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ロシアのシンクタンク調査結果――派遣労働は労使双方にとって利益なし

モスクワを拠点とするシンクタンクの社会・労働権センターは4月20日、「派遣労働と労働者に対するその影響」に関する調査の結果を発表した。専門家は、派遣労働からは労使双方が利益を得ないことを確認した。

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ロシア: モスクワを拠点とするシンクタンクの社会・労働権センターとフリードリヒ・エーベルト財団は4月20日、「派遣労働と労働者に対するその影響」に関する調査の結果を発表した。労働組合、使用者および科学界の代表約60人が円卓会議に参加した。

CSLR研究者のペトル・ビズイコフが調査結果を発表し、調査チームの主な所見について説明した。

ビズイコフによると、派遣労働の利点を見つけようとしたにもかかわらず、1つも見つからなかった。これは労働者だけでなく、持続可能な生産を確立する用意のある使用者にも当てはまる。なぜなら、派遣労働者は意欲も効率も低いが、労働災害発生率は高いからだ。

さらにビズイコフは、「派遣労働は失業と安定雇用との橋渡しの役目を果たす」という派遣会社の主張にもかかわらず、この種の労働は安定した常用雇用に取って代わるだけだと述べた。

ロシアの国会議員でもあるIMF執行委員のミハイル・タラセンコが、専門家として参加者の前で演説し、派遣労働禁止法案が昨年ロシア議会の第一読会を通過したと述べた。直ちに法案起草者に対する総攻撃が始まり、外国の人材派遣会社団体の支援を受けて、人材会社の利益を守るために徹底的なロビー活動が行われた。

タラセンコによると、西側諸国の組合は以前、法律で派遣労働を規制できるようにすることを望んでいた。今では、派遣労働者の割合を引き下げるために闘っており、派遣労働を全面的に禁止するロシアの組合のイニシアティブを支持している。

続いて全ロシア電機産業使用者連合のオレーグ・クリコフ会長と在ロシア欧州企業連合労働問題委員会のオルガ・バセキナ委員長が、派遣労働合法化の必要性を主張し、その理由として、学生や小さい子どもがいる母親、知的労働者、創造的労働者といった特定の労働者グループには、柔軟な勤務スケジュールのほうが好都合であることを挙げた。2人は、派遣労働はロシア労働市場の顕著な特徴になっているので合法化すべきだ、とも主張した。

ボリス・クラフチェンコ全ロシア労働総連盟会長は、派遣労働が現実に存在するのは確かだが、それを理由に派遣労働の導入や合法化を支持する主張は聞いたことがないと述べた。最近ロシアでは腐敗が多方面で見られるようになったが、これは腐敗を合法化する理由にならない、とクラフチェンコは主張した。

CIS諸国のIMF代表バディム・ボリソフが、使用者側は欧米の組合が派遣労働の合法化に賛成しているという根拠のない主張をしているが、実際には世界中の組合が不安定労働に対抗するIMFキャンペーンに参加し、派遣労働は労働者の権利や労働条件を損なうと考えている、と述べた。ネオリベラル経済モデルは1997年のアジア危機と2008年の世界恐慌を引き起こした。このモデルは、これからも再三にわたって危機的状況をもたらすだろう。使用者が派遣労働を支持して働きかけているのは、そのような状況において会社の安全を確保し、労働者にリスクを転嫁したいと考えているからだ。

CSLRは、この調査に基づいて『派遣労働:労働者に及ぼす影響』という書籍を出版した。

CSLRウェブサイトからロシア語版をダウンロード可能: http://trudprava.ru/files/pub/zaem-trud.pdf

関連リンク:
Agency Labour and its Effects on Workers


[2012年5月3日 イリヤ・マトベーエフ]