広報ニュース

第44号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2015年11月))

女性の同一賃金達成は2133年?

2015-11-24

 世界経済フォーラムは第10次グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポートで、女性の賃金平等は2133年まで達成されないと推定している。
 有給の仕事に就く女性が増えている。しかし世界的規模では、女性の所得はまだ10年前の男性の水準にすぎず、その一方で男性の賃金は増え続けている。97カ国では男子大学生よりも女子大学生のほうが多いが、女性が熟練労働者の過半数を占めているのは68カ国にすぎない。さらに悪いことに、女性が指導部の過半数を占めているのは世界でわずか4カ国である。
政界ではジェンダー・ギャップが縮小しているが、改善の余地がある。任意の政治的な割り当てによって進展を達成できているケースもある。
 グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポートは、経済分野の参加・機会(給料、参画、リーダーシップ)、教育(基礎教育・上級教育を受ける権利)、健康・生存(平均余命と男女比)、政治的な権限強化(意思決定構造での代表)においてジェンダー・ギャップを縮小する能力に基づき、145カ国をランク付けしている。
 報告書によると、男女平等が進んでいる上位10カ国はアイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、アイルランド、ルワンダ、フィリピン、スイス、スロベニア、ニュージーランドで、この指標で最もランクの低い国はイエメンである。
男女不平等は人権問題であるのみならず、経済成長を妨げる。

 モニカ・ケンペール・インダストリオール書記次長は言う。「男性との経済的平等を達成するにはあと3世代かかる。このプロセスを加速させるためにソーシャル・パートナーを動員する必要がある。優れた法律がある国々でも、それらの法律が実施されているとは限らない。男女の同一賃金は結局のところディーセント・ワークの問題だ」

報告書はwww.weforum.orgに掲載されている。

 

 

襲撃されたブラジルCNM/CUTと連帯

2015-11-27

 11月25日、インダストリオール加盟組織であるブラジル全国金属総連合(CNM-CUT)の事務所が襲撃された。インダストリオールは暴力を非難し、労働者との連帯を表明した。
「この攻撃の原因が、権利の平等と社会的公正を確保するために闘う民主的な代表機関に対する不寛容や憎悪ではないことを願う」とパウロ・カイレスCNM/CUT会長は述べた。
 11月25日水曜日の夜、サンベルナルド・ド・カンポにある組合事務所正面のガラスが割られた。
「この卑劣な行為の責任者を確認して処罰するために、本格的な調査を求める」とカイレス会長は述べた。「当労組は警察に対し、襲撃者を確認するために防犯カメラの映像を提供するよう求めている」
 フェルナンド・ロペス・インダストリオール書記次長は次のように述べた。
「この卑劣な犯罪的攻撃は、CUTに所属する金属労働者を威嚇しようとするものだが、何をもってしても、この好戦的な労働者たちを威嚇することはできない。CNMはブラジルの状況改善を求めて断固闘うと私は確信している」

 

 

ブラジルのゲルダウ労働者、反組合的慣行に直面

2015-11-26

 

ゲルダウ社の反組合的に抗議する労働者達

ゲルダウ社の反組合的に抗議する労働者達

ブラジル企業ゲルダウの反労働組合的慣行は、結社の自由と団体交渉権を侵害している。インダストリオールは、同社にブラジルの労働者の権利尊重を要求するとともに、労働者に全面的な支援・連帯を表明した。
 ゲルダウ社はブラジルの6工場で労働者の権利を攻撃している。同社は法律の定めに従って賃上げするのではなく、労働者に商品引換券を発行したがっている。組合はすでにこれらの工場の一部を対象とする労働協約を締結しているが、労働者はまだ合意された賃上げを得ていない。
 組合員は、会社側が労働者に通知せず、工場の数カ所で労働者を監視するために防犯カメラを設置したことを非難している。これは違法行為である。ゲルダウは、さまざまな戦術を利用して従業員に圧力をかけ、同社が締結した労働協約に反する会社側の案を受け入れさせようとしている。しかし、組合側は断固たる立場を貫いており、常に連帯メッセージが寄せられている。
 CUTに加盟するインダストリオール加盟組織の全国金属総連合(CNM/CUT)は、ゲルダウ社で5,230人の労働者を代表している。CNM/CUTは、これらの反労働組合的慣行を拒否し、労働者への支援を表明した。
「これらの行動に対して、CUT加盟組合6団体は、金属労働者の利益を守って労働組合組織と労働協約の尊重を確保するために、あらゆる合理的な措置を講じる」とCNM/CUTは公式声明で述べた。
 ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は、ミゲル・ロセット労働・社会保障大臣とアルマンド・デ・ケイロース・モンテイロ・ネト開発・産業・国際貿易大臣に書簡を送り、介入を求めた。ゲルダウCEOのアンドレ・ヨハンペーターにも書簡を送り、次のように伝えた。
「インダストリオールはゲルダウに対し、結社の自由と団体交渉に対する労働者の権利の無制限の保護を定める、ブラジル労働法ならびに国際労働法の遵守を要求します」

 

 

インダストリオール機械エンジニアリング世界会議で組合の力を強化

2015-11-24

インダストリオール機械工エンジニアリング世界会議に21カ国の代表が参加

インダストリオール機械工エンジニアリング世界会議に21カ国の代表が参加

 多様な産業の主要労働組合がインダストリオール・グローバルユニオン機械エンジニアリング部門世界会議を開催し、共通の課題に取り組んで力を強化するために集団行動計画を立案した。
 

