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インダストリオール・ウェブサイトニュース第12号(2013年8月)

トルコの「ラブ・ボート」で船舶解撤労働者が死亡

2013-08-15

トルコのイズミールでラブ・ボートとも呼ばれるMSパシフィックを解体中に煙を吸い込み、労働者2人が死亡、9人が負傷した。

 このクルーズ船は解体のため86日にトルコに到着した。ジェノバからの航海途上で猛烈な嵐に襲われて損傷を受け、機関室が水浸しになった。810日に機関室から水を抜き取った際、労働者たちは衛生器具の排気管から出た煙を吸い込み、犠牲者全員が近くの病院に運ばれた。9人は翌日退院したが、37歳のドアン・バルシと40歳のダブト・オズデミールが煙中毒で死亡した。

 検察官による調査が始まっている。親類によると、亡くなった労働者の1人バルシは事故の2日前に同じ場所ですでに煙を吸い込んでいたが、通院治療しか受けなかった。

 MSパシフィックは1971年に西ドイツで建造されたクルーズ船で、1970年代にアメリカの人気ロマンチック・コメディー『ラブ・ボート』に登場してから有名になった。建造後42年のこの船は、海辺の町アリアガで解体するためにイズミール・シップ・リサイクリング社が250万ユーロで取得した。アリアガはイズミール近郊の船舶解撤場の1つだ。伝えられるところによれば、この地域では船舶解撤会社約25社が活動しているが、組合は1つもない。地域社会とグリーンピースをはじめとするNGOが現地で組合の組織化を促進しているが、使用者の強い抵抗に遭っている。

 トルコは世界第4位の船舶解撤国で、ILOの「船舶解体業における安全と健康:アジア諸国およびトルコ向け指針」の対象である。2004年に策定されたこの指針の狙いは、船舶解撤業者と所轄官庁が労働安全衛生や労働条件に関するILO基準、行動規範およびその他の指針の関連条項を実施しやすくすることだ。

 造船・船舶解撤両産業で労働安全衛生条件が劇的に改善しているというトルコ政府の宣言とは裏腹に、労働者は今なお多くの重大事故や死亡事故に直面している。

 トルコは2011年に第19回世界労働安全衛生会議を主催したが、エルドアン首相は同会議での約束をまだ実行していない。(http://www.issa.int/content/download/153577/3064987/file/2-PM-erdogan-speech.pdf

 トルコで発生した他の業務災害に関するインダストリオール(旧IMF)の過去記事については下記を参照:http://www.imfmetal.org/index.cfm?c=29035&l=2およびhttp://www.imfmetal.org/index.cfm?c=21680&l=2

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