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第128号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2021年6月4日)

女性の革命:クーデターがミャンマーのジェンダー平等にとって意味すること

2021-05-12

<JCM記事要約>

  • ミャンマーで民主化を求め街頭でデモを繰り広げている抗議者のうちの約60%、運動のリーダーの70〜80%が女性である。抗議者の多くはパンデミックにより不安定な状況に追い込まれた看護師や繊維工場労働者である。
  • ミャンマーにおける民主主義への移行プロセスにおいては、女性の不在が目立つ。スー・チー管理下の文民政府に政権が移ったあとも、一人の女性の力だけではミャンマーの政治力学を変えることはできなかった。また、ミャンマーの「父権的文化」が女性の政界入りの障害になっている。
  • しかし現在の抗議行動には変化が起こり、女性リーダーのもと、若者や男女双方が参加している。ただ、平和が取り戻された時には、これまでのジェンダー差別の状態に戻る懸念されるが、この間のわずかな改善に希望が持たれる。

 

2021年5月12日:数週間前、ミャンマー(ビルマ)の街頭で奇妙な光景が見られるようになった。女性たちは伝統的なタメイン(スカートとして着用する布切れ)を窓や電柱に結びつけたロープに掛け、パレードの装飾のように通りの上に吊り下げている。棒に付けて旗のように掲げる女性もいる。これらの女性は、ただ洗濯物を干しているわけではない。2月1日にビルマ軍が起こしたクーデターに抗議しているのである。
                                                      

「男性は、ただ男性であるというだけで、自分が特別な力を持っていると思っている」とミャンマーの女性の権利活動家キン・オーンマーは『Equal Times』に語っている。「そして、婦人服の端切れの下を歩くと、その特別な力がなくなってしまうと信じている」。したがってタメインは、抗議エリアを保護して軍隊の侵入を防止するシールドとして使われている。

女性は最初から、偶像視されるアウン・サン・スー・チー主導の文民政府を倒したクーデターに対する抗議の最前線に立ってきた。

カレン平和支援ネットワークのディレクターで、カレン女性組織のメンバー(いずれもカレン族の関連団体)であるワー・クー・シーは、次のように説明する。「最初に街頭に繰り出した人たち、この運動を先導している人たちは、ミャンマーの若い女性だった。女性が最初に運動を組織し始めた。参加者が増えていき、今では全国的な運動になった」

地方組織のジェンダー平等ネットワークがラジオ・フリー・アジアに提供したデータによると、女性は街頭でデモを繰り広げている抗議者の約60%、運動のリーダーの70〜80%を占めている。多くは看護師や教員、繊維工場労働者であり、COVID-19が原因で、すでに不安定な状況に追い込まれていた。

街頭で抗議している女性の多くは、ミャンマーの脆弱な民主主義を守るために命を投げ出している、とワー・クー・シーは言う。最初は、2月19日に亡くなったあと運動のシンボルになった20才のミャ・トゥエ・トゥエ・カインである。続いて、19歳のチャル・シンも3月初めにミャンマー北部のマンダレーで抗議中に死亡し、その日着ていたTシャツに書かれていた言葉「Everything will be OK」とともにシンボルになった。

国軍は、スー・チーの党が勝った2020年11月の選挙結果の受け入れを数カ月にわたって拒否したのち、2月上旬に政権掌握を発表した。政治犯支援協会によると、それ以来、少なくとも769人が治安部隊に殺害され、3738人以上が逮捕・起訴されたり有罪判決を受けたりした。

民主主義破綻の徴候

今年2月のクーデターは、ミャンマー国民にとって珍しいことではない。ビルマ軍は1962年に最初に政権を握り、50年近くにわたってこの国を厳しく統制した。1990年、国際的承認を高めようと国の公式名称をミャンマーに変えたあと、軍政府は選挙の実施を許可した。ところが、スー・チーの野党・国民民主連盟(NLD)が勝利を収めると、軍事政権は選挙結果を無効とし、弾圧を強化した。

軍政府が2003年に「規律ある民主主義」路線を再び発表したとき、このプロセスも広報活動を改善しようとする試みとみなされた。2008年、国軍に大きな権限を与える新しい憲法が採択され、2010年に最初の選挙が実施された。NLDは、スー・チーの出馬を阻止した選挙枠組みに抗議して、その選挙への参加を拒否した。しかし、2015年の新しい選挙でスー・チー管理下の文民政府に政権が移り、多くの人にとって民主主義への移行に向けた決定的な一歩となった。

