第49回協議委員会   加藤議長あいさつ

賃金改善を通じて格差是正、好循環社会確立に
社会的役割を果たす闘争を
挨拶する加藤裕治
IMF−JC議長

皆さん、大変ご苦労さまでございます。大変重要位置づけを持ったIMF−JCの第49回協議委員会の冒頭に当たりまして、一言、JCを代表して考え方を申し上げたいと思います。 まずは、本日、協議委員、傍聴の皆さんに大勢出席をいただき、また全国の地方ブロックの代表の方も来ていただいております。大変にご苦労さまです。そして、マスコミの皆様方もご参加をいただいていると思いますが、皆さんのご支援も非常に重要な要素でありますので、ひとつその点もよろしくお願いをしておきたいと思います。

 冒頭、お断りを申し上げておかなければいけないのですが、本来でしたら、きょうは連合の木会長が来賓としていらっしゃって、皆さんに連帯のあいさつをしていただくところでございました。私たちも依頼を申し上げていたのですが、ちょうど中国の全国総工会との定期交流が、いろいろと調整の末、ちょうどこの時期に入ってしまいまして、きょうはJCの副議長さんたちはそちらには行っておりませんけれども、連合の副会長の皆さん、ほとんどが中国に行っております。そういうことで、本日は古賀連合事務局長も含めてこちらのほうに来ることができないということですので、皆さんによろしくお伝え下さいととのことです。メッセージをいただいていますので、後ほど簡単に骨子だけ紹介をしたいと思いますので、よろしくお願いします。<ページのトップへ>

本協議委員会の意義

 まず、本協議委員会の趣旨をお互いに確認をしておきたいと思います。いまさら申し上げるまでもないわけでありますが、まずは皆さんとともに、このマクロの環境条件、そしてそれぞれの金属産業、各企業、組合の置かれた状況を相互に確認をし合って、2007年闘争における金属としての共闘の意義と位置づけを確認して、闘争推進に向けた、共闘の意思を集約する場だと思っています。

 さらには、こうしてJCの多くの人が集まる機会は、大会とこの協議委員会の場しかありませんので、特に当面の重要課題についてもお互いの認識を深め合いたいと思っています。特に、今年で申し上げますと、私は、昨年に引き続いて、金属全体として2007年闘争を取り組むんだということを社会的に表明していく場としての意義が極めて大きいと冒頭に申し上げておきたいと思います。
後ほど團野事務局長の方から、情勢を含めて闘争方針について詳しい提案がありますけれども、連合も指摘をしているように、この数年間で企業が上げてきた成果の分配が家計の方ではなく企業部門のほうに強く流れているということがあります。私たちは、今回の2007年闘争を通して、経営者にそのことを強く訴えて、この流れを何とかして転換をしたいと思っています。そういう意味で、この2007年闘争の意義は極めて大きいわけです。<ページのトップへ>

闘争を取り巻くマクロ環境

 今申し上げたような視点も含めて、少しマクロ環境について特徴的な点を申し上げておきたいと思います。私としては、この2007闘争を考えるに当たっての取り巻く環境の中で、重要なポイントは、2つあると思っています。

第1のポイント:賃上げを通じて社会的役割を果たす闘争を

 1つは、今も申し上げましたが、景気や業績、あるいは労働指標も含めた経済指標ははっきり言って、2006年に比べれば、来年2007年は追い風であると考えてよいということであります。もう少し詳しく言いますと、景気拡大そのものは、数字は非常に小さいものの、この10月でいざなぎ景気を超え、58カ月の拡大を続けているということがまずあります。もちろん、これは多少中身で見るとゆがみもありまして、外需依存であるということ、そして今も申し上げたように、家計が立ちおくれている中で設備投資や企業業績が牽引しているということはあるわけですけれども、いずれにしても、拡大を続けているわけであります

 その中で、とりわけ今申し上げた個人消費の低迷については、先日7−9月の数字が発表されましたが、個人消費が下がっていたということで、エコノミストやさまざまなマスコミにおける経済に関する論調の中で、来年の賃上げに対する期待感が述べられているというのは、今年大変目につくところです。そういう意味で、今回の2007年闘争では、勤労者の所得を何とかして増やしていくという意味での重要性というのは何回も申し上げる点です。

我々金属産業を俯瞰して見たときに、金属産業の業績も全体として好調であるということが言えます。特にそういう中では、素材産業、あるいは直接の消費材をつくっているその他の産業等も含めて、全体としてまずまずの業績であると言えると思います。そういった意味では、日本の基幹産業である金属産業として業績のみならず、賃上げも通じて社会的な役割を果たしていくことが非常に大きな責任としてあるのではないかということであります。これが1点目のポイントだろうと思います。<ページのトップへ>

