第44回協議委員会

来賓挨拶

笹森 清 連合会長

21世紀最初の要求と交渉の展開のリード役を期待

 今、鈴木JC議長のほうからのお話を伺い、情勢認識、問題提起、そしてどういう方向に向かうかという点について全く同感でありますが、連合の立場から幾つか申し上げさせていただきたいと思います。

 まず最初に、4代目の連合会長と連合事務局長を新しく誕生させていただきまして、今日でちょうど52日目になります。特にJCの皆さん方には、連合4代目事務局長として、前のJC議長で、自動車総連会長であった草野さんを送っていただき、今、連合の真の要として率先的な活動をしていただいていますことに、心から感謝を申し上げたいと思います。その上で、今、この壇上を見ると、連合の副会長3名、中執4名の方々がいらっしゃいます。言うなれば連合を支え、連合を動かしている皆さん方がこのJCの役員でありますので、鈴木議長のこれからのリードを心からご期待申し上げ、私どもの活動にいろいろなご尽力をお願い申し上げておきたいと思います。


●現代の状況はまさに時代の転換期
 21世紀が始まりまして早1年が終わろうとしていますが、これ以上ないというほど悪い環境が続いています。会長就任後、いろいろな人にお会いしますが、「おめでとうございます」と言う人はほとんどおらず、「大変だね、こんな時期にご苦労さん」と言われていますが、それほど今、劣悪な状況だと思っています。
 けさの新聞のコラムに、ラテン語で「アラスホリピリス」という言葉が書いてありました。「ひどい年だ」という意味だそうですが、まさに今年を象徴している言葉だと思います。しかし、今年最後の12月の最初の日に内親王のご誕生があり、久方ぶりに明るい話題が出て、悪いままで終わらなくて良かったと思います。是非これが来年の景気の好転という明るい方向につながればいいと思っています。このJCの協議委員会もそういう意味で明るいほうにつながっていくような皆さん方の結論になっていただければと心から期待しています。
 現在の状況は、まさに時代の転換期といえます。小泉総理も「構造改革」をいろいろ言われますが、労働運動、労働組合自体も構造改革をやらなければいけないのではないかと考えています。その必要性をきっちりと受けとめて、新しい運動の構築、特に本日の主題である春季生活闘争に限定をすれば、もう20世紀型の春季生活闘争は完全に切りかえをするという時期に来ているのではないかと思います。そういう思いの中で、大事にしなければならないことはやっぱり大事にしようということをまず申し上げておきたい。
 日本のよって立つ基盤とは、言わずもがなのことですが、資源がほとんど無い中で、外国に比べて、戦前も戦後も全く変わらない極めてすぐれた勤勉性のある国民、言うなれば人という財産です。この人という財産をどこまで大切にできるかどうかが課題です。
 そして、戦後の廃虚の中から、世界で一番だと言われた経済大国にのし上がった、その一番原動力になったベースにあるものは金属労協の皆さん方がそれぞれの職場の中で支えていただいているモノづくり産業、製造業です。このモノづくり産業において、国際競争力に勝てるものを日本の中でずっと持ち続けていくことができるかどうかが、日本の行く末を決めると言っても過言ではありません。この視点を大切にした構造改革を、意識改革も含めてやらなければいけないと思っています。
 その上で、今、労働組合がなすべきことは何か、このことをきっちりとお互いに共通認識を持ってやり合える努力をするというのが、2002年の春季生活闘争に我々が与えられた役割ではないかと思います。
 最大にやらなければいけないことは、働く現場の実情をしっかりとつかむことであり、その上で改善に対しての提言や行動を、労働組合運動としてやり切れることができるかどうかです。いろいろなケースがあると思いますが、いろいろな波及効果、波及影響力があるJCのグループの皆さん方にその先導役をぜひ果たしていただきたいと思います。
 各論の中では、今日の場では2つしかありません。
1つは、雇用の維持・確保と雇用の創出拡大への取り組みの問題です。
