広報ニュース

第167号インダストリオール・ウェブサイトニュース

労働組合がイスラエルにおける移民労働者に懸念を表明

2024-01-31

2024年1月31日:南アジアの労働組合は、パレスチナでの戦争が続く中、イスラエルへの不安定労働者の移住について懸念を表明した。


パレスチナ占領地ガザとヨルダン川西岸地区への空爆が続く中、イスラエル政府はパレスチナ人労働者の入国を禁止している。100万人以上のパレスチナ人労働者が、就労許可が取り消しになる前は、イスラエルでさまざまな不安定労働に従事してきた。労働力不足に対処するため、イスラエルはアジアからの移民労働者の受け入れを計画している。

インドでは、不安定労働者をイスラエルに送り込む採用活動が進行中だ。スリランカ政府も自国の労働者にイスラエルでの就労を申請するよう奨励している。イスラエルではすでにネパールから多くの労働者が雇用されており、中には戦争中に命を落とした者もいる。

インドとスリランカの両国の労働組合は、政府が労働者に紛争地域での就職を奨励していることを批判している。インド政府が昨年5月にイスラエルと結んだ二国間協定によれば、約4万2000人のインド人労働者がイスラエルで働くことになっている。しかし、現状では、10万人以上のインド人労働者がイスラエルに派遣されると推定されている。

インドの中央労働組合の共同プラットフォームは昨年11月、パレスチナからの労働者に代わってインド人労働者をイスラエルに派遣するというインド政府の決定に反対する声明を発表した。労働組合は声明の中で、「この決定は、インドが、現在進行中のイスラエルによるパレスチナ人に対する大量虐殺戦争の共犯者となることになる」と述べた。

インドのインダストリオール加盟組織であるインド鉄鋼・金属・エンジニアリング労連のサンジャイ・ヴァダフカル書記長は言う:

「このような危険な労働条件で労働者を働かせるというのは、インド政府による極めて誤った決定だ。イスラエルの労働者には今、深刻な安全上の懸念がある」

スリランカのインダストリオール加盟組織である自由貿易地域・一般サービス従業員組合のアントン・マーカス書記長は言う:

「スリランカ政府が国内の労働者に雇用保障と社会的保護を提供せず、代わりに他の場所、それも紛争地帯で仕事を探すよう奨励していることは非常に残念だ

インダストリオールの南アジア地域事務所長であるアプールヴァ・カイワールは言う:

「南アジアの政府が戦争終結に取り組む代わりに、労働者がイスラエルや占領下のパレスチナ地域に出稼ぎに行くことを助長していることは驚愕すべきことだ」

 

パキスタンの危険な船舶解撤場で労働者2人が死亡

2024-01-19

2024年1月19日:1月16日、パキスタンのガダニ船舶解撤場で、ばら積み貨物船での作業中に重い鉄板が落下し、労働者2人が死亡した。


長年にわたって、パキスタンの船舶解撤場では危険な労働条件が原因で、回避可能な死亡事故が多発している。今回は、パナマで登録されている築26年のばら積み貨物船キャサリン・ブライトの解体中に、解撤場60番でカシムとムスタファという名前の労働者が危険な労働条件の犠牲になった。

パキスタンで船舶解撤労働者を組織化しているインダストリオール加盟組織の全国労働組合連盟(NTUF)の報告では、解撤場の労働者は安全装具なしで働くことを強要されており、これは同国で職場の安全に重大な不備があることを示している。同労組によると、亡くなった労働者の遺体は真夜中に慌てて埋葬された。検死も犯罪捜査も行われなかった。

ナシル・マンスールNTUF会長は言う。

「ガダニ船舶解撤場は無法地帯として操業している。安全手順が実施されておらず、解撤場所有者と警察、政府当局が共謀して、これらの事故の本当の原因を隠し、真犯人が処罰されないようにすることがたびたびある。解撤場60番の事故の適切な調査を要求する」

パキスタンは先ごろ香港条約を批准し、2025年6月に条約が実施される。各国は香港条約の基準に従うために、船舶解撤場でインフラや医療施設、廃棄物処理メカニズムを改良する必要がある。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。

「職場で安全対策が実施されていないために2人の労働者が命を落としたことは、実にゾッとする話だ。特に香港条約の批准を考えれば、パキスタン政府は船舶解撤場における職場の安全を深刻に受け止めなければならない」

 