日本を代表して報告する大谷氏(JAM)

日本を代表して報告する大谷氏(JAM)

2015年11月23~24日にスイス・ベルンでスイスの加盟組織UNIAの主催により、21カ国の労働組合代表が参加し、経験と戦略を共有した。この会議では、4年前に米国シンシナティで開かれた前回の世界会議以降、この機械エンジニアリング産業で起こった変化に対して労働組合の立場から検討を加えた。
 今回の世界会議では、向こう4年間の部門活動に関する意欲的なアクション・プランを採択した。このアクション・プランはインダストリオールの5つの戦略目標に沿って、機械エンジニアリング部門に、不安定雇用との闘い、サプライチェーンも対象とする企業別労働組合ネットワークの創出・構築、生産のデジタル化に対応する新しい産業政策の促進を義務づけている。

 インダストリオールは、この会議で包括的な産業報告書を発表した。報告書のコピーを希望するインダストリオール加盟組織は書記局まで問い合わせのこと。
 この部門の大企業が労働力の外注によって労働組合を弱体化させているため、すべての参加組合が不安定雇用の問題を強調した。
 外注労働者は使用者から「二流の労働者」とみなされ、正規労働者より賃金が低く、労働条件も悪い。多くの場合、契約労働者は安全面でより高いリスクにさらされているが、経営側の報復を恐れて、遠慮なく意見を主張しないことが多い。
 組合代表によると、外注の増加傾向を受けて製品の品質も低下している。
この会議では、インダストリー4.0を取り上げ、インダストリオール・グローバルユニオンの産業政策、持続可能な産業への公正な移行に対する要求を討議した。
 オーストリアの加盟組織ProGeの会長を務めるライナー・ウィンマー部会長は、会議冒頭に次のように述べた。
「真の行動は草の根レベルで起こる。職場での連帯がなければ何も起こらない。生産チェーンに沿って組織化し、ネットワーク構造を確立し、労働者の力を強化しなければならない」
 インダストリオール・グローバルユニオンのケマル・ウズカン書記次長はこう語った。
「不平等の拡大は世界最大の問題の1つであり、持続可能性をますます脅かすようになっている。この不平等と闘おう」「IGメタルによるティッセン・クルップ・グローバル枠組み協定(GFA)の締結を祝福する。今後、この協約がベンチマークになるだろう。同時に私たちは、キャタピラーによる100億米ドルのコスト削減が労働者にどのような影響を与えるか大変懸念している」「もう1つの世界は可能だ。全世界700団体のインダストリオール加盟組合が、連帯を構築するために一致協力している。国境を越えた組織化と共同行動によって、私たちの発言力が強くなる」

 マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング部門担当部長が、キャタピラー、ジョン・ディア、SKFの活発な労働組合ネットワークについて報告した。SKFネットワークは、このスウェーデン企業が大量解雇を実施する中で苦闘している。
「この部門は多岐にわたっている。サブセクターの多くが急激な変化に見舞われており、デジタル化が労働者全員に影響を与えている。オフショアリング(委託)や、労働者が絶えず技能・知識の改善を要求される状況といった従来からの問題に加えて、インダストリー4.0が新たに出現している。不安定雇用の問題もある。この部門では直接雇用労働者がますます減っており、請負業者を通して外注労働者と入れ替えられている。」
 IGメタルのジュリアス・クリスチャンが企業別ネットワークにおける団結を求めた。「ティッセンクルップは労働者を分裂させたがっている。団結して共同で交渉し、ネットワークを通して組織化しなければならない。それがここで私が伝えたい重要なメッセージだ」
 北米の組合IBBのジョディー・モーラーが、ヨーロッパで経営側が組合権を攻撃しているという厳しい報告を受けてこう意見を述べた。「使用者がアメリカ型モデルに従い始めているヨーロッパの同志に私が伝えたいのは、反撃に転じようということだ」
 バニア・アレバUNIA会長は以下の通り述べた。「現在の環境では――世界中で、そして、ここスイスでも――活動的な労働組合員の存在が特に重要だ。多くの同僚が献身的かつ勤勉に取り組んでいる姿にいつも感心している。団結すれば物事を達成できるという私の信念を強めてくれる。団結すれば、目の前の途方もなく大きな課題を克服することができる」
 この会議は全会一致で、IGメタルのクリスティアンネ・ベンナーとProGe会長のライナー・ウィンマーを共同部会長に選出した。

 

 

インダストリオール、韓国の組合に対する弾圧を非難

2015-11-23

 