 連合は雇用問題について、もう既にこれは社会問題化をしているという受けとめ方をしています。このもとになる数値は、連合が各地方連合の協力を得て、全国に対して「雇用・失業何でも相談ダイヤル」を開設させて、直接生の声を聞かせてもらいました。同時期にハローワークに連合の旗を立てて、求職相談に来られた方々に直接問題アンケート調査をやりました。その結果、問題点が2つはっきりと浮き彫りになりました。
 これは政労トップ会談でも、小泉総理以下閣僚の方々に直接申し上げましたが、1つは、運動として考えなければならないというのが決定的に出されたのが、両方で約4,000名を超える意見交換、事情聴取をした方々の中で、90%の人が、企業に在籍中、労働組合がなかったところに勤めていたという事実です。
平均で21.5%しか労働組合組織率がないのですから、リストラされたり、企業がつぶれたりするのは、はるかに労働組合組織のないところの人たちのほうが多いというのは予想できますから、9割の人が労働組合がなかったというのは当然かとも思いますが、アンケートによって次のことも浮き彫りになりました。
 それは同じ失業者でも二極化したということです。皆さん方の職場にも、リストラとかいろいろなのが出てきまして、残念ながら仲間の中から離職を余儀なくされている実情はありますが、一応組合があるところは、曲がりなりにも労働債権なり未払い賃金なり、そのほかのもろもろの条件というのは組合交渉の中でキープしてガードしているわけです。
 ところが、組合のないところはいきなりドボンになって、そのことに対して全くカバーされない。だから、同じ失業の中でも、まあまあと言えるようなレベルをまだ保っていける人と、もう完全に進退きわまっている人と2つに分かれたというのが、今回の調査の中で浮き彫りになった。
 その上で、その悪いほうの部分の人たちはどういう状況に置かれているかというと、3つに分けられる。1つ目は、リストラ解雇の理由が自分としてはいまだに納得できないのに、経営側のほうからは自発敵にやめた登録のほうに入れられてしまった人。このことに対する影響は大きい。2つ目は、労働債権の担保、未払い賃金が全くもらえずに、もうストックが尽きてしまうという状況に追い込まれたという人。3つ目は、これは両方に共通するわけですが、年齢制限の壁がいくら通達で取っ払われても、現実には厳としてあり、再就職できない中高年の人が多いという事実です。
 ハローワークで、45歳で40万円の条件を入力してみたが、募集企業はない。それで30万円に落したが、やはりない。20万円にしたらやっと対象企業あった。詳細を見たら、その企業の募集採用条項は年齢はオープンになっている。しかし、現実にそこに行ってみたら門前払いだった。今朝の新聞にも60回訪問して30回面接してもらって、結果的には60件全部ペケにされたという実態が載っていましたが、これでは人生否定になってしまうという状況が現実にあるわけです。
 その上に、失業が長期化をしてきたので、日本の失業給付期間の面から言うと、完全にそれが切れてしまったという状況ですから、雇用問題から社会問題になってしまっています。このような現状の中で、労働組合が雇用の維持・創出、そして雇用の拡大に対してどう取り組むかというのは、極めて大きな問題としてやらなければいけない。それが本日この場に掲げられている闘争ポスターのこの雇用・生活という二枚看板の中に如実にあらわれているのではないかと思っています。
 そういう中で、私ども連合はいろいろな取り組みをさせてもらいますが、今言ったようなことを具体的に解決するための行動を「アクションルート47」と名づけて、全国47都道府県全部を回ることにしまして、とりあえず雇用状況の劣悪な北海道、沖縄、大阪に入らせてもらいました。ここでは地域によっていろいろ特性があり、一律では解決できないということがクローズアップされています。
 そして、そこにもう1つ、組合員でない人たちとのいろいろな意見討論もやらせてもらうということで、地方連合の中ではいろいろなアイデアを出した対応をしており、これはそのうち報告書を毎月出させていただきますが、いろいろな運動の中で、絶対的に実情をどうつかむかということで連合としてやり遂げなければならないと思っています。

