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第128号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2021年6月4日)

レポート:テレワークに関する制度的規制と団体交渉が必要な理由

2021-05-17

<JCM記事要約>

  • インダストリオールは、テレワークに関する社会的対話と団体交渉のための基本原則と実用的指針を作成した。これは、労働組合にテレワークが労働者のためになるようにする手段を与えることを目的としている。
  • テレワークはパンデミック以前から普及していたが、パンデミックによりさらに利用者が増加した。また、研究によると、労使双方がパンデミック終息後もテレワークを継続したいと考えていることが判明した。
  • しかし、テレワークは常に労働者にとって良いということではなく、テレワークにおける労働者の権利や労働安全衛生、待遇の平等に関する問題が発生し、「プラス面が徐々に消えていくかもしれない。そのような理由で、労働協約と法律を通してテレワークを規制することが重要」であると、アトレ書記次長は言う。

 

2021年5月17日:インダストリオールはテレワーク交渉に関するガイドラインをめぐって協議を開始した。
                                                      

特集

『グローバル・ワーカー』第1号(2021年5月)より

文:アーメル・セビー
テーマ:テレワーク交渉のためのガイドライン

 

 

 

 

 

 

テレワークはパンデミック下で大きく広がり、普及している。一部の労働者にとっては有意義な体験になっているが、長期間のリモートワークは限界とリスクも露呈している。労働組合は迅速に対応し、労働者が潜在的な落し穴を避けながらテレワークから利益を得られるようにしなければならない。

テレワークはCOVID-19ロックダウンに端を発するものではなく、新技術とデジタルツールの開発の結果である。OECDによると、2015年には製造業の労働者の25%が、労働時間の少なくとも一部をリモートで働いていた。

しかし、パンデミック期間中に全世界でテレワークの利用が激増した。欧州連合の数字によると、2019年時点のEUでは、いつも在宅勤務をしている労働者の割合は5.4%にすぎなかったが、パンデミックの結果、40%近くがフルタイムでテレワークを始めた。

これは将来の作業編成方法に大きな影響を及ぼす。研究によると、労使双方が、この健康危機が終息しても日常的にテレワークを続けたいと考えている。世界経済フォーラム(WEF)の調査によれば、使用者の80%以上が、テレワークの利用を増やして作業プロセスをデジタル化する予定である。

この展開は地域によって不均等かもしれない。というのも世界経済フォーラム(WEF)によると、リモートで実施できる仕事の割合は、高所得国では38%と推計されているのに対し、低所得経済では13%だからである。

適切な規制と労働組合との交渉があれば、テレワークは自主性と柔軟性の向上をはじめ、労働者に多くの利点をもたらすかもしれない。通勤しないことによって節約された時間を余暇や私生活に振り向けることができるため、生活の質と職務満足が向上する。

しかし、テレワークは労働者にとって常に良いとは限らない。リモートで働くかどうかを労働者が選べるようにすべきである。テレワークは任意でなければならず、労働者が取り決めを変更できるようにすべきである。

リモートワークのいくつかの要素は、労働者・労働組合の権利に難題を突きつけている。組合はテレワーク協定をめぐる交渉にあたって、これらの権利を保護するためのベースラインを定める必要がある。

国内労働法の主な対象は、使用者の直接管理下において職場で遂行される仕事である。これは労働安全衛生規則にも当てはまる。しかしリモートワークの場合は、使用者が直接管理しない場所で業務が遂行される。

  • どうやって使用者に注意義務を果たさせるか。
  • どうすれば使用者に職場における安全衛生の保証のような責任を果たさせることができるか。

パンデミックは、長期に及ぶその場しのぎのテレワーク利用が労働者の安全衛生にリスクをもたらすことを裏付けている。労働者は、不十分な人間工学によるうずきと痛みや、同僚との接触の減少に起因する孤立感を報告している。リモートワーク中も、使用者が従業員の安全衛生を保護して暴力とハラスメントのない職場を保証する義務を負うことに変わりはない。

使用者による不十分な労働環境管理を克服し、テレワークの安全衛生リスクに取り組むための解決策は、それぞれの労働組合と交渉すべきである。

在宅勤務は公私の区別を曖昧にする。労働者が法定労働時間を守り、働いていないときにネット接続を切断することが難しくなる。労働時間と超過労働に関する法律をテレワークに適用しなければならない。テレワークは、リモートワーカーだけでなく全労働者に、切断する権利を促進する機会を提供すべきである。加えて、ウェブカメラや侵害的なソフトウェアといったデジタル監視ツールの利用は、労働者のプライバシー権を脅かす。これは在宅勤務をする際には特に当てはまる。監視ツールの乱用は何としても防止しなければならない。テレワークは、侵害的な業務管理にではなく相互信頼と自主性に基づく管理スタイルを必要とする。

