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第154号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2023年1月13日)

炭素回収・貯留(CCS)なくして気候目標の達成は不可能

2022-10-26

【JCM記事要約】

  • 10月24日、インダストリオールは国際労働組合総連合(ITUC)、LOノルウェーと共に、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として、炭素回収・貯留(CCS)に関する2022年技術ワークショップの最終回を開催した。大気からCO2を除去して地域に熱や電力を生み出すCCSによる廃棄物発電は、廃棄物を削減できる重要な解決策であり、ここから多くの雇用が生まれる。
  • インダストリオールのカメルMENA地域事務所所長は、石油・ガスの生産・輸出に依存し化石燃料が重要視されているMENA地域にとっては、産業を停止させずに排出を削減できるCCS技術は非常に興味深いものである、と述べた。

 

2022年10月26日:国際労働組合総連合(ITUC)、LOノルウェーおよびインダストリオールは10月24日、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として、炭素回収・貯留に関する2022年技術ワークショップの最終回を開催した。
                                                      

炭素回収・貯留(CCS)による廃棄物発電は、再生不可能な廃棄物を最終的に処理することができ、大気からCO2を除去して地域に熱や電力を生み出す。だが専門家は、この技術を本格展開するには適正な枠組みと条件が必要だと説明した。

石油化学製品、鉄鋼、非金属鉱物など、欧州の重工業では大量の排出が発生しており、グリーンスチールを除いて、これらの排出を削減するための商業的に採算の合う方法はほとんどない。したがってCCSは、抑制が難しいこれらの排出に対する重要な解決策である。CCS技術を開発する多くの機会があり、ノルウェーはそれに投資している世界の主要国の1つである。

「CO2回収はCCSバリューチェーンで最大の市場となっている。排出削減と移行雇用の機会を知らしめることが重要だ」とLOノルウェーのオーレ・トマスゴールが述べた。

ノルウェーの科学機関は、包括的な事業計画を作成するために、CCSにおける雇用創出と機会に関する組合向けの研究を実施した。使用者団体と組合は、CCSによる公正な移行を調べるために協力している。

調査結果によると、CCS(回収と貯留場所へのCO2輸送の両方)における雇用創出に関しては多くの雇用が生まれ、CCSは排出を削減しつつ産業で既存の雇用を維持するのに役立ち得る。雇用の可能性を解き放つために、投資と政府支援を行い、本格的なプロジェクトの拡大に重点を置く必要がある。

「組合は労働者が組織化されるようにしなければならない。ノウハウがあれば国際的な可能性が開ける。本格的なプロジェクトは、地球規模で有益な適格の技術や解決策、経験を与えてくれるだろう」とトマスゴールは続けた。

ノルウェーのロングシップ・プロジェクトにかかわっているセルシオのマーカス・ホールが、ロングシップは政府の本格的な炭素回収・貯留プロジェクトだと説明した。史上初の国境を越えたオープンソースのCO2輸送・貯留インフラネットワークで、欧州全域の企業にCO2を安全かつ恒久的に地中貯留する機会を提供する。

「プロジェクトのフェーズ1は2024年中ごろに完了の予定で、年間最大150万トンのCO2を貯蔵できる」とホールは述べた。

気候変動の解決策を得るためにノルウェーの使用者・労働組合と協力している環境NGOベローナのオーラブ・オイエが、CCSに関する勧告を次のように説明した。

「CO2輸送・貯留のための法的枠組みと資金を生み出し、産業を閉鎖するのではなく排出を回収・貯留し、グリーン水素を2035年まで待っているのではなく、今すぐCCSを始める!」

回収したCO2は製品や産業プロセスに利用できるのかどうかについて、参加者からいくつか質問があった。研究やパイロットプロジェクトによれば、合成燃料、化学製品、建築資材へのCO2利用に関して有望な結果が出ている、と専門家は説明した。しかし、回収CO2の利用がすべて排出削減をもたらすわけではない。それは特に、CO2を製品に変えるためにどれくらいのエネルギーが使われるかという要因によって決まる。排出のライフサイクル評価が重要である。

特にグローバルサウスから提起されたもう1つの懸念は、大規模CCSプロジェクト用インフラの導入には多額の投資が必要であることから、排出量の多い小規模経済にとってどの程度魅力があるかということだった。太陽エネルギーが豊富なアフリカでは、多額の投資が必要であるうえに、代替的なエネルギー生成方法が存在するため、CCSはそれほど魅力的ではない。

中東・北部アフリカ(MENA)地域では、地域経済が石油・ガスの生産・輸出に依存しているため、化石燃料が重要である。化石燃料は多くの雇用と収益を提供している。イラクでは国家予算の90%以上が石油・ガスから得られており、同時にMENA地域は旱魃から水不足、熱波、生態系への損害まで、気候変動の影響を最も大きく受けている。

「この地域ではCO2排出削減イニシアティブがいくつか実施されている。これには再生可能エネルギーへの移行やCCSへの投資が含まれる。この地域では太陽エネルギーにも非常に大きな可能性がある。CCSが湾岸諸国にとって非常に魅力的である理由は、排出を削減できるからだ。この技術は即座に産業を停止させるのではなく、第一歩として浄化を促すため、この地域の組合にとって特に興味深い」とアーメド・カメル・インダストリオールMENA地域事務所所長は述べた。

米国インフレ抑制法(IRA)の下で、さまざまな地域でCCSハブを確立するために連邦資金が供給されている。オハイオバレーでは、いくつかの州と企業、それに全米鉄鋼労組(USW)をはじめとする組合が協力しながら、鉄鋼、鉱業、石炭火力発電所からの排出を削減するためにCCS水素施設の建設資金を申請している。

USWはアメリカで失業を心配している精製所労働者も代表している。アメリカでは、排出を削減できる産業プロジェクト向けに多額の連邦資金がある。USWは、この資金の充当先に影響を与え、精製プラントへの対処に振り向けられるようにする方法を調べている。

「エクソンその他の企業は、精製所や化学工場、給油施設からの排出を回収するために、メキシコ湾に世界最大のCCS施設を建設する計画を立てている。そのためには、関連インフラが巨大であるため、政府資金があるにしても、ずっと多くの資金が必要になる。だが全体として、組合は雇用保護の取り組みが不十分だと考えている」とUSWのマイク・スミスは述べた。

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