新着情報(健全な労使関係構築に関する労使ワークショップ)

第1回健全な労使関係構築に関する労使ワークショップ(2010年6月19日)

2010年06月19日

*インドネシア現地日本語新聞「The Daily Jakarta Shimbun」2010年6月23日(水)7面に今回のワークショップの記事が掲載されたので下記に転載させていただいた。(IMF-JC事務局)

The Daily Jakarta Shimbun
2010年(平成22年)6月23日 水曜日7面掲載

労使協調目指し対話集会
「相互信頼の構築を」

初の「健全な労使関係構築に関する労使ワークショップ」(インドネシア)

全日本金属産業労働組合協議会(IMF-JC)が主催し、「健全な労使関係構築に関する労使ワークショップ」が19日、西ジャワ州ブカシ県チビトゥンにあるMM2100工業団地内の大会議室で開かれた。インドネシアの日系企業の経営者やインドネシア人の人事総務担当マネジャーと、労働組合幹部や上部団体であるインドネシア金属産業労働組合連盟(FSPMI)幹部ら約100人が一堂に介し、率直に意見交換。健全な労使関係の構築をめざし、労使間で頻繁な対話の場を設けるなど、相互信頼の構築が必要との認識で一致した。(上野太郎記者、写真も)

日本の金属労協が仲介

日イの同時通訳付きで行われたワークショップ

ワークショップには、IMF-JCの若松英幸事務局長、国際金属労働組合連盟(IMF本部・スイス)の鎌田晋・書記次長、ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)労働問題委員会の丸山尚典委員長、FSPMIのサイード・イクバル会長らが登壇。

IMF-JCの野木正弘事務局次長(国際局長)の司会で、若松事務局長、丸山委員長、イクバル会長がそれぞれの立場から労使関係に関する意見を表明した。

若松事務局長は、昨年、日系の製造メーカーで4カ月のストライキが発生した際に働き掛けを行ったことから、「労使が顔を合わせて本音で語り合う場を持ちたい」と、今回のワークショップを企画した経緯について説明した。

また、日本では、戦後からの長い労使間の闘争の歴史を経て、現在の状況があることを紹介した上で、労組側に対し、中長期的に会社が安定して成長することが組合員の生活の安定につながるとの認識を持つ必要があり、経営側への要求づくりに当たっては、物価上昇率だけでなく、組合員の生活実態や同業他社の賃金水準、会社の財務状況、競争力や比較優位性、企業グループの中でのグローバルなポジションなどの会社の実態を踏まえる必要があると指摘。

一方で経営者側に対しては、企業を取り巻く環境や業績などの会社実態、今後の経営計画などの情報をきちんと組合側に開示し、組合執行部に理解を求めるだけでなく、会社のルートでも「マネジャーから部下へ」というような形で社内の隅々まで情報伝達を行う必要があると説明した。

労働組合の委員長は、社長にはいつでも会うことができるような信頼関係を築くだけでなく、社長も毎日ふらりと組合事務所を訪れては労組役員と立ち話ができるような人間関係を作ることで、様々な問題を話し合いを通じて解決する風土が労使間で醸成されるとともに、問題が大きくなる前に芽を摘むことも可能になるとの見解を表明。

そのためには上部レベルでの環境整備が必要であるとし、日本では、連合と日本経団連が年2回の懇談の場を設けているほか、産業別や企業別などあらゆるレベルで労使対話の仕組みがあり、労組側がそこでの情報を組合員にフィードバックすることで、認識の共有が図られている事例などを紹介した。

丸山委員長は、健全な労使関係構築は労使の共通の願いであり最大のテーマであるとした上で、労使問題を解決することから、インドネシアに進出する日系企業の増加につながり、雇用創出や国民の所得増につながると説明した。

労組に対して、労組幹部が経営者と同じように長期的な視点を持ち、経営者の敵ではなく、ビジネスパートナーとなってほしいなどと要望。経営側も情報や教育機会の提供が大事という認識を持つ必要があるとする一方で、労組側も幹部と組合員の認識の統一を図ってほしいと訴えた。

また、デモやストライキは、労働者の権利であることは理解しているが、長期的には会社の存続にかかわるなど、お互いが損害を被る可能性が高く、労組の戦術として行使される安易なデモやストを極力避けるよう呼び掛けるとともに、経営者側も労組との間では決して感情的に怒ることなく交渉に臨み、あきらめず、手を抜かずにコミュニケーションを取ることが長期的な成功のかぎになるとの見方を示した。

「対話促進が必要」

パネルディスカッションでは、聴講者を含め活発な議論となった。今回のワークショップに協力したMM 2100管理・運営会社社長で1983年からインドネシアに関わるJJC元労働問題委員会委員長の小尾吉弘氏は、「フィリピンやインドも経験しているが、インドネシア人は日本人と同じメンタリティーを持っている」と指摘。インドネシアの労使紛争について、自分の非を指摘されることを恐れ、限られた情報しか経営者に上げなかったり、経営側のメッセージがうまく伝えられなかったりと、日本人経営者と労組の間に入るインドネシア人の人事総務マネジャーのところでこじれて、問題が悪化することが多いと分析し、「誰が悪いということではなく、そこにコミュニケーションの問題があることを認識し、お互いが理解できるよう努力することが必要だ」との見解を示した。

ディスカッションの後半では、ストライキで大きな損害を受けた日系メーカーの社長と、ストを率いた労組幹部がともにコメントし、幹部が職場復帰して一生懸命に働いていると説明する社長に対し、幹部が「大きな教訓になった」と振り返るなど、労使の相互理解構築が図られていることを示す一面もあった。

若松事務局長は、労使協調路線を目指す意義について、「長い目で見て、インドネシアの人々のためにも、進出する日本企業のためにもなる。きれいごとだけではない部分もあるが、口だけではなく行動に移していくことが必要。インドネシアの人たちに労使協調を実現させる素地はあると思っている」と期待を示した。

「労働者の人材育成必要」FSPMIイクバル会長

ワークショップに出席した金属産業労働組合連盟(FSPMI)のサイード・イクバル会長は、インドネシアの労使紛争問題について、解決には労使が頻繁に対話する場を設けるべきとして、協調路線の必要性を訴えた。2006年からイクバル氏が会長を務めるFSPMIは日系企業の労組組合員が多く、デモやストライキを通じた闘争を多く主導してきたことで知られる。パナソニック出身のイクバル会長は、日本企業のインドネシア投資について、「問題があるとすぐに逃げる韓国や中国と異なり、日本企業は長期的な視点での投資を行っている」との認識を示した上で、労使問題が起こる背景について、「インドネシアは民主化時代となり、労働組合の結成が自由化されてから10年強。まだまだ労働者が自由を謳歌(おうか)している」と現状の難しさも指摘。一方で、「経営側の対応も、スハルト時代の抑圧的なやり方ではなく、民主化時代にふさわしいやり方に変えていく必要がある」との見解を示し、経営側は、教育や訓練の機会提供を、コストではなく建設的な労使関係の構築に向けた長期的な投資と捉え、労働者の人材育成により目を向ける必要があると訴えた。FSPMIは、傘下の労組に対し、円滑な労使関係を構築している企業の例を示すなどのキャンペーンを進め、前向きな関係構築に努めたいとの意向を示した。

労使ワークショップ終了後全員で記念撮影