広報ニュース

第71号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年9月30日)

職場における女性に対する暴力の隠された危機

2017-09-28

 職場における女性に対する暴力は現に存在し、毎日、世界の隅々で発生している。この暴力は、言葉による虐待や身体的虐待から性的暴力、さらには殺人に至るまで、多くの形で表れている。

 インダストリオール・グローバルユニオンは140カ国・5,000万人の労働者を代表する組織として、あらゆる形態の女性に対する暴力は容認できないと考えており、そのような暴力を阻止するために行動を起こす加盟組合を支援している。

 鉱業や繊維産業、製造業などインダストリオール関連部門で働いている女性は、失業や非難、職場と家庭の両方における社会的追放を恐れて、自分たちが直面している虐待に異を唱えようとしないことがあまりにも多い。率直に意見を主張すれば、しばしば無視されたり責められたりする。

 コロンビアの多国籍鉱山会社の女性組合幹部は、男性の同僚による攻撃的な暴言や差別にさらされただけでなく、上司の1人から性的暴行も受けた。会社に苦情を申し立てたところ、それに触発されて別の女性も同じ男性に対して同様の申し立てをした。会社側は、この事態に対処すると言っておきながら、何も策を講じなかった。

 会社による共謀で、加害者が処罰されないままになっているケースが非常に多い。モロッコの航空宇宙部門で働く若い女性が、監督者に性的嫌がらせを受けたと苦情を申し立てると、会社側は話をでっち上げたとして彼女を非難した。経営陣は、この女性に圧力をかけて申し立てを取り下げさせ、この話が外部に漏れれば会社に悪影響が及ぶと説明した。女性は嫌がらせをされたという証拠を持っておらず、証拠は監督者に対する彼女の言い分だけだった。彼女は結局、会社を辞める羽目になった。

 このような虐待や嫌がらせに関する証言の陰には、男性が女性に対して権限を行使している背景がある。これに異議を唱えれば、さらなる問題を生み出すことになりかねない。コロンビアの鉱山会社で働く女性労働者は、ある男性の同僚が彼女を自分と対等な存在と認めようとしないために、自分の生活は「生き地獄」と化していると語った。彼女が組合を通して行動を起こして初めて、ようやく嫌がらせと暴言が収まった。

 南アフリカの男性優位の鉱業部門では、女性に対するセクシャル・ハラスメントは日常茶飯事である。女性労働者の報告によると、地下に降りるためにケージに入った途端、男性の同僚たちは密室空間であるのをいいことに体に触ったり、女性の胸をケージの壁に押しつけたりしてくる。

 セクシャル・ハラスメントの寛容は最も恐ろしい暴力を招くことがある。南アフリカでは2012年、27歳の鉱山労働者ピンキー・モシアネが同僚に襲われ、血まみれの状態で発見された。使用済みのコンドームが近くに捨てられていた。隔離されたエリアの地下で働いていたこの若い母親は、直後に亡くなった。別の女性鉱山労働者シンシア・セトゥケも、2013年に薄暗い坑道で働いていたときに男性の同僚にレイプされ、殺害された。2016年に慈善団体の国境なき医師団が発表した研究によると、南アフリカ共和国のプラチナ採掘地帯に暮らす女性の4人に1人がレイプされていた。

 しかし、女性に対する暴力は男性優位の部門に限らない。ラテンアメリカ、アジア、北部アフリカの繊維・衣料労組の組合代表や労働者の報告によると、女性に対する暴力は繊維・衣料部門でも一般的に見られるという。

 「監督者は私たちに向かって叫んだり怒鳴ったりし、やらなければならない仕事があるときでもあれこれ命令してきた。彼らは私たちをロバのように扱い、仕事ぶりがよくないと言ったり、トイレに行く時間を管理したり、妊婦が医者に行くのを許可しなかったりする」とペルーの女性繊維労働者は言う。

 生産への圧力も、監督者が労働者を不当に扱う一因となっている。モロッコの女性の衣料労働者は、身体的虐待や言葉による虐待を受けており、トイレに行かせてもらえず、仕事が遅いとみなされればつねられたり、平手で叩かれたり、自分たちが作っている服で叩かれたりしていると報告した。組合は反抗しており、労働調査官や使用者に書簡を送ったり、警察に苦情を申し立てたりしている。