テレワークは平等の問題も引き起こす。すべての労働者が平等にテレワークを利用できるわけではない。すべての労働者の自宅にテレワークに適したスペースがあるわけではない。共同作業センター/ハブの利用のような解決策を取り決め、家が狭く混み合っている労働者や生活条件が不安定な労働者が、不利な扱いを受けないようにしなければならない。

すべての仕事をリモートで実施できるわけではない。

  • 生産現場に出なければ仕事ができない労働者が不利益を被ったり、逆に有利になったりしないようにするにはどうすればよいか。
  • 事務従事者と生産労働者の間に分断が生じないようにするにはどうすればよいか。

テレワークへのアクセスを拡大するために、使用者と労働組合は、どの職務がリモートで遂行できるか確認すべきである。一部の職務のために職場に出る必要のある労働者が、リモートで遂行できる職務についてテレワークを選択できるようにしなければならない。

さらに、使用者は労働者全員に平等な待遇を保証すべきである。リモートワーカーは姿が見えにくくなる危険がある。使用者は、リモートワーカーにも同じ訓練・経歴開発機会を提供する必要がある。

ジェンダー平等に関しては、テレワークは、女性が職業生活と家事労働を調和させられるようにして無給の家事労働の不平等な分担を解消する手段と考えてはならない。テレワークは共同責任を促進し、労働者全員により多くの時間を与えて家庭と職業生活を両立させられるようにすべきである。テレワークを口実に、平等方針の実施や質の高い公的育児サービスの開発を怠ってはならない。

テレワークは、労働組合の組織と開発における職場の中心的役割にも課題を突きつける。現在の労働組合主義モデルは、職場で労働者を組織化することによって、また、仕事への集団的アプローチの採用および労働者と労働者代表との関係によって生まれた。テレワークは仕事の個別化を進め、労働者を自宅で孤立させる危険がある。組合は、労働者による最低限の職場出勤義務を保証し、同僚や労働者代表との社会的絆を維持すべきである。使用者も、組合が労働者との定期的なコミュニケーションを維持するために、会社の通信手段に確実にアクセスできるようにしなければならない。

労働組合は迅速に行動し、社会的対話と団体交渉によるテレワークの規制に取り組むべきである。というのも特に、使用者は、不動産コストの節約と労働時間延長に伴う生産性向上によって、テレワークから利益を得られる可能性があることを認識しているからである。テレワークは、外部委託の増加やデジタルによる仕事のオフショアリングの口実になる恐れもある。

テレワーカーに、在宅勤務に関連する追加費用を負担させてはならない。使用者は労働者に、契約上の職務を遂行するために必要なすべての適切なスペースと設備(技術的装置および備品)を支給すべきである。使用者は、労働者がテレワーク中に負担するすべての費用(インターネット料金、保険料、暖房費、電気代、作業スペースの賃借料、携帯電話サービスなど)を手当によって支給、弁償または補償すべきである。この増加している作業編成形態に伴う節約と利益は、労働者と共有しなければならない。

団体交渉と制度的規制は、最適レベルの保護と権利の尊重を確保しつつ、労働者が作業編成にあたってより大きな柔軟性から利益を得られるようにすることができる。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長は、テレワークはチャンスになり得るが、災いのもとになる恐れもあると言う。

「毎日の通勤時間を家族と一緒に過ごすというのは魅力的な考えであり、それに伴う柔軟性は刺激を与えてくれる。だが、人間工学的な設備が十分に整っていなかったり、自分がテレワーク制度のコストを負担させられていることに気づいたり、同僚がいなくて寂しさを感じ始めたりすれば、そのプラス面が徐々に消えていくかもしれない。そのような理由で、労働協約と法律を通してテレワークを規制することが重要だ」

インダストリオール・グローバルユニオンは、テレワークに関する社会的対話と団体交渉のための基本原則と実用的指針を作成した。この資料の狙いは、労働組合にテレワークが労働者のためになるようにする手段を与えることである。リモートワークが労働者の権利となり、これらの権利の一部を放棄することと引き換えに、特定カテゴリーの労働者に恣意的に与えられる特権にならないよう保証する基準も定めている。

 

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