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デンマークの産業協約が雇用保障を最優先

デンマークのソーシャル・パートナーが締結した新しい2カ年全国労働協約で、雇用保障と雇用創出が基礎に据えられた。この協約は、デンマークの製造業労働者24万人とダンスク・インダストリが組織化している6,000社を対象とする枠組み協議の中で、2月11〜12日の週末に行われた長丁場の交渉によりまとまった。

デンマーク: 3F、デンマーク金属労組、HK/PivatなどCOインダストリ傘下の8組合が主導する労働組合側は、デンマーク労働総同盟(LO)と協力して賃金抑制方針を設定し、その代わりに訓練や年功、高齢労働者・若年労働者双方の賃金全額支給による労働時間短縮など、前例となる充実した雇用保護の獲得に焦点を合わせた。

この産業社会協約は他の労働部門の基準となった。協約は2012年3月1日から2014年3月1日まで実施される。この全国産業協約によって最低賃金の指針が定められたが、正確な賃上げについては今後、地方レベルと企業別協約の枠内で取り決められる。

枠組み協約は、景気後退期や労働時間の短縮が実施されたときに、賃金全額支給による訓練の実施を定めている。また、高齢労働者が給与と部分年金給付によって所得水準を維持しつつ、退職前の5年間に労働時間を短縮できるようにしている。労働者には、給料を補う手段として現行年金制度を利用する選択肢も与えられる。

新協約の重要な要素は、全国産業訓練基金への拠出額が労働時間1時間当たり0.05ユーロ増額されることだ。

従業員の裁量で決めることのできる訓練期間が場合によっては2週間から6週間に延長され、レイオフから9カ月以内に呼び戻された場合に完全な年功が与えられる。以前は6カ月以内だった。また、有給病気休暇を取得できる時期も、以前の雇用後9カ月以降から6カ月以降に短縮された。

新協約は低所得者にも配慮しており、レイオフされた場合の支給額を増やしている。育児休暇の柔軟性が高まり、週末や休日、時間外労働に対する年金が増額された。

推奨される最低賃上げ額は3月1日から1時間当たり0.18ユーロで、2013年3月1日にも同額の引き上げがある。困難作業手当が毎年1.4%増額され、見習工、訓練工およびインターンは賃金が毎年2.25%上がる。

1月初めに交渉が始まったが、商業事務労組(HK/Privat)が労働協約の発効前に必要な社員数に関する50%の基準を廃止しようとしたことから、紛争寸前の状況に陥った。50%基準なしで労働協約を締結する機会を使用者に与えることで妥協し、HK/Privatの対象範囲も拡大され、訓練工として働いている管理スタッフと大学生を含めることになった。

この協約はデンマークで、金融危機勃発以降に同国で失われた約8万人の産業・製造業雇用を回復するために必要な基礎的要素として、広く称賛された。

[2012年2月20日 ICEM]