グローバルユニオン、ILO 第190号条約に基づきLGBTQI+労働者を支援するツールキットを発表

2024-01-19

2024年1月19日:職場の平等と安全のための一歩として、グローバルユニオン連合(GUFs)はLGBTQI+労働者のための包括的なツールキットを発表した。


このイニシアティブは、2021年6月25日に採択された職場における暴力とハラスメントを対象とする国際労働機関(ILO)第190号条約に沿ったものである。

190号条約は、ジェンダーに基づく暴力を含む暴力やハラスメントのない労働の世界に対するすべての人の権利を認める最初の国際条約であり、190号条約批准キャンペーンの焦点となってきた。第206号勧告と併せ、より安全で尊重される職場環境を世界的に構築するための枠組みを形成している。

LGBTQI+の人々が直面する特有の課題を把握し、新しいツールキットは特にこのコミュニティに対する暴力とハラスメントを取り上げた。このツールキットには、LGBTQI+訓練者ガイドとLGBTQI+参加者ワークブックの2つの重要なリソースが含まれている。

LGBTQI+訓練者ガイドは、教育者やファシリテーター向けのツールでる。LGBTQI+労働者に対する暴力やハラスメントについて理解を深めるための様々な活動が3つのモジュールで構成されている。このガイドの狙いは、意識を高めるだけでなく、組合と職場の双方で有意義な議論と積極的な対策を促進することにある。さまざまな知識レベルに対応できるように構成されているため、幅広い読者がアクセスしやすく、効果的な内容となっている。

訓練者ガイドを補完する「LGBTQI+参加者ワークブック」は、労働組合員、LGBTQI+労働者、活動家のためのリソースである。このワークブックは3つの主要なモジュールに分かれている。各モジュールには、LGBTQI+の人々特有の脆弱性、暴力やハラスメントの影響、これらの問題と闘うための実践的な戦略を理解することに焦点を当てた活動が満載されている。ワークブックは、ILO第190号条約を実施することの重要性を強調し、包括的で尊重される職場環境の構築を促進する。

「インダストリオールは ILO 第 190 号条約の促進に取り組んでいる。私たちは、第190号条約の批准と国内法への実施を確保する上で組合が果たす役割が極めて重要であることを認識している。2022年に発表されたLGBTQ+労働者のためのトレーナー訓練ツールキットと職場における暴力とハラスメントに関するツールキットは、この条約に関する認識を高め、行動を促進するために他のグローバルユニオンと協力して開発されたもので、この広範な取り組みの一環である。」と、インダストリオール書記次長のクリスティン・オリビエは述べた。

これらのリソースを通じて、GUFは世界中の組合とその組合員がLGBQTI+労働者の権利を擁護できるようにし、第190号条約の原則が認識されるだけでなく、職場文化に積極的に組み込まれるようにすることを目指している。このツールキットは、性的指向、性自認、民族性に関係なく、すべての労働者が恐怖や差別から解放されて働ける世界に向けた数多くの重要なステップの一つである。

 

トルコの金属労組、未曽有のインフレ下で勝利

2024-01-19

2024年1月19日:トルコの金属労働者は、数カ月に及ぶ断固とした争議行為の結果、部門レベル団体交渉で大きな意味のある勝利を達成した。トルコが急激なインフレ率をはじめとする経済問題を抱えている中で、金属部門が多額の利益と記録破りの収益を上げているにもかかわらず、労働者は警告ストや動員、各種の行動を実施した。


数カ月間の交渉を経て、インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合の加盟組合3団体(トルコ・メタル、ビルレシク・メタル・イス、ウズチェリク・イス)は、大幅な賃上げの確保に成功した。最初の6カ月間の総賃上げ率は98%である。社会的給付を含めると、この増加は実に105.1%に達する。

トルコ・メタル会長のぺヴルル・カヴラクはこう述べた。

「約束どおり、トルコ建国100周年に100%を超える昇給を獲得した。インフレ率が上昇する中で生活費が高騰し、特に賃金労働者に課題を引き起こしている。そのような時期に私たちは、自分たちが代表する金属労働者が人間の尊厳に値する生活を送れるようにするために交渉の場で闘った」

ウズチェリク・イスのユヌス・デイルメンジ会長は次のように述べた。

「私たちは長く困難なプロセスを経て、組合員とその家族を笑顔にして安堵させる形で、組合員の要望と期待に沿ってMESSグループ労働協約に署名することに成功した」

ビルレシク・メタル・イスのウズカン・アタル会長が述べた。

「金属労働者は、数カ月にわたる厳しい断固たる闘いの結果、今日、大きな成果を達成した。私たちは何カ月も、『私たちは勝つ、金属労働者は勝つ!』、『金属労働者が勝てば、すべての労働者が勝つ』と言ってきた。金属労働者が勝ち、労働者階級全体が勝った! 私たちは勝った!」

2023年9月、加盟組織3団体は同時の交渉努力を開始し、400の職場で働く15万人以上の労働者に影響を及ぼした。しかし、11月に交渉が行き詰まり、その後決裂、賃金問題をめぐる意見の相違を解消できなかったことが主な原因で、組合はストを決行した。

