2006年闘争方針に対する産別からの意見・要望


2006年闘争方針案の提案を受けて、加盟5産別から、
原案に賛成の立場から意見・要望が出された。

電機連合
基幹労連
自動車総連
JAM
全電線
本部答弁


「個別賃金水準の改善」に取り組む方向
成瀬協議委員・電機連合

 まず第一に、月例賃金の回復・改善を中心とする賃金の取り組みについてです。闘争方針案では、「企業の構造改革が進められた過去数年の間、・・・協力・努力してきた。この結果、日本経済も回復し、企業業績もバラツキはあるものの堅調に推移している。労働条件の維持・向上と競争力の維持・強化は車の両輪であり、賃金の回復が図れてこそ、企業の競争力も強化される好循環が働く」と指摘しています。電機連合としても、認識を同じくするものです。
電機産業の状況としては、事業構造道半ばという企業もあり依然バラツキが大きいものの、産業全体としては引き続き回復傾向を示しており、ほぼ2000年度(2001年3月期)の水準にまで回復・改善してきており、財務体質も著しく改善している。
この状況を受け、電機連合は、従来から重視してきた「賃金改定の必要性を検討する上での4つの根拠」、具体的には、@実質賃金の維持・向上、A国民経済の成長性、B賃金の社会性、C産業・企業業績の成果反映、という4点から検討を進めてきたが、JCの方針案を積極的に受け止め、今述べた4点を総合的に勘案し、来る2006年1月の電機連合の中央委員会に「個別賃金水準の改善」に取り組む方針を、電機連合本部として提起することとした。 この間の電機各社の事業構造改革によって、生産現場でもホワイトカラー職場においても、仕事の質は高度化し、個々人の仕事量や労働密度が明らかに高まっています。今後とも電機産業が持続的に発展し続けるためには、「魅力ある電機産業にふさわしい労働条件の再構築」をはかることが重要と認識している。これは、JCの闘争方針で示されている「金属産業の位置づけにふさわしい賃金水準の実現をめざす」に通ずることであり、JC本部および各産別との連携を強化する中で進めていきたいと考えていますので、JC本部の力強い指導を引き続きよろしくお願いします。なお、個別賃金水準の改善額(改善幅)については、現在、諸情勢を慎重に見極めつつ検討している段階であることを付け加えておく。
産業別最低賃金の取り組みについて
 次に、産業別最低賃金の取り組みについてです。現在、労働政策審議会・最低賃金部会において、産業別最低賃金制度の抜本的見直しを含む最低賃金制度のあり方についての審議が行われており、いよいよ、大詰めの審議段階に入っていると伺っている。産業別最低賃金については、現行の枠組みによる取り組みが始まった1980年代後半より、JC各構成産別が文字通り牽引役となって創設と以降毎年の金額改正に取り組んできた。
 非典型雇用労働者の増大など雇用形態が多様化する中で、仕事に応じた公正な賃金決定、産業毎の賃金の底支え、などの観点で最低賃金制の果たす役割はますます強く求められている。大詰めを迎えている最低賃金部会の審議に対しては、あくまでも産業別最低賃金の継承・発展の立場を堅持するとともに、2006年度においても、JC最賃センターを中心に産業別最低賃金の実効性を高めるための取り組み強化をめざしていくことを確認しあいたい。引き続きのご指導をお願いしたい。

