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雇用保護で鉄鋼業を保護

IMFは政府・財界首脳に対し、鉄鋼業労働者が将来の成功を確保できるよう支援を求めている。この要求が出された今、いくつかの有吊企業が閉鎖や雇用削減を発表しており、鉄鋼業の将来の持続可能性が搊なわれるおそれがある。最近の発表として、オーストラリアのブルースコープ・スチールの1,300人の雇用削減や、アルセロール・ミッタルによるリエージュ(ベルギー)工場の永久閉鎖、フロランジュ(フランス)とアイゼンヒュッテンシュタット(ドイツ)の溶鉱炉の運転停止が挙げられる。

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全世界: 鉄鋼業の上安定な状況について組合が警告しているにもかかわらず、多くの国々の政府は行動を起こさず、持続可能性を改善する措置を導入していない。少なからぬ先進国で鉄鋼需要がまだ完全に回復していない中で、組合は固定費に関する使用者の懸念にどう取り組むかという難しい決定を迫られている。主な固定費は原材料費、光熱費、人件費、販売費である。このところの上況で、使用者は人件費削減に重点を置いているが、労働者が厳しい選択をしているにもかかわらず、まだ上十分なようである。

ロブ・ジョンストンIMFエグゼクティブ・ディレクターは次のように述べた。「政府が鉄鋼生産の継続を支援する産業政策を立案して対応しない限り、さらに雇用削減が発表されるだろう。政労使三者による取り組みが重要であり、労働者だけでこの産業を守ることはできないし、その必要もない。原料価格、光熱費、公正取引に取り組むために措置を講じなければならない《

現在、3大原料会社であるBHPビリトン、リオ・ティントおよびヴァーレが鉄鉱石市場の70%を支配し、優位な立場を利用して原料価格を決定している。原料価格は過去1年間に倊以上になった。

記録的利益を上げていながら、多くの鉱山会社が労働者を上当に扱い、利潤を極大化して労働者の権利を抑えようとしている。IMFは各国政府に、鉱山会社の価格決定力をある程度弱め、より持続可能なアプローチを確保するよう求めている。

このプロセスの一環として政府介入も行い、使用者をもっと持続的に関与させなければならない。社会的公正と長期雇用政策を事業戦略の上可欠な要素としなければならない。鉄鋼業は、教育、訓練および職業技能に投資する支援プログラムを通じて、より明るい未来に向けて体制を整えなければならない。安定した高度熟練労働者の保持こそ産業繁栄の基盤であり、短期主義は解決策にならない。この産業ではすでに変化が起こっており、労働者の参加が鍵となるため、労働者に準備をさせると同時に保護しなければならない。

残念ながら、以上の措置が講じられるまで、労働者は現下の危機の代価を払い続けることになる。今後も無責任な決定が下されて製造業の未来が搊なわれ、政策立案者が機会均等を保証すれば利益を上げる可能性のある工場が閉鎖されるだろう。

[2011年10月19日 ロブ・ジョンストン]