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第138号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2021年11月18日)

持続可能な海事産業のために団結

2021-11-02

【JCM記事要約】

  • 10月29日に開催された造船・船舶解撤アクショングループの会合に18カ国から約50人の労働組合代表が出席し、公正な未来に向けて持続可能な海事産業を促進することを目指し議論を行った。
  • 会合では向こう12カ月間の部門活動が承認され、新しい労働組合ネットワークを創出し開発すること、発展途上国に焦点を当てて造船・船舶解撤両産業で労働安全衛生訓練を実施すること、などに焦点が当てられている。

 

2021年11月2日:インダストリオール・グローバルユニオンの造船・船舶解撤アクショングループは、今後12カ月間の部門活動を採択し、公正な未来に向けて持続可能な海事産業を促進するために団結することで合意した。
                                                      

10月29日に開催された会合には、18カ国から約50人の労働組合代表が出席した。神田健一共同部会長が開会の辞を述べ、次のように語った。

「この部門はCOVID-19によって深刻な混乱に陥っている。ロックダウンが原因でサプライチェーンの崩壊が発生し、海運業が低迷している。まだ船腹過剰が続いている。環境面の課題が深刻さを増しており、私たちは安全問題とデジタル化にも直面しているが、この変化の波に乗れば安全でグリーンな職場で成功することができる」

アイリーン・ヨー・チョー・ジェク共同部会長は次のように言及。

「この部門は前年同期よりも良好な状況にあり、新しい船が建造され、水素燃料推進や保守用ドローン、自律システムなどの新技術が導入されている。グリーンな海運業こそが未来の姿だ――雇用を守り安全性を高めるためにも、組合員にこうした未来に備えさせる必要がある」

ノルウェーで世界初の自動運航ゼロ・エミッション船舶「ヤラ・ビルケラン」が建造され、年内に就航予定である。プラグイン・ハイブリッド客船がすでに運用されている。

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合のエルスペス・ハサウェイが、ヨーロッパの組合は公正な移行の推進に非常に積極的に取り組んでおり、一定の成功を収めていると述べた。新たに確立された海事技術部門のEU技能協定は、今後5年間に産業全体で20万人の労働者に訓練を受けさせることを目指しており、向こう10年間に23万人の新規労働者を採用する計画を立てている。この部門(特にクルーズ産業)はCOVIDによって大打撃を受けたが、欧州連合には意欲的なグリーン海運業計画がある。国際海事機構は2050年までに排出量50%削減を目標に掲げており、EUは2050年までにネットゼロを目指している。

松崎寛書記次長が、この部門が直面している世界的傾向の大要を説明し、現代重工業と大宇造船海洋の間で進行中の合併紛争をめぐる懸念に触れた。韓国金属労組(KMWU)によると、この合併が成功すれば、新会社は世界の造船業を支配し、不十分な労働慣行に基づいて大規模な整理統合がもたらされる。

松崎書記次長は、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約の批准に向けた進展について語った。現在17カ国が条約を批准しており、最低基準の15カ国を超えた。しかし、船舶解撤の大部分がバングラデシュとパキスタンで行われているため、両国による批准が重要である。

インドのビジャーダール・ラネーが条約の効果について説明した。インドは条約の基準に従い始めてから、施設が改善され、安全性が向上している。インダストリオール-FNV共同船舶解撤プロジェクトは、労働者向けに安全マニュアルを作成し、数千人の新規組合員を勧誘することに成功した。

松崎書記次長は公正な移行の重要性についても強調し、モデル例としてオーストラリア電機労組の労働協約の公正な移行に関する条項を共有した。松崎書記次長は2022年の部門活動計画を発表し、この計画には、バングラデシュ、パキスタン両国政府に香港条約批准を求めるロビー活動、船舶解撤部門と船舶解撤労組への女性参画の改善が盛り込まれている。この部門は公正な移行とグリーン・リカバリーの促進にも焦点を当てる。

会合は、向こう12カ月間の部門活動を承認した。主な焦点は以下のとおりである。

  • 新しい労働組合ネットワークを創出・開発
  • 発展途上国に焦点を当てて造船・船舶解撤両産業で労働安全衛生訓練を実施
  • ジェンダー平等促進の優良事例を研究
  • 香港条約の要件を満たすためにバングラデシュ、パキスタン両国政府へのロビー活動を強化

写真:© Yara / Knut Brevik Andersen, Wilhelmsen Ship Service

                                                                                                                                                                                                                   

 

 

 

 

