広報ニュース

第154号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2023年1月13日)

労働組合、COP27の2週目の戦略を策定

2022-11-14

【JCM記事要約】

  • COP27の1週目の土曜日、労働組合は市民社会組織と共にデモに加わり、「労働組合は公正な移行を支持」等のスローガンのもと、気候の公平性のための世界行動デーを支持した。その翌日には労働組合戦略デーを開催し、気候交渉へ対しての戦略的アプローチを議論した。
  • また、参加者はグループセッションにて、『各国の公正な移行に関する協定・法律』『労働組合の気候行動および動員』『団体交渉における公正な移行』の3つのテーマについて議論を行った。インダストリオールからは、公正な移行へ向けた社会対話を利用し結社の自由を要求できる、団体交渉で公正な移行が取り上げられるべきだ、等と発言した。

 

2022年11月14日:COP27会場は今度の日曜日に閉鎖されるかもしれないが、シャルム・エル・シェイクに集まった組合は土曜日に会場内でデモをしたあと、「私たちの声を聞かせ」、公正な移行が交渉で希薄化されないようにするために戦略を練る。
                                                      

パリ協定の実施をめぐる交渉にあたって、公正な移行は重要である。この言葉を乗っ取られてはならず、公正な移行の目的は労働者の権利、良質な雇用、社会的対話でなければならない。

COP27の労働組合代表団は土曜日、市民社会組織とともに大規模なデモに加わり、「気候の公平性のための世界行動デー」を支持した。

この行進は、組合が公正な移行についての自分たちの見方を伝える機会だった。労働組合員は次のようなスローガンを掲げた。

「労働組合は公正な移行を支持」

「死んだ惑星に雇用はない」

「労働権なくして気候の公平性なし」

街頭での自由な抗議は許可されていないため、行進は会議場内で行われた。

日曜日には、ITUCとフリードリヒ・エーベルト財団が労働組合戦略デーを開催、世界中から約80人の労働組合COP代表が集まり、気候交渉、対政府ロビー活動、企業との労働協約への公正な移行の包含に対する戦略的アプローチを練り上げた。

代表たちはCOP27の折り返し地点で、交渉の現状についての最新情報を与えられた。昨年COP26でパリルールブックが仕上げられた。今年は実施に焦点を当てており、損失と損害、気候資金、国家計画における公正な移行の実施をめぐる重要な交渉がある。

参加者はグループに分かれてセッションを行い、公正な移行の3つの重要な要素に取り組んだ。

1. 各国の公正な移行に関する協定・法律:ボイトゥメロ・モレテ(COSATU)、アン=ベス・スクレード(LOノルウェー)

「公正な移行をめぐる政治的な勢いがある。ますます多くの国々が、公正な移行をUNFCCCの「国が決定する貢献(NDC)」に盛り込むようになっている。社会的対話と民主主義は公正な移行の必要条件であるため、これを利用して結社の自由を要求し、組合が組織化して国内レベルで自分たちの地位や交渉力を高める余地を設けることができる」とインダストリオール・グローバルユニオンのウォルトン・パントランドが述べた。

2. 労働組合の気候行動および動員:ババカール・シラ(CNT)、サッシャ・ディエルクス(ABVV)、アレックス・キャラハン(CLC)

「労働組合運動内部に多様な意見があるため、市民社会組織との協力は簡単ではない。協力分野を探さなければならない。あらゆる点で意見が一致することはないが、市民団体とやりとりする場を設ける必要がある。労働組合が、万人のための気候の公平性に向けた労働運動の強化を目指して基盤を築いたり、同盟を結成したりするために、どのように機能しているかについて教育しなければならない」とカナダ労働会議のアレックス・キャラハンが述べた。

3. 団体交渉における公正な移行:ジョン・マーク・ムワニカ(ITF)、ダイアナ・ジュンケラ(インダストリオール・グローバルユニオン)

「公正な移行と気候政策が地方・全国・世界・企業レベルの団体交渉で取り上げられるようにする必要がある。組合は、気候変動やエネルギー転換が原因で労働者が直面しているさまざまな課題で労働者を守るために、具体的な文言を盛り込まなければならない」とインダストリオール・グローバルユニオンのダイアナ・ジュンケラ・キュリエルが述べた。

