第48回協議委員会   加藤議長あいさつ

ものづくりを代表する金属労協が先頭に立って
労働運動の再生に責務を果たそう



挨拶する加藤裕治
IMF−JC議長
JC議長に就任しての抱負
 ただ今、役員選考委員会の経過を報告していただきましたように古賀前議長の後を受けまして、私、加藤が議長に就任をさせていただきました。既に2カ月ほどが経過しておりますが、きょう初めて議長としての私の顔を見た方もいらっしゃると思いますので、決意の一端を述べさせていただきたいと思います。
 昨日の連合の中央委員会でも木会長から、今の労働運動の危機的な状況とその再生に向けた決意を語っていただきました。確かに、労働運動の影が薄いとか、あるいは、とりわけ民間の労働運動の姿が見えない、見えにくいといった声が聞かれるわけです。そんな状況の中で、ものづくりを代表する基幹産業が集まったこの金属労協・IMF−JCが先頭に立って、この労働運動の再生に向けて責務を果たしていかなければなりません。その先頭で私自身も大いに体力を使って汗をかこうという決意でおりますので、ぜひご支援のほどよろしくお願いします。
 具体的には、2005年9月の第44回定期大会で、総合プロジェクト会議、要するにJCの運動のあり方や組織のあり方について書記長を中心にいろいろとまとめていただいた中間報告を確認しました。そのまとめの方向を踏まえて、しっかりとした方向づけをしていくことはもちろんですけれども、その過程においてもできるだけ一体感のある取り組み、皆さんと心を1つにしながら取り組めるような運動を構築していきたいと思っています。
 その中でも、昨今のグローバリゼーションの中で、まさに私ども金属労協加盟の組合には多国籍企業が大変多く存在しているわけでありまして、国際労働運動とのかかわりという重要性は非常に大きいものがあります。とりわけ、昨今、大変存在感を増しているアジアという枠組みの中で、日本がどのようにしてリーダーシップを発揮していけばいいのかということについては、非常に大きなテーマであると思っています。国際労働運動は、IMFの一員としてのJCの役割でもあるし、それがまた加盟する各産別にとっても、各企業労使の皆さんにとっても非常に重要な問題であると思っています。アジアで安定した労使関係を築くことは、私たち日本の労働組合にとっても極めて重要なポイントになると思っています。このアジアの枠組みの中で私たちIMF−JCがリーダーシップを発揮していけるような枠組みづくりについてIMF本部とも十分に連携をしながら、皆さんとご相談をしながら進めてまいりたいと思っています。



政治状況への対応について
 そうした運動を進める上で、国内の金属労協、あるいは連合金属部門としての心構えについて、当面の運動課題はたくさんありますが、その中で、特に政治状況との関連で1点だけ申し上げておきたい。ご案内のとおり9月11日の衆議院選挙の結果、民主党は大敗を喫したわけです。それによって私たちの政策・制度実現に向けた活動というのは困難性を増したわけですが、一方でこのでき上がった3分の2を超える巨大与党の独走を許さないためには、まさに働く者、国民を代表する連合の結束が何といっても大事になってくるわけです。
 小泉内閣が主要テーマとしていた郵政の民営化に道がついたわけですけれども、その後については、「公務員問題」が、おそらく政治から労働組合に向けられたやいばの最大のものになってくるだろうと思っています。  自民党にとってみれば、あらゆる側面から民間と官公労の間にくさびを打ち込み、離反をさせるという狙いがある。それが彼らにとってのメリットになるという構図の中で、あることないことを言ってくると私たちは受けとめなければいけないと思います。決して、その策動に乗らないように、私たち自身がこれから公務員の問題についても積極的に意見も言いながら、公務員の労働組合とも協議の場を持ちながら、お互いのベースとしての信頼関係を築き、その中で民間でこれまで苦労してきた経験を積極的に提言もしながら運動を進めていきたいと思っています。ぜひ皆さんもそうした場に積極的に参加をしていただきたいと思います。



