春季生活闘争
 
2006年闘争集中回答日

集中回答日(3月15日)記者会見
議長、産別委員長・会長コメント質疑応答
議長、産別委員長・会長コメント
■加藤議長
 5年ぶりにJCとして5つの産別が賃金改善に取り組むという統一的な意思決定を行い、2月の中旬に要求を提出し、本日集中回答日を迎えた。各産別が懸命に交渉を重ねて回答を引き出している。賃金の引き上げを要求しない状況が続いていたので、難しい交渉になると予想していたが、予想通り大変難しい交渉だった。本日の回答は、各組合で職場が一体となって頑張った結果と思う。

■電機連合・中村代表
 正式な回答を受けたところについては、経営側から示された回答を冷厳なる事実として受け止めざるを得ない。回答引き出し基準を満たすことができなかった組合もあるが、断腸の思いであるが、苦渋の選択として、集約方向を決意したい。
その背景は、今次交渉を通じて各組合は、@労働協約改定については、概ね要求の趣旨に沿った決着が図られつつあること、A一時金においても、トレンドとしては前年より水準がアップする組合が多いこと、B賃金については、有額であり、目標には届かなかったものの、組合員からは概ね理解が得られるものと考えていること、C今後の電機連合の労使関係に大きな影響を与えかねないこと、などを総合的に勘案したときに、電機連合の責任者として断腸の思いではあるが、苦渋の選択として、集約方向を決意した。
今後の課題として、電機連合の統一闘争のあり方論議を加速させていきたいと思っている。以前から提起しているように、職種別賃金要求方式を視野に入れて、電機連合の統一闘争のあり方や統一闘争組織のあり方論議というものを早急に深めていきたい。

■自動車総連・加藤会長
 JCに登録している11組合のうち、4組合が回答引き出しをしている。自動車総連としては、最終段階の組織内の確認事項を「要求実現」として、要求の取りきりを目指して交渉を追い上げてきた。自動車総連においても、経営との溝が埋まらずに、前日の真夜中まで状況が見えないというこれまでにない厳しい状況の中で、切り開いてもらった。
 4組合の回答をみると、一部要求に満たなかったところもあるが、要求満額も獲得している。一時金は過去最高水準、あるいは前年水準から引き上げた組合が多い見込み。賃金と一時金の全体の状況をみれば、われわれが目指した賃金改善、職場組合員の努力や労働の質向上を経営に理解された回答と受け止める。
 自動車総連全体として911組合が賃金改善を要求している。先行組合以上に厳しい状況にあると思うが、先行組合の成果を生かし、要求の趣旨を踏まえた回答の引き出しができるように今後も頑張っていきたい。

■JAM・小出会長
 JAMは、中堅企業でキチッと交渉ができる単組をJCに登録した。中小労組に対しては、賃金の底上げ、大手との格差改善を大きなテーマとして運動を進めてきた。今闘争でははじめてJC登録組合について、JCの引き出し基準をクリアするという方針を作り、共闘体制を作った。
 要求の組み立てを工夫し、「賃金改善」という枠組みで、平均賃金、個別賃金にかかわらず、2,000円以上の要求にした。交渉においては、業績の回復と人への投資を主張し続けた。今、若年層が採用できないという厳しい状況がある。企業が人的投資を行い、人を採用するという考えを持っていることが、今回賃金改善を獲得することにつながったと考えている。