 時には、女性は妊娠しているというだけで狙い撃ちされ、これは母親と胎児の両方に危険をもたらしている。ペルーの衣料労働者は、職場で気分が悪くなったときに治療を受けさせてもらえなかったことが何度もあると話す。極度に疲れていたにもかかわらず、会社は彼女を午後7時から午前7時まで12時間の夜勤で働かせ続け、実際に仕事量を50%増やした。仕事が遅れるようになると、彼女は停職処分を受けた。会社側は結局、出産の数カ月後に彼女を解雇し、辞表で彼女の署名を改竄しさえした。彼女の所属組合は現在、違法解雇事件として裁判を起こしている。

 資格の上で劣っている女性やシングルマザー、派遣・外注労働者は、ジェンダーに基づく暴力を受けるリスクがもっと大きい。しかし、教育を受けたホワイトカラーの女性労働者も虐待の犠牲になっている。スウェーデンの加盟組織ユニオネンは、電力会社で働く若い女性を支援、この女性は、職場のクリスマスパーティーで会社の取締役に不適切に体に触れられたあと、その取締役をセクシャル・ハラスメントで労働裁判所に訴えることができた。警察からは、刑事裁判で取締役を起訴するに十分な証拠がないと言われていた。ユニオネンが組合員1,000人を対象に実施した調査によると、女性の4人に1人が職場で性的嫌がらせを受けたことがあった。

 ジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長は言う。
 「あらゆる場所の組合が、あらゆる方法、あらゆる手段、あらゆる努力を尽くして、職場における女性に対する暴力を根絶する闘いを始めなければならない。この最も基本的な人権侵害に取り組まずに、女性の権利や平等、ディーセント・ワークを支援すると主張することはできない」

 

素材金属労組、労働者の権利と尊厳を求めて闘うと誓約

2017-09-28

フランスのパリで開催された素材金属運営委員会の参加者

 2017年9月26~27日にフランスのパリでインダストリオール素材金属運営委員会が開催され、20カ国の素材金属部門の労働者を代表する労働組合活動家60人が集まった。

 代議員は2日間にわたって討議し、不公正取引や鉄鋼業の過剰生産能力といった緊急の問題、インダストリー4.0とデジタル化の課題、組合の力とグローバルな連帯をどう強化するかに関する組合にとって根本的に重要な問題を取り上げた。

 この会合は、2016年にドイツ・デュースブルクの素材金属世界会議で採択されたアクション・プランを受けて開かれた。

 グローバルな連帯の問題が重要な議題であり、活動家たちは、グアテマラで製鋼会社テルニウムの労働者を代表している組合、SITRATERNIUMとの連帯を表明した。同社が組合の承認と労使交渉を拒否していることに対応して、インダストリオール・グローバルユニオンは先ごろOECDに提訴した。

 また、この会合で代議員は、世界最大の製鉄会社アルセロール・ミッタルでグローバルな組合協力・連携の強化を求める統一要求も採択した。この声明は、10月初めに米国バーンズ・ハーバーで開かれるグローバル経営陣との次期会合で発表される。

 参加者は、ゲルダウが国内レベル・世界レベルで組合を承認し、ゲルダウ世界組合委員会とも連携しながら、自社の安全衛生慣行の改善に取り組むよう求める同委員会の要求を支持することも再確認した。8月にゲルダウのオウロ・ブランコ工場で事故が発生し、4人の労働者が亡くなった。

 インダストリオール・グローバルユニオン素材金属部門のサンジョット・バダブカール共同部会長は言う。
 「私たちの協調的努力は、不公正なダンピングと闘い、貿易防衛措置や貿易政策の立案への組合参加を強化するうえで役立つ。私たちは、組合の力を強化して労働者全員のために公正、平等、尊厳を求めて共同で闘うために、女性労働者と若年労働者、不安定労働者を引き続き組織化していく必要があることを再確認した」

 インダストリオール・グローバルユニオン素材金属部門のトーマス・コンウェイ共同部会長は言う。
 「インダストリオール素材金属部会の組合は、この2日間会合を開いた。各自の使用者と政府に対し、労働組合と協力しながら、私たち全員に影響を与えている鉄鋼業の世界的な過剰生産能力の問題への対処に必要なすべての措置を講じるよう要求するために、これまで同様に取り組んでいる。さらに、労使関係と安全衛生状態が不十分であれば、共同で使用者に立ち向かうことも誓約している。組合員が危険にさらされ、経営側がこれらの問題に無関心な職場は許容しない」

 ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように語った。
 「世界中で劇的な政治的変化が起こっており、ブレグジット、気候変動、ヨーロッパにおける極右勢力の台頭が挙げられる。これは素材金属部門に大きな影響を与えている。しかし、闘いは続いている。私たちは世界各地で社会的権利と尊厳に基づく経済的・政治的モデルを求めて闘っており、強力な労働組合による支援が必要だ」

 会合の写真はフリッカーで閲覧可能。フェイスブック(@IndustriALLGlobalUnion)に討議の一部が掲載されている。

 

インドの自動車労組、社会的対話と組合の力を強化へ

2017-09-26

チェンナイで開催されたインドの自動車労組によるワークショップ・戦略企画会議

 インドの自動車労組は9月21~23日にチェンナイで会合を開き、社会的対話と不安定雇用、組合ネットワーク構築、安全衛生改善をめぐり討議した。

 このワークショップ・戦略企画会議には、チェンナイ、ベンガルール、プネー、グルガオンの産業クラスターから国内外の自動車メーカーの組合代表が積極的に参加した。

 組合代表は自動車部門で社会的対話の余地が限られていることを強調した。組合承認と信頼・尊重、雇用保障の欠如、不安定雇用について議論する余地の不足、企業情報の共有における透明性の欠如が、効果的な社会的対話を妨げている。

 ゲオルク・ロイテルト・インダストリオール自動車担当部長が次のように述べた。
 「社会的対話は公正な経済開発の確立に最重要だ。労働者に対等なパートナーシップと尊厳を与え、経営にも貢献する。インドの自動車会社で不安定雇用が大規模に利用され、賃金水準が低いことを考えれば、この水準にとどまっていては進展がないだろう。権利を確保するために労働組合の力を結集する必要がある」

 労働法は労働組合権を促進する余地を提供しているが、法律が適切に実施されず、労働行政が不活発であるために社会的対話が妨げられている、と参加者は強調した。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長はこう語った。
 「インドの主要自動車会社で不安定労働者が労働力の大半を占めているというのは衝撃的だ。その状況を変えなければならない。労働者は、結社の自由と団体交渉の権利を確保するうえで非常に大きな課題に直面している」
 「インダストリオールは、協力や団結、連帯にあたって労働者の問題を前進させるために、統一的なネットワーク構造を構築するイニシアティブを歓迎、奨励、支援する。これは労働者同士を競い合わせようとする企業と闘う最善の方法だ」

 バーラット・ベンツ、フォード・インド、シュコダ、BMW、フォルクスワーゲンといった企業の経営側代表が参加。彼らは不安定雇用の問題について、主要メーカーも含めた自動車業界関係者全員が、ストップ不安定雇用に向けた集団的な立場を模索するために交渉のテーブルに着くべきだと語った。

 アプールヴァ・カイワール・インダストリオール地域事務所所長が以下のように述べた。
 「インドの自動車産業には女性がほとんどいない。工場で、もっと多くの女性労働者の採用を奨励しやすい環境を作る必要がある」

 組合代表は労働安全衛生の問題について議論し、行動を起こすために組合の能力と知識を強化する必要があると強調した。参加者は、自動車労組の間で連帯を改善するために、ネットワークを強化するとともに情報を共有し、組織構造を確立することを決定した。

 参加者は、獄中のマルチ・スズキ労働者に連帯を表明し、その釈放を確保するための取り組みを支援する旨決議した。

 インダストリオール加盟組織WPTUCのR・クチェランが次のように述べた。
 「協調的行動が必要とされている中で、インダストリオールが自動車労組代表を集めてくれたことを祝福する。自動車部門における急速な技術変化と電気自動車の導入は、雇用保障と雇用に課題を突きつけている。統一的な組合行動は、インドの自動車部門で労働者の権利を守るために何よりも重要だ」

 

インダストリオール、鉄鋼メーカーのテルニウムをOECDに提訴

2017-09-14

労働権と組合の承認を求めるグアテマラのテルニウム労働者

 インダストリオール・グローバルユニオンは、グアテマラ事業で労働組合の承認・交渉を拒否したことを理由に、多国籍鉄鋼メーカーのテルニウムをOECDに提訴した。

 グアテマラのFESTRASを通してインダストリオールに加盟しているSITRATERNIUMは、2012年3月の正式登録以降、テルニウムで承認を得ようと苦闘している。労働者は、長時間労働や薄給、適切な休暇の欠如、不十分な健康保険に関して懸念を表明したところ、解雇すると脅されたため、結集して労働組合を結成した。