2006年闘争の推進について
 本日の主要テーマは2006年闘争についてですので、私の所見を少し申し上げまして、ぜひ力強い方針にしていただきたいと思います。
 最初に、金属労協にとっての2006年闘争の位置づけです。今、まさに各産別、単組において賃金引き上げについて、積極的な検討をしていただいていると認識をしています。これは、まさに2001年闘争以来、5年ぶりのことでありまして、金属労協としてまさに一体感のある取り組みにしていきたいと考えています。しかしながら、大切なことは5年前の状況に戻すということではなくて、私たちは賃金闘争に「新しい枠組みを提起していくことを実践する第一歩である」ということを、ぜひ皆さんと共有をしておきたいと思います。
2006年闘争の位置づけについて、私なりに、4つのポイントで整理をしてみたいと思います。
 1点目には、これまでのある種、年齢を軸として平均賃金で要求するという横並びのしやすい一律的な考え方から踏み出して、仕事・役割を機軸とした銘柄賃金の根本からの月例賃金の高さ、水準で交渉していくという新たな労働市場の形成をリードしていくための第一歩であるということを、まずは共通認識していただきたいと思います。  2点目は、経済環境を見ると、世界も含めて、マクロの情勢、あるいは各産業の情勢は、ともにはっきりと好転してきていることはもちろん認識した上でですが、しかし、それが追い風であるからといって、そのことのみで今回私たちが2006年闘争の要求議論を進めていくのではないということであります。すなわち、それを生み出した、まさに金属労働者の質の高い労働に対する投資を引き出していく。そしてその結果として日本経済を巡航速度に持っていくという考え方でぜひこれからの議論を進めていきたい。
 3点目は、ご案内のとおり金属の各産業は大変高い生産性を誇っていますし、今も職場はそうした成果を上げ続けています。しかし、残念ながら金属産業の賃金水準は総体的には全産業、あるいは製造業の中でも決して高い位置にあるとは言えないわけです。この逆転現象の解消に向けて、今回の2006年闘争をきっかけに水準向上を図っていくということであります。
 最後4点目として、1点目とも関連がありますが、私たちが今回提起しているこの仕事・役割による賃金制度の確立や、大くくり職種別と呼んでいる労働市場を形成していくことの意義についてです。まさに今、日本の労働市場において増加している派遣、パート労働者等の流動的な雇用と正規の雇用との間で、あるいはこれからの大きな課題になってくる男女も含めての均等処遇を目指すには、年齢機軸では決してこの概念が成り立たないわけであります。そういう意味で、今回提起している仕事・役割による賃金制度の確立や大くくり職別の労働市場を形成していくことが、この2極化に歯止めをかけることにつながっていくという確信を持って取り組んでいきたい。



要求基準設定に当っての考え方
 そうした基本的な性格づけの中で要求基準を設定するに当たっての考え方を幾つか申し上げます。
 まずは、今も申し上げたように、2006年闘争は、大くくり職種別賃金による絶対額での共闘に向けた第一歩であるということです。よく私はマスコミの各社から、これまで続けてきた平均賃金、あるいは例えば代表銘柄にしても35歳、正規入社といったものから、どのようにして転換をしていくのですかという質問をよくされます。しかし、私は日本の現在の職能資格賃金にせよ、年功的な考え方にせよ、おおよそ30年近くにわたって形成されてきたものですが、この10年ぐらいでそれがぐらついているわけです。新しい考え方がほんとうに日本に定着するには20年から30年の時間が必要だろう、そのために一歩を踏み出すことが非常に重要であって、それを2006年闘争の中で日本中に向けて提案していければ、私は大きな一歩になるのではないかと思っているわけです。
 2006年闘争の大きな特徴点としては、従来使っていました「ベースアップ」という言葉については、今回は使っておりません。カーブ是正を含む水準向上というようなことを総称して「賃金改善」、つまり「カーブ維持分」を上回る原資については、「賃金改善」ということで包括的に称していこうということです。そのことを了解事項としていただければと思います。
 この2006年闘争においては、従来のようにスタートから要求額を統一した舞台をつくって共闘していくということではありません。各産別が共通した考え方のもとに賃金改善分を含んだ要求を組み立てていくという考え方を共有した上で取り組みを始めていくということであります。
 これから経営側とさまざまな交渉、議論、団交が始まるわけですが、そのときの要求基準については、産業の位置づけや、人的投資のあり方、働き方、あるいは社会性といったもので本質的な議論のできる水準をそれぞれが要求していただきたいと希望しているところです。
 さらに一歩進んで、具体的な産別、単組の基準作成に当たってポイントとなる点を幾つか述べておきたいと思います。先ほど申し上げましたようにマクロの情勢は追い風ではあるけれども、それだけでは闘えない。これはまさに我々のこの数年間の経験がそれを証明しているわけでありまして、したがって各組合はそれぞれが目指す水準と、そのためのきちっとした理屈立てをして、そこに近づいていくための第一歩としていくという考え方が必要ではないかと考えております。
 先ほど5年ぶりと申し上げましたが、私たちはこの4年間を決して無為に過ごしてきたわけではありません。この4年間の中で賃金制度の確立、あるいはカーブ維持といった概念で中小の皆さんにも何とか配分交渉ができるように、多くの組合はベースアップにも取り組んできていただいた、そういう経過も持っているわけです。そういう意味で、引き続き、そうした格差のある中堅、中小の皆さんについては、主体的にぜひそういった是正分を要求に織り込んでいくという発想も必要ではないかと思います。
 ここまで申し上げても、なかなか数字が出ているわけではありませんので、どこに一体感や統一感を見出せばいいんだということはわかりにくい面もあるかもしれませんが、この後12月、そして1月という中でさらに皆さんの中で議論が進み、産別あるいは単組の要求基準が出そろってくれば、必ずや共通の枠組みが見えてくると考えています。ぜひ、そうした方向でよろしくお願いしたいと思うわけです。
 2月の中旬以降に要求を提出し、3月中旬に向けて交渉が行われるわけですけれども、こうした考え方を共有している以上は、私たちはその考え方について、やはりできるだけお互いに共通項を確認しながら、一体的に取り組みを進めていきたい。ここ二、三年はいわゆる交渉ゾーン等もあまり意識せずにやってきましたが、そういった交渉ゾーンなどもお互いに認識をし、歩調もできるだけ合わせながら、交渉を進めることによって相乗効果を出していくというようなことも念頭に置きたいと思います。ほんとうに取り切っていくための効果的な戦術についても皆さんとご相談をしながら、これから進めてまいりたいと思っています。
 
