第47回協議委員会   古賀議長あいさつ

挨拶する古賀議長
金属労協・IMF−JC第47回協議委員会にお集まりの皆さん、大変ご苦労様です。
また、本日は大変お忙しい中、連合を代表して笹森会長にご臨席いただいております。後ほど、労働運動の現状と課題、そして金属労協への期待など有意義なお話をいただけることと存じます。ご挨拶を通じて、私たちの置かれている状況について、より一層理解を深めたいと思っているところです。日頃の金属労協に対しますご指導とご厚誼に心より感謝申し上げますと共に、改めて会場の皆さん全員の拍手でお礼に代えさせていただきたいと思います。本日は大変ありがとうございます。

冒頭から私事で恐縮ですが、9月の第43回定期大会にて鈴木前議長から議長を受け継ぎ、早いもので3ヶ月が経過しました。当日の新役員代表挨拶でも申し上げました通り、電機連合の中央執行委員長との兼務であり、皆様方にはご迷惑・お手数をおかけしていると思いますが、金属労協の当面する課題を直視すると共に、様々な時代の要請に対して受け身ではなく、それを先取りする果敢な挑戦に向け、精一杯任務を遂行していきたいと考えていますので、どうか皆様方の今後とものご理解とご協力を改めてお願い申し上げます。

一連の自然災害から、地球環境問題に対し、着実に行動を
まず、直近発生した新潟県中越地震で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復興を願ってやみません。各産別でのカンパ活動やボランティア活動に心から敬意を表し、これからも私たちにできることは継続して取り組むことを、お互いに確認し合いたいと思います。
今年は、この地震だけでなく、台風も猛威を振るいました。台風の大型化や異様に高い上陸頻度と地球温暖化との関連は、直接的には証明されていないようです。しかし、それらの現象は、今、気象学者が注目しているように温暖化に伴う急激な気象変動との関連の疑いもあります。
この一連の自然災害を経験し、災害後の復興支援やシステムの改善は言うに及ばず、私たちは、自然との共生、そして、地球環境問題に対し、改めて認識を深め、組織でやること、個人でやることを峻別し具体的に着実に行動する必要があると考えます。

さて、本協議委員会は、金属労協としての来る2005年闘争の方針を決定する重要な会議です。時間の制約もあり、具体的には後程の提案にゆだねることとしますが、主要議題である2005年闘争を中心に幾つかのポイントについて若干の所見を述べさせていただきます。


2005年闘争の取り組みについて
春闘の始まりは1955年の8単産共闘とされており、2005年闘争は、ちょうど50年・半世紀が経過した闘争と位置付けられます。
この間様々な環境変化の中で、春闘のあり方も変遷し、今私たちを取り巻く環境は大きくしかも急激に変化しています。グローバル・ボーダレス化、IT社会の進展、少子高齢社会、雇用構造の変化、そして戦後初めてのデフレ経済など、かつて経験したことのないこの状況は、私たちの働き方や暮らし方に、大きな影響を及ぼしてきています。 
とりわけ、私たちと密接に関連する労働市場に目をやると、雇用情勢は多少改善が見られているものの、依然として完全失業率は高水準の状態であり、若年者の就業問題も含めて深刻化していると見なければなりません。また、非典型雇用労働者は三割にまで拡大しています。2005年闘争の推進においても提起していますが、この非典型雇用労働者のあり方を含めた職場での課題についての労使協議を充実していくと共に、働く者全体の視点から、公正な処遇条件の確立に向けた活動を推進していく必要があります。労働組合として、この課題を解決する大きな役割があることを、認識しておかなければなりません。
加えて、ここ数年、日本全体として賃金の低下傾向が続いていると同時に、競争激化のなかであらゆる格差が拡大し深刻化しています。労働条件面だけを見ても、地域・規模・雇用形態による賃金格差の拡大や所得の二極化が進んでいます。また、春闘方式が始まって50年が経過した今日、賃金引き上げに関しても、右肩上がりの経済成長を背景に春闘が統一した賃上げ交渉として成立し、そのなかでパターンセッターが存在し、その賃金引き上げで相場形成を図るといった、これまでの賃金決定メカニズムが変質してきています。

このような情勢の中で、私たちはJC共闘の新しい意義を、ここ数年議論してきました。右肩上がりの成長から成熟型経済への移行に伴い、産業・企業の置かれた環境の違いが顕在化する中、これまでの統一的な賃上げ要求基準設定(賃金の上げ幅)による共闘から、仕事や役割を重視した個別賃金決定方式の確立による賃金水準の社会的相場形成、社会的賃率形成を目指すこととしました。併せて、雇用形態の多様化にも対応して金属産業全体の賃金の下支えを図る取り組みを行うこととしたのです。キーワードは「ミニマムによる下支え・底上げ」「格差改善」「均等処遇」とするJCミニマム運動です。すなわち、将来的にはその水準以下の賃金で働くことをなくしていく「JCミニマム(35歳)」、企業内における全従業員の下支えとして機能させるべく取り組む「最低賃金協定」、未組織労働者も含めた金属産業全体としての賃金のセーフティーネットとしての「法定産業別最低賃金」、この三つの柱を相互に連携させながら社会的影響力を高める運動として、2003年闘争から推進してきています。2005年闘争においても、このJCミニマム運動の強化を図っていくこととします。
一方、こうした時代変化に対応して、金属労協は、この9月に開催した定期大会で、第2次賃金・労働政策を確認しました。そして、この2005年闘争を、その実現に向けた取り組みの第一歩を踏み出す闘争と位置付けたいと考えます。「大くくり職種別賃金水準の形成に向けた条件整備」の取り組みを始めとし、「労働時間」「60歳以降の就労確保」「仕事と家庭の両立支援」の取り組みなど、副題である「生活との調和と自己実現をめざす多様な働き方の実現」に向け、職場の実態に即して解決すべき課題の優先順位を明確にし、取り組みを推進することとします。