 同社は当初、SITRATERNIUMの創設メンバー27人全員を解雇したが、最終的に裁判所によって労働者の復職を強制された。会社側は繰り返し組合の承認を阻止しようとしたが、結局、2015年2月にグアテマラ最高裁判所はSITRATERNIUMの合法性を確認した。

 テルニウムは労働省から対話を求める裁定や度重なる要請を受けていながら、組合との交渉を拒否し、法律に違反している。労働省は組合を支持すると述べているが、テルニウムの違法行為を処罰していない。グアテマラは国際労働組合総連合の2017年世界労働権利指数で、労働者にとってワースト10の国・地域の1つに挙げられている。

 労働省の検査官は今年2月、テルニウムが労働者に「アルコール・薬物検査を受けなければ停職処分とし、検査に不合格の場合は解雇する」と告げたうえで、強制的な検査方針を不法に実施したことを確認した。労働省がテルニウムに書簡を送り、検査方針の中止を命じた翌日、同社は受検を拒否した労働者3人を解雇した。

 テルニウムとテナリスは他の国々の工場では一般に組合と正常な関係を築いているため、テナリス・テルニウム労働者世界協議会に所属する組合は、SITRATERNIUMの扱いに衝撃を受けている。テルニウムとテナリスは、いずれもコングロマリットのテチントが所有している。

 OECD加盟国のルクセンブルクに本社を構えるテルニウムはラテンアメリカ有数の製鉄会社で、グアテマラ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアおよびアメリカの生産施設に1万9,000人以上の労働者がいる。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。
 「テルニウムは、南北アメリカをリードする製鉄会社になりたいと言っている。だが同社は明らかに、グアテマラでの労働者の扱い方においてリーダーシップを示していない。テルニウムはSITRATERNIUMとの交渉を避けるために、ありとあらゆる手段を試みている。私たちはOECD提訴によって、グアテマラのテルニウム労働者がこれ以上権利を侵害されてはならないことを強調したい」

 この提訴は、インダストリオールとSITRATERNIUM、北米のインダストリオール加盟組織である全米鉄鋼労組(USW)のカナダ支部が、ルクセンブルクのOECDナショナル・コンタクト・ポイントに申し立てている。

 

韓国の組合、自動車部門で契約労働者数千人の雇用を確保

2017-09-06

296日間にわたり電力送電用の鉄塔を占拠して行われた抗議

 インダストリオール・グローバルユニオンが不安定雇用に対して明確な態度を打ち出す10月7日をちょうど1カ月後に控えて、現代自動車におけるインダストリオール加盟組織・韓国金属労組(KMWU))の堂々たる闘いに目を向けてみよう。

 10年以上前から続いているキャンペーンでストや抗議、法廷闘争を組み合わせて闘った結果、KMWUは傘下の現代非正規職労組とともに、韓国の現代自動車で契約労働者6,000人の常用雇用確保に成功した。

 現代で非正規労働者を常用雇用に転換しようとする取り組みが始まったのは2004年、現代自動車非正規職労組とKMWUが韓国労働部に対し、同社における労働者の違法派遣の停止を要求したときである。

 この行動は、KMWUが現代自動車で実施した契約労働者に関する合同調査に対応するものだった。調査の結果、韓国の現代自動車工場(労働者総数6万人)で契約労働者1万人のうち9,300人前後が、下請労働者として不法に雇用されていることが分かったのである。

 韓国の派遣労働者保護法では、契約労働者を製造業の組立ラインに派遣することは禁じられている。また、契約労働者が2年を超えて同じポストで働いた場合は、正規雇用しなければならない。

 だが、現代の生産ラインでは何千人もの下請労働者が雇用され、正規労働者と並んで働いていた。彼らは正規労働者と同じ工具を使い、現代経営陣の指図を受けて働いていたが、賃金は半分で、福祉給付も雇用保障もない。契約労働者の多くが2年以上にわたって同じ仕事に従事していた。このような偽装雇用は韓国の製造業で広く見られる。