 最後に2点だけ私から皆さんにぜひ申し上げておきたい。1点目は、皆さんもお感じになっているとおり、ベアに取り組まなかったここ数年の中で、職場役員の中には、あるいは産別役員の中にもいらっしゃるかもしれませんが、賃金改善のための団交などの経験がないという役員もいるような状況だろうと思います。そんな中で、夏以降いろいろな議論をしてきたわけです。当初は、必ずしも積極的なムードではなかったと思いますが、ここまで議論を進めてきて、こうした状況まで持ち上げていただいた産別やリーダー単組の皆さんに私は敬意を表したいと思います。ただ、今後、議論していくに当たって大事なことは、職場組合員と本当に一体になって大いに汗をかくことだろうと思います。そのことをぜひ肝に銘じてお互いの共通認識にしておきたいと思います。
 2点目は、これから取り組みを進めるに当たって、経営サイドは決して甘いものではないということは言うまでもないと思います。我々の真摯な要求に対して、絶対に渡ってほしくなかったゼロ回答というルビコン川を経営は既に一度渡っております。そういう意味では、経営側の対応は、これまでの延長では考えられないような極めて厳しいものだと私たちは認識をしておく必要があると思います。おそらく、今度の経労委報告も決してそんな生やさしい内容ではないだろうと思います。しかし、私たちは、私たちの考え方は絶対に正しい、私たちの働きは十分に配分を受ける価値のあるものだという考えは揺るぎないお互いの共通認識だろうと思います。しかし、私たちだけではいけない。私たちに対する世論の応援も必要です。国民的課題としてこの経済を巡航速度に乗せていくためにという視点はもちろんあるわけですから、そうした社会との連携も大いに意識をして進めていかなければならないと思っております。  まさに、今の日本はほんとうにお手本のない時代に入っています。バブル崩壊あたりからそういうふうには言われておりましたけれども、まさにこうやって混迷の時代を経てきてみますと、ほんとうに進んでいく方向が難しい、見出しにくい、そういう時代に入っていると思います。
だからこそ私は、05年体制と政治的には言われておりますが、労働組合だって05年体制でございます。新しい体制でスタートしました。そういう中で、経済成長をどのように導いていくのか、まさにJCがかつて1950年に提言をしたような、そういう闘いぶりをしなければいけないし、そういうものをまた日本中から期待もされているだろうと思っています。そういう私たちの考え方に確信を持って職場と一体になった強固な体制をつくり上げていきたい。きょうはそういう責任を持った皆さんの協議の場であると考えております。ぜひ、その点を共通認識にし、この場の議論を皆さんの熱意で強力な、強固な方針をつくり上げていただきますようにお願い申し上げて、冒頭の私のあいさつとさせていただきます。(拍手)