■基幹労連・宮園委員長
 総合部門15組合のうち、14組合に対して賃金に関する回答が出されている。うち1組合が年収管理方式であり、13組合についてはいずれも新たな財源投入によって賃金改善を実施する。実施時期はバラツキがあるが、今年4月と来年4月の2段階で実施する組合が2組合、10月実施が1組合、来年4月1日実施が10組合。具体的にはこれから労使で検討し、具体的な投入金額は賃金改善の内容が具体化した時点で回答する、という回答である。06年、07年一括した2年サイクルで要求している。遅くとも来年4月からの実施について労使で合意した。
 賃金改善の狙いは、質・量両面を要求したものであり、ベースアップ以外の賃金改善であっても原資の拡大を要求した。今回の交渉では、双方の明確な回答を最後まで求めたが、賃金制度、運用改善の実施にとどまり、明確な金額表示がなされなかったことは極めて残念であるといわざるを得ない。しかしながら、経営側は、必要な財源は新たに投入する、遅くとも来年4月には実施するという見解を示しており、十分とはいえないまでも、金額にこだわってきた組合の思いを受け止めたものとして理解せざるを得ないと考えており、一定の評価を持って受け止めている。賃金改善の金額については、これから労使で詰めていくが、交渉内容の経緯を踏まえれば、有額になることはまず間違いない。今日の回答で、具体的な内容を出した会社もある。個人的な判断になるが、1,000円以上の財源投入がなされるものと確信を持っている。
 一時金は、交渉方式で決定した組合では、年間130万円弱〜236万円の回答となり、企業の業績に応じて大きな格差が生じた。業績連動組合は、3月末決算を見た上で出ることになるが、ほとんどの組合が増額であり、多いところでは30万円以上増額もある。退職金は1組合のみの回答となった。鉄鋼部門が要求した交替手当は、要求どおり月額1,000円の回答となった。組合員の6割が交替勤務であり、1人平均にすれば600円程度になる。月例賃金の引き上げには頑なだった経営も、交替手当については組合の要求を受け止めて回答したものと考える。

■全電線・福田委員長
 電線産業は今まで苦しんできたが、ようやく回復基調になってきた。しかしながら、企業ごとに回復度合いに違いが大きく、やっと4〜5年ぶりに水面上に顔を出した企業もあり、難しさも抱える中での闘争となった。そんななかで、JC方針に沿って、賃金改善と年間一時金の回復に取り組んできた。現時点では1単組が回答を引き出している。今後、約1週間で全電線の全単組が解決できるように取り組んでいく。賃金については、賃金構造維持分を確保できたものの、具体的な賃金改善は残念ながら断念せざるを得なかった。一時金は低位にあったため水準回復に取り組んだ結果、前年実績に大幅な上積みが図られ、今後交渉する組合に好影響を与えることができそうである。賃金改善は、未だ課題を抱えている厳しい産業実態の中にあるとはいえ、厳しい結果であった。一時金は、世間とは未だ開きがあるが、世間水準確保に向けて一歩前進し、一定の成果を得ることができた。


質 疑 応 答
■金属労協・加藤議長(自動車総連・加藤会長)
質 問
@JCの確認事項では、不十分だが一定の評価、とあるが、5年間賃金改善要求がなかったことに対して、今年は舵を切り替え、「賃金改善」の流れができたと考えているか。
A分配のゆがみ、格差社会の是正ということが今年の意義としてあったと思うが、個別企業をみると、賃上げなしでも株主への配当を4〜5割程度も増やしているところもある。1,000円の賃金引き上げでは0.03%増にしかならない。JC共闘として業績がばらついているので各産別に委ねるというのでなく、GDP、CPIを含めていかないと、日本経団連がいう「賃金は自社でやれば良い」という形で、産別統一闘争や、横断的な闘いもなくなっていく危惧がある。株主重視に対して、どう向かっていくか聞きたい。
B日本の場合はヨーロッパのような交渉をしていないわけであり、どうしても企業の事情が優先されるという状況がでてくると思う。今年を見ても、産別の思いと単組の思いがある。産別要求を持って集まるのが共闘であるが、どうJC共闘を強めていくのかが課題になると思うが。
CJCが戦術委員会で確認してきたのは、「明確な賃金改善」という表現だが、「明確な賃金改善」ということについて、今日の結果をどう評価するか。その要因は何か。
回 答
@賃金改善は、不十分な部分も否定できないが、舵を切ることができたと前向きに評価している。そのことを将来に結び付けていくという我々の意思を持ち続けることが大切である。
A分配のゆがみについては、まさにそのことを訴えてきた。分配のゆがみをマクロ的に是正していくためには、月例賃金に取り組まなければならない。そのことについても、流れをつくることができた。ミクロの主張もあるが、5産別が一緒に、マクロも睨みながらやっていくという思いはこれからも共有していく。
Bそういう思いで、金属、ものづくりとして共通基盤を大切にしていく。その点については、今まで以上に共有できた。
C一言で言えば、JC全体として満足しているわけではない。要因は、各産別が答えられている。JC全体について一言でくくることは難しい。JC全体で狙った水準については、十分満足できないとしか言いようがない。それぞれの産別の評価を見ていただき、判断していただくしかない。