オタワ大学国際政策研究センター研究員のガブリエル・バーダルとオランダ先端研究所政治学准教授のElin Bjarnegårdによれば、このプロセス全体を通じて女性の不在が目立つ。例えば新憲法は、議会の議席の25%と数人分の大臣職を、最近女性に開放されたばかりのタッマドゥ(ミャンマー軍)に割り当てている。

「それは、この民主改革が予想どおりには進展していないという証拠だった。そして、女性がいればクーデターが起こらなかったとは限らないが、和平会談への女性の参加はより良い平和構築に貢献するという証拠があるので、事態がもっとよくなっていたかもしれない」とバーダルは言う。

政権の主要ポストにスー・チーがいてもなお(彼女は外国人と結婚し、子どもが外国籍だったため、憲法で大統領就任を禁じられていたが)、この国の政治力学を変えるには不十分だった。「1人の女性[が政権を握っている]だけでは十分ではないという実例だ。女性の問題を理解しており、女性の権利のために立ち上がる女性たちが必要だ」とワー・クー・シーは言う。現在所在が分からないスー・チーは、ジェンダー平等を優先課題に加えなかったことで批判されている。

Bjarnegårdによると、政党内部にもほとんど変化がない。「大きな変化も、改革が政党の重要課題になっているという徴候も、あまり見られない」と彼女は言う。彼女が説明するように、主要な問題の1つは政界に入りたいと考える女性を見つけることである。「面接した女性たち全員が、政界入りするために家族と夫の全面的な支援を必要としていた」と彼女は続け、この国の「父権的文化」を主な障害の1つに挙げる。2020年11月の選挙では、女性が勝ち取った議席の割合はわずか15%だった。

変化するジェンダーロール

キン・オーンマーは、活動の初期に女性であることがいかに困難をもたらしたかを今も覚えている。1988年、1人の学生が警察に殺害されたあと、国民は軍事政権に対して立ち上がった。当時やはり学生だったオーンマーは、家にいることを拒否した。「家族は私が街頭に繰り出すのを止めようとしたので、家族との関係が非常に面倒なことになった」と彼女は言う。オーンマーは、そのころ設立された学生組合の1つの副会長になった。女性が管理・財務ポストに追いやられることが多かった時代である。「女性が特定の指導的地位を占める機会はいくつかあったが、まだ非常に父権的な環境だった」と彼女は続ける。

その後、数十年に及ぶ亡命中も、キン・オーンマーは民主化運動に引き続き関与したが、まだジェンダー平等の問題を深刻に受け止めようとしない人が多いと感じていた。「そういう人たちは、私たちが女性の問題について話したがっているだけだと考えた。けれども、私たちは政治について、連邦制について話したかった」と彼女は説明する。「政治のせいで我が国は行き詰まっている。この家父長制はあまりにも根深い」

だがオーンマーは、現在の抗議の過程でジェンダーロールの変化を感じている。「1988年には、リーダーは男性だった。今回は女性だ。これは刺激的なことだ」と彼女は言う。2019年の報告書『ミャンマーのフェミニズム』によると、2010年以降の政治改革によって、「地域社会の基本的ニーズの満足だけでなく政策改革プロセスにも関与」している行動主義において、「国内外の女性組織による取り組みを調整する余地が生まれた」。この報告書はさらに、女性は民主主義への移行期間中に社会的動員やネットワーク作りの能力を高めたと主張している。

Bjarnegårdも力関係の変化に気づいている「現在の抗議は、何かが変わっていることを明らかにした。若者たちが、男女双方が参加している。この新世代は、いくつかの点でよりリベラルで、フェイスブックを利用しており、他国の影響を受けている」と彼女は言う。

しかしワー・クー・シーは、状況が落ち着いたときに、元の状況に戻ってしまうことを懸念している。「紛争が発生し、男性が恐れているとき、女性は歓迎される。だが、平和が回復したら、いつものジェンダー差別に戻ってしまう」と彼女は言う。

彼女は、政府と主要少数民族ゲリラの一部との和平交渉(2011-2015)を例に挙げる。この交渉代表団には、女性が4人(バーダルとBjarnegårdのデータによると、代表者総数の6%未満)しかいなかった。しかし、彼女はかすかな希望にすがっている。「今回、女性が[民主主義期間中に]意思決定において経験した改善[の影響]を見て取ることができる」。彼女は、これらの変化によって、平和が戻ったときに女性が再び「キッチンに追いやられ」ずにすむことを願っている。「改善が見られるが、まだ非常に厳しい状況にある……成り行きを見守るしかない」

写真:3月8日、ビルマ軍事政権のクーデター反対デモを行う前に、伝統的な「タメイン」をロープに吊り下げる女性たち(STR/AFP)

この記事の初出は『Equal Times

 

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