韓国KMWU事務所への警察による強制捜査

韓国KMWU事務所への警察による強制捜査

インダストリオール・グローバルユニオンは韓国大統領に書簡を送り、警察が週末に労働組合事務所に対して多数の強制捜査を実施したことを非難した。
 伝えられるところによれば、2,000人を超える警察官が動員され、インダストリオール加盟組織、韓国金属労組(KMWU)の本部とソウル事務所を含む8カ所の組合施設を捜索した。
 11月21日(土)の強制捜査で、警察は令状によって組合事務所からコンピューターや設備、内部文書を押収した。
 警察は韓国民主労総(KCTU)と加盟組織数団体の事務所も急襲し、労働組合員を逮捕した。
 この強制捜査のちょうど1週間前、何万人もの韓国人が街頭でデモを繰り広げ、政府の労働法修正案に抗議した。この修正によって、韓国の有力なコングロマリットは労働者を解雇したり、賃金を削減したりしやすくなる。
デモ参加者は、学校で自主的な歴史書をすべて政府発行の教科書と入れ替えるという政府の計画にも抗議した。朴槿恵大統領は、1961年から1979年まで韓国を支配した軍事独裁者の娘であり、この政策は父親の治世下にあった過去を書き換えようとする試みであるとみなす向きが多い。
 同時に、韓国では労働組合に対する弾圧が強まっており、ここ数週間に数人の労働組合員が逮捕された。韓国当局は、国を支配する巨大企業集団「チェボル(財閥)」に味方し、重大な労働組合権・人権違反をいつも無視している。
 世界最大の造船会社である現代重工業(HHI)で下請労働者を代表しているKMWU加盟組織は先週ジュネーブで、韓国の現代造船所における死亡者数について警鐘を鳴らした。
 裁判所がHHIは不当労働行為を犯しているとの判決を下しているにもかかわらず、政府はHHIによる違反を見逃している。
 ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長はこう述べた。
「労働組合に対する警察の強制捜査は間違っており、まったくもって非民主的だ。朴大統領は韓国を過去の独裁時代に逆戻りさせている。労働組合を弾圧しても、国民の不信感と労働者の不満をあおるだけだ。私たちは、退行的な労働改革案に抵抗している韓国の加盟組織を称賛し、この重要な闘いを支援するために可能な限りのことをする」
 韓国政府による労働組合弾圧への抗議行動に加わり、レイバースタートのキャンペーンに署名しよう。ここをクリックしてメールを送り、朴槿恵政権に介入を要求してほしい。

 

 

韓国の労働組合員、現代造船所の死亡事故を全世界に警告

2015-11-18

 

インダストリオールは韓国の加盟組織とともに、HHI造船所で亡くなった労働者を追悼

インダストリオールは韓国の加盟組織とともに、HHI造船所で亡くなった労働者を追悼

今週、韓国の労働組合員が9,000キロ離れたスイスのジュネーブに赴き、国連ビジネスと人権フォーラムに出席した。その目的は世界中の人々に、世界最大の造船会社、現代重工業(HHI)の造船所で労働者が死亡している現状を伝えることである。
 2014年3月から2015年9月までに、予防可能な恐ろしい事故で16人の労働者が死亡した。これはほぼ月1人のペースである。だがHHIは、死亡した労働者全員が下請会社で働いていたという理由で、事故に対する責任を取ろうとしない。
 KMWUを通してインダストリオール・グローバルユニオンに加盟しているHHI下請労組のハ・チャンミン地方組合委員長はこう述べている。
「私たちがジュネーブと国連フォーラムにやってきたのは、HHIが労働者の人権を侵害しており、労働者が日常的に死の危険に直面しているからだ。労働者は解雇を恐れるあまり、安全性への懸念について語ろうとしない」
 HHIは石油・ガス産業向けにコンテナ船やタンカー、海洋プラットフォームを製造している。HHIの造船所では約5万人が働いているが、その80%に相当する4万人が下請会社に雇われている。
 このところ死亡事故が増えているのは、過去2年間にHHIが下請業者の利用を増やしているからだ。
「下請労働者の安全管理はまったく行われておらず、下請労働者は十分な訓練や教育を受けないまま、より少ない時間でより多くのことをしなければならない。安全衛生訓練などめったにない」とハ委員長は語った。
 当局に報告される事故は全体の3.5%にすぎないと推定されている。
「2012年から、病院を1施設ずつ1週間監視し、負傷してHHI造船所から運ばれてくる労働者の人数を調べている。負傷した労働者は週40~80人に上った。これは一度に病院1軒ずつ調べた数字であり、この地域には10軒ほどの病院がある」とハ委員長は言う。「時には、救急車ではなく、HHIがトラックや車で労働者を病院に連れてくることもある。HHI側は病院の職員に、けが人は家で事故に遭ったと言っている。労働者自身は、失業を恐れて負傷の理由を当局に話すことさえ嫌がる」とも述べている。
 2012年9月、1人の労働者が救急車ではなくトラックで病院に運び込まれ、適切な応急処置を受けられなかったために死亡したという。
 ハ・チャンミン委員長によると、組合は事故を報告しなかったという理由で下請会社を訴えざるを得なかった。いくつかの企業が同じ理由で当局に処罰されたが、大した罰ではない。
「事故の隠蔽は労働者の死につながる」とハ委員長は指摘する。
 労働組合はHHIで安全性を改善しようと努力しているが、今のところ効果はない。
「HHIから何も反応がない。経営陣に安全衛生に関するアンケートを送ったが、はねつけられた」
HHIでは組合に対する敵意が非常に強い。下請労働者は組合員であることがHHI側に知られると直ちに解雇される、とハ委員長は言う。これは韓国の法律と国際法に完全に反している。韓国では、労働者には団結権がある。
 下請業者で働く労働者は賃金が常用従業員より70%少なく、いつ解雇されるか分からない。下請業者は倒産を宣言し、賃金を支払わずにいなくなることが知られている。
 HHIが利用する下請会社KTKサンバックの労働者は、200日以上にわたって街頭デモを繰り広げ、同社が2015年3月に閉鎖されたあとの未払賃金を求めて闘っている。これは同社とHHIとの契約に違反している。契約によれば、労働者の賃金の資金を確保するために、売上高の一定額を取っておかなければならない。HHIはKTKサンバックを閉鎖させておきながら、責任を取ろうとしていない。
 松崎寛インダストリオール造船担当部長は次のように述べた。
「月1件というHHI造船所の死亡事故の頻度は常軌を逸しており、同社が下請労働者の権利や命をまったく尊重していないことを明らかに示している。HHIはHHI下請労組の地方組合を承認しなければならない。同労組は経営側との協議と交渉を通じて、職場の安全性と持続可能性を高めることができる」