公正な移行センターのサマンサ・スミスが、同センターの活動と新たに開始されたエネルギー部門に関する公正な移行イニシアティブを発表した。

「私たちは公正な移行に関して加盟組織と懸命に協力している。組合員は移行がすでに起こっていることを知っており、準備したいと考えている。私たちは、このプロセスを支援するためにここにいる。議論に加わるために闘っており、組合員のために公正な移行を勝ち取るつもりだ!」

戦略デーの最後に、ITUCアフリカのエリック・マンジが締めくくりの言葉を述べた。

「この交渉で引き続き努力しよう。来週は重要だ。良い結果を期待している」

            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スリランカの労働者が高インフレで苦闘

2022-10-27

【JCM記事要約】

  • 10月20日にスリランカ・コロンボにて生活賃金ワークショップが開催された。同国では食品価格の上昇率に賃金が追いついていない状況。ワークショップにて参加者は、生活賃金確保のため、分野別交渉やグローバル枠組み協定、政労使フォーラムなどについての議論を行った。
  • インダストリオール南アジア地域事務所のアプールヴァ所長は、賃金引上げの達成には産業別交渉メカニズムが必要であり、インダストリオールはブランドとメーカーに対し、労働組合とともに衣類部門の産業別賃金交渉を検討するよう要求する、と述べた。

 

10月27日:10月20日にコロンボで開催された生活賃金ワークショップで、労働組合員は、この国の労働者が生活賃金を支払われていない現状に対する懸念を示した。
                                                      

労働組合は全国最低賃金を2万6000スリランカ・ルピー(71米ドル)に引き上げるよう要求しているが、政府は応じていない。

スリランカでは9月に食品価格の上昇率が95%まで上昇したが、賃金は低いままである。一部の工場では、労働者は全国最低賃金の1万6000スリランカ・ルピー(44米ドル)しか支払われていない。自由貿易地域の移民労働者の賃金は住宅費にも足りない。地域で進行中の賃金危機はスリランカで最悪の形を取っており、この国は先例のない経済危機からまだ立ち直っていない。

危機発生前、労働者は低賃金にもかかわらず、超過労働手当、精勤ボーナス、交通機関、その他のインセンティブのおかげで何とか生活することができた。しかし、これらの給付が打ち切られてから、手取りが大幅に減少した。企業はインセンティブ廃止の理由として受注低迷を挙げている。

ワークショップ参加者は、これらの課題を克服するために、組合は現場における組合の力の構築と適正な賃金を求める共闘によって、生活賃金を確保する必要があることを明らかにした。参加者は、分野別交渉やグローバル枠組み協定、政労使フォーラムなど、生活賃金キャンペーンに効果的に利用しなければならないメカニズムについて議論した。

生活賃金の必要性に関する10月21日の円卓会議に出席した世界的な衣料品ブランドの代表は、衣料産業は現在、地球規模の高インフレが原因で生き残りをかけて活動していると述べた。

スリランカのメーカーは、価格を抑えて時間どおりに配達している他の南アジア諸国との厳しい競争にさらされている。ブランド各社は、スリランカの工場を稼働させ続けて労働者が職を維持できるようすると保証した。

インダストリオールに加盟している自由貿易地域・一般サービス従業員組合のアントン・マークス共同書記は言う。

「ブランドは、注文が途切れないようにすることによって社会的責任を果たさなければならない。メーカーが労働者に1万スリランカ・ルピー(27米ドル)の経済救済手当を払えない場合は、ブランドがメーカーを支援しなければならない。今こそスリランカ人との連帯を示すときだ」

組合・ブランド双方が、アパレル産業全体を変革し、労働者が適正な賃金を受け取れるよう保証する必要があることを認めた。

アプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長が述べた。

「労働組合は、スリランカ全国、特に多数の女性労働者(その多くがシングルマザー)を雇用するRMG部門で、賃金を引き上げる必要があることを明確に理解している。それを達成するには産業別交渉メカニズムが必要だ。私たちはブランドとメーカーに対し、労働組合とともに衣類部門の産業別賃金交渉を検討するよう求める」