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●2002年闘争におけるJCへの期待
 次に、今日の主題である賃金と労働条件の問題で、いわゆる2002年の春季生活闘争についてですが、連合として、JCの皆さん方に次の3点についてお願いしておきたい。
 まず1つは、ベアを取りに行くと決めたところはきっちりと取る交渉をやってほしいということです。
 2つ目は、ベアを断念したところについては、雇用と賃金というものの整理をするということの中でのベア断念ということが大きな理由としてあるわけだと思いますから、雇用の維持・確保については必ず協約の中に取り込んで、きっちりと取りきる交渉の努力をしてほしいということです。
 3つ目は、賃金カーブ維持分の問題については、できるだけ早期に明確化をしてもらい、その上で後続部隊、そして未組織の人たちに対する波及効果、メッセージの役割と責任を果たさなければならないということになれば、情報開示については徹底をしていただきたい。この3つのお願いをしておきたいと思います。
春闘パターンのつくり方について
 その上で、JC、公益、後続中小と続いてきた今までの春闘パターンが、今回のJCグループの要求のそれぞれの組織の立て方、そして、つなぎの役をする公益のNTT、電力の今の状況から見ると、従来パターンが今年は取りきれて、その上で相場形成の役割を担えるような第一陣、第二陣というパターンになるかどうかというのは、極めて難しい状況になってきていると思います。
 しかし、少なくとも連合傘下の組合が決める春の交渉の賃金だけでないほかの項目も含めた波及効果というのは、すべての雇用労働者に影響するという内容になっていくはずですから、そのことに向けてのパターンを、具体的な上げ幅論議だけではないつくり方をどうするかということについては、連合として三役会議、あるいは拡大戦術委員会の中で十分な調整をさせていただきたいと思っています。

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●ワークシェアリング問題への対応について
 最後に、雇用問題を含めてワークシェアリング問題が大きくクローズアップされていますが、言ってみれば賃金を下げ、そして(雇用を)シェアしてくれと、こんなことを単純に求めているわけではないのです。しかし、今の雇用と賃金、雇用と労働条件、そして生活、今や社会問題になってしまった感のある雇用問題全体の解決の中で、オールマイティの切り札ではないけれども、ワン・オブ・ゼムのかなり有力な選択肢として日本型ワークシェアリングをつくらなければならないという状況に来たことは間違いない。
 このことに対して小泉総理が国会の場で連合という名前や会長、事務局長という名前を出して呼びかけ、そして政労会見に結びつき、その政労会見後、異例の政労トップ会談を行ったというこの問題の扱い方については、極めて歴史的なこととして私は大事にしていきたいし、その具体的な効果があるような相談を早急に仕上げたいと思っていますが、言ってみれば同床異夢的なところがまだまだあります。しかし、いろいろな切りかえの中で雇用と賃金の問題、そして、この同床異夢的なワークシェアリングについては、第1段階、第2段階というステップを踏まなければいけないだろうというようなことも含めての検討をしていく必要があるかなと思っています。
 第1段階は緊急対応、第2段階は中期ビジョンに基づくもの、第1段階の緊急対応は、少なくとも雇用の維持・確保につなげなければならない。そして、第2段階の中期ビジョンは雇用の創出拡大につながなければならない。こういうような取り組みの中で、今、我々が労働組合としてなさねばならない役割、春の交渉というこのテーマに大きな意味合いが込められている「21世紀最初の、言ってみれば、20世紀をもう引きずらない最初の要求と交渉の展開」ということになっていくと思いますので、JCの皆さん方が、いずれにしても日本のそういう問題についてのリード役として、まだまだその責務を負わされていると思いますので、ぜひ十分なる討議と十分なる取り組みをお願いを申し上げて、連合としての激励とお願いのごあいさつにさせていただきます。よろしくお願いします。

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