第39回JC上級コースフォローアップ研修会

ものづくり現場の見学も実施
半年間の活動報告と新たな課題の討議でフォローアップ
三菱重工小牧南工場史料館の秋水の前で記念撮影

39回労働リーダーシップ上級コースのフォローアップ研修会が、2006525日(金)1300から26日(土)1200まで、名古屋で開催した。
 今回は、修了生からの要望もあり、初の試みとして、工場見学とセットでのフォローアップ研修会を開催した。修了生の一人清水 敬さんの所属している三菱重工労組名航支部に受入れていただき、三菱重工
()名古屋航空宇宙システム製作所の飛島工場と小牧南工場史料館を見学した。参加した修了生及びゼミ担当講師らは、金属産業の中の航空宇宙産業のものづくり現場に実際に触れることができた。世界の最先端を行くものづくり技術に圧倒され、改めて日本のものづくり産業のレベルの高さを体感することができた。〈ページのトップへ〉

1日目:2006年5月26日(金) 工場見学およびフォローアップ活動報告
第1部:工場見学:「三菱重工業()名古屋航空宇宙システム製作所

13:00   三菱重工(株)名古屋航空宇宙システム製作所
      「飛島(とびしま)工場」見学
        *航空機胴体及び扉部分の製造現場、宇宙ロケットの製造現場の見学

15:00  「小牧南工場 史料室」の見学
*航空宇宙技術の原点となった「ゼロ式戦闘機」やロケット戦闘機「秋水(しゅうすい)の復元模型を見学、当時のものづくり技術の水準等について説明を受けた。
第2部:フォローアップ研修会(「小牧南工場」会議室にて)
挨拶する大平運営委員長

16:00
●主催者代表挨拶(若松事務局次長)
 まず、初めての試みである工場見学を三菱重工労組名航支部の受入れで実現できたことに感謝。受入れに尽力していただいた清水さんに感謝申し上げたい。上級コース半年後のフォローアップ研修会に修了生が元気に参加できたことを喜ぶと共に、各人が考えた職場や組合における課題についての解決策について、この半年間、各人がどのように実践してきたのか、実際にやってみた中で、出てきた新たな問題や経験についてみんなで振り返ると共に、新たな課題などについてもざっくばらんに意見交換、経験交流をして、これからの各人の活動の参考にしていってほしい。

●運営委員挨拶
◆大平運営委員長(明治学院大学教授)
「初めての試みで、今回は工場見学をセットしたフォローアップ研修会が実現した。上級コースの中で、ものづくりの現場が大事なことについて報告を受けたが、実際にものづくりの現場を見せていただき、実感することができた。パワーアップされたフォローアップ研修ができたことを感謝したい。」

◆神田運営委員(明治学院大学教授)
「半年後の研修は非常に効果があると言われている。このフォローアップ研修では、働くことの本質に触れる論議を是非したい」

◆石井運営委員(高千穂大学助教授)

「工場見学をして、ものづくりのすばらしさに素朴に感動した。ものづくりの現場の雰囲気を体感して、有意義なフォローアップ研修の議論がてきることを期待している」

16:30 修了生活動報告「自分の課題解決案とその後の対応」

活動報告をする修了生

つづいて、全員で「自分の課題解決案とその後の対応」について活動報告を行い、1日目の研修を終えた。









受講生氏名・組合名

課題テーマ

成尾昭一 
三洋電機労組営業総合支部

「企業の持続的成長を可能にする労働組合の新たな経営対策〜10年後に向けて〜」

清水 敬 
三菱重工労組名航支部

「慢性的な高残業時の組合サポートのあり方」

竹田和之 
パイオニア労組所沢支部

「時間外労働の減少に向けた工夫」

鮫島栄造 日産労連

「新組織移行に伴うライフサポート活動

高橋英人 昭和電線労組

「年次有給休暇の取得率向上」

下間啓明 
沖電気カスタマアドテック労組

「OCAユニオン・社員会統合に向けて(組合員の安全・安心・安定をめざして)」

前田千章 いすゞ自動車労組

「年休を使った能力開発」

向井伸行 
三菱重工労組三原支部

「組合活動の再構築〜支持される組合とするために〜」



神田先生を囲んで 大平・石井両先生を囲んで

18:30夕食交流会で半年振りに旧交を暖める





 〈ページのトップへ〉
2日目:2006年5月27日(土)9:00〜12:00  全体討議

会場:アパホテル5階会議室「栄の間」

2日目午前中は、竹田学生長を座長に、「課題解決へのフォローアップ対応と新たな課題」をテーマに全体討議を行った。

09:00 全体討議(座長形式:座長=竹田学生長)
「課題解決へのフォローアップ対応と新たな課題」
修了生の活動報告を踏まえてのフォローアップ対応(質疑応答)
・新たな課題の整理
・新たな課題に対するアプローチ(経験交流)