       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

炭素回収・貯留(CCS)なくして気候目標の達成は不可能

2022-10-26

【JCM記事要約】

  • 10月24日、インダストリオールは国際労働組合総連合(ITUC)、LOノルウェーと共に、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として、炭素回収・貯留(CCS)に関する2022年技術ワークショップの最終回を開催した。大気からCO2を除去して地域に熱や電力を生み出すCCSによる廃棄物発電は、廃棄物を削減できる重要な解決策であり、ここから多くの雇用が生まれる。
  • インダストリオールのカメルMENA地域事務所所長は、石油・ガスの生産・輸出に依存し化石燃料が重要視されているMENA地域にとっては、産業を停止させずに排出を削減できるCCS技術は非常に興味深いものである、と述べた。

 

2022年10月26日:国際労働組合総連合(ITUC)、LOノルウェーおよびインダストリオールは10月24日、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として、炭素回収・貯留に関する2022年技術ワークショップの最終回を開催した。
                                                      

炭素回収・貯留(CCS)による廃棄物発電は、再生不可能な廃棄物を最終的に処理することができ、大気からCO2を除去して地域に熱や電力を生み出す。だが専門家は、この技術を本格展開するには適正な枠組みと条件が必要だと説明した。

石油化学製品、鉄鋼、非金属鉱物など、欧州の重工業では大量の排出が発生しており、グリーンスチールを除いて、これらの排出を削減するための商業的に採算の合う方法はほとんどない。したがってCCSは、抑制が難しいこれらの排出に対する重要な解決策である。CCS技術を開発する多くの機会があり、ノルウェーはそれに投資している世界の主要国の1つである。

「CO2回収はCCSバリューチェーンで最大の市場となっている。排出削減と移行雇用の機会を知らしめることが重要だ」とLOノルウェーのオーレ・トマスゴールが述べた。

ノルウェーの科学機関は、包括的な事業計画を作成するために、CCSにおける雇用創出と機会に関する組合向けの研究を実施した。使用者団体と組合は、CCSによる公正な移行を調べるために協力している。

調査結果によると、CCS(回収と貯留場所へのCO2輸送の両方)における雇用創出に関しては多くの雇用が生まれ、CCSは排出を削減しつつ産業で既存の雇用を維持するのに役立ち得る。雇用の可能性を解き放つために、投資と政府支援を行い、本格的なプロジェクトの拡大に重点を置く必要がある。

「組合は労働者が組織化されるようにしなければならない。ノウハウがあれば国際的な可能性が開ける。本格的なプロジェクトは、地球規模で有益な適格の技術や解決策、経験を与えてくれるだろう」とトマスゴールは続けた。

ノルウェーのロングシップ・プロジェクトにかかわっているセルシオのマーカス・ホールが、ロングシップは政府の本格的な炭素回収・貯留プロジェクトだと説明した。史上初の国境を越えたオープンソースのCO2輸送・貯留インフラネットワークで、欧州全域の企業にCO2を安全かつ恒久的に地中貯留する機会を提供する。

「プロジェクトのフェーズ1は2024年中ごろに完了の予定で、年間最大150万トンのCO2を貯蔵できる」とホールは述べた。

気候変動の解決策を得るためにノルウェーの使用者・労働組合と協力している環境NGOベローナのオーラブ・オイエが、CCSに関する勧告を次のように説明した。

「CO2輸送・貯留のための法的枠組みと資金を生み出し、産業を閉鎖するのではなく排出を回収・貯留し、グリーン水素を2035年まで待っているのではなく、今すぐCCSを始める!」

回収したCO2は製品や産業プロセスに利用できるのかどうかについて、参加者からいくつか質問があった。研究やパイロットプロジェクトによれば、合成燃料、化学製品、建築資材へのCO2利用に関して有望な結果が出ている、と専門家は説明した。しかし、回収CO2の利用がすべて排出削減をもたらすわけではない。それは特に、CO2を製品に変えるためにどれくらいのエネルギーが使われるかという要因によって決まる。排出のライフサイクル評価が重要である。

特にグローバルサウスから提起されたもう1つの懸念は、大規模CCSプロジェクト用インフラの導入には多額の投資が必要であることから、排出量の多い小規模経済にとってどの程度魅力があるかということだった。太陽エネルギーが豊富なアフリカでは、多額の投資が必要であるうえに、代替的なエネルギー生成方法が存在するため、CCSはそれほど魅力的ではない。

