回の危機で、規制されていないグローバル・サプライチェーンにおいて労働権が甚だしいリスクにさらされていることが明らかになったため、このインダストリオールのイニシアティブでは、グローバルな貿易・生産モデルに取り組む。拘束力のある法律によって、国際レベル・国家レベルで人権と労働権の義務的デューデリジェンスを規制することを要求していく。

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