来賓挨拶

高木 剛
連合会長
高木 剛
 IMF−JCの第45回定期大会が、このように盛会裏に開催されておりますことを、連合を代表して、心からお喜び申し上げたいと存じます。
 日ごろは全国各地で連合の運動にJCの皆さんには何かとご理解、ご高配を賜っておりますことをこの場をおかりして御礼申し上げたいと存じます。
 また、IMF−JCが日本の労働運動の中で占める、そのポジョンの大きさ、また、労働運動への貢献の大きさにつきまして、心から敬意を表させていただきたいと思います。
 先ほど西野議長さんから、「私はIMF−JCにほれ込んでいます」というごあいさつがございましたが、連合も同様にほれ込んでおりますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと存じます。
 せっかくごあいさつの機会をいただきましたので、3点申し上げて、ごあいさつにかえさせていただきたいと思います。

1.2007年春季生活闘争にどう取り組むか
 先ほど加藤さんも触れられましたが、今年の春、労働運動全体では5年ぶりというのでしょうか、実質的な賃金改善厳守を求めて交渉をしていただき、JCの皆さんにも頑張っていただきました。ただ、今年の交渉、会社側とのやりとりの中で、大変なご苦労があったということをお聞きいたしております。経営側の皆さんは特にベースアップというようなにおいのする、そういうニュアンスの論理は頑としてはねつけたといった面があったのではないかと思います。また、グローバル化が進む中での国際競争力に関する論議もそれぞれの交渉のテーブルで大変激しく論議されたとも聞いております。
 そして、今、来年の春の要求をどうするのかという検討を始めているところです。経済は、本年11月にはイザナギ景気を超えることは大方間違いないと思います。産業、企業も、若干の産業間のばらつきはありますが、総じて製造業を中心に順調な状況が続いている。そういう中で、今年、少し実質的な賃金を上げていただきましたが、労働分配率はどうなったか。まだ細かい数字まで見ておりませんが、今朝の日経新聞によりますと、この4−6月の数字を見る限りにおいては、分配率は上がってない。もちろん分配率というのは、利益が増えますと、労務費が少々上がっても分配率そのものは変わらないという面がありますので、別の言い方をすれば、好調な業績が労務費増を吸収したという面もあるのかもしれません。物価上昇がどうなるのか、今後の推移を見なければいけない点もありますが、今、連合の三役会議等での議論は、来年もこういう経済環境、あるいは可処分所得の状況等々を見たときに、何もしないでおるというわけにはいかないな、来年も実質的な賃金の改善の厳守を求めて要求を起こすべきではないかなという、大方の雰囲気はそんな感じです。ただし、どんな要求の組み立て方をするのか、あるいはどんな闘いの進め方をしていくのか、その辺につきましては、暮れに向けまして、いろいろ論議を煮詰めていかなければならないわけです。
 
2.時間外労働問題をどう改善していくのか
 もう一つ、最近、ワーク・ライフ・バランスとか、リーセントワークといった議論が非常に活発に行われています。例えばワーク・ライフ・バランスの問題の最大のポイントは時間外労働の問題だと、私は思っています。多くの職場で大変長時間にわたる時間外労働に従事されている仲間の皆さんがたくさんおられます。もちろん、時間外の状況は、産業、企業によっても、また、職種によっても、大きな違いがありますが、とりわけホワイトカラーと言われる皆さん、営業、あるいは研究部門等で働く皆さんの時間外労働には、こんな状況でいいのかと言わざるを得ない、そういう実態があると思っています。
 この時間外労働の問題をどう改善していくのか。いろいろなアプローチの仕方があると思いますが、現在その1つのアプローチの手段として、時間外割増率をもう少し高める要求をして、交渉すべきではないかという議論が行われております。割増率の問題につきましては、JCの皆さん方のご意見は総じて慎重論が多いように感じておりますが、しかし、何もしないでいいのかという議論もあります。この割増率の問題については、あるいはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、若干ルーズになっているのではないかなと言われております36協定の結び方の問題等々を含めて、この時間外労働の問題にどうアプローチしていくのか、そうした議論も年末までに詰めていかなければいけないと思っています。
 パートタイマーの問題、あるいは中小労組の皆さんの格差の問題、これは来年も再来年も長い時間がかかる課題ではありますが、一つ一つ、一歩一歩進めていかざるを得ない課題であろうかと思っています。来年春に向けて、まだまだ幾つかの論点が残っておりますが、組合員の生活と権利の改善のために労働運動全体で何ができるのか、そのことを真剣に考えていきたいと思っております。
 日本の労働条件決定に当たりまして、JCの皆さんの主体的なリードはまさに不可欠でございます。春闘改革等につきましても、JCの皆さんが論議を牽引してきてくださいました。JCグループの皆さんのご貢献があって初めて日本の労働条件決定が進んでいく、そんな面もあることも十分ご認識いただき、重ねてほれられるJCであることを続けていただきたいと、お願い申し上げておきたいと思います。