中東・北部アフリカ(MENA)地域では、地域経済が石油・ガスの生産・輸出に依存しているため、化石燃料が重要である。化石燃料は多くの雇用と収益を提供している。イラクでは国家予算の90%以上が石油・ガスから得られており、同時にMENA地域は旱魃から水不足、熱波、生態系への損害まで、気候変動の影響を最も大きく受けている。

「この地域ではCO2排出削減イニシアティブがいくつか実施されている。これには再生可能エネルギーへの移行やCCSへの投資が含まれる。この地域では太陽エネルギーにも非常に大きな可能性がある。CCSが湾岸諸国にとって非常に魅力的である理由は、排出を削減できるからだ。この技術は即座に産業を停止させるのではなく、第一歩として浄化を促すため、この地域の組合にとって特に興味深い」とアーメド・カメル・インダストリオールMENA地域事務所所長は述べた。

米国インフレ抑制法(IRA)の下で、さまざまな地域でCCSハブを確立するために連邦資金が供給されている。オハイオバレーでは、いくつかの州と企業、それに全米鉄鋼労組(USW)をはじめとする組合が協力しながら、鉄鋼、鉱業、石炭火力発電所からの排出を削減するためにCCS水素施設の建設資金を申請している。

USWはアメリカで失業を心配している精製所労働者も代表している。アメリカでは、排出を削減できる産業プロジェクト向けに多額の連邦資金がある。USWは、この資金の充当先に影響を与え、精製プラントへの対処に振り向けられるようにする方法を調べている。

「エクソンその他の企業は、精製所や化学工場、給油施設からの排出を回収するために、メキシコ湾に世界最大のCCS施設を建設する計画を立てている。そのためには、関連インフラが巨大であるため、政府資金があるにしても、ずっと多くの資金が必要になる。だが全体として、組合は雇用保護の取り組みが不十分だと考えている」とUSWのマイク・スミスは述べた。

 

キャタピラー・ネットワーク、グローバルな連帯の構築に尽力

2022-10-21

【JCM記事要約】

  • 10月19日にキャタピラー・グローバル組合ネットワークのオンライン会合が開催された。同社が組合に対して攻撃的な行動を取ることから各地で紛争が起こっている中、会合ではグローバル組合ネットワークが連帯活動やキャンペーンで効果をあげていることが確認された他、各国の団体交渉や労働条件につても議論された。
  • インダストリオールのクリスティン書記次長は、同社が従業員に対して無礼な扱いをし、誠意を持って行動していないことを批判し、キャタピラー・ネットワークは労働者の代弁機関として経営陣に労働者の意見を聞かせる役目を担っている、と強調した。

 

2022年10月21日:キャタピラー・グローバル組合ネットワークは10月19日、オンライン会合を開いた。この米国系巨大企業には、世界中の事業で組合と労働者、対話に反対する行動を取ってきた過去がある。
                                                      

この組合に対する攻撃的な行動は今、新たなレベルに達した。ネットワークに参加しているほとんどすべての国で紛争が起こっている。

労働組合代表と職場委員は全レベルで軽視されており、この軽視は業界で否定的な基準を定めている。このネットワークは今年、北アイルランドと日本で悪化を確認した。北アイルランドでは労働者の権利が完全に無視され、その結果ストが実施された。

その一方で、このグローバル組合ネットワークは連帯活動やキャンペーンの組織にあたって効果を上げるようになっており、今年の夏、同社が北アイルランドで労働者を虐待した際、このような取り組みが見られた。インダストリオール・グローバルユニオンとUAW、欧州従業員代表委員会(EWC)は、数日のうちに連帯活動を実施し、現場のインダストリオール加盟組織ユナイトを支援した。

これらの具体的な事例だけでなく、参加者は各国の団体交渉や労働条件にも検討を加えた。経営側のさまざまな態度が特に関心の的になった。

チャールズ・(チャック・)ブラウニングUAW副会長の管理スタッフであるトーマス・ウェーバーと彼のチームがネットワークに、米国の企業レベルの最新情勢だけでなく、UAWの状況についても話した。現在のところ、アメリカの各支部が2023年春のキャタピラーとの交渉に備えている。この情報セッションは、UAW副会長のチャールズ・ブラウニング・ネットワーク議長に代わって実施された。