 労働部が蔚山、牙山、全州の工場における現代労働者の違法な下請契約を確認する行政命令を出したにもかかわらず、同社は労働者を正規雇用化せず、最低額の罰金の支払いを選んだ。労働部が同社を告発すべきという意見を提出したものの、2005年に当局は現代自動車の不起訴を決定し、違法派遣は続いた。

 2005年初めに200人を超える下請労働者が常勤契約を要求してストを決行したとき、100人が解雇され、その中の1人だったRyu Ki hyukは絶望のあまり命を絶った。

 事態は長期にわたって遅々として進まず、現代非正規職労組はKMWUとともに抗議行動を継続、KMWUは契約労働者の不法雇用を裁判所に訴えた。

 2010年7月に大きな進展があった。韓国最高裁が、社内下請業者で3年間働いたあと解雇された現代自動車非正規職労組の組合員、チェ・ビョンスンに有利な判決を下したのである。

 最高裁は、「チェ氏は紛れもなく違法派遣労働者であり、工場での同氏の勤続年数が2年を超えた時点で、同氏は現代に直接雇用されているものとみなさなければならない」との裁定を下した。この最高裁判決は、現代自動車の下請労働者全員が不法に派遣されていることを確認するものでもあった。

 この判決(現代は無視しているが)のおかげで、現代自動車非正規職労組は組織化キャンペーンを構築し、組合員数をほぼ2,000人に増やすことができた。

 これを受けて現代は下請会社との契約を打ち切り、非正規労働者は直ちに職を失うことになった。現代はさらに一歩踏み込み、「労働者はKMWUを脱退した場合に限り、新しい下請会社に再雇用される」と主張した。

 これがストの引き金となり、契約労働者は2010年11月25日から25日間、蔚山工場を占領して常用雇用を要求した。会社側は、このストで213億ウォン(当時の為替レートで2億7,700万米ドル相当)の損害を被ったと主張した。

 2012年8月、現代自動車は契約労働者3,000人の常用雇用化を提案した。しかし、KMWUはこれに満足せず、チェは296日間にわたって電力送電用の鉄塔を占拠するという大々的な抗議を開始、現代が契約労働者全員を正規従業員に転換するよう要求した。チェの抗議は世界中で報道され、これに刺激を受けて契約労働者は会社側の提示を拒否し、一連のストを開始した。この行動によって労働者たちは、組織と会社側に対する交渉力を強化すると同時に、人々の共感も得た。

 争議開始から10年が経った2014年8月、現代は契約労働者4,000人の常用雇用化に同意し、この転換は2015年末までに実施された。2016年3月には2回目の合意に達し、2017年末までにさらに2,000人を雇用することが確認された。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。
 「現代自動車で労働者を正規雇用化しようとするKMWUの闘いは、加盟組織が、外部委託や外注によって不安定雇用を偽装する多国籍企業に抵抗するうえで参考にできる実例だ。KMWUの大胆なキャンペーンは現代の行動にスポットライトを当て、これによって同社は政治家や市民社会、より広い労働運動から一斉に非難されることになった。この世論の圧力がKMWUの行動と相まって、最終的に同社は韓国の法律に従い、6,000人の契約労働者を常用雇用化した」

 現代自動車は現在、韓国で4,000人の臨時労働者を雇用しており、その大半が現行労働法で認められた短期契約労働者として雇用されている。文在寅韓国新大統領は非正規労働を一掃すると約束しているが、大統領自身の意欲にもかかわらず厳しい道のりになるだろう。

 

フランスの組合が新しい労働法に対応

2017-09-01

2016年4月にリヨンで行われた新法導入に対する抗議行進

 エマニュエル・マクロン仏大統領は、労働法「改革」の導入にあたって組合との厳しい闘いに直面している。

 フランス政府は昨日、雇用関係の「自由化」を目指す新しい労働法の詳細を発表した。新法は労働者を解雇しやすくしており、企業が地方レベルの取り決めを結ぶことによって全国労働協約を迂回できるようにしている。

 5月の選挙で極右の対抗馬マリーヌ・ル・ペンに決定的勝利を収めたマクロン大統領は、現行法はフランスのビジネスを妨害していると主張する。大統領は選挙運動中、制約的な労働法が原因で失業率が10%近くにまで上昇していると主張した。

 組合は意見を異にし、労働者を解雇しやすくしても雇用は生まれないと主張している。現在の失業率は、金融危機とその後の緊縮経済政策の結果である。新しい労働法は多くの労働者、特に若者を不安定雇用に追い込み、不平等が悪化するだろう。

