金属労協議長挨拶

加藤 裕治
金属労協議長
加藤 裕治
   改めまして、皆さん、おはようございます。議長の加藤でございます。「JC大好き」という西野議長のもとでごあいさつできることに大変喜びを感じております。金属労協第45回大会にご参加いただきました代議員、傍聴者の皆さん、ご出席大変ありがとうございます。大会冒頭に当たりまして、幾つか所見を申し上げて、大会での皆さんのご議論をお願いしたいと思います。
 まず冒頭、来賓の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。連合を代表して高木会長にお越しいただいております。それから、海外からはIMF本部からマルチェロ・マレンタッキ書記長、そして、ドイツIGメタル、北欧金属労連を初めとしまして、17の国、地域から、19の組織、25名の海外来賓をお招きしております。後ほどごあいさつをいただきますけれども、皆さんの拍手で御礼をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。(拍手)
 まず初めに、今大会の位置づけと、少し金属労協の運動のあり方の改革について述べたいと思います。
 JCは、ご案内のとおり、一昨年、結成40周年を迎えました。一方、連合でありますが、連合も民間連合から数えれば、来年で既に20年を経過することになります。民間・ものづくり・金属労働者が結集した労働組合として、連合運動の強化に向けて役割と責任を果たしていかなければならないと考えております。
 21世紀に入りまして、金属産業が日本経済、そして、社会を支えているということが一層明確になりつつあると、私は考えております。日本は、既に人口減社会に突入いたしました。そして、少子高齢化も加速しております。環境問題も深刻な問題があります。そういった課題を克服しながら、日本社会を支えていく。そのためには、輸出競争力の高い金属産業の健全な発展が不可欠であります。

アジアの労働運動におけるIMF−JCの責任と役割
 一方、グローバリゼーションが加速している中で、労働組合としまして、競争と社会正義を両立させる、これを目指さなければならないと思っています。そうした中で、本年11月にはICFTU(国際自由労連)とWCL(国際労連)が統合をいたします。世界の労働運動は、グローバルな連帯の強化を必要としているわけです。その一方で、運動自体の実効性を上げるためには、各地域の特性を踏まえた地域の連帯強化というものも必要だと考えています。
 そうした背景を十分に考慮した国際産業別組織としてのIMF−JCの対応が必要になっているわけであります。アジアを見ましたときに、今や東アジアは世界経済の約3分の1を占めるようになってきております。同時に、日本とフィリピンがきょうも自由貿易協定に調印することが決まったという報道がされておりましたけれども、東アジア諸国の経済の相互関係がますます強くなっているわけであります。アジアを拠点に企業活動する多国籍企業の多くが日本の企業であります。アジアの労働運動に対するIMF−JCの責任と役割はそうした意味で大変大きいものがあると考えております。

総合プロジェクト会議答申の意義
 こうした事情を背景として、一昨年から書記長メンバーによる総合プロジェクト会議を設置して、検討を重ねてまいりました。三役会議でも検討を加えまして、本日、特別報告として「総合プロジェクト会議・答申」をさせていただきます。今後の組織運営、そして、活動の方向性について皆さんにご確認をいただき、新しいスタートを切る、そういう了解をいただく大会だと考えています。

グローバル時代の世界の現状と課題
 もう少し具体的に今の問題を述べてみたいと思います。グローバル化のスピードアップということですが、一方で皆さんも目に触れた方が多いわけでありますが、ICFTUは毎年世界の労働運動の人権問題についてレポートを出しています。そのレポートによると、昨2005年1年間で世界の労働運動家の中で2,000名強が逮捕されている。そして、労働運動を理由に命を落とした方も145名いたということが発表されています。実際の数は、これより多いかもしれません。
 その一方、グローバリゼーションが格差を拡大し、貧困層を増やしています。1日1ドル未満で生活している人は12億人。世界人口の5分の1に達していると言われています。児童労働もなかなか減少しませんし、地域紛争も頻発しています。
日本では、こうした問題に光が当たるチャンスというのは少ないわけであります。日本人は、北極や南極の氷が少なくなっていくというような環境問題には比較的関心のある人が多いわけでありますが、世界の人権問題についてはあまり関心を寄せる人が少ないのではないかと感じております。
 新自由主義政策によるグローバルな競争社会は、途上国においてだけではなく、先進国においても、ラン・ツー・ザ・ボトム、底辺に向けての競争を加速しております。そのもとで闘っている労働組合は、特に途上国においては、命さえも危険にさらされております。こういう現状を日本の労働組合は、もっと認識をする必要があると思います。
 発展を続けるアジアにおいても格差が広がっております。民主化は進展しておりますけれども、労働運動への弾圧もいまだ存在します。先ほどの年次報告におきましても、アジア太平洋では逮捕者が1,600名、解雇者は2,500名というような発表もなされております。アジアにおける連帯の枠組みが必要である、一層強化しなければならないということを示しております。