いくつかの話題の中で、同社における半導体不足が代表にとって主要な関心事である。供給を改善できなければ、一部の施設は操業短縮に入るか、受注した機械を納入できなくなってしまう。代議員は、来年の組合ネットワーク直接会合の可能性についても議論した。可能であれば、同じ部門の他の企業別ネットワークとともに新しい環境で開催できるだろう。インダストリオールとUAWは、この可能性を検討して案を練り上げる。

クリスティン・オリビエ・インダストリオール書記次長がネットワーク参加者を前に発言し、多国籍企業との社会的対話に関する立場をめぐってインダストリオールで行われている最新の議論を紹介した。

「キャタピラーは従業員に対して無礼な扱いをし、誠意を持って行動しておらず、これは世界各地の大多数の現場で明白である。私たちは抵抗する。キャタピラー・ネットワークは労働者の代弁機関となり、経営陣に労働者の意見を聞かせる」とマティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長は言う。

                      

 

 

 

 

 

 

船舶リサイクル職場で全労働者の安全確保のために緊急行動が必要!

2022-10-20

【JCM記事要約】

  • トルコの船舶リサイクル施設がEUの船舶リサイクル施設リストから削除されたことを受け、インダストリオールとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は世界中の船舶リサイクル施設で労働安全衛生基準を改善する方法を議論している。EUでは労働条件改善・環境基準強化のため、施設リストの他に欧州船舶リサイクル規制を導入しているが、これは香港国際条約の批准促進も目指すものである。
  • インダストリオールの松崎書記次長は、インダストリオールとしてこの産業が高水準の船舶リサイクルならびに質の高い安全な組合雇用を提供するものとなることを期待しているが、そのためには世界的に認められた最低基準と、組合との社会的対話が必要である、と強調した。

 

2022年10月20日:インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、船舶リサイクル施設における適切な安全衛生対策の導入を確保するために、安全な船舶リサイクルのための効果的な世界レベル・欧州レベルの規制と労働組合の関与を求めている。労働者が無事に帰宅できるかどうか分からないまま出勤するようなことがあってはならない。
                                                      

トルコのシムセクラー船舶リサイクル施設で労働者2人が死亡するという悲劇が起こった結果、この施設がEUの船舶リサイクル施設リストから削除されたことを受けて、インダストリオール・ヨーロッパ労働組合とインダストリオール・グローバルユニオンは、世界中の船舶リサイクル施設で労働安全衛生基準を改善する方法について欧州委員会と議論しており、優れた安全衛生慣行を確保するには強力な労働組合が不可欠だと強調している。

インダストリオール・グローバルユニオンのスペシャル・レポートで強調されているように、船舶リサイクル工程の一部である世界の船舶解撤部門は極めて危険であることで知られ、不安定な労働条件、貧困賃金、訓練不足、安全装置や医療へのアクセスの欠如を特徴としている。残念なことに、この部門では死亡事故が珍しいことではなく、上述したトルコの2件だけでなく、2022年に入ってから大事故が20件以上発生し、6人が死亡したバングラデシュの労働条件も非常に懸念されている。労働組合は、世界中の船舶リサイクル施設における事故防止と労働条件改善のために緊急行動を要求している。

EUは、欧州シップリサイクル規制とEU船舶リサイクル施設リストによって厳しい基準を導入しており、欧州政策当局は、これらの手段を利用して世界中の船舶リサイクル施設で労働条件を改善し、環境基準を強化したがっている。どちらの手段も現在審査中で、インダストリオール・ヨーロッパ労働組合とインダストリオール・グローバルユニオンは、この機会を利用して協議に応じ、欧州委員会と会談して現場の労働者の経験を強調するとともに、結社の自由、強力な労働組合、質の高い社会的対話のすべてが職場における労働者の安全確保に必要だと主張した。労働組合は規制の遵守を徹底的に監視し、組合員の労働慣行を変え、危険な作業に異議を申し立てることができる。

EUシップリサイクル規制の目的は、船舶解撤/リサイクル・プロセスにおいて事故やけが、健康・環境に対するその他の悪影響を防止、軽減および最小化することであり、労働組合はこれを支持している。EUの規制は、インダストリオール・グローバルユニオンが長年にわたって支持している国際海事機構の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約の批准促進も目指している。