■電機連合・中村代表
質 問
@1,000円の歯止めが守れなかったことに対して、電機連合としてどういった責任を感じられているか。
A電機連合では、回答の足並みが揃わないことは初めてと聞いているが、産別として一体で要求を出し、1つの回答を得るという闘い方の限界というのを感じるか。
Bストについてはどのように考えるか。
回 答
@断腸の思いで苦渋の選択として、回答引き出し基準を満たすことのできない組合についても、集約方向を決意したいと思っている。すべての組合が正式回答を受け取った時点で、今後の評価、対応を検討していく必要があると考えている。
A電機産業では、今年はとりわけ、業績、企業体力、財務体質が大幅に違うという状況の中での極めて厳しい交渉となった。定性的な回答引き出し基準を設定して、口頭の申し合わせで1,000円ということで進めてきた。しかしながら、企業ごとに状況に差があることから、結果として足並みが揃わなかった。今回の交渉のみならず、電機連合の統一闘争のあり方論議を加速しなければならない。これまでは長期にわたって右肩上がりの業績であった。これからは、国際競争の激化もあり、同じ電機産業であっても、業種、業態、企業によって、これまで以上に各企業の業績がばらつくのではないか、と考えている。職種別賃金を視野に入れながら、産別統一闘争のあり方や統一闘争組織のあり方について、早急に論議を深めていきたい。
Bストについては悩んだ。断腸の思いであるが、苦渋の選択として、電機連合の責任者としてストに入るべきでないと決断をして、集約方向を決意した。

■自動車総連・加藤会長
質 問
@自動車では、業界内格差が広がっているという意味で、同一価値労働同一賃金という前提が大きく崩れていると思うが、それについての今後の対応を聞かせていただきたい。
回 答
@大くくり職種別賃金水準の形成を目指しており、基幹的労働者の賃金水準を指標として、それを製造業の中でわれわれにふさわしい水準にしていこうという考え方で取り組んでいる。交渉段階で要求が全部共通でなくても、今後はそこをみるということではなくなる。現状の賃金水準に格差が生じているということについては認めざるを得ないが、それは長い歴史を積み重ねて現在の水準になっているのであり、産業内の格差は縮小していきたいという思いは皆持っている。それを縮小していくために、格差是正分を積んでいくというようなことも必要になってくる。金属産業全体ということであれば、単年度の要求、回答に違いが出てくると思う。問題は考え方を共有化することが重要であり、現在ある格差をどうやって縮めていくのか、そのベクトルを大事にしたい。

■JAM・小出会長
質 問
@今時点のJC大手の回答は、このあと続く中小の回答にどういう影響があるか。
A中小の立場から見てJC共闘は、今年はどうだったか。
回 答
@去年は大手が全く動かない中で、連合の調査によると中小の53%が500円以上の賃上げをやった。そういう視点から見れば、今年は相当プラス方向に動くと見ている。今年は、二極化の解消がどこまでできるかという観点から、中小においても定昇相当分込みで4,500円以上をクリアして欲しい。
A積極的な報道が中小に影響を与える。基幹労連で数字がないということで心配したが、宮園委員長がはっきりと賃金改善が実現すると言われた。電機連合でも、実質的に500円以上上がっている。少なくとも大手の場合は、何がしかの賃上げがあったということをこれから訴えていきたい。