 主な発言要旨は次の通り。

《人手不足と労働時間の増加について》

工場を見学して、仕事量の恒常的な向上に比例して、仕事の労働時間の増加が続いている中で、労働者のストレスが溜まっているように感じた。今後の経営計画について、労使で論議する場合にも、経営側の方が組合より情報量が多い。状況が急変して生産が落ち込んだ時に、期間工を切ることで、人的資源の調整を図るようにしている。加重労働があるのは、現場労働者よりもむしろ事務技術職のスタッフの方ではないか。

うちの場合、人が不足しているから、派遣社員を雇って、人員 の頭数をそろえることはできても、では派遣社員は何をするこ とができるかというと、指示しなければ仕事ができないので、 結果として、正社員が派遣社員に仕事を教えなければならない ので、その分、正社員の仕事が増えてしまう。

☆労働時間や残業時間、仕事の配分の仕方について考えるとき、例えば、プラント建設の場合、会社の中でプロジェクトチームを組む。その場合の時間管理は属している課の人事管理からははずれ、プロジェクトチーム自身も時間管理をせず、個人管理でしか対応しないのが現状である。最近海外での労働時間は厳しいものがある。時間外が150時間という場合も出るほどである。時間外45時間まででは仕事にならない場合が多い。

海外での仕事が忙しくなったのは、どういう理由か?

工期とコストが厳しくなったことが大きい。海外の場合、人と場所と設備が限定されているため、人は増やせないので、どうしても労働時間が長くなってしまう傾向が強い。

欧米の企業との価格競争の激化も原因としてあるのではないか。

グローバル競争の激化により、受注の予測、経営計画が立てられない状況にある。

《有給休暇の取得について》
有給休暇の取得促進に努力しているが、組合員の中には、長期の休みの仕方が分からないという人が多い。

ワーク・ライフ・バランスという点で言えば、製造現場の労働はある程度シフトが決まっていてバランスは取りやすいが、技術開発などナレッジ・ワークの分野は労働時間がきちんときまっていないので、時間外労働も多く、バランスがとりにくいという面がある。

電機産業の私のいる職場では、事務・技術開発部門であるが、有給休暇の年間取得計画を全員から提出してもらうようにしている。例えば、家族との関係の中で記念日には有給休暇を取るように指導している。

《時間外労働について》
自動車の場合、現場は2直交代なので、それほど時間外はない。

鉄鋼の現場の場合、3組2交代制を伝統的に組んでいるので、1回夜勤をすると2日は休めるようになっている。

《雇用確保戦略について》
組合の雇用確保戦略について、自分の企業は45%は正社員で、残り55%は請負や期間工など外部社員である。コアとして国内に残しておくべき技術・人についてビジョンとあるべき姿について聞きたい。

例外的に急に多くの受注があって、今は長期的に雇用戦略を考えられない状況である。

構内下請けや請負の人の賃金体系は、給料は正社員の7割くらいであり、残業しても割増残業代は出ない。派遣・請負の優秀な技術者に対しては正社員化の道を制度として持っているが、これに対する社員のモチベーションは高い。

自動車産業でも、私のところは昭和50年代に輸出のために、大量に正社員化したことがある。派遣から正社員にした時に、どうしても多能工制を求められる。

派遣や請負から正社員化する場合、人間性も関係する。仮面をかぶっているケースもある。正社員に登用した途端に仮面をはずす人間もいる。

派遣社員を直に正社員化することはできない。自主的に一端派遣会社を辞めてから、企業が正社員にするという場合はある。

中途採用の場合、現場でのその人への評価がきちんとできるかどうかが課題である。

ものづくり現場での期間工から正社員の登用への道は、周りの期間工との兼ね合いで難しい一面もある。

少し前までは、新卒や中途採用で正社員になってもすぐ辞める人が多かったが、最近はすぐ辞める人は少なくなってきた。

電機連合で、技術者・研究者研修を開催しているが、他社の技術者と話す機会が持てて良かったという評価が多く、悩みや課題を共有し、相互理解を深める面で効果がある。

《組合活動の検証と役割について》
☆会社が儲かるのだったら、組合は何でも協力するという姿勢は大事であるが、その際に社会的不正の防止という面での組合のチェック機能を働かせておかないと会社の存続自体が危うくなることもある。