基幹労連として初めての一体的な取り組み
沖中協議委員・基幹労連

  2006年闘争は、基幹労連として3度目の春の生活改善の取り組みとなるが、単に3度目という回数の問題ではなく、基幹労連として初めての一体的な取り組みであり、春季取り組みにおいては、名実共にひとつの産別としての第一歩を踏み出すことになる。そういった意味では、今回の「AP06春季取り組み」は特に思い入れが深い。
 ご承知のとおり、基幹労連は今年9月の定期中間大会において、「アクティブビジョン2010」という基幹労連として一体的な産業・労働政策を創りあげ全体で確認したところである。今後は、この労働政策をベースに要求案から具体的な取り組みまで検討していくことになる。
 さて、JCは2006年闘争の推進で、「労働条件の維持・向上と競争力の維持・強化は車の両輪であり、賃金の回復が図れてこそ、企業の競争力も強化される好循環が働く」と基本的な考え方を示し、そのうえで、「各産別は、産業間・産業内の賃金格差の実態や業績を踏まえ、具体的な賃金改善要求を行い、賃金水準の向上を図る」としている。
 また、具体的な水準としては、三つのポイントを示すなど、全体として取り組みやすい形を追求してきている。
産業ごとに、企業収益の現状や先行き、そして現在の賃金水準など、同じ金属産業といえども千差万別である。しかし、今年は労働界全体の運動基調は「生活防衛」から「生活向上」へと変化してきている。今こそ賃金改善に取り組み、金属産業にふさわしい賃金という成果を得なければならないと考える。そのことが、企業の持続的な発展につながるものと信じている。
そのためには、5産別が足並みを揃えて要求に取り組み、それぞれ主要組合が核となって全体の底上げに力を発揮しなければならない。産別間の連携強化をはかり、みんなで取り組み、実りある2006闘争となるよう、JCとしての役割と責任の一つとして取り組みを強化していただきたい。
基幹労連としても、連合・JCの春季生活闘争という枠組みのもとで、産別主導を基本に、定期昇給の実施は当然のこととし、魅力ある労働条件にするための改善として、基本賃金に新たな財源投入を求める「賃金改善」を重点課題として取り組んでいくとしている。
今後は討論集会も含め、幅広く、そしてより具体的な検討になっていくが、基幹労連傘下の組織事情も千差万別である。私たちはこれら課題を乗り越え一体的取り組みを行い、より高い成果を得たいと考えている。金属労協を構成する一産別としての役割を積極的に果たすべく、精一杯の取り組みを展開する決意であることを表明し、意見とする。
クリアな要求根拠を持ち、こだわりのある取り組みを行う
横田協議委員・自動車総連

景気が堅調に回復傾向にあること、物価がプラスに転じつつあること、労働需給も回復傾向、一部には人材不足も顕在化しつつあるなど、「賃金引上げの取り組み」の足を引っ張るような状況ではなくなってきた。
自動車産業の状況は、ばらつきはあるものの、海外を中心に拡大が継続、全体でみれば高水準での収益が続いている。また、車体・部品部門にも波及し始めている。職場も、拡大が続く海外生産への支援の対応しつつ、非典型労働者が増加する中、フレキシブルな生産、品質の維持・向上、更なる原価低減などの成果を生み出し続けており、いわゆる「労働の質」を高めている。
自動車総連は、2002年の取り組みで多くの組合がベアゼロという極めて厳しい結果以降、2003年、2004年、2005年と、産業間格差・産業内格差を是正するために基本的にはベースアップに取り組んでいく必要があるという基本認識のもと取り組んできた。
メーカーなど主要組合の取り組みは一部にとどまったものの、多くの部品・販売などにおいては、自らの賃金実態を見つめ直し、賃金水準の向上・格差是正などを目的に、主体的にベースアップや個別賃金の取り組みを要求し、獲得してきた。
2005年は、加盟の半数を超える643組合がベースアップを要求し202組合が獲得し、大きな前進であったと認識している。そういった取り組みの一方、賃金水準の推移を冷静に見れば、メーカー等主要組合の賃金水準は維持されているが、部品・販売などの賃金水準は低下傾向にあり、産業内格差も拡大傾向に歯止めがかかっていない状況である。
<取り組みの考え方>
これらを踏まえ、2006年の取り組みに向けて自動車総連としては、
@「労働の質の向上」が月例賃金に適正に反映され、それが更なる「労働の質向上につながる」というサイクルをまわす必要があること、A産業の魅力を高め「競争力の源泉となる優秀な人の確保」が必要なこと、B拡大傾向にある産業内格差の縮小を確実に図ること、Cこの景気回復を確かなものとし、デフレ経済から確実に抜けだすためにできる限りの役割を果たすこと、などの観点から、「メーカーも含め、全体で賃金改善を求め取り組めないか」議論を加速させているところである。
それぞれの単組が自社の賃金実態を踏まえ、クリアな要求根拠を持ち、こだわりのある取り組みを行うという、これまでの取り組みを拡大・定着させる意味から、統一額の要求基準は示さない方向ではあるが、ものづくり産業の魅力を高めるという「今回のJC共闘」の枠組みの中で積極的に役割を果たしていきたいと考えている。