組合が勝利――スト終結で3カ年賃金協約締結

2021-10-27

【JCM記事要約】

  • 南アフリカ全国金属労組(NUMSA)が、使用者との賃上げ交渉が行き詰まりエンジニアリング・金属部門の全国ストを行ってきたが、8%の賃上げ要求を6%へ妥協した3カ年賃金協約にて締結し、ストを終結させた。
  • インダストリオールは、今回の協約は今後3年間同部門の生活賃金を維持する重要なものであるとして、組合の交渉戦略が功を奏したことを称えた。

 

2021年11月27日:3週間に及んだエンジニアリング・金属部門の全国ストが終わり、南アフリカ全国金属労組(NUMSA)は10月21日、6%の賃上げを盛り込んだ3カ年賃金協約に署名した。
                                                      

インダストリオール加盟組織NUMSAは、この部門で大部分の使用者を代表する南アフリカ鉄鋼・エンジニアリング産業連盟(SEIFSA)との協約に署名した。

同労組は、この協約を他の使用者団体にも広げたいと考えている。例えば、同労組が「反労働者的で組合つぶしを行う団体」と言う南アフリカ・エンジニアリング・鋳造協会(SAEFA)や南アフリカ全国使用者協会(NEASA)である。NUMSAは、これらの使用者団体に対し、協約に署名し、協約当事者にならずに賃金交渉の結果を実施する「ただ乗り」をしないよう求めている。この産業の労働者全員が賃金協約から利益を得るべきだ、と同労組は言う。

10月25日、大手製鉄会社のマックスチールがNUMSAの要求に留意し、SAEFA傘下の使用者としていち早く最初に協約に署名した。

ストが始まったのは、組合が8%の賃上げを要求し、4.4%という使用者側の当初提示を拒否した結果、交渉が行き詰まったときだった。労働者はこの部門に対するCOVID-19の影響を緩和するために2020年に賃上げ見送りに同意し、産業の生き残りのために犠牲になった、とNUMSAは主張した。

イルヴィン・ジムNUMSA書記長は次のように言及。

「組合員の最大の利益になるように現在のストを解決することを唯一の目的に、組合として、妥協して最低6%というSEIFSAの最終の提示を受け入れるという意識的な決断を下した。スト実施中に高い代償を払ったのはNUMSA組合員であり、可能な限り早くストを解決するために組合が全力を尽くすことが労働者の利益になる。ノーワーク・ノーペイ・ルールにより、スト実施中は毎日、犠牲を伴うからだ。この協約は産業の賃金率をも保護しており、労働者は2021年7月1日から遡及賃金を受け取る」

インダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所のポール・フランス・ヌデソミン所長は次の通り言及。

「NUMSAの厳しい交渉戦略の結果、今回の賃金妥結に至ったことを称賛する。この協約は今後3年間エンジニアリング・金属部門で生活賃金を維持するので、極めて重要だ」

 

 

 

労働組合、ミャンマーの労働権・人権侵害を受けてEU貿易特恵の即時撤回を要求

2021-10-26

【JCM記事要約】

  • インダストリオールとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、欧州委員会と欧州議会、欧州理事会に対し、EUによる「武器以外のすべて(EBA)」の取り決めに基づくミャンマーの貿易特恵を取り消すよう要求している。
  • 労働組合は、雇用創出や労働条件の改善を目指すGSP(一般特恵関税制度)の目的は支持しているが、軍事政権下で逮捕や暴力などが行われているミャンマーの状況を考慮すると、制裁も必要であると主張している。

 

2021年10月25日:インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、ミャンマーにおける労働者、人権擁護者、労働組合員に対する悲惨な人権侵害に対して、EUの緊急行動を要求している。労働組合は、EUによる「武器以外のすべて(EBA)」の取り決めに基づくミャンマーの貿易特恵を直ちに取り消すよう主張している。
                                                      

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合とインダストリオール・グローバルユニオンは今日、世界中の労働組合を代表して、欧州委員会と欧州議会、欧州理事会に接触し、EUのEBA制度に基づくミャンマーの貿易特恵の即時撤回を求めた。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように言及。

「軍事クーデター後のミャンマーで起こっている出来事は人類史の汚点だ。罪のない人々の殺害や拷問、投獄は、人類に対する残忍な行動だ。私たち全員にこれと闘う責任があり、ヨーロッパには特別な責任がある。EUは、国際的な価値観と原則(労働権・人権など)に基づいて、弱い立場にある発展途上国の貧困緩和や雇用創出を支援するためにGSP(一般特恵関税制度)を与える。我々はEUに対し、この大虐殺を止めるために必要な措置を講じるよう求める」