組合として何がやりたいのか?何のために、何をめざして、何を目標として、何をほしいのか、ということについて、現場の声も聞きながら、明確にする必要がある。
高度成長の時代には、確かに賃上げの大義名分があったが、現在、2000円のベースアップがないと生活できないということはない。2000円くらいの賃金向上のために、果たして闘争する意義は本当にあるのか、問い直してみる必要がある。

労働組合の活動も、単年度で見るのでなく、10年単位くらいで見る必要がある。

成果は1000円程度のみというのでは、賃金引き上げの労使交渉にかける時間・人・モノ・金・会議を考えると、割に合わない面がある。職場から見たとき、賃金労使交渉の合理化が必要である。デジタルに割り切ることも大切。

組合は理念上非営利組織NGOの役割を担っているので、企業の組合員の利益貢献を追求するべきである。

《組合費について》
組合費として月に1万円くらい徴収しているが、それに見合った組合サービスを果たしてしているか?組合自身が、どんな組合サービスをしたらよいのか、探しあぐねているのが現状である。

労働組合は、ユニオンショップ制だから成り立っている世界。当たり前のように組合費を徴収できる状況に問題がある。

組合の役割は、ある意味で、安心・安全のサポート役といえる。組合の役割は、苦労して創り上げた制度の継承・発展する役割を再定義すべき。

11:30 全体コメント:
☆大平先生
 フォローアップ研修で現場をみることは初めての試みで、非常に良かった。上級コースで発表していた内容を実際に職場を見てよく理解できた。上級コースの醍醐味はこじんまりとした中で、じっくりといろいろな問題について論議できることだ。今回のフォローアップ研修では、半年間を振り返って活動報告を受け、成功した例や失敗した例を聞いた。例え失敗したとしても、前進へのステップとなると感じた。上級コースの論議を踏まえて、一歩踏み込んだ議論ができた。課題の中にはすぐに解決できるものとできないものとがあるが、フォローアップ研修をまた一年後なりに、自主的に開いて、是非このフォローアップ研修を今後とも継続していっていただきたい。

☆神田先生
 この半年間で明らかに経済状態が変化しており、守りの部分でなく、攻めの部分の論議が多かったように感じた。とりとめのない議論のようであるが、点毎ののテーマを線につなげると大きな構図が見えてくる。労働時間や産業構造の変化の中で、因果関係について大きな絵の中で労働問題の解決策をどう考えるか。まず、1点目は時間の視点で言えば、時間軸を変えてみることである。若いときから仕組んでみる。2点目は、相互の関係性をもう一度捉え直してみる。家族の面から労働を捉え直してみることも重要である。勝ち組と負け組という捉え方から見ると、労働の負荷をどう下げていくか。トップと現場の意識の共有化がうまくいっていないのではないか。トップは労働者を個人個人でなくマスでとらえている。一方労働組合は労働組合員を一人一人で捉えている。そこに労働組合の役割があるのではないか。労働組合の位置づけを再定義する必要がある。3点目は、時間で働いていない労働者をどう管理していくかということである。意識をどう改革するか。けじめとして労働時間を決めるのも一つの手か。まず枠をきめるということ。そういう視点をもって本日上げられた様々な労働問題に対処していくことが大事だと感じた。

☆石井先生
 労働組合のことを考える時には、企業の利益を考えなければならないし、一方 で別法人の労働者のことを考えなければならない。  各人で立てた考えを基に、・修了生の皆さんが、この半年間、個々人の考えた課題にチャレンジされている姿を見て感動した   
・少し視点を変えて、後は実務レベルに落とし込んでみることが大事だと思った。
日本の企業のゴールをどこに置くのか、考えなければならない。


★若松事務局次長
現場にある労働運動の原点と大産別・産別との役割分担をどうしていけばよいのか考えさせられた。
 ・日本のものづくりの原点は、「もったいない」の精神での付加価値の高い製品づくりといえる。
チャールズ・チャップリンは、「人生に必要なものは、夢と希望といくらかのお金」と言っている。本日を契機に、新しい労働運動を作っていく夢と希望を持って、これからも各自の職場や組合で活躍していただきたい。

12:00 解散