第2のポイント:格差是正に向け労働組合として責任と役割を果たす取り組みを

 2点目は、この数年間、特に小泉政権の5年間を見てみますと、格差という問題が極めて大きな社会的な問題として言われていることはもうご案内のとおりであります。この格差問題を、21世紀初頭、未来に向けてどうしていくのか、政権が安倍政権に変わった今、そういう格差の是正に向けて、労働組合としての責任と役割を果たしていくという、そういう大きな役割を意識した取り組みにしなければならない、これが2点目のポイントだと思います。
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日本の金属産業を支えてきた「厚みのある中間層」を守る闘争を

 少し詳しく見てみますと、小泉政権の5年間というのは、負担増、給付減の政策が続いたわけでありまして、所得のみでなく、雇用の面、あるいは教育の面、あるいは中には希望格差というようなことも出ていますが、さまざまな格差が拡大した5年間と言えます。小泉総理は、「格差の何が悪いんだ」ということを言っておりますが、それは単なる強弁でありまして、この日本において格差が広がっていくということは極めて大きな問題であります。日本の戦後の高度成長を支えてきたのは、この日本の大変フラットな社会構造、民主党はこれを「厚みのある中間層」というふうに呼んでおりますけれども、これは私たち金属産業にとってみますと、非常に質の高い労働力の技術・技能といったものの供給をしてくれる、いわゆる中間層であります。そうした位置づけが非常に重要である。そして同時に、これは単に労働力ということではなくて、我々の製品や、あるいは素材産業も含めた、最終的なこの国での消費者として、これは単なる消費者ということではなくて、我々の製品を大変厳しい目で、質の高い生活で培われた厳しい目で私たちの製品を買ってくれている、使ってくれているという、この「厚みのある中間層」がこの日本の金属産業の強い競争力を支えてきたと言っても過言ではないと思います。

 そういう意味からも、私は、この中間層がやせ細っていくということは、この日本の基盤、背骨のような我々の基幹産業を侵していくというふうに危機意識を持っているわけであります。

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IMF執行委員会での特別講演で感じたこと:戦後日本の高度成長を支えた中間層の存在

 実は、私は昨晩、IMFの執行委員会に出席をして、ジュネーブから帰ってきたばかりなのですが、その執行委員会の場にアメリカの経済政策研究所のジェフ・フォー所長が来て講演をしてくれました。その講演で非常に印象に残った点は、1920年代のアメリカの話でありました。当時、フォードはT型フォードを出して、いわゆるアメリカのモータリゼーションのきっかけをつくったわけであります。当時、ヘンリー・フォード社長が社長仲間と話をしていて、フォードとしては1日5ドルの給料を払いたいと言いました。これはその当時の通常の労働者が受け取る賃金に比べるととんでもなく高い水準だったということです。ほかの経営者が「何でそんなことをするんだ」と言ったら、フォード社長は「フォードのつくった車を一体だれが買ってくれるんだね」と答えたそうです。この生産拡大と賃上げ、消費拡大の循環で、実はアメリカはモータリゼーション時代を迎えるわけです。私はこの講演を聴いて、戦後の日本の高度成長を支えた日本の「厚みのある中間層」という考え方を私たちはもう一度思い起こして、そのことの重要性を経営者にも訴えなければいけないという思いをより強くしたわけです。

 そして、この格差問題で申しますと、特に若者の就業率が大変下がっているわけでありますが、このことの是正も国家的な課題になっております。若干付言をしておきたいのですが、安倍内閣は「再チャレンジ」という言葉を使い、これをスローガンにしておりますけれども、このことそのものも私は異議を持っているわけであります。この格差をほんとうに是正をしていくためには、もちろん雇用政策だけでなくて、さまざまな所得の再配分機構、社会保障や税の問題などがあるわけでありますけれども、安倍政権は今何をしているかというと、この大事なときに、来年の7月の参議院選挙に向けてすべての課題を先送りしている状況であります。したがって、小泉政権時代の5年間の流れというのは、全く止まっていないわけでありまして、そのことを私たちは強く問題として訴えていかなければいけないわけであります。