JAM一丸となり構造維持分プラスアルファ獲得へ
木住野協議委員・JAM

 2006年闘争の基本的な考え方のところに、「労働条件の維持向上と競争力の維持強化は車の両輪である」というくだりがある。「賃金の回復が図れてこそ云々。低下、立ちおくれている月例賃金の回復が重要である」と結ばれているが、JAMもその部分の考え方を非常に重視をして、今次闘争の取り組みの中心課題がまさにそこにあるという検討をしてきた。  この間の春季生活闘争を振りかえると、JAMの場合は構成組織の85%が中小で構成されているので、この「闘争の推進」にも指摘をされているとおり、賃金制度がないところの賃金水準の低下という問題は、非常に深刻に広がっている。この状況は、2004年あるいは2005年、この2年間を通じて、若干回復はしているものの、まだまだほんとうの回復という意味では不十分であるという認識をしている。その中で、今次闘争においての1つの重点というのは、「労働組合が要求を提示することによって、企業の行く末を踏まえながら人への投資をどうしていくのか」をず剣に労使が協議をしていく場がこの春季生活闘争ではないかという認識をしている。  今申し上げたが、「回復と是正」というのが1つのキーワードであり、回復が達成されていないところ、まずここが1つ大きなポイントである。あと、長年ベアがなかったということによって、賃金体系にひずみが生じている部分、あるいはかつてその是正を追求してきたが、この間それを停止してきた部分、あるいは今是正というものが改めて注目をしていかなくてはいけない課題が生じているかと思う。 例えば、JAMで言えば、今年の大会で男女間の賃金格差の問題についてまとめを確認してきたが、そういう各種の是正、それは個々の組合、単組でそれぞれ持っているわけですが、そういうものを産別が全部後押しをするような形で今年の春闘ですべてそういうものを出して労使交渉に臨んでいきたい。そういう組み立てを考えているところである。それを産別全体でどういうふうに表現してきたかというと、「賃金構造維持分プラスアルファ」、このアルファという部分で産別全体として統一的に2,000円以上を目指す、そういう原案をさきの11月25日の拡大中央執行委員会で確認した。この考え方に基づいて、これから1月の中央委員会に向けて、方針決定に向けた組織内の討論を本格化させていくところである。  その中で、特に今次闘争で、重視していきたいことは、従来JAMは連合の中小共闘の一翼を強く担わなければならないという立場で臨んできたわけであるが、今次闘争では特にその部分、大手と中小を切り分けるということではなくて、JAM全体が大手も中小も一丸となって、この「賃金構造維持分、プラス2,000円以上」という、この部分での共闘を、JAM全体が強めていかなくてはいけない。また、そのことは今次のJC共闘の全体の枠組みとかなり重なって強化をしていかなくてはいけないという思いを新たにしているところである。  そういう意味で、JAMは従来もJC登録は、エントリー制でJC共闘の一翼を担ってきたという経過があるが、今次闘争ではその部分かなり厳しいので、これから検討と協議を重ねてその準備をしてまいりたい。  3月の統一回答日がまずは目標となるが、従来と流れが変わったということがわかるようなJC共闘の実現に向けて邁進してまいりたいので、よろしくご指導のほどお願いしたい。
JC共闘の一員として最大限努力
勝部協議委員・全電線