近い将来、船舶リサイクル需要が激増しそうであり、船舶解撤(総トン数)のほぼ90%がインド、パキスタン、バングラデシュで行われているため、世界の現行施設が一定の水準に達するようにするために投資が必要である。そのためには、ソーシャル・パートナーと国家当局が、船舶リサイクル需要の増加に備えるとともに、香港条約とEU規制に定める基準をすべて満たすためのロードマップを策定しなければならない。

松﨑寛インダストリオール・グローバルユニオン書記次長が述べた。

「インダストリオール・グローバルユニオンの優先課題は香港条約の発効だ。来年はそのために重要な年だ。この条約は、安全かつ環境上適正な船舶リサイクルの基本的な国際基準を導入する。EU規制は条約を補完するものであり、再検討の過程で労働者の意見を聞くことが重要だ。私たちが構想しているのは、高水準の船舶リサイクルならびに質の高い安全な組合雇用を提供する繁栄する産業だ。成功の鍵は、世界的に認められた最低基準と、組合との社会的対話だ」

ジュディス・カートン=ダーリング・インダストリオール・ヨーロッパ労働組合書記次長が述べた。

「EU船舶リサイクル施設リストの第10回再検討でトルコの2つの船舶リサイクル施設が削除されたことは、関係パートナー全員にとって失敗だ。緊急にこれらの施設の安全衛生基準を改善し、ヨーロッパ内外でより多くの施設がクリーンかつ安全に船をリサイクルするよう支援する必要がある。サーキュラーエコノミーは船のライフサイクルにおいて重要な役割を果たす。これらの現場で労働者を保護しつつ、この貴重な二次原料をフル活用しなければならない」

 

航空労組、2050年までの炭素排出量実質ゼロに関するグローバル協定を歓迎

2022-10-14

【JCM記事要約】

  • 国際民間航空機関(ICAO)の第41回総会で、184カ国が航空産業の2050年までのネットゼロ目標に合意した。この総会を前に、インダストリオールは国際運輸労連(ITF)、欧州運輸労連(ETF)と共に、ゼロカーボンの未来に繋がる公正な移行へ向け、質の高い社会的対話や訓練への投資などを求めた労働組合による合同要求書を作成していた。
  • インダストリオールのゲオルグ航空宇宙産業担当部長は、国際基準に基づくゼロエミッション解決策の考案に時間がかかるほど、生じる損失の代償は労働者が支払うことになるとし、2050年までの炭素排出量実質ゼロの長期的な地球規模の野心的目標(LTAG)及び関連政策の実施に関与する必要がある、と述べた。

 

2022年10月14日:国際レベル・欧州レベルの労働組合は、2050年までの航空分野の炭素排出量実質ゼロに向けた新しいグローバル協定を歓迎しているが、社会的基準に関する約束など、国家レベルでより強力な約束を要求している。1人の労働者も1つの地域も置き去りにしてはならず、万人のための公正な移行が必要だ!
                                                      

数週間の交渉を経て、国連専門機関である国際民間航空機関(ICAO)の第41回総会で、184カ国が航空産業の2050年までのネットゼロ目標に合意した。

航空運輸・航空宇宙労働者を代表している労働組合は、ずいぶん前から脱炭素化に関する国際的野心の強化を要求しており、すべての国々と産業、労働者には航空部門全体の脱炭素化において果たすべき役割があると強調してきた。

この総会を前に、国際運輸労連(ITF)、インダストリオール・グローバルユニオン、欧州運輸労連(ETF)、インダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、協力して労働組合による合同要求書を作成した。労働組合がICAOに提出したこの要求書は、ゼロカーボンの未来に向けた公正な移行を要求し、社会的責任を持って航空産業の脱炭素化を管理する必要があることを強調した。この報告書は、質の高い社会的対話、訓練への投資、ソーシャル・パートナーと関連当局による部門アクション・プランの作成を要求した。

残念ながら、最終的な宣言には拘束力がなく、「社会的・経済的・環境的に持続可能な方法で、国の事情に応じて」目標を達成するよう各国に促しただけであった。

最終的なICAO決議と2050年までの炭素排出量実質ゼロの長期的な地球規模の野心的目標(LTAG)の採択に対しては、さまざまな反応があり、欧州連合と欧州産業からは肯定的なコメントがいくつか寄せられた。NGOは、合意に拘束性がないことから、より批判的である。