  喫緊の課題である日本の行財政改革
 こうした中で、繰り返しになりますけれども、人口減、少子高齢化、そして、環境制約といった日本社会を維持するためのコストが非常に高くなって、重くなっております。社会保障制度が大変危機的な状況になっているわけであります。しかしながら、日本の財政は国も地方も行き詰まっており、改革が喫緊の課題となっています。  そのような中で、政府は先ごろ2006年の骨太方針ということで発表しました。今回は初めて中期の政策もそこで述べられておりました。2011年にはプライマリーバランスを取り戻すということが目標となっておりますけれども、その内容を見てみますと、歳出の削減、そして、給付減、我々サラリーマンを中心とした負担増のオンパレードになっているわけであります。本質的な歳入増のためには経済を活性化する必要がありますが、その道筋は極めて不透明であります。

日本経済を支えるものづくり産業の発展
戦後の日本経済を支えてきたのは、ものづくり産業であります。21世紀日本にとって、中でも競争力の強い金属産業の役割が一層高まることは最初に申し上げたとおりであります。そして、その健全な発展が企業労使、産業労使の努力にかかっていることはもちろんですが、残念ながら、日本の経済社会システムは、必ずしもそれを支えるようにはなっていないというのが実態ではないでしょうか。
 日本のものづくり産業は、長期雇用のもとで技術、技能を発展、維持、向上させてまいりました。そしてさらに、それだけではなくて、日本に特有な厚みのある中間層、これが次の技術、技能の担い手を供給して、そして、その中間層が購買層となってものづくり産業を支えてきたわけであります。
 ところが、小泉改革は、長期雇用を揺るがし、格差を拡大し、中堅層をやせ細らせてまいりました。このままでは、日本の経済社会は行き詰まってしまうと私は考えております。そして、日本国民は、今、そのことに気がつき始めているのではないかと思います。

来年の参議院選挙こそ政権交代の天王山
 小泉改革のこの5年間、その5年間に何が行われてきたのか。そのごまかしというものに気がついているのではないか。今年に入ってから、日本各地で首長選を初めとした選挙が行われましたが、その中で、国民はその意思表示をし始めていると、私は見ております。この力をさらに大きくして、政権交代に結びつけ、小泉政権のもとで傷んだ日本の経済社会システムをほんとうの意味で改革をして直していかなければならないと思っております。その天王山が来年の参議院議員選挙だろうと思います。
 金属労協は組織内で3人の候補を擁立しておりますけれども、これらの候補の必勝はもちろんのことでありますが、この参議院選挙をきっかけとして政権交代を引き寄せていくことを、そして、その機会は十分にある、チャンスが十分にあるということをお互いにこの場で確認し、必勝を誓い合いたいと思います。
 
連合金属部門として積極的な役割果たす
 そして、そのためにも私たちは連合運動を支えていかなければなりません。連合は、勤労者全体を守るための運動体でなければならないと思います。これは高木会長の持論でもあると思います。最近の連合運動、中小やパートや未組織労働者を包み込む運動というものに力を入れてきていると私は思っております。その方向性については強く支持をしたいと思います。そして、そのためにも、連合はもっと部門を強化しなければならない。部門の課題については各部門が主体的に取り組めるような、そういう運営へシフトしていくべきではないかということを考えております。そして、連合本体、連合全体としては勤労者全体をカバーする政策課題への取り組みをより強化していくことが望ましい方向である。金属労協はそうした方向に連合運営が転換されることをこれまでも要請してまいりましたし、そのためにみずからの運営、そして、運動のあり方というものも自己改革し、連合金属部門として積極的な役割を果たしていきたいと考えているわけであります。
 金属部門がそのように努力することで、連合はまさに官民のバランスのとれた運動体として、また未組織の労働者も含めた勤労者総体のためのナショナルセンターとしてより強化することができるのではないかと考えております。もちろん、本部段階のみではなく、全国地方連合でも同様な役割を果たしていかなければならないと思います。
 以上のようなグローバルな役割、そして、日本の経済社会システムの改革はもちろん、連合運動を支えていく意思を持って、今回の総合プロジェクトの議論が行われてきたと考えております。限られたリソース(資源)を生かすために思い切った改革をしていかなければなりません。特に産業政策や国際労働運動の分野では、産別の活動と金属労協、IMF−JCの活動領域、そういったものの整理も必要だと思います。そして、もちろん連合本部との調整も必要であります。私たちは、今後そうした調整を行っていくことはもちろんでありますが、国際的にはIMF本部やアジアの仲間との協議も行いながら、最も効果的な組織運営を目指してまいりたいと思っています。