特に、経済財政諮問会議のメンバーが入れかわって始まりましたけれども、その中で民間から参加をしている八代議員は、「労働ビッグバン」というものを起こすんだというようなことをマスコミ等で主張しておられるわけでありますが、私たちから言わせれば、労働市場というのはもう既にビッグバンをしているわけです。この数年間でそういう状態になっているわけでありますから、そのことで問題が生じているのに、さらに加速をしたときに一体どうなるのかということです。まずは、今はこの格差拡大の流れを止めることが先決であるということを私たちは強く訴えなければならないと思います。そして、この格差問題は、今も申し上げましたように、連合の中でも大きな柱としておりますし、私たち金属部門としても、先頭に立って格差是正を訴えていかなければいけないと思います。<ページのトップへ>

2007年闘争の具体的な要求の考え方

 さて、こうした取り巻く環境の問題からもう少し2007年闘争の具体的な要求の考え方に向けた点をお話しておきたいと思います。冒頭にも申し上げましたように、私たちは2002年から2005年までの4年間というもの、大手組合でほとんどのところはベア要求ができなかったというような状況であったわけですが、2006年闘争では、そうした春闘の取り組みを総括いたしまして、大手組合が先頭に立って要求を行った。そして、金属労協全体で賃金改善を要求し、果たしたわけであります。そして、この考え方は、その結果も含めて社会全体に波及をしたと言ってよいと思います。そういう意味で、この2006年闘争においては、金属労協としての役割を果たすことができたと思っているわけであります。

2007年を考えてみたときに、今も申し上げたように、長い景気拡大が続いていますけれども、まだ政府が、デフレが脱却したという宣言をはっきりとしていないことでもわかりますように、安定成長の道に導くためには、極めて今重要な時期にあると思います。どうやったら個人消費中心の経済に転換していけるのか、そのためには、働く者への配分をはっきりと復活させることだということは言うまでもないわけです。<ページのトップへ>

2007年闘争は社会性を強く押し出した取り組みに

 そういう意味では、昨年から今年にかけて皆さんが努力をしていただいた、2006年闘争の取り組みというのは、それぞれの産業、それぞれの企業の中で労使が、いわば賃金改善の重要性について議論をし、そして結果を出したということだと思います。私は、来年2007年に向けた議論、取り組みというのは、従来以上に賃金闘争というものの社会性、マクロ経済を背景にした社会性というものをもう少し強く押し出した取り組みにしなければならないと考えております。

 そのために金属労協として、1つは、社会的な賃率形成、いわゆる産業の横断的な賃率形成をしていくことを目指した大くくり職種別賃金について、昨年に引き続きまして強く打ち出していきたいと思っています。皆さんとしては、特に上げ幅から水準を一層重視していただくことを意識していただく必要があると思っています。そのことがふさわしい人への投資かどうかということを見るための指標として重要であると思います。そして、そういうことを通して、いわゆる格差社会の是正を進めてまいりたい。そういう意味では、労働時間の問題も触れなければなりませんけれども、そういったものを通じてワーク・ライフ・バランスを求めていくという視点も極めて重要だと思っています。<ページのトップへ>

2007年闘争の具体的推進について

各産別があるべき水準を強く意識して具体的な賃金改善要求を行うことを基本に

 さらにもう少し具体的に申し上げておきたいと思いますが、2007年闘争では、金属労協として、賃金改善についてはあるべき水準を極めて強く意識をしております。そういう意味で、昨年よりマクロ環境が好転していることや、物価がわずかとはいえ、プラスになっているということを踏まえまして、金属労協各産別が具体的な賃金改善要求を行うということを取り組みの基本に据えるということを、さまざまな議論をした結果として決めました。一見、これは表現としては昨年と変わらないではないかと皆さんは思われるかもしれませんが、この中には、今申し上げた環境条件、いわゆるマクロ環境や、特に国内の経済でいえば、物価が若干上がっていることも含めまして、従来よりも目線を上に上げた議論をこれから各産別がしていただくということを期待した要求基準であるというふうにぜひとも受けとめていただきたいと思います。

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中小の取り組みを金属労協として支えていく

 もう一つ申し上げておきたいのですが、中小共闘、あるいはパート共闘が連合台の取り組みとして軌道に乗ってきております。特に中小共闘については、JAMの小出会長がまさに先頭に立ってこの取り組みを定着させ、そして前進をさせてきていただいたという意味で、私たちとしては、この点にことしも、来年も期待する点が極めて大きいわけでありますが、こうした中小の取り組みを我々金属部隊も支えていくんだという気持ちを持った闘い方にしていく必要があると思います。