 

フィリピンで出産休暇を100日に延長する法案

2015-11-14

 
 

 フィリピン下院の女性・男女平等委員会は11月10日、出産休暇を60日から100日に延長する法案を全会一致で承認した。
 この法案は出産休暇を60日から100日に延長するもので、雇用状況や既婚か未婚かにかかわらず、官民両部門で働く妊娠女性を対象としている。30日の任意無給休暇がある。  この法案は母性保護の支持者にとって画期的な出来事である。フィリピンはアジアの中でも出産休暇が特に短い。
労働組合は、母性保護に関するILO第183号条約が2000年に採択されてから、特に出産休暇給付の増加に関して同条約の批准を求めて運動してきた。  上下両院によるこの法案は本会議に提出される予定で、第2読会と第3読会でさらに審議したのち採否に付される。上下両院で承認されたら、大統領の承認を得るために提出される。

 

インドネシアでデモ参加者に対する暴力続く

2015-11-11

 11月4日、インドネシア北スマトラ州で30人近い暴漢が、組合の影響力を大幅に弱める新しい最低賃金制度に抗議していた平和的なデモ参加者を手ひどく攻撃した。
 労働者たちは、合法的な権利を行使し、インドネシアのスマトラで新しい最低賃金決定プロセスに平和的に抗議していたときに襲撃された。攻撃の結果、7人の労働運動家が入院を余儀なくされた。
 労働者に対する暴力事件は、ここ数週間で2件目である。10月に3万5,000人がジャカルタの街頭に繰り出し、最低賃金決定プロセスから労働組合を締め出す新しい規則に抗議した際、25人のデモ参加者が逮捕され、大勢が負傷した。
 インダストリオール・グローバルユニオンのユルキ・ライナ書記長は、これはインドネシアの民主的なプロセスにとって後退だとして次のように述べた。
「労働者に対する暴力をすべて即時停止し、言論・集会の自由に対するインドネシア人の権利を尊重しなければならない」「インダストリオール・グローバルユニオンはインドネシア政府に対し、新規則を撤回して最低賃金決定プロセスに労働組合を参加させるよう求める」
 インダストリオール・グローバルユニオンは、インドネシアのナショナルセンターKSPI(FSPMI、Farkes、SPN、KEP、ISI)、KSPSI(CEMWU)、KSBSI(ロメニック、FPE、Garteks)、FSBI、KPKPBI、FBLP、SBSI 92、PGRIの以下の要求を支持している。1)労働者を関与させない最低賃金の決定に関する政府の規則(2015年PP第78号)を拒否する。2)GDP・経済成長率(10%未満)だけに基づく新しい最低賃金制度を拒否する。3)2016年の最低賃金を22%、すなわち50万インドネシア・ルピア(36米ドル)引き上げるよう要求する。

 

インダストリオール・グローバルユニオンとH&Mがグローバル枠組み協定を締結

2015-11-03

 5,000万人の労働者を代表する世界最大の部門別労働組合組織インダストリオール・グローバルユニオンと世界有数の衣料小売会社H&Mは、スウェーデンの労働組合IFメタルとともに、衣料労働者160万人の利益を保護するグローバル枠組み協定を締結した。
 この革新的なグローバル枠組み協定(GFA)は、H&Mのサプライチェーン全体で労働者の基本的権利に対する取り組みを新たな水準に引き上げている。協定の対象は、H&Mの仕入先メーカーが運営する約1,900の工場で雇用される衣料労働者160万人である。
 この協定は、労働市場における両当事者の連携は、衣料労働者のための継続的改善と適切に機能する労使関係の創出にとって重要である、という共通の信念に基づいている。
 H&Mが最初に署名した画期的な「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定」の立案者の1人であるユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は、このGFAについてこうコメントした。「この協定はインダストリオール・グローバルユニオンとH&Mとの関係に刺激的な新しい一章を開くものだ。組織労働者、建設的な労使関係、産業レベルの労働協約を通した生活賃金、安全な職場に基づく持続可能な衣料産業への道筋を固めている」
 H&Mのカール・ヨハン・パーソンCEOは次のようにコメントした。
「団体交渉をはじめ適切に機能する労使関係は、サプライチェーンで公正な生活賃金を達成し、労働条件を改善するうえで鍵となる。インダストリオールおよびIFメタルとの連携は、この分野ですでに進行中の活動に貢献するとともに、安定した調達市場の創出に役立つと私たちは信じている」
 この協定は、まずカンボジアやバングラデシュ、ミャンマー、トルコといった国々で国家監視委員会の設置を計画しており、工場の生産現場から上に向かう協定の実施を保護し、労働市場で両当事者間の対話を促進しようとしている。
 この連携は、労使間で適切に機能する対話を促進することによって、紛争を平和的に解決し、紛争が発生した工場レベルで主に取り組むことも目指している。
 アンデシュ・フェルベIFメタル会長は次のようにコメントした。
「この協定は国家レベル・国際レベルで、労働市場の両当事者から成る独自の委員会制度を生み出す。労働組合と組合員、サプライヤー、使用者団体はもちろん、現在、労働組合が存在しない工場の使用者とのコミュニケーションや訓練も通して協約を実施することが、最も重要な任務になる」
 このGFAは以下の通り定めている。