ゲオルク・ロイテルト・インダストリオール航空宇宙産業担当部長が次のように述べた。

「航空宇宙産業は、国際基準に基づくゼロエミッション解決策を考案する必要に迫られている。これに時間がかかるほど、結果として生じるが増える。だから私たちは組合として、LTAGと関連政策の実施に関与しなければならない」

ガブリエル・モチョ・ロドリゲスITF民間航空担当書記が述べた。

「私たちは持続可能な未来を確保するために時間と競争している。何百万もの航空労働者が気候変動の影響をもろに受けており、それによって航空産業の職場の危険性が高まっている。乱気流の増加は乗客・乗員に大きなリスクをもたらし、猛暑は空港運営を混乱させ、海面上昇は空港を水浸しにする恐れがある。ICAOのLTAGは苦労してここまで到達したが、必要なスピードで行動を進めるには、労働者が脱炭素化と航空産業の移行の原動力にならなければならない」

イザベル・バルト・インダストリオール・ヨーロッパ労働組合書記次長が述べた。

「気候変動は地球規模の問題であり、私たちはすべての国と地域に対し、持続可能な航空燃料の採用やカーボンニュートラルな航空機の開発などによって、飛行の気候影響を削減する努力を強化するよう引き続き求めていく。労働者はグリーン移行の中心にいるが、残念なことに、ICAOの宣言では忘れられているようだ! 1人の労働者も1つの地域も置き去りにされないようにするために、質の高い社会的対話と適切な支援を要求する。グリーン移行は公正な移行でなければならない」

オーエン・コーツETF民間航空部会長が述べた。

「社会的期待と環境目標は密接に関連していなければならない。労働者は環境移行プロセスの中心にいる必要がある。その移行は公正でなければならず、立案から実施に至るプロセスに労働者が積極的に参加できるようにしなければならない。航空産業のグリーン化が進む中で、労働者が新たな進展に適応できるよう援助し、健全で持続可能な雇用を保障しなければならない。LTAGが業界の環境的持続可能性に関して遂げた進展を歓迎するが、社会的持続可能性に関しては、しなければならないことがまだ多い」

 

SKF世界組合協議会が経営陣と会談

2022-10-07

【JCM記事要約】

  • 10月3~6日に、SKF※欧州従業員代表委員会(EWC)、世界組合協議会(WUC)およびSKF経営陣がスウェーデンにて会合を行った。会合の1日目と2日目ではSKFの今後の活動や戦略、エネルギー危機、WUCに関する議論が行われ、3日目には経営陣からグループの戦略目標と将来のフットプリントについての発表が行われた。(※SKFはスウェーデンの世界最大手ベアリング製造メーカー)
  • WUC議長と副議長は、組合には発言権があることを改めて確認したうえで戦略的な議論・決定に関する情報と協議を要求し、経営陣はこの要求に応えることを約束した。

 

2022年10月7日:SKF欧州従業員代表委員会(EWC)、世界組合協議会(WUC)およびSKF経営陣がスウェーデンのイェテボリで久しぶりの対面会議を開き、同社の戦略と今後をめぐって協議した。
                                                      

10月3-6日、SKFが事業を展開しているほとんどすべての国々から40人前後の組合指導者が集まった。ケネス・カールソンWUC議長が参加者を歓迎し、この会議にSKFのウクライナ事業の代表が参加したことの重要性を強調した。

初日には、ヨーロッパの代議員がSKFの今後の活動や戦略、フットプリントについて経営側と議論した。この欧州従業員代表委員会では、エネルギー危機とウクライナに対するロシアの戦争の影響も話題に上った。

2日目は、グローバルな社会的対話機関であるWUCに関する内部での議論に集中した。運営委員会が最新情勢について報告し、マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長が次のように述べた。

「SKF WUCは独特だ――グローバル・レベルで社会的対話を行うための非常に成熟した機関であり、組合の関与に専念している。あらゆる労働組合が――ホワイトカラーかブルーカラーかを問わず――SKFの労働者のために協力することが、労働者にとって決定的に重要だ。そして、これは危機や変化の時期にはよりいっそう重要になる。私たちは労働組合として、組合員を導いてグリーンテックやデジタル化の課題を切り抜けさせる責任を負う。目標は、これを公正な移行にすることだ」