今後の春闘における共闘のあり方
 さて、総合プロジェクト会議答申の中では、今後の春闘における共闘のあり方についても触れております。2006年春闘を振り返ってみますと、5年ぶりに金属労協全体としての賃金引き上げに取り組んだということが特徴として上げられます。各産別がそれぞれに成果を上げていただき、連合全体の運動に対しても責任を果たすことができたのではないか。そして、日本経済にも一定のいい影響を与えることができたと思います。
 もちろん、幾つかの課題も残っております。しかし、賃金改善という広い取り組みの枠組みをつくったということは、それによってよい成果を生んだということも事実でありますし、それは今後についても生かしてまいりたいと考えています。同時に、今回は、JAMの小出会長を中心として、連合の中小共闘についても積極的に支えてきたわけでありますし、その面でも役割を果たすことができたと考えております。
 来年に向けた、2007年春闘に向けた課題でありますけれども、連合が形成している中小共闘、そして、今年、本格的にトライをしたパート共闘、そういう枠組みの中で金属労協が金属部門としてしっかりと役割を果たすということがまず第一だろうと思います。

新しい共闘軸の創設にもチャレンジ
 総合プロジェクトの中でも述べておりますが、これまで大変時間をかけて議論を進めてまいりました大くくり職種別賃金、これを基軸とする新しい共闘軸の創設、このことにも一層チャレンジしていかなければならないと思います。もちろんこれについては賃金改善という広い枠組みをつくったということとの整合性をつけていかなければならないということも課題でありますので、これらについて早急に議論を詰めていきたいと思っています。

金属部門として来年も賃金改善に取り組むことを基本に検討
 いずれにしましても、今年の成果を踏まえて、金属部門としては来年も賃金改善に取り組むということを基本に検討を始めてまいりたいと考えています。
日本経済はデフレを脱却して物価上昇もコンマ台ではありますが、プラス方向に転じています。産業、企業の収益改善を支えてきた組合員の努力は、当然月例賃金に反映されるべきであります。日本の金属産業にふさわしい賃金水準を目指していかなければならないと思いますし、大手と中小の格差縮小も手を緩めるわけにはまいりません。これまでの賃金の取り組みの枠組みというものが、どちらかといいますと、「生計費」というものを基準に考えてきましたけれども、「大くくり職種別」という概念を考えるのであれば、未来に向けて、この金属労働者がどのように評価され、どのように頑張っていくのか。それにふさわしい賃金闘争の枠組みにしていかなければならないと思っているところです。そして、金属部門として連合の春闘も支えていきたいと思います。

国際枠組み協約の締結に向けた取り組みに再チャレンジ
 最後にもう一点、大切な運動について述べておきたいと思います。金属産業は、日本の屋台骨を支えると言いました。しかし、同時に、世界の国々に対して大きな責務を負っていることも事実であります。いわば日本の金属産業というのは、グローバリゼーションのもとで大きな恩恵も受けております。そういう意味では、今、世界の国々で生じている底辺への競争を漫然と見過ごしていてはいけないわけであります。
 労働者の基本的人権をどの国でも守ろう。守らなければいけない。このことが底辺への競争を押しとどめることになるのではないかと思います。世界を舞台に事業活動している企業労使として、それは当然の責務だろうと思います。そのことをお互いが宣言し、社会に公表するということは、企業労使への信頼を高め、事業を行っている国々においても、企業市民として認められることになるのではないでしょうか。それはその国における健全な経営を確保することにもつながると思います。
 労使がそうしたことをお互いに宣言し合う、協定し合うということが、IMFの推進する多国籍企業の行動規範協定(国際枠組み協定)の取り組みであります。IMF−JCは、過去2回この取り組みにチャレンジしましたけれども、経営の理解を得ることができませんでした。その間に欧州を中心に、フォルクスワーゲンやルノーといった自動車、あるいは電機、機械といった20近い金属産業の企業、労使の間で協定が実現しております。JCとしては、この協定の締結に向けた取り組みにもう一度チャレンジしなければならないと考えています。
 IMFは、今月9月末にフランクフルトでこの国際枠組み協定の推進に向けた会議を行うことになっております。JCとしても、産別代表とともに参加してまいりたいと思います。そして、その成果を踏まえながら、秋以降に準備を進めて、できるだけ早く交渉に入りたいと思います。過去の反省を生かして、今回は何とかして前進を図りたいと思っておりますので、皆さんのご理解と、そして、ご努力を賜りたいと思います。
 最後の最後になりましたけれども、この秋は多くの産別単組で役員の改選が行われると思います。今日までJCの運動に大変なご貢献をいただいた方々、退任される方々には厚く御礼を申し上げるとともに、退任をされて、それぞれの持ち場、立場にかわられても、ぜひ私たちの運動をいろいろな形で支えていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 本日、私がこの場で述べました運動の今後のあり方について、少し参考にしていただきながら、この大会を意義あるものにしていただきますよう代議員の皆様にお願いを申し上げまして、私の冒頭のごあいさつとさせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。( 拍  手 )