●関連ソーシャル・パートナー間で、工場レベル、企業レベルおよび産業レベルにおいて労働協約の締結を共同で促進する。
●労働者は、安全衛生に関する権利の一部として、危険な作業を拒否する権利を有する。
●両当事者は、使用者責任、労働者の権利・義務、労使関係、団体交渉協約、平和的な紛争解決に関して、労使双方の代表を対象に訓練を行う。
●H&Mは、自社の直接サプライヤーが職場で人権・労働組合権を尊重するよう確保するために、可能な限りの影響力を積極的に行使する。
●労働者代表は差別されず、職場で代表機能を遂行するための立ち入り権を有する。
グローバル枠組み協定
 グローバル枠組み協定(GFA)は、締約多国籍企業のすべての事業で雇用される労働者の利益を保護する。
 GFAは労働組合と企業がグローバル・レベルで取り決める。労働組合権、安全衛生および労使関係原則に関する可能な限り高い基準を定めており、その国に存在する基準にかかわらず、企業は全世界の事業でこれを遵守しなければならない。

 

インドネシアで組合デモ参加者に暴力

2015-11-02

 3万5,000人がジャカルタの街頭に繰り出し、最低賃金決定プロセスから労働組合を締め出す新しい規則に抗議した際、25人のデモ参加者が逮捕され、大勢が負傷した。
 10月30日、およそ3万5,000人がジャカルタの大統領官邸前に結集し、労働者が最低賃金の決定に影響を及ぼせないようにする新制度に不満の声を上げた。
 警察は放水砲や催涙ガスを使って群衆を追い払おうとした。平和デモをやめようとしなかった労働者の何人かが、パトカーに引きずり込まれて暴行された。逮捕された25人のうち7人は、インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織FSPMIの組合員である。取り調べを受けたあと、翌10月31日に全員が釈放された。
 ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は次のようにコメントした。
「これはインドネシアと同国の民主的なプロセスにとって大きな後退だ。組合の影響力を実質的に弱める新しい最低賃金制度に平和的に抗議する権利を労働者から奪う行為は、まったく容認できない」
「政府に新規則の撤回を求める。この規則は労働者が最低賃金の決定に関与できないようにするもので、ILO第87号条約および第98号条約に違反している」
 インドネシアのナショナルセンターKSPI(FSPMI、Farkes、SPN、KEP、ISI)、KSPSI(CEMWU)、KSBSI(ロメニック、FPE、Garteks)、FSBI、KPKPBI、FBLP、SBSI 92、PGRIは、以下のために結束している。
●労働者を関与させない最低賃金の決定に関する政府の規則(2015年PP第78号)を拒否する。
●GDP・経済成長率(10%未満)だけに基づく新しい最低賃金制度を拒否する。
●2016年の最低賃金を22%、すなわち50万インドネシア・ルピア(36米ドル)引き上げるよう要求する。

 

世界最大の造船会社で毎月1人の労働者が死亡

2015-11-12

 韓国の労働組合員は11月16~18日にジュネーブで開催される国連ビジネスと人権フォーラムにおいて、世界最大の造船会社である現代重工業グループ(HHI)で死亡者数が増えている状況に警鐘を鳴らす。
 2014年3月から2015年10月までに15件の事故が発生し、合計16人の労働者が死亡した。ほぼ月1人のペースである。現地の活動家も韓国の労働組合員とともに、11月17日(火)午後1時にパレ・デ・ナシオンの「壊れた椅子」前で開かれる抗議集会と儀式に参加し、犠牲者を追悼する。
 労働者は圧死したり、海に落ちて溺死したりしており、機械に挟まれて窒息死した例さえある。
 亡くなった労働者全員が下請業者に雇用されており、HHIの「リスク外部委託」方針を反映している。
 HHIは、労働者とその任務が明らかにHHIの管理下にあったにもかかわらず、契約労働者の死亡に対する責任を取ろうとしていない。
 それどころか、死亡者はHHIの下請業者で働いており、直接HHIに雇われていたわけではなかったため、過去5年間にHHIが負担した労働災害保険料はほぼ8,700万米ドル少なくて済んでいる。
 「HHIは、そのような抜け穴を悪用して法的責任を逃れているが、道義的責任を逃れることはできない」と、HHI造船所とその子会社で働く下請労働者を代表する現代重工業下請労組のハ・チャンミン地方組合委員長は言う。「現代の造船所で労働条件を改善できるのは現代だけだ」
 現地のHHI下請労組の組合員も加わる代表団は国連フォーラムで、HHIの劣悪な安全衛生実績を取り上げ、買い手である企業に対し、グローバル・サプライチェーンで労働者(特に下請労働者)の人権を保護する責任を認めるよう要求する。
 代表団は、国連フォーラムで演説する予定のイ・ソンホ韓国国家人権委員会委員長とも会談する。
HHI下請労組は韓国金属労組(KMWU)を通してインダストリオールに加盟している。KMWUは同委員会に正式に苦情を申し立て、HHIの危険な労働条件と労働組合権の侵害について概説する予定である。
 HHIは現地の下請労組の承認を拒否しており、同労組の合法的な活動を妨害しようと積極的に画策している。例えば下請業者に対し、組合活動家を解雇してブラックリストに載せ、他の下請業者に就職できないようにしたり、組合の力が強い事業所を閉鎖したりさせている。
 韓国の裁判所は、HHIは不当労働行為を犯しており、下請労働者の労働条件に責任を負わなければならないとの判決を下しているが、韓国政府はこれを無視しており、権利の侵害が続いている。
 HHIは韓国有数の財閥で、この国を支配する全能の多国籍コングロマリットである。支配株主のチョン・モンジュン元FIFA副会長は、FIFA倫理委員会によって6年間の資格停止処分を受けた。
 