使用者団体MESSは交渉中に長期間、協力しようとしなかったため、組合側は争議行為を起こすに至った。史上最高のインフレ下で金属労働者の購買力が低下している問題への取り組みをMESSが拒否したことが原因で、交渉は紛争に発展した。

トルコ統計局(TÜİK)によると、2023年に消費者物価は64.77%上昇した。しかし、この統計の正確さは一般に広く疑われている。独立した立場の学識経験者の集団であるENAGrupの推計によれば、2023年のインフレ率は127.21%とはるかに高い。

2023年12月7日、トルコ・メタル組合員数千人が、イスタンブールのMESS本部とさまざまな地域事務所に黒い花輪(注)を置くことによって不満を表明した。その後、トルコ・メタルは1月9日に1日ストを組織し、1月11日にMESS協約の対象となるすべての職場でシフト交代時に抗議行動を実施した。

ビルレシク・メタル・イスも警告ストによって争議行為を実施。これにより、3回の交替勤務の間に1時間生産が停止し、1カ月半にわたって毎週合計6時間のストライキが行われた。加えて、ビルレシク・メタル・イスの組合員は、MESS傘下工場がある都心で集会を開いた。

2024年1月17日に結ばれた協約の主な要素は以下のとおりである。

  • 金属労働者にトルコの異常なインフレを補償する賃上げ(2年間の協約期間全体の保証を含む)
  • 最も賃金の低い労働者向けの特別な賃上げ
  • 祝日の超過勤務手当の改善
  • 勤続年数に見合った特別追加
  • 小さな子どもの親と身体障害労働者向けの特別休暇

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合のイザベル・バルト共同書記長代行は、トルコの組合の強さと闘志を称賛し、彼らの偉業を祝福する。

「トルコの金属労働者は、記録的なインフレに直面して基本的なコストに対応し、適正な生活水準と人間の尊厳を守れるように、生産性と利益の公平な取り分を要求したにほかならない。記録的な輸出高と売上高で、企業には明らかにその余裕がある」

ケマル・ウズカン・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長も、トルコの金属労働者の注目に値する成功に関心を示した。

「深刻な経済・社会状況下で、トルコの金属労働者は何と大きな偉業を達成したことか。金属労働者は力を合わせて勝利を収めた。ストも行わずに、そのような素晴らしい協約を達成するという形で、団結を示した。ブラボー!」

注)トルコでは伝統的に、「黒い花輪」は一般に抗議行動で、または哀悼の印として使われるシンボルである。抗議の文脈においては、特定の状況や企業、決定についての悲しみや不満を表す。

 

インド政府、労働組合運動への攻撃を継続

2024-01-18

2024年1月18日:インド被用者積立基金機構(EPFO)の再編後のパネルは、インダストリオール・グローバルユニオン加盟組合で構成される労働組合連盟、インド全国労働組合会議(INTUC)を排除している。


インド政府は最近、5年の任期が満了となった退職基金機関EPFOの中央評議会(CBT)を再編した。新たに編成された評議会は、前評議会で定数を割り当てられていたINTUC、全インド労働組合会議(AITUC)、全インド統一労働組合センター(AIUTUC)の労働組合代表を排除している。

EPFOのCBTは中央政府が設置した三者構成の法定機関で、従業員、使用者および政府の代表で構成されている。同評議会は連邦労働雇用大臣が議長として主導し、従業員代表に10人の定数を配分している。

再編後の評議会では、従業員代表10人のうち3人が政府の管理下にあるインド労働組合(BMS)に所属しており、2人分は空席である。労働組合の組合員数に応じて、どの組合が評議会に加わるか、何人の定数が代表組合のそれぞれに割り当てられるかが決まる。

各組合の組合員数を調べるための前回の国民投票は、2022年に実施された。それによると、INTUCとAITUCがインドでそれぞれ2番目、3番目に大きい組合として浮上したが、両組合は新しい評議会から除外されている。

INTUCおよびインダストリオール加盟組織インド全国電力労連のサンジャイ・シン書記長は言う。

「評議会からのINTUC排除に強く反対する。私たちは何百万もの労働者を代表しており、私たちを排除することは政府が労働者の声を排除していることを意味する。労働組合は、政府が新たな国民投票を実施し、各組織の組合員数を決定するよう要求している」

共同中央労働組合プラットフォームは労働雇用大臣に書簡を送り、評議会における組合の差別的かつ不相応な代表に不賛成の意を表明した。

アプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長は言う。

「インダストリオールは、インド政府が一貫して政労使メカニズムを弱体化させていることを非難する。私たちはEPFO再編に関する政府の専断との闘いにおいて、加盟組織を断固支持する」