 それから、格差問題といったときに、非典型労働者が大変増加しているという問題は極めて懸念すべき状況だと考えられるわけでありますけれども、このことについて、今回の考え方の中に含めてありますのは、それぞれの産業、あるいは企業労使の間でぜひともこの非典型労働者の問題を労使協議の場に上げていただく。最低限、そのことはお願いをしておきたいと思います。連合は、非典型労働者、いわゆる流動的な働き方の方々を正社員化していくという取り組みを柱の1つに掲げておりますけれども、私たちは今、金属産業として、すべてのところでここまでを取り組むということはなかなか難しい状況だろうと思います。しかし、この非典型の労働をこれからどうしていくのかということについては、ぜひとも労使でこれを協議していただき、今のような、非典型労働者の比率が極めて高い状況を改善をしていかなければいけないと申し上げておきたい

 2007年闘争は、以上のような取り組み項目であるわけですが、来年2007年に向けた交渉を行うときに、私は留意しておかなければならない点は、経営側は2006年で、いわゆる大手が賃金改善を行ってこなかったその前の数年間、その流れに賃金改善を行ったということで流れを変えた。経営側としては変えられたということかもしれませんが、そういう意識が極めて強いわけです。いろいろな筋から、今、経労委報告の準備状況を聞きますと、この流れをこのまま定着させてはいけないという気持ちが経営側に非常に強いということを漏れ聞くところであります。

そうしますと、当然のことでありますが、今年以上に2007年は経営側の強い反発が予測されるわけであります。それだけに各産別が意思結集をより強化して、相乗効果を発揮をしなければいけないとお互いに決意を固めておきたいと思います。そして、闘争日程は従来と特に変えるところではないのですが、連合全体で見ますと、中小共闘の問題も含め、あるいは昨年も今年も取り組めなかった他の部門がまだあるわけですが、そういうところも含めて、全体として取り組んでいくという流れが今できつつあります。私たちは、そのことも強く意識をして、そうした流れを私たちが相乗効果として、この金属労協の共闘にも生かしていくような進め方をしていかなければいけない。そのことを皆さんにも申し上げながら、私たち金属労協としてそれを強く意識をしながら闘争を進めていきたいと思います。<ページのトップへ>

参院選勝利の前哨として2007年闘争に勝利しよう

最後になりましたけれども、この機会に皆さんともう一つ確認をし、お願いもしておきたいことがございます。この小泉政権の5年間の間に、この日本社会は相当痛みを生じているわけであります。役所や知事の不祥事なども最近続いていますが、社会が不安と不信に満ち満ちているように思います。これは、私は何も日本だけの現象ではなくて、世界中の国々で、先進国、発展途上国を問わず、いわゆる新自由経済政策、社会政策というものがこういった状況を招いているということは皆さんも同意をしていただけると思います。

本年10月31日、ICFTU(国際自由労連)は、その解散大会を以て57年の歴史に幕を閉じ、翌11月1日、WCL(国際労連)、そしてそれまで国際労働組合組織に非加盟であったナショナルセンターと共に、154の国・地域、306組織、世界の1億6,800万人の労働者を代表する国際労働組合総連合(The International Trade Union Confederation:ITUC)を結成しました。私はその場に連合の代議員として参加をしていましたが、各国からの意見要望では数十名の代議員の方が相次ぎ壇上で発言をしました。そのほとんどが南半球の国々の人でありました。まさにそれらの国々から、「社会の質が劣化している」、そして「二極化が進んでいる」等の訴えがあり、それをこの世界の国際連帯の力で何とかしてはね返して、ディーセントワーク(人間的な労働)を取り戻さなければいけない、といった意見が表明されました。

昨日まで行われたIMFの執行委員会でも、やはり南半球の国々からは同じような主張が行われたわけでありますが、そうした二極化、貧困が拡大をすればするほど紛争が拡大をするという悪循環に今陥っているわけであります。そのことに対して、私たちは少し希望を感じるのは、この11月のアメリカの中間選挙で、まさにブッシュ政権の行ってきた政策に対してアメリカ国民はノーを突きつけたわけであります。日本でも来年の7月、参議院選挙が行われますが、私はこの参議院選挙をアメリカの中間選挙のような状況にできる可能性というのは極めて大きいと思っております。
 これから来年の春の統一地方選挙も挟みまして7月を迎えるわけでありますが、私たち金属労協のそれぞれの産別から3名の組織内の参議院議員を擁立することが決まり、既にさまざまな形で活動しているわけです。2007年の春の闘争を含めまして、皆さんには大変ご苦労をおかけするわけですが、まさに、春の2007年闘争を成功させたその勢いで、この参議院選挙に立ち向かう、そういう気持ちでお互いに2007年闘争を頑張りたい。そして、もちろん参議院選挙も頑張りたいと思います。

 そのことを最後に確認させていただきまして、私からの冒頭のごあいさつとさせていただきたいと思います。どうもご静聴ありがとうございました。(拍手)