■基幹労連・宮園委員長
質 問
@新規財源の投入は、すべての経営側から言質は取れているのか。
A1,000円以上を確信しているというのは、鉄に限ったことか、3部門全体か。
B鉄鋼で「必要な財源投入」を行うという文面があったが、「必要なし」という結論になり得るという危惧はないのか。
C一般の人から見れば、自動車、鉄鋼が業績が良い中で、キチッとした金額を示すことを期待している部分もあったと思うが、そのことについてはどうか。
D一定の評価を持って受け止めているということだが、今年出ないことはどのように受け止めるか。
E3部門一体となっての取り組みは始めてであり、成果があったということだが、何か具体的な成果があったら教えていただきたい。
F基幹労連は一旦打ち切り、再交渉を行うということだが、こうした決着は、労使どちらからの提案か。
G秋からの交渉ということだが、2年に1回の交渉というより、1年中交渉しているというイメージになる。2年に1回という交渉方式を再検討する考えはあるのか。
H鉄鋼労連が隔年春闘を始めたときに、こうした事態を想定していなかったと思う。2年サイクルの本来の趣旨とは外れているのではないかと思うが、その点について意見を聞きたい。
回 答
@13組合すべてで言質が取れている。
A3部門全体である。金額表示がなく、実施時期はほとんどが1年後になることは残念だといわざるを得ないが、経営側の頑なな姿勢や、一時金を含めた年間総賃金でみれば製造業平均を上回っているなど、想像以上に厳しい交渉のなかで、企業連・単組の頑張りで、2年トータルでみた場合、それなりの有額回答を引き出すことができたことは評価できる。
B鉄鋼の「必要な財源」の解釈だが、経営が実施するということで具体的な回答をしている企業もあり、抽象的な表現のところにおいても、組合から提起された課題について検討すると言っている。交渉の中では、各労使が財源投入を必要とする課題について真摯な話し合いを積み重ねてきた。鉄鋼、造船、非鉄も含めて、労使の信頼関係がある。最低でも1,000円、そしてそれ以上と確信している。3,000円の範囲内での議論になるが、結果として財源投入の金額がすべて揃うとは限らない。企業連・単組ごとに賃金改善の中身が違うのであり、ばらついたとしてもやむをえないと考えている。
C経営は、業績は過去最高であるが、その分については一時金で還元しているということを主張している。3年前までは今の収益や200万を超えるような一時金を予想もしていなかったが、過去最高の業績に伴い、一時金が増加している。一時金と月例賃金の性格をどう見るかということになる。経営側が主張したのは、業績が良いからといって固定的コスト増につながる月例賃金を増やすことはできないということ。これを否定するつもりはなく、業績は一時金に反映されるという考え方を持っており、業績が良いから月例賃金の改善を要求したという考え方には立っていない。
D今回、基幹労連としてはじめて、3部門一体での取り組みとなったが、それぞれが自己責任のもとで頑張り、相乗効果を発揮することができたという面からしても、基幹労連として成果が出たと判断している。
E具体的に答えるのは難しい。全体が2年サイクルでひとつになって取り組んだが、単年度で要求していた場合には、ゼロ回答に終わっている可能性もないわけではなかった。1年後に実施するということが見えたわけであり、それは評価すべきであると考える。お互いがもたれあいにならないように、それぞれが自己責任の下で取り組み、そのことによって相乗効果を発揮し、成果を出すことができた。
F経営の回答が、そういうことだった。継続交渉という方法もあると思うが、賃金改善以外にも諸手当の関係もあることから、春季交渉は今日の回答をもって一旦締めくくる。組合としては最後まで具体的な金額表示を行うように頑張ったが、こういう結果になった。
G最終的に金額表示にこだわり続けてきたが、今回は、配分や制度の問題を提起したのであり、検討に時間を要する内容を含んでいる。今次交渉については、今回の回答をもって一旦打ち切り、具体的な内容が秋ごろに会社から提示される。その時点で、改めて団体交渉ということになる。2年サイクルだからこそ、こういう方式がとれたのであり、年中交渉というわけではない。2年サイクルを変えるつもりはない。
H2年サイクルの運動を始めた当初とは状況が大きく変わった。98年から鉄鋼労連が複数年協定をスタートしたが、経済・産業が安定してきたという状況を踏まえて、ベースアップを毎年やるのではなく、運動の効率化を含めて2年に1回ということにした。今回「賃金改善要求」という初めての取り組みになったわけであり、結果として2年サイクルという枠組みを有効活用して、労使が合意したと判断をしている。実施の確約を取ったということと、新規財源投入について確約が取れたということをもって、今回の賃金交渉については、一旦締めくくるということである。