2010年闘争に向けて始動
取り巻く情勢を学び
ものづくりニッポンへの自信深める
2010年闘争シンポジウム開く

参加者


金属労協は、2009年11月12日(木)午後1時半から5時30分まで、都内ホテルイースト21東京で、2010年闘争シンポジウムを開催した。同シンポジウムには、加盟産別・単組から120名余が参加、2010年闘争の推進に向けての課題について問題意識を高めた。

中村労働政策委員長
中村労働政策委員長
冒頭、司会の米内事務局次長の開会の辞の後、金属労協労働政策委員長である中村副議長(電機連合中央執行委員長)が挨拶に立ち、まず本シンポジウムの目的について「2010年闘争の要求策定に向けて、取り巻く情勢や考え方、更には、本日の講演にもあるようにモノづくり製造業の復権に向けて考え方、認識を共有化することにある。そのことを通じてJC共闘の強化を図っていくという目的がある」と言及した後、闘争を取り巻く環境、連合と金属労協の闘争方針の考え方、具体的な取り組み内容などについて述べた。「本年9月1日に開いた第48回定期大会で2010年度活動方針で決めたが、その中で、特に『金属産業にふさわしい労働条件の確立』という方針を確認した。このことを踏まえて、我々は2010年闘争を展開していきたい」と述べた後、@2010年闘争にあたり、取り巻く情勢について、経済全般、生活実態、物価見通し、雇用情勢、労働時間、企業業績などを中心に言及した後、A連合の基本方針、B金属労協の基本的な考え方と具体的な取り組み方針、C取り組みの進め方などについて述べた。


石水労働経済調査官
石水労働経済調査官
次に、講演1として、「平成21年版労働経済の分析」について厚生労働省の石水喜夫労働経済調査官から講演を受けた。同氏からは、現在の労働経済の動向について、賃金・物価・雇用の動向と勤労者の生活について、さらには、雇用システムの展望と課題も含めて、『平成21年度版労働経済の分析』全般のポイントについて、講演を受けた。特に、雇用システムの展望については、「雇用の安定を基盤に仕事の働きがいを通じて経済・産業活動を活発化させると共に、経済活動の成果を適切に分配し、豊かで安心できる勤労者生活を実現することのできる雇用システムを構築していくことが重要である」と述べた。


鈴木国立科学博物館科学技術史グループ長
鈴木国立科学博物館
科学技術史グループ長
講演2として、国立科学博物館の鈴木一義科学技術史グループ長から「モノづくりへの自信と信頼」をテーマに、昨年秋からの金融危機の発生によって打撃を受けた日本のモノづくり産業を元気づける講演を受けた。科学技術史の観点から、日本のモノづくり産業が持っている、また培ってきたものづくり技術の自信と信頼について講演を受けた。「日本という国のものづくりの志の高さは、イタリア、ドイツといろいろな国のものづくりと比べると、日本ほど、現場の労働者、技術者、職人たちがものをつくることに対して、志が高い国はない」など、日本のモノづくりのレベルの高さについて、歴史的、文化的側面から、世界の中で持つ強みについて言及、参加者は改めて日本のモノづくりのすごさを実感した。


若松事務局長
若松事務局長
 最後に、若松事務局長がシンポジウムのまとめを行った。
 厚労省の石水労働経済調査官からの講演1については、「急激な経済収縮と雇用情勢の変化、賃金・物価の動向、景気の動向について分析していただいた上で、生活、雇用の安心・安定のためには、人への投資が大事なことだというお話を伺った。セーフティーネット整備、人材育成、職業能力の向上、質の高い雇用の創出などについて提言いただいた。当然、我々もこれから事業構造が変化する踊り場に来ており、ものづくり製造業にとっても重要な局面に来ている。我々は日本のものづくり産業を支えていく立場からも、さらに取り組みを進めていきたい」と述べた。
 また、国立科学博物館の鈴木一義氏の講演2については、「『日本のモノづくりの自信と信頼』をテーマに様々なものづくりに関する話を伺った。特にャープの亀山工場についても話があったが、単にコストを安くするために、人件費の安いところに工場を移転して、モノをつくっていくやり方では、企業としての社会的責任は果たせないと思う。高い技術と志を持ったものづくりの労働者、技術者に対しては、きちんとした対価を支払うべきだと更に思った次第である。当然、今の日本のものづくり産業を見れば、今、日本には、金属産業で働く労働者が600万人いるが、海外にはさらに307万人の労働者が金属産業関係の日系企業で働いている。そのうち、アジアで233万人、中国で130万人という雇用を生んでいる。これがただ労働力を創出しているだけならよいが、今もさまざまな労使紛争が起きている。このままでは、日本の多国籍企業の役割をきちんと果たせないのではないかと機具している。我々日本はものづくりで生きていかなくてはいけない国であることは誰もが認める事実である。2008年の輸出は61兆円、このうち65%が我々金属産業が稼ぎ出したものである。その中でも、貿易黒字が37兆円、その中から、燃料を27.7兆円輸入している。さらには、食料品6.2兆円、原料品5.5兆円など様々なものを、金属産業が稼ぎ出した外貨の中から輸入している。逆に言えば、金属ものづくり産業がなければ日本の国家は成り立たないと思う。我々も単に自分たちのことだけではなくて、日本全体のことも考え、非正規労働者のことも考え、いろいろな労働条件の向上に先駆けて交渉していくことが重要であると感じた」と述べた。   
闘争シンポ質問する参加者
闘争シンポ質問する参加者
 この後、2010年闘争の進め方について触れ、「12月1日の第52回協議委員会で闘争方針を決定した後、産別・単組の要求をその後、検討していただき、3月第2週に山場を設定することで今連合を含めていろいろなところと調整しているところである。経済危機で打撃を受けている金属産業であるが、春季生活闘争において本当に社会的影響を与えられるところは、まだ我々金属産業しかないことも事実である。連合の部門共闘を推進するためにも、我々のJC共闘が非常に重要であることを再認識しながら取り組んでいきたい」と述べた。