街頭デモで度重なる同僚の死亡事故に抗議する労働者(2015年10月) 写真提供:KMWU

街頭デモで度重なる同僚の死亡事故に抗議する労働者(2015年10月)
写真提供:KMWU

韓国の労働組合代表団はスイス滞在中に、ジュネーブに本社を置く世界第2位のコンテナ輸送会社で、HHIの主要顧客であるMSCとの会談も求める予定である。

 

素材金属部門のために闘う強力な宣言

2015-11-05

 

ピッツバーグのインダストリオール素材金属運営委員会

ピッツバーグのインダストリオール素材金属運営委員会

インダストリオール素材金属運営委員会は11月3~4日にピッツバーグで会合を開き、各国政府に素材金属部門の産業破壊を防止する対策を求める宣言を採択した。

 10カ国の鉄鋼生産労組16団体が11月4日に米国ピッツバーグで会合を開き、この部門の行動計画と戦略目標について議論した。
 鉄鋼業は世界第2位の規模を誇る産業で、総売上高は9,000億米ドル、2050年までに50%増加すると予測される。だが、この産業が直面している状況は過去1世代で最悪である。この10年間に平均的な鉄鋼利用が増加していながら、過剰設備が鉄鋼業の長期的な未来に深刻な脅威をもたらしている。
 参加組合は、今押し寄せている産業破壊の波から雇用と地域社会を保護するために緊急行動を要求した。この流れは世界的規模で産業雇用を破壊し、労働者の権利と労働条件を徹底的に浸食している。
 インダストリオール・グローバルユニオンのフェルナンド・ロペス書記次長は、鉄鋼業は経済・社会全体に貢献する重要な産業だと言う。
「私たちは労働組合として、世界の鉄鋼業とこの産業が生み出す雇用を救うために行動を起こす。目的は、世界の鉄鋼業が繁栄し、それとともに鉄鋼労働者も繁栄できる環境を作ることだ」
 インダストリオール素材金属運営委員会は、全米鉄鋼労組のトーマス・コンウェイとSMEFIのサンジョット・バダブカールを共同部会長に指名することを決定した。
 2016年11月15~17日にドイツで素材金属世界会議が開催される予定である。

 

ウルグアイの組合が権利と適正な賃金を求めて行進

2015-11-04

 ウルグアイのインダストリオール加盟組織(UNTMRA、UOC、FOPCU)と他の労働組合(SUNCA、SIMA、FOEMYA、SUA-AGUJA、SUTMA、SUTCRA)は、労働運動のスローガン入りの横断幕やプラカード、Tシャツで、適正な賃金、教育、安全衛生などの労働権を守るために行進した。
 この行進は、ウルグアイのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織の国別協議会が提案し、産業労働者を組織化している他の組合も参加した。「大成功だった」と全国金属労組(UNTMRA)のエドゥアルド・ブルゴスは述べた。
 所属組合のシンボルを身につけた何百人もの労働者が独立広場まで行進し、ウルグアイ商工会議所(CIU)前で集会を開いた。デモの目的は、賃金審議会が給与水準について議論しているこの時期に、労働者の諸権利を要求することだった。
「私たちは多くを求めているわけではないが、企業は何も与えることができないと言っている。この行進は労働者が企業にきちんと対応させ、私たちにふさわしい待遇を実現させる手段だ。この目的を達するために必要な処置を取る」とUNTMRA代表のフェルナンダ・カルベテは集会直前に語った。
 民間部門の賃金審議会は現在、最低賃金、雇用区分、その他の給付を設定するために会合を開いている。同審議会は、経済のさまざまな部門の労使が各自の利益を守るために主張する内容を検討している。
 製紙・段ボール労連(FOPCU)指導者のワシントン・カヤファは、この部門は雇用を維持し、遂行された仕事に適切な報酬を与える賃金協定を締結し、育児やジェンダーなどの社会問題に対処する必要があると述べた。
 製革労組(UOC)のアントニオ・フェレイラは、「私たちは賃金の実質的な引き上げ、CPIを上回る賃上げを求めているが、過去7年間それを達成していない」とコメントした。
 

ウルグアイでインダストリオール加盟組織を中心に労働権を守るため市内を行進

ウルグアイでインダストリオール加盟組織を中心に労働権を守るため市内を行進

インダストリオール・ラテンアメリカ・カリブ海(LAC)地域事務所のマリーノ・バニ副所長がインダストリオールを代表してこの行事に参加し地方組合幹部と並んで行進し、権利とニーズについて次のように主張した。「ウルグアイの産業別組合が団結して行動していることが印象的だった。女性労働者、若年労働者、高齢労働者が団結して行進し、LACをはじめ他の地域に模範を示してくれた。インダストリオールは労働者階級の団結を誇りに思う。労働者を祝福する。この闘いを支持し、より公正かつ公平な世界を築き上げようとするすべての行動を支援する。加盟組織と他の労働組合は、世界のすべての産業労働者から尊重と連帯を受けるに値する」

 

ブラジルCUTの若年労働者が人種平等めぐり討議

2015-11-04

 

ブラジルCUTが主催した人種平等についての会議に参加した若者労働者達(ブラジル)

ブラジルCUTが主催した人種平等についての会議に参加した若者労働者達(ブラジル)

