第48回協議委員会   来賓あいさつ(連合高木会長)

金属労協第48回の協議委員会のご盛会を、連合の仲間を代表して心からお喜び申し上げたい。  10月6日に連合会長にご選任いただき、JC前議長の古賀事務局長とともに50日余の日々を過ごしてまいりました。甚だ微力ではございますが、労働運動の活性化、前進のために精いっぱい頑張っていきたいと思っております。何かとご支援いただくことが多いと思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)  日本の労働運動の中核を担っていただき、労働者の生活と権利の改善、日本の社会の民主的かつ健全な発展のために常に牽引車の役割を果たしていただいてきました金属労協の皆さんの日ごろの活動に、まず衷心より敬意を表させていただきます。本日は、二、三お願いがあって参上させていただきました。


◆2006年春季生活闘争について
 まず、2006春季生活闘争についてですが、昨日、第48回連合中央委員会を開催し、春季生活闘争の方針について決定をしたところです。皆さん既にご承知の通り、その中身はマクロ的に言えば、「1%以上の賃金改善原資」ということです。これはいろいろな言い方がありますが、私は「真水をもらいに行きましょう」という表現を使わせていただいています。「1%以上の賃金改善原資をみんなで会社側にもらいに行きましょう」ということです。そういった要求をする必要かつ十分な根拠と背景が来年の交渉に向けては整っているという認識に立っていることも申し上げたところです。この方針を受けて、各構成組織で具体的な要求内容をいろいろな討議を経て決めていっていただきたい。加えて中小の格差の問題やパートタイマー等の皆さんの処遇改善にも力を注いでいく。いわば企業と家計の関係、大手と中小の関係、正社員と非典型労働者の関係、この3つの視点について、賃金の配分構造を変えていこう。この3本柱で来年の春の交渉に挑もうという考え方を整理した方針であります。  本日の協議委員会で金属労協としての2006年闘争の方針を決定されます。その内容を拝見させていただきましたが、私ども連合の考え方とほぼ同じようなトーンでまとめいただいていると思います。過去もそうでありましたように金属労協の皆さんの対応が日本の労働条件の有り様を決める鍵を握っています。ここ5年間、体制的には実質的な賃金改善原資を求めるということをせず、賃金カーブ維持を中心に交渉をしてきました。過去5年間の対応については、それなりの背景や考え方があって、我々がそういう志向をしたわけですが、その結果として労働分配率の大幅な低下、あるいは可処分所得の目減り等を招いていることは事実として受けとめざるを得ないと思っています。  今、経済は回復しています。政府は「完全に回復した」と言っています。しかし、産業・業種によってはまだまだ厳しい。あるいは同じ好況業種の中でも一部には企業の景況が厳しいところももちろんありますが、全体的には経済状況は大変順調に推移している。そういう中で、企業は資本への分配率を高め、内部留保も高水準に蓄積しつつあります。5年ぶりに、経済、企業の状況や家計の状況を見たときに、賃金改善を実質的に図る状況が今我々の前にやってきています。このような状況の中で、実質的に賃金を改善していく要求を起こして交渉がもしできないとすれば、いつまた要求を行うことができるというのでしょうか。そのような時期を今我々は迎えているのです。  労働組合の最大の役割は、釈迦に説法かもしれませんが、労働者の生活と権利の改善です。組合員の皆さんの多くも来年春の交渉に大きな期待をされています。2006年の交渉の成否のかぎは、先ほども申し上げましたようにJCの皆さんの手にあります。製造業の雄である金属労協の牽引力なしに2006年の交渉の成功はないだろうと思います。それぞれの労使関係の中でのいろいろな歴史的な論議の経過、あるいは今、加藤議長も触れられましたように経営側の厳しい対応も十分予想されるところではありますが、どうぞ日本の労働運動の中に占める金属労協の皆さんのポジションを十分ご認識の上、前向きにご対応をお願いしたい。  時移り、人かわり、世の中も変わっていきますが、人間の労働という営みは永遠のものだと思います。労働がある限り、労働条件の適正な設定は不可欠です。若干大げさに申し上げれば、2006年の春季生活闘争は「21世紀の労働条件改善の行く先を占う試金石」と位置づけたいと思います。21世紀の労働条件決定のあり方にかかわる交渉を我々は来年の春にしなければならないわけです。非常に好況裏に推移している企業業績、一方うつむきかげんの家計、何としても真水の賃金改善の原資を得るべく、JCの皆さんにリード役を担っていただきたく衷心よりお願い申し上げたい。


◆度が過ぎる勤労者家計負担による財政再建策には断固反対
  2点目は、現在の小泉政権の財政再建政策についてです。プライマリーバランスを2010年代初頭にバランスをとるんだという財政再建の発想が議論されていることも承知をいたしておりますが、そのプライマリーバランスをとるために必要な調整を、調整額の八、九割を労働者、勤労者家計への負担にしわ寄せする格好でバランスをとろうとする、あまりにも度が過ぎた政策ばかりが続いています。327議席という巨大与党のもとで、率直に申し上げまして国会の中で小泉政権が提起した法案なり、予算をひっくり返すということはそう簡単にできることだとは思っていません。しかし、こんな状態をさらに来年も、再来年も続けていかれたら一体どういうことになるのか。そんな意味で全国津々浦々で働いている労働者、未組織の人たちも含めて、こんなやり方があるんですかということを強く訴えて、一寸の虫にも五分の魂という気概で、こういう流れに立ち向かっていくしかないと思います。どうぞ、この点につきましても、職場の皆さんの心強いサポートをお願い申し上げておきたい。 組織率の改善に向けて組織拡大に全力を  最後に、組織率の改善のために、あるいはそれを通じて労働運動の社会的な影響力を復元するために、組織拡大の仕事に取り組まなければなりません。どうぞ皆さん方金属労協の産別においても、いろいろな課題があると思いますが、組織拡大の対象も多いと思います。組織率の復元のためにお力添えをぜひ賜りたいと思います。  今、企業別労働組合が空洞化していると言われており、企業内組織率の回復も急務だと思います。日本は、世界に冠たる雇用社会、働いている人の84-85%がどこかで働き、賃金を得て生活をしている社会です。こういった社会で労働組合の役割が低いわけがないと思います。そういった期待される役割を十全に果たしていくためにも、今の組織率では限界が出てくるわけです。組織率が下がって、労働組合という名はあるけれども、一介のNPOと言われかねないような状態を迎えないためにも、ぜひ組織率の改善にお互いに力を尽くし合いたいと思います。  以上、労働運動の中核を担ってこられた、またこれからも担っていただかなければならない金属労協の皆さんのますますのご奮闘をお願いし、ご期待を申し上げ、連合を代表してのごあいさつにさせていただきます。皆さん、どうぞよろしくお願いします。頑張りましょう。(拍手)