電線業界においては世界経済回復の影響による国内需要の持ち直しと事業構造改革の進展により総じて見ると改善傾向にあるといえるが、事業規模や製造品種の違いにより収益状況に違いが見うけられる状況にある。 大手の中間期決算結果についても、連結、単独ともに事業規模や製造品種の違いにより、産業内でも企業収益の二極化が鮮明となっている。
一方、通期予想では、低迷を続けてきた情報通信部門に一部回復の兆しがあることや、自動車関連部門・エレクトロニクス関連部門についても引き続き好調に推移しており、収益面においても全体的に回復基調にあると判断している。 しかしながら足下では、銅価をはじめ原材料価格の高騰が継続しており、事業分野の違いによる業績格差も顕在化するなど、電線産業はいまだ難しい状況下との認識である。
このような状況を踏まえた上での春闘への取り組みである。
まず、取り組むにあたっては三点ほどの留意点があると考えている。
ひとつは、改善はされつつある、デフレ経済の現状。二つ目は回復基調も見られる日本経済や企業収益の回復と電線産業の二極化の実情。そして、三点目に連合・JCにおける、ミニマム運動を中心とした方針や各産業実態に即した具体的水準の設定、である。
組織論議として決定はしていないが、これらを十分に考慮していくなかで多面的な角度から日々状況変化を把握しつつ検討を進めていきたい。
まず、雇用については、最重要課題であるとの認識のもと取り組み、基本的なスタンスは今後も変わりはないと考えている。
雇用の安定・確保に向けて、引き続き継続的な取り組みを推進していく考え方である。
賃金については、これまで組織内部の諸会議において、取り巻く情勢、産業・企業実態やそれぞれの単組動向などの状況把握を行なうなかで検討を行っている。特に「賃金改善」への対応については、JC方針を踏まえながら、今後、十分な組織論議を行うなかで具体的な取り組みを決定していきたいので、JC本部の指導をお願いしたい。
また、一時金の取り組みについては、生活水準の維持向上を図るための年間賃金の一部として、組合員の生活を守る観点から主張していきたい。これまでの政策を基本に十分な組織論議を加えながら決定していきたいと考えている。 以上、電線業界の状況と春闘への取り組みを中心に考え方を述べさせて頂いたが、今後についても、組合員の生活を守っていくためにも全電線として、JC共闘をよりどころに産別として精一杯取り組んで参りたく、JC共闘の一員として、最大限努力することを申し上げ、方針に賛成の意見とする。
本部答弁:大きな転換点となる06年闘争 JC共闘の団結で成果を
【團野事務局長】

 すべての産別から見解をいただきまして、大変ありがとうございました。私なりに受けとめを整理させていただくならば、一言で言うと、JC共闘のもとで各産別やり方は違うけれども、賃金水準の改善をはじめとする労働諸条件の維持向上に向けて取り組んでいくという決意が示されたと把握させていただきました。この金属労協としての闘争の推進の確認を踏まえまして、今後それぞれの産別で中央委員会に向けて、労働条件維持・向上に向けた取り組みの具体的内容が整理されていくことになると思います。ぜひ、すべての産別がきちっとそれぞれ役割を果たしながら、金属全体、JC共闘としての成果が上がるようにお互い努力をしていくということを誓い合いたいと思います。
 それから、産業別最低賃金について少しだけコメントを申し上げたい。現行の産業別最低賃金が実施されたのはたしか91年からだったと思います。翻れば、1986年の中賃の答申に基づいて現行の枠組みができ上がったわけです。そして、その定着に向けて、金属全体の仲間が自主的に機械・金属最賃連絡会議をつくり、そして産業別最低賃金の定着・発展に向けて取り組みを展開してきたわけです。現行の産業別最低賃金のその約8割が金属の最低賃金で占められているというのは、我々の努力の証であります。現段階、その枠組み変更をめぐって、公益試案が出されているわけであります。12月5日には連合としての最賃対策会議が開かれ、そして12月9日には最賃部会が開催をされます。この中では経営側の考え方が多分示されてくるだろうと思います。我々としては、その経営側の考え方がどのように示されるかをきちっと把握し、その上で改めてどのように対応していくかを金属全体で確認しながら進めてまいりたい。いずれにしましても、その実効性がきちっと上がるように対応を進めていくことをお約束申し上げ、見解とさせていただきたいと思います。今後ともご協力をいただきたいと思います。大変ありがとうございました。
【加藤議長】今、5産別からJC本部の提案を基本的に支持し、さらに補強していただく大変力強い意見表明、そしてまさに佳境を迎えている産別最賃の問題については、團野事務局長が述べましたとおり、これから公益見解が出てまいりますけれども、新しい労働市場というものを大変強く意識した方向性が今議論をされているわけです。この06年というのが、おそらく後で振りかえったときに、1つの転換点として強く意識をされるような、そういう新たなスタートになるのではないか、そういう思いを大変強くしているところであります。