 ブラジルの産業部門の若年労働者40人が10月22~24日に会合を開き、人種平等について議論した。労働運動は、平等を促進して差別をなくすためにこの問題を追求する必要がある。
この会合の開催はナショナルセンターCUTに所属する産業別組合が発案した。参加者は、若年労働者とアフリカ系労働者が直面するさまざまな形態の差別について意見を述べ合った。
「若年者と人種平等の促進は、ブラジルとラテンアメリカの労働組合運動にとって戦略的な優先課題だ。ブラジルでも他のラテンアメリカ諸国と同様に、アフリカ系と先住民が社会で最も差別されている。例えば、アフリカ系女性は白人女性よりも賃金が低く、同じことが男性にも当てはまる」と、インダストリオールを代表して会合に参加したインダストリオール・ラテンアメリカ・カリブ海(LAC)地域事務所のマリーノ・バニ副所長が説明した。
 若年労働者たちは、労働市場や労働組合、ブラジルの社会的状況の現実を例証する一連の事実や体験談を聞き、若いアフリカ系労働者がブラジルの経済モデルの影響を最も大きく受けているという点で意見が一致した。彼らの大部分は失業中で、教育の機会もない。
 会合の目的は、労働組合運動において影響力を強め、差別撤廃への取り組みを強化し、CUT産業部門の若年者政策を立案するために必要な手段を参加者に与えることだった。
「このイニシアティブは組合の力を強化する。若者を教育し、歴史を学んで私たちが差別されている理由を理解できるようにすることが重要だ。人種平等に取り組む労働組合、社会運動および政府の努力のおかげで、ここ数年間にブラジルは大きく進歩した。例えば、今では大学や連邦官庁でアフリカ系と先住民の割当制が導入されている。まだやるべきことがたくさん残っているが、所得再分配と社会的統合によってブラジルの状況が改善する可能性がある。このセミナーを開催したインダストリオール傘下のCUT産業別組合と、いま世界の歴史を先導している参加者を祝福する」とバニは締めくくった。

 

アランの船舶リサイクル施設、香港条約の遵守を宣言

2015-11-04

 

インドの広大なアラン船舶解撤場はインダストリオール加盟組織ASSRGWAが組織化

インドの広大なアラン船舶解撤場はインダストリオール加盟組織ASSRGWAが組織化

世界最大の船舶解撤現場である西インドのアランが、香港条約の安全性・持続可能性基準の遵守に関して民間の認証を受け、注目を浴びている。
 規模の大きい船級協会である日本海事協会が、アランの船舶リサイクル施設に香港条約への適合証(SoC)を授与した。
 松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤部門担当部長は次のようにコメントした。
「これは船舶解撤場で労働者の命を守るための具体的な一歩だ」「インダストリオールは、船舶解撤を改善するすべての国際的な取り組みを歓迎し、すべての利害関係者に対し、ともに考え、ともに行動し、ともに労働安全衛生を改善するよう促す。私たちはこの産業の雇用を安全で持続可能なものにしようと決意しており、そのために、香港条約の批准と実施を求めて運動している」「日本海事協会に認証された施設をはじめとする利害関係者が最優良事例を共有し、全世界すべての現場で労働安全衛生を改善すべきだ」。
アジア船主フォーラム(ASF)も今回の認証を歓迎している。ASFは、オーストラリア、中国、香港、インド、日本、韓国、中華台北、ASEANの8つの船主協会で構成される。それらのASFメンバーは、世界の商船隊の約50%を管理していると推定される。
ASFシップリサイクリング委員会の委員長を務めるフランク・ルー博士は次のように述べた。「世界中の船舶リサイクル施設が、香港条約の精神と要件に従って、安全で環境に優しいリサイクル事業を開発・維持できることを証明してくれるよう心から望んでいる。そのような行動は、発展途上の船舶リサイクル施設の見本となり、一層の改善を促すことができるだろう。ASFメンバーは、その一方で引き続き政府に対し、できるだけ早い機会に香港条約を批准するよう求めていく」

 

アップルのビジネスモデルを非難する報告書を発表

2015-11-04

 

報告書『豊かな会社、貧しい社会:アップルの金融化』の表紙

報告書『豊かな会社、貧しい社会:アップルの金融化』の表紙

アップルは、2015年度に2,340億米ドルという記録的利益を上げて過去最高の決算を発表したが、グッドエレクトロニクスと多国籍企業調査センター(SOMO)は、同社の商習慣を酷評する批判的な報告書を発表した。
 報告書『豊かな会社、貧しい社会:アップルの金融化』は2015年10月27日、アップルの決算発表日に公表された。この報告書は同社を厳しく批判し、「生産に再投資せずに莫大な利益に対する財務リターンの最大化ばかり考えている」と強調している。
 アップルは低賃金国と税金避難地への容赦のない生産オフショアリング(委託)によってコストを最小限に抑えている、と報告書は指摘している。また、アップルは機関投資家としての活動を拡大しており、利益の大半を金融市場に投入している。
 報告書によると、アップルの企業戦略は珍しいものではない。同じモデルに従って行動する多国籍企業が増えているが、このモデルは限られた企業経営者と株主にしか利益を与えないと言っていい。このモデルはヨーロッパで失業の増加、債務の拡大、不平等と緊縮財政を悪化させており、南側諸国で低賃金の不安定雇用を助長している。
「アップルが公共投資から莫大な利益を得ている一方で、世界中の政府と納税者、労働者が公共投資(法人所得税が資金源)とアップルの資産から支払われる賃金の形で得ている利益は驚くほど少ない」と報告書は述べている。
 この報告書によると、各国政府が多国籍企業による以下の行動を確保する規則を制定・実施すれば、ビジネスモデルを変更することができるとしている。
●支払うべき正当な税金を支払う。
●適正な賃金を支払う。
●金融資産ではなく生産用資産に現金準備を投資する。
 これらの変更は強力で持続可能な社会に貢献し、この先ずっとアップル製品を製造する労働者と同社製品を購入する消費者を供給することによって、アップルのような多国籍企業とその株主にも利益を与える、と報告書は結論づけている。
 この報告書はグッドエレクトロニクスのウェブサイトで入手可能:
http://goodelectronics.org/publications-en/Publication_4246/
下記サイトでも短い紹介ビデオを視聴可能:https://vimeo.com/143721806
 SOMOはオランダの非営利調査・顧問団体で、多国籍企業の政策の調査を専門としている。グッドエレクトロニクスは、労働権を含む人権に関心を持つネットワーク、組織および個人をまとめている。どちらもインダストリオール・グローバルユニオンのパートナー組織である。