スウェーデンのインダストリオール加盟組織IFメタルのマリー・ニルソン会長が会合に参加、スウェーデンの産業環境における変化を取り上げ、グリーンテクノロジー関連の持続可能な産業政策の策定に特に言及した。同会長はウクライナ代表団を歓迎し、IFメタルの連帯を約束した。

3日目には、代議員はSKF経営陣から情報を受け取った。リカード・グスタフソンCEOとアン=ソフィー・ザックス人事部長が、グループの戦略目標と将来のフットプリントについて発表した。発表に続いて参加者との議論が行われた。

ケネス・カールソンと独ノルベルト・フェルクルのWUC副議長がWUCを代表して、戦略的な議論・決定に関する情報と協議を要求、組合に発言権があることを確認した。CEOと経営陣はこの要求に応えると約束した。WUCは経過をフォローアップしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

                      

 

アジア太平洋の組合、ホワイトカラー労働者組織化の取り組みを強化

2022-10-05

【JCM記事要約】

  • 9月28~29日に開催されたオンライン会合に日本やオーストラリアなどから組合員45人が参加し、地域におけるホワイトカラー労働者の組織化と権利促進について議論を行った。日本からは、石原JCM事務局次長から、労働組合がホワイトカラー労働者に利益を提供できることを示すことが重要だ、と意見が述べられた。
  • インダストリオールのクリスティン書記次長は、労働組合員はメンタルヘルスや労働安全衛生の問題を深刻に受け止め、組合をホワイトカラー労働者により適したものにする必要があり、中核的労働基準は労働者の権利・利益を保護するための一つの指針となる、と述べた。

 

2022年10月5日:オーストラリア、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの労働組合員45人が9月28-29日にオンライン会合を開き、地域におけるホワイトカラー労働者の組織化と権利促進について討議した。
                                                      

技術革新と職務記述書の変化に直面して、シンガポールの先端製造業従業員組合はナショナルセンターと協力しながら、同国の労使関係法を改革して限られた人数のホワイトカラー労働者を労組に加入させられるようにすることを提言している。

「労働組合がホワイトカラー労働者に利益を提供できることを示すことが重要だ。例えば日本では、ブルーカラー、ホワイトカラー両方の組合員が、労働組合が設立した労働金庫から低利の融資を受けることができる。組合を労働者にとって魅力的なものにしなければならない」と石原祐介JCM事務局次長は述べた。

フィリピン、インドネシア、タイでは、大多数のホワイトカラー労働者が女性である。労働者の権利に対する認識の不足、プラットフォームワーカーの組織化に関する制限的な法律、労働者を監視・管理するための自動化の拡大などが、ホワイトカラー労働者を組織化するうえでの課題である。

参加者は、ホワイトカラー労働者を対象とする組織化計画を再考することに合意した。組織化活動にあたって、ホワイトカラー労働者の利益に関する問題、例えば長時間労働、メンタルヘルス、切断する権利、テレワーク給付を強調すべきである。

組織化にあたって、ホワイトカラー労働者の権利と利益を保護するうえでの団体交渉の重要性を強調しなければならない。

「中核的労働基準は、デジタル経済で結社の自由を実現し、労働法改革を提言するうえで指針となる。メンタルヘルスや労働安全衛生の問題は長い間軽視されてきたため、労働組合員はこの問題をもっと深刻に受け止めなければならない。組合をホワイトカラー労働者により適したものにする必要がある」とクリスティン・オリビエ・インダストリオール書記次長は述べた。

CFE-CGC出身のコリン・シェウィン共同部会長が、フランスでホワイトカラー労働者が直面する問題と、彼らを組織化するための戦略について語った。

「産業の変化を受けて、ホワイトカラー労働者の雇用創出が増えている。そういうわけで、すべての国で組織化し、彼らを引きつけて組合員を増やさなければならない」とスウェーデンの組合ユニオネンのマグヌス・シェルソン国際部長が、同労組会長のマーティン・リンデル共同部会長に代わって述べた。