広報ニュース

第63号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年1月31日)

インタビュー:ヴァルター・サンチェス/インダストリオール新書記長

2016-12-15

2016年10月5日、ブラジルCNM/CUTのヴァルター・サンチェスがインダストリオール・グローバルユニオン書記長に選出された。長年にわたって組合活動に従事してきた元金属労働者のサンチェスは、今後4年間インダストリオールを主導する。

 インタビュー

 所属組合:インダストリオール・グローバルユニオン

出身国:ブラジル

文:レオニー・ググエン

写真:インダストリオール

インタビューに答えるサンチェス書記長

インタビューに答えるサンチェス書記長

Q:まず、ブラジルでのご自身の生い立ちについて少し話していただきたい。

A:サンチェス: 私はブラジル南部パラナ州の田舎で生まれました。1960年代に農業がひどい冷害に見舞われ、6歳のとき、ブラジルの多くの世帯の人々と同様に私たち一家もサンパウロへの移住を余儀なくされました。ほとんどの人がすべてを失い、私たちも同じでした。多くのブラジル人と同じように、私も16歳で働き始めました。1年後、機械労働者として機械エンジニアリング工場に就職しました。21歳だった1985年、ロールスロイス社に移って技術者として働き、その後メルセデスベンツ社で生産技師として働きました。

 Q:組合活動にかかわるようになったきっかけは何か?

A:  17歳でエンジニアリング工場に就職すると、すぐに労働組合に加入しました。独裁政権下だったので、当時は経済問題だけでなく、不公正や自由の欠如とも闘おうという強い衝動に駆られていました。独裁政権が終わると一連のネオリベラル政権が誕生し、労働者に多くの問題をもたらしたため、自分自身が労働組合にかかわるのは自然な流れだったように思えます。

 最初に就任した選出ポストは、ブラジルの法律で義務づけられている内部安全衛生委員会のメンバーでした。その後、1992年にメルセデスベンツ社で従業員代表委員に選出され、その後何回も再選されました。

Q:サンパウロの大学で地理学の学位を取得しているが、どうやって大学に通ったのか?

A: 私が20歳だったころは、工場労働者が大学に行くのは珍しく、非常に選択肢が限られた社会でした。大学へ通うのはとても難しく、ごくわずかな定員に数百万人の志願者が殺到する状況でした。ブラジルでは、私のような工場労働者たちは夜間コースを受講し、昼間は働くのが一般的でした。それで、私も夜間コースに行きました。その当時は、死ぬまで工場で働きたいのか、それとも研究や地理学の分野で活動したいのか、自分でもよく分かりませんでした。

 しかし、当時の私は、体中に闘志がみなぎっており、たとえ出世を犠牲にすることになっても、工場に残って労働者の権利と社会的公正を求めて闘う労働組合に深く携わるほうが役に立てるだろうと考えていました。2003年にCNM/CUTで全国レベルのポストに就き、その後そこでさらに書記長などいくつかの職務を経験し、最終的に国際書記になったわけです。

Q:これまでの組合歴を教えていただきたい。

A:これまで、いつも障害に直面してきたが、その都度障害を突き破ってきました。ブラジル人として初めて世界従業員代表委員会に加わわると共に、2002年には、ダイムラー(メルセデスベンツの親会社)でグローバル枠組み協定を取り決めた作業部会にも参加しました。さらに、ダイムラー監査委員会初のブラジル人メンバーであり、ドイツ人でないのは今も私だけです。そして今は、インダストリオールとその前身組織の歴史上初めて、南側諸国出身のグローバル・ユニオン書記長となりました。

Q:インダストリオールにとって南側諸国出身の指導者の誕生の意義は何だと思うか?

A:もちろん、どのグローバル・ユニオンも、加盟組織と絶えず協議する民主的な適任の人物を望んでおり、それが主な要件だと思います。しかし南側諸国出身であることは、従来とはまた異なる経験をもたらすのではないかと思う。というのは、これまで、グローバル・ユニオンの責任者のほとんどはヨーロッパか北米の出身であった。彼らに発展途上国への細やかな感情がないということではないが、非常に反組合的な環境、独裁政権やネオリベラル政権、厳しい弾圧、多国籍企業とサプライチェーンが押し付ける不安定な労働条件など、実際に(南側の)発展途上国の状況下で生活するのはまた別の経験だと思っている。

Q:今、インダストリオールと加盟組織が直面している課題とは何か?

 A:これまでの人生の大半を労働組合員として過ごしてきて、世界には取り組むべき課題が数多くあると感じている。所属組合で長く国際連帯活動にかかわった経験を踏まえて、これらの課題に取り組むことに決めて活動してきた。5つの戦略目標を掲げたインダストリオールのアクション・プランは、私たちが抱える多くの課題を正確に示しており、5つの目標はすべて相互に関連していると思う。しかし、船舶解撤産業や鉱業、衣料産業で一連の悲惨な事故が起こっている状況は、企業欲の最も残酷な面を示している。

 不安定雇用は大きな課題だ。世界で最も労働条件に恵まれているドイツにおいてさえ、企業は請負や派遣労働の形でこっそり不安定雇用を利用する方法を見つけている。不安定雇用と闘うために、より強力な組合を構築しなければならない。さもなければ、他の分野で良質な雇用を創出しない国々では大量失業が発生するだろう。だから、組合がもっと力をつけ、組合員数を増やし、労働者の職業訓練を改善できるよう援助しなければならない。

 労働者が攻撃されるたびに、連帯して行動しなければならない。なおそのうえに、私たちは技術的飛躍(インダストリー4.0)のまっただ中におり、これは今後すべての産業に影響を与えるだろうし、すでに影響が出ている。いずれ近いうちに、いくつかの部門が丸ごと消えてしまうだろう。新しい部門も生まれるだろうが、ほぼ間違いなく雇用創出量ははるかに少ない。だから、それぞれの国や地域で持続可能な産業政策を求めて努力しなければならない。可能な限り強力な組合を構築し、充実した産業政策を確立して多国籍企業の力に抵抗するために、組合を協議に参加させるよう政府に要求できるようにしなければならない。

Q:インダストリオールは向こう4年間にどのように発展する必要があると思うか?

 A:組織機構、各地域およびインダストリオール活動全体を改善し、加盟組織により良いサービスを提供できるようにしなければならない。インダストリオールは過去4年間に数々の成果を上げ、多くのキャンペーンを成功させた。バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定は大成功を収め、全国1,600カ所以上の衣料工場を検査・改善するために法的拘束力のある機構を確立した。リオ・ティント・キャンペーンは世界中の事業の加盟組織を団結させ、この大手採鉱会社が組合と対話を行うよう要求している。やらなければならないことはまだあるが、リオ・ティント・キャンペーンは同社に真の改革を実行させ、何人かの反組合的な鉱長を交代させ、加盟組織がより多くの職場を組織化できるようにさせた。

 それから、多国籍企業で多くの労働組合ネットワークが結成されたことも、もう1つの業績だろう。しかし、加盟組織に影響を与える問題の場合は加盟組織と密に連絡・協議し、加盟組織の意見を活かせるようにしている。重要なのは、労働組合ネットワークやグローバル枠組み協定で蓄積した力を利用し、多国籍企業にサプライチェーンに対する責任を負わせる必要があるということだ。ほとんどの不安定雇用がサプライチェーンで見られるので、サプライチェーン労働者を組織化する組合を支援する必要もある。

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