機関誌「IMF-JC」2005冬号


うちの政策
NO15
基幹労連の取り組み
めざせ“ものづくりの復権!”
〜『継続は力なり』の精神で〜

基幹労連産業政策グループ
中央執行委員 西野ゆかり

基幹労連は鉄鋼・造船重機械・非鉄の3つの産業が統一したことにより、地球資源を掘り起こすことから始まり、その資源を素材に製鋼・製錬し、その素材で造船、航空機をはじめ宇宙ロケット、さらには建設機械、製鉄機械などを製造する、まさに基幹産業の集合体ともいえる産別となりました。
統一に至るまでは、旧三産別とも政策について運動の展開もアプローチの方法もそれぞれが固有のやり方で長い歴史を歩んできました。しかし、「産別運動の柱のひとつである政策力をもっとパワーアップし、発言力を高めていかなければ!」「私たちの産業は私たちがきっちり守る、そのために声を大に働きかけなければ!」などの強い思いで、私たちは組織統一を果たしました。


◆第1期目の政策

中川経済通産大臣に要請(2004.8)
 産業政策は、基幹労連全体に共通する「共通政策」と、個別産業分野ごとの「分野別政策」に分類しました。共通政策では「産業基盤の確立」「新産業分野の創出」「人間に優しい社会の構築」「ものづくり文化の再生」という4本の目標を掲げ、産業競争力の向上、人材の育成と技術・技能の伝承、差別化に向けた付加価値の創造、産官学連携・産業分野を超えた研究開発体制の構築、新分野への参入障壁となる規制の緩和、地球規模の環境対策、循環型社会の構築、ものづくり教育の浸透、など18課題をあげ、その課題解決に向けた政策として取りまとめました。また分野別政策では、「鉄鋼」「非鉄金属」「資源・エネルギー」「環境・リサイクル」「輸送用機器・建設機械・農業機械」「産業機械・プラント・橋梁」「物流」の7分野における固有課題を抽出し、課題の解決に向けた具体策を政策として取りまとめました。(チャート図参照)
一方、政策・制度の取り組みでは、めざすべき3つの社会、すなわち「勤労者が不安なく安心して暮らせる社会」「公正・公平が実現される社会」「環境保全と生活との調和をめざす社会」を掲げ、60歳以降も働ける多様な就労形態の追求、技能形成と長期熟練の伝承、環境税、循環型社会の構築など、基幹労連の産業政策の課題を国の法律やしくみを変えていく視点を中心に、連合・金属労協へ意見反映していきました。
第1期目の政策ではありながら、幅広く課題をひろい上げ、結果的には今後の基幹労連がめざすべき産業や社会のあり方を映し出した政策となりました。

◆政策の実現に向けて 

石波防衛庁長官へ要請(2004.8)
基幹労連結成後、ただちに政策実現に向けて「国政フォーラム」(代表・高木義明衆議院議員、幹事長・北橋健治衆議院議員/国会議員192名と基幹労連中央本部役員で構成)を結成しました。また組織内・準組織内の地方議会議員222名で構成する「議員団会議」も立ち上げました。
 6月に開催した政策制度討論集会では約300人を集め、意見交換を行いました。
また7月下旬から8月上旬にかけて、関係省庁の大臣・長官をはじめ各担当局に対し、組織内議員と共に私たちの政策を訴えました。主な要請内容は、国土交通省へは船舶・社会インフラ・物流関係を、環境省へは地球温暖化対策関係を、防衛庁には装備品関係等を、また経済産業省へは産業政策の共通課題のほか、分野別政策についても要請しました。分野別で経産省へ要請した内容の一部を紹介すると、「原材料の安定供給を視野に資源インフレの実態を踏まえ資源開発に向けた支援措置を拡充すること」「日本近郊の大陸棚にあるメタンガスハイドレートなどの資源探査・採掘への技術開発を加速すること」など鉄鋼・非鉄・資源・エネルギー等に関係するものです。

◆今後の課題

政策は、蒔いた種がすぐに芽をだすものは少なく、どれも実現に向けて息の長い取り組みとなります。「継続は力なり」の精神で、私たちは政策の実現に向け唱え続けていくことが重要です。例えば、「メガフロート工法の採用と洋上空港の実現を」では、羽田空港再格調事業における入札は断念したものの、日本の将来を考えても新技術・工法を導入できる環境整備が必要であることを今後も訴えます。また前述のとおり、供給側の鉄鋼での鋼材の資源インフレ問題が、ユーザー側の造船現場では納期遅れが発生するなど大きな問題になっている現実を踏まえ、鉄鋼・非鉄金属産業を中心とした世界的な原料・資源の需給逼迫について、安定供給を視点に今後も要請していきます。地球温暖化対策推進にあたり環境税ありきの議論を行わないことなど、私たちは省庁、関係団体、連合・金属労協、国政フォーラムなど、あらゆるステージで訴え続けていきます。

◆第2期目の政策立案に向けて 

地球温暖化対策等で小池環境大臣に要請書を
手渡す宮園基幹労連委員長(2004.8)
現在は第2期目の政策を検討していますが、第1期目の政策をベースに、2年間を1タームとした政策とし、単年度ごとに重点課題を絞り込んで展開していくことを検討しています。
また基幹労連では「生活総点検活動」を実施します。これは職場・地域・国など組合員が全ステージにおいて抱えている問題・課題を掘り起こし、企業・地方自治体・国政レベルなど、課題に応じたステージに振り分けて対処し、全組合員とその家族の生活の維持向上をめざした運動です。

◆中長期の産業・労働政策「アクティブビジョン2010」

基幹労連がめざす2010年の産業・労働のあるべき姿を中長期的な視点からビジョンをえがき、その実現を図るため、私たちは現在検討を重ねています。呼称は「アクティブビジョン2010」。特に労働政策では、基本的方向として「取り組みのリズムと速度をひとつにする」「産別としての目標をひとつにする」「そこに至る尺度・道筋をひとつにする」といった、3つの“一本化”をうたい、旧産別の垣根を完全に取り払い、真に“ひとつの産別”となるよう全力投入しています。

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