具体的な重要項目である賃金要求については、経済成長、物価動向、労働市場の状況、産業・企業間の業績の一層の格差拡大、グローバリゼーションにおける各産業・各産別を取り巻く環境の違いなどから、金属労協全体で統一的なベア要求を掲げる環境にはなく、格差改善に注力すべきと判断いたします。したがって、来年2005年闘争においては、全ての構成組織が名目賃金水準、つまり、同一銘柄における賃金水準の維持・確保を図るため賃金構造維持分を確保することとします。さらにマクロ、ミクロの諸情勢から、水準向上を目指してベアに取り組む産別・単組や、金属産業の賃金水準や産業間・企業間の賃金格差の実態などから、格差是正として賃金交渉に取り組む構成組織を、JC全体のことと受けとめ、その環境整備に努めていく必要があることは、言うまでもありません。

 尚、これまで開催してきた3月初旬の闘争推進集会については、12月13日に開催する第1回戦術委員会にて最終決定しますが、今年は開催しない方向で議論していきたいと考えています。

法定産業別最低賃金の取り組みについて
 次に、法定産業別最低賃金の取り組みについて、現状報告とお願いを申し上げておきます。
 昨年(2003年)12月の総合規制改革会議の第3次答申で「産業別最低賃金の見直し」が提起され、今年9月には厚生労働省が「最低賃金制度のあり方に関する研究会」を設置し、現在、関連団体・関連各位からの意見聴取が進められており、来年春の最終報告を目途に議論が行われています。
 産業別最低賃金は、組織労働者の締結した企業内最低賃金協定などによって必要な合意形成を図り、その上で当該産業労使が参加する形で適用対象者や金額を決定し、申請した労働組合員のみならず、広く産業全体に適用される制度です。いわば、我が国唯一ともいえる企業の枠を超えた産業別労働条件決定システムであり、日本の賃金秩序に適合した実効性ある賃金の下支えとして重要な役割と機能を果しています。また、雇用形態の多様化が進展している今日では、その役割は益々重要なものになってきていますし、更に、公正競争の確保という視点からも欠かすことのできないシステムです。
 今政府がこの産業別最低賃金が果している役割と機能を軽視し、廃止を前提として検討・論議しているのであれば、極めて遺憾と言わざるを得ません。金属労協としては、先程も申し上げた通り、春の総合生活改善闘争におけるJCミニマム運動の一つの柱としてこの法定産業別最低賃金の取り組みを位置付けています。未組織労働者を含めた賃金のセーフティネットの構築を図るべく、「産業別最低賃金の継承・発展」の姿勢を堅持していくことを改めて表明し、各方面に働きかけを行なっていきます。
各構成産別におかれましても、是非、この趣旨に沿った対応をよろしくお願い申し上げます。また、笹森会長へは、連合としてもこの取り組みに対する強化をお願いする次第です。


COC(海外事業の展開に際しての企業行動規範)の取り組みについて
 三点目は、COC(海外事業の展開に際しての企業行動規範)の取り組みについてです。
 去る9月に開催されました定期大会において、改めてこの4年間の皆さんの取り組み努力に敬意を表しつつも、具体的成果を得るには至ってないことから、この本日開催の協議委員会で、今後の取り組み方針を再確認することを提起いたしました。
 後ほど「特別報告」として報告させていただきますが、皆さんの懸命な労使協議の積み重ねにも関わらず、未だ本日現在、具体的な労使締結に至ってないのが現状です。
 企業の社会的責任(CSR)が世界的にクローズアップされており、加えて、ISO(国際標準化機構)では、ISOとしてCSR規格を策定することを決定しました。今後具体的な検討がスタートすることになりますが、ISOは企業活動全般に大きな影響を持つものであり、CSR規格に対しても、企業の積極的な対応が求められることになります。中核的労働基準の遵守は、当然ながらCSRの範疇に含まれるものであり、CSRへの対応の必要性が高まる中で、中核的労働基準に関する労使締結によるCOCの重要性はますます高まってきています。
 従って、私たちはCOCの労使締結を図るべく、引き続き全ての産別が総力を挙げて取り組みを推進していくこととし、取り組みにあたっては、様々な実現の方策を模索しつつ、ねばり強く労使協議を進めていく必要があります。どうか、皆さんの引き続きの取り組み強化を、お願いいたします。


「サマータイム制度」早期導入について
 最後に、本日決議事項として提案いたします「サマータイム制度」早期導入について触れさせていただきます。
 率直に言ってこの「サマータイム制度」の意義や位置付けが、職場の隅々にまで十分浸透しているかどうかと思われている方もいらっしゃると思います。しかし、今、大きな環境変化の中で、これまでの生活を見直し、様々な選択肢のもと会社、家庭、地域とバランスのとれた新たなライフスタイルを確立するための環境整備が求められています。
 金属労協では、昨年2月に研究会を発足させ、「サマータイム制度導入に関する考え方」をまとめ、今日まで関連団体に対し、働きかけを推進してきました。
また、滋賀県や札幌などで実証実験も行われ、今年8月には超党派による「サマータイム制度推進議員連盟」が発足し、サマータイム法案を早期に提出する運びにもなっています。
 この機運を逃がさぬよう、その実現に向け、本日の協議委員会で「サマータイム制度早期導入決議」を行い、各方面への働きかけを展開すると共に、職場での理解促進に一層の皆様方のご努力をお願いする次第です。

 限られた時間での協議委員会ですが、皆さんの真摯な議論をお願い申し上げ、冒頭のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。