ミャンマーの労働者は、軍事政権下で絶えず逮捕や暴力、拷問の脅威にさらされて生活しており、ミャンマーの労働組合は、現在の非民主的で虐待的な政権に対する厳しい経済制裁を求めている。

2021年2月1日のクーデター以降、ミャンマーの軍事政権は恐怖支配を実施し、労働者と工業地帯を標的にしている。デモによって正当な懸念を表明しようとしている労働組合員と労働者が軍隊に追い回され、多くの労働組合指導者が潜伏を余儀なくされており、数人が逮捕され、パスポートの無効を宣言された者も多い。

すでに約30万人の労働者が、市民的不服従運動(CDM)への参加を理由に解雇されたことが確認されている。市民の自由に対する制約は誰の目にも明らかである。

欧州委員会はEUのGSP(EBAはその一例)を、EU貿易を利用して発展途上国で雇用を創出できる手段として促進している。労働組合は、世界の最貧国のいくつかで労働者の労働権と労働条件を改善するという目標をはじめ、GSPの重要な目的を支持している。

しかし労働組合は、GSPが大きな効果を上げるようにするために、ひどい労働権・人権侵害を考慮して、制裁も利用しなければならないと主張している。

両組織は、ミャンマーから投資を引き揚げるとともに、責任をもって労働者を取り扱い、注文を完了するよう多国籍企業に求めるとした、ミャンマーの労働組合運動(CTUMとIWFM)の共同要求を支持している。

ジュディス・カートン・ダーリング・インダストリオール・ヨーロッパ労働組合書記次長は次のように言及。

「ミャンマーの現在の軍事独裁政権が市民を虐待して基本的人権を侵害し、多くのILO条約に違反していることは明白である。EUのGSPは、労働者が労働権を尊重されて安全な状況で働けるようにするために作られている。ミャンマーはそれとはかけ離れた状況にあり、私たちはEUがミャンマーの労働者の要求に沿ってミャンマーのEBAを至急取り消すよう要求する」

 

 

 

インド鉄鋼業で組合が勝利

2021-10-25

【JCM記事要約】

  • インドの労働組合が、スチール・オーソリティー・オブ・インディア(SAIL)およびラシュトリヤ・イスパット・ニガム(RINL)で2017年から保留となっていた賃金協約の妥結に成功した。この協約は従業員10万人以上に利益をもたらすこととなり、2017年から10年間有効となる。
  • インダストリオールは組合の努力によるこの成果を称え、他の民間鉄鋼メーカーが今回の協約をインド鉄鋼業の全国ガイドラインとして尊重するよう、鉄鋼労組が促せることを期待する、と祝した。

 

2021年10月25日:インダストリオール加盟組織のINMFとSMEFIを含むインドの組合は、スチール・オーソリティー・オブ・インディア(SAIL)およびラシュトリヤ・イスパット・ニガム(RINL)で待望の賃金協約の妥結に成功し、10万人を超える従業員に利益をもたらした。
                                                      

10月22日に全国鉄鋼業合同委員会(NJCS)が締結した賃金協約は、2017年1月から保留となっていた。正社員は、最低保証給付の13%引き上げと付加給付・手当の26.5%増額だけ支給される。

2020年4月1日からの未払賃金は、SAIL従業員については一括で支払われる。RINL従業員については、現地の労使が支給日を決定する。

「SAILとRINLは主要鉄鋼会社として、ディーセント・ワークを達成するために組合と協調する責任がある。パンデミックによる厳しい経済情勢下で、双方が納得できる解決に至ったことに満足している」とINMF会長兼インダストリオール執行委員のG・サンジーバ・レディー博士は述べた。

この協約は11月に鉄鋼省に承認されると予想され、労働者は11月分の賃上げを12月に支給される。協約の有効期間は2017年1月1日からの10年間である。

「交渉は厳しかったが、一貫した共同活動によって好ましい結果を達成した。今回の合意に至ることができたのは、ひとえに工場レベルの強力な支援のおかげだ」とインダストリオール執行委員を務めるサンジャイ・バダブカールSMEFI書記長は述べた。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は、この勝利に関して組合を祝福した。

「鉄鋼労組が集中的に注力し、他の民間鉄鋼メーカーに、この協約をインド鉄鋼業の全国ガイドラインとして尊重し、これに従うよう促すことを期待している」

NJCSは、SAIL/RINL経営陣とインドの中央労働組合連盟5団体で構成され、賃金と他のすべての社会・経済条件等を決定する。

SAILは公共部門の製鉄会社で、国内に多数の工場と約20の炭鉱・鉄鉱石鉱山がある。RINLはビシャカパトナムに主要鉄鋼工場を所有している。