3.組織拡大の問題
 2点目は組織拡大の問題でございます。
 ご承知のように、日本の組織率は18.7%、これは昨年6月時点のものですが、今年も6月末で厚生労働省は全国で調査したと言っております。今年の結果が暮れに発表されますが、どうなっておりますやら。何となく感じだけ申し上げますと、全体の労働組合に参加している組合員数は下げ止まってきているのかなという感じはあります。しかし、一方で、有効求人倍率が改善された等々のことが言われており、分母も増えますので、組織率という意味ではどうなっているのかなと。今、暮れに発表されます数字が大変気になっているところです。
 単に全体的な組織率が下がるだけではなくて、今、我々日本の労働運動にとって非常に深刻な話は、それぞれの職場における組織率が下がっているということです。今、労働契約法制の議論が進んでおりますが、それぞれの職場における組織率の低下等を踏まえて、労使委員会方式を入れたらどうかとか、あるいはヨーロッパ型、とりわけドイツ型の過半数労働者代表制というのでしょうか、そんな仕組みが日本でも援用できないのかとか、そんな議論も始まっております。
企業内組織率はパートタイマー、あるいは派遣労働、請負労働の方々が職場に非常に増えている。これは、どちらかというと、流通サービス業が先行してそういう状態を迎えたわけですが、最近は製造業にもそういう兆候が非常に強くなってきている。そういう中で、企業別の組織率が下がり、同じ職場で働いている皆さんの過半数が労働組合に参加ができていない職場が増えている。労働組合の名前で36協定が結べない。そんな職場でよいのか。そういった面も我々は留意しておかなければならないと思います。また、労働組合法、あるいは労働基準法等々、いろいろな労働関連法が過半数代表に労使自治という意味も含めて、いろいろな労働条件設定、あるいは権利の維持について権限を与えてくれておりますが、その権限をきちんと行使できない労働組合、そんな懸念が強く感じられる職場が増えているわけです。
 JCの皆さんにも組織拡大でいろいろご努力をいただいてきております。日本の労働組合が恐竜の道をたどることになりかねないということで、ご心配をいただいている労働評論家の方もおられます。恐竜になどなってたまるものですかという思いでこの問題をとらえていただきたいと思います。

4.選挙のお願い
 最後に、選挙のお願いでございます。まず、10月22日ですが、神奈川県第16区、大阪第9区、この2つの小選挙区で補欠選挙が戦われます。10月22日というのは、自民党は今総裁選挙をやっております。民主党も──民主党は多分小沢さんが再選されるんじゃないかなと言われておりますが、いずれにいたしましても、自民党も、あるいは民主党も新しい体制のもとで初めて戦う国政選挙でございます。そういう意味で、この結果がどういうことになるのかによって、来年の統一地方選挙、あるいはその後の参議院選挙に非常に大きな影響を与える補欠選挙ではないかと思っております。
 この2つの選挙区にも、JCの組合員の皆さん、あるいはOBの皆さん、また、いろいろな関係のおつき合いの方々がたくさんおられるとお聞きいたしております。どうぞこの2つの補欠選挙、それぞれのお立場で万全を期していただきたいということでございます。
 それに続きまして、来年4月、統一地方選挙でございます。昨今の市町村合併の関係で、トータルで統一地方選挙に合わせて行われる選挙の数は大分減ったようですが、北海道から沖縄まで、まだまだ多くの選挙が統一地方選挙の形で行われます。ぜひ統一地方選挙、それぞれの皆さんのご支援の候補者の必勝のために、また、その後にやってまいります参議院選挙、来年は12年に1回、統一地方選挙と参議院選挙が同時に行われる年でございます。12年前、あるいは24年前を振り返りますと、労働組合は4月の統一地方選挙でへとへとになっちゃって、参議院選挙、12年に一遍戦う年はあまり成績がよくない。そんな面もあるという指摘もございます。
 比例代表の関係で、池内さん、若林さん、そして、新人で轟(とどろき)さん、お三方が、JCの仲間として立候補されるわけでございますが、ぜひぜひお三方の、あえて申し上げます、高位当選をかち取っていただきたいと思います。
 また、選挙区選挙の結果も含めまして、この参議院選挙の結果が具体的に言いますと、参議院におきます与野党逆転という事態をもし生み出すことができるとしたら、その後の衆議院選挙での政権交代といったことも展望できるのではないかと、そんなことも言われております。何としても、3つの選挙、頑張り抜きたいと思っております。それぞれの地域でご奮闘を賜りたいと存じます。
 小泉内閣、5年5カ月ほどでしょうか、今月にはその幕を閉じます。格差社会の問題とか、いろいろな小泉後遺症を抱えて、とりわけこの5年5カ月の間に、小泉さんが国民に課した国民負担は約9兆円に上っております。そのダメージを、特に家計は大きく受けております。こんな状況もにらみつつ、力を合わせて、労働者の生活と権利の改善のために連合としても頑張っていきたいと考えております。JCの皆さんの支えがあっての連合でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げ、本大会のご盛会、あるいは活発な論議での運動の前進が図られますこと、そのことをお祈り申し上げまして、ごあいさつにかえさせていただきます。どうもご苦労さまでございます。(拍手)