 

インダストリオール造船・船舶解撤アクション・グループ、チッタゴンでグローバル・キャンペーンへの取り組みを再確認

2015-11-04

 

チッタゴン解撤場の船舶解撤労働者にグローバル・キャンペーンについて説明するインダストリオール代表団

チッタゴン解撤場の船舶解撤労働者にグローバル・キャンペーンについて説明するインダストリオール代表団

造船・船舶解撤産業の主要労働組合が、毎年開かれるインダストリオール造船・船舶解撤産業部会アクション・グループ会合で調整を図った。2015年11月1~2日にバングラデシュのチッタゴンで会合を開いたアクション・グループは、世界で最も危険な仕事である船舶解撤産業の安全面・環境面での改善のためのグローバル・キャンペーンに焦点を合わせ論議した。
 工藤智司共同部会長(JCM副議長/基幹労連委員長)が開会を宣言し、昨年の世界会議で採択された決議を取り上げた。この決議によって部門のすべての組合が、それぞれの国の政府に対し、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約の批准を求めて働きかけることを約束した。この条約は船舶解撤労働者の生活を劇的に改善することになる。
 バングラディシュのチッタゴンは、インドのアランに次いで世界で2番目に大きい船舶解撤地域であり、約2万人の船舶解撤労働者がいる。アクション・グループ参加メンバーは、バングラデシュの194カ所にある船舶解撤場の1つ、シタクンダのフォースター船舶解撤場を訪れ、実態を視察した。
 バングラデシュの船舶解撤労組幹部ナジム・ウディンは、その懇談の場で次のように語った。
「我が国では、使用者は利益のことしか頭になく、安全規定の遵守はまったく考えていない」「労働者は請負業者によってバングラデシュ北部の農村から解撤場に連れて来られ、チッタゴンの町を見ることさえなく送り返される」「政府は頻繁に組合登録を遅らせている」「船舶解撤労働者は悲惨な状況にあり、賃金は日払いで、仕事がなければ収入もない。有給休暇はまったくなく、ボーナスも給与金も雇用保障もない。ここでは過去2カ月に8人の労働者が死亡した。使用者は亡くなった労働者の遺族にいっさい補償金を支払わない。最高裁は亡くなった労働者それぞれの遺族に50万タカ(6,400米ドル)の補償金を支払うよう命じたが、使用者はこの判決を尊重していない」と。
 アクション・グループ会合では、日本、オーストラリア、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、インドの組合が香港条約の批准を求めて活動していることが報告された。これらの報告についてはキャンペーン・ウェブページを参照。強力な造船労組は、連帯の精神に則って、また持続可能な造船業には持続可能な船舶解撤が必要であることから、船舶解撤労働者を支持している。
 2014年の船舶解撤の全体的統計は以下のとおりである。
インド29.8%
バングラデシュ24.2%
中国21.9%
パキスタン18%
 ムンバイとアラン(インド)の世界最大の船舶解撤労組の指導者であるV・V・ラネー造船部会副部会長は、次のように述べた。「私たちがここチッタゴンにいることが重要だ。解撤場訪問によってバングラデシュの船舶解撤労働者にメッセージを送った――私たちがついている、と」
 中国の景気後退で低価格の中国製鉄鋼が大量に市場に出回り、鉄鋼価格が暴落して船舶解撤の利益が得られなくなっているため、船舶解撤産業は現在不況に陥っている。この不況は5年続くと予想されるが、現在これまで以上に多くの船舶が使われているため、その後この産業は間違いなく成長に転じるだろう。
 オーストラリアAMWUのグレン・トンプソン書記次長が、オーストラリアの造船業を守るために同労組が展開しているキャンペーンについて報告した。クラウドファンディングにより、アデレード市に「Subs = Jobs(潜水艦=雇用)」広告板が掲示されている。
 松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤部門担当部長はこうコメントしている。
「香港条約を推進するために強力な世界的行動に取り組んでいる。その国際基準を南アジアに導入すれば生活が変わるだろう。インダストリオールは、船舶解撤場でより強力な組合を組織化するために、南アジアの加盟組織とも協力している。インドでも、加盟組織が労働者を組織化する前は、ここチッタゴンと同じ容認できない労働条件が見られた」
 アクション・グループ会合の代議員は、この部門のアクション・プラン2015-2016に沿って、香港条約の批准に関する世界的な行動、労働安全衛生活動や訓練の強化、持続可能な産業政策の促進に取り組む方針を再確認した。
 代議員は、2016年11月にウェスタン・オーストラリア州で次のアクション・グループ会合を開くことについても合意した。