 フランスの新しい労働法は、バングラデシュ、ブラジル、アルゼンチン、インド、ペルー、ポーランド、イギリスなど、全世界で組合権が攻撃されている状況下で制定された。

 新法の主な焦点は、部門別団体交渉に代えて現地レベルの協定を導入することである。中小企業では、現地協定が組合代表なしで締結され、全国レベルで獲得された労働基準が骨抜きにされる恐れがある。これらの現地協定には、短期・臨時契約を導入する効力がある。

 重要なことに、マクロン大統領は、この法律の効果を弱めるかもしれない民主的プロセスに付託するのではなく、議会の承認を得なければならない命令によって新労働法を導入した。

 フランスには5つの組合総連合があり、うち4団体にインダストリオール・グローバルユニオン傘下の組合員がいる。すべての組合が、マクロンの労働法は労働者の力を弱めると考えているが、この課題に立ち向かうために選んでいる方法はそれぞれ異なる。新法には肯定的な面があると考える組合もある。

 歴史的に最も有力な連合団体であるフランス労働総同盟(CGT)は、最初から新しい労働法に強く反対した。CGTは9月12日にゼネストと動員を指示している。CGTは、輸送、エネルギー、製造はじめ多くの重要部門で力を持っているので、このストは大きな影響を与えそうである。

 インダストリオール加盟組織FTM-CGTのボリス・プラッツィはこう述べた。
 「新しい労働法は、労働者の権利と私たちの社会モデルに対する前代未聞の攻撃だ。その狙いは明白で、集団的権利を破壊し、労働者と使用者の間に個別契約関係を導入すること」
 「これは組合に対する攻撃だ。マクロンは、ヨーロッパと全世界のすべての労働者と組合に影響を与えるソーシャル・ダンピング・モデルを生み出している。この法律は99%の人々を攻撃するものだ」

 フランス民主労働総同盟(CFDT)と「労働者の力」(FO)は、新しい労働法のすべての面に反対したわけではなく、協議を通して建設的な影響を与えることができるとの期待を示した。両団体は、一定の譲歩を勝ち取ったと考えている。

 FOは、何カ月もの集中協議にもかかわらず、最終文書をめぐって大きな意見の不一致があると述べた。しかし成功もあった。
 「政府や使用者が提示した規定のいくつかを拒否することに成功した」とFOは言う。

 CFDTは、経済において生産が変化しているので何らかの労働改革が必要だ、と考えている。組合は生活のために雇用を守るのではなく、再訓練やその他の公正な移行メカニズムを可能にする「柔軟な保障」を勝ち取ることができる。

 だが、この新法は機会の喪失である。CFDTは、使用者の決定権が強まっていると考えている。CFDTのローラン・バーガーはルモンドのインタビューで次のように語った。
 「私たちは失望している。組合側の案はほとんど受け入れられなかった。機能を果たすための手段がなければ、労働組合の存在はわずかしか認識されないと思う」
 「政府は目的を逸した。労働者にとって不利な規定が導入され、社会的対話を強化する機会を逃してしまった」

 CFE-CGCも同じ考えである。
 「労働法を簡素化して雇用を促進するという当初の計画は頓挫した。その代わりに、雇用を創出しないイデオロギー改革が進められている。これはまた新たなリベラル改革であり、不安定性とソーシャル・ダンピングを助長するだろう」
 「CFE-CGCは、ほとんどの措置が規制緩和に焦点を合わせていることを極めて遺憾に思う。労働者を守り、企業を活性化するための規定はどこにあるのか。この文書は労働市場への参入を促進しておらず、市場から撤退しやすくしている!」

 マクロンの新しい労働法は、やはり組合の猛烈な抵抗を受けた、前労働大臣ミリアム・エル=コムリが導入した法律を発展させたものである。CGTとFOは、第87号、第98号および第158号条約の違反に関して国際労働機関に苦情を申し立てた。

 マクロンは勝利を収めたにもかかわらず、国民にほとんど支持されておらず、支持率が低下している。新しい労働法は、彼の政策に対する国民の支持の試金石になるだろう。この命令が法制化されるのは議会に採択されてからであり、採択は6カ月以内に行われなければならない。組合は今後数週間、このプロセスを阻んだり影響を及ぼしたりするために結集する予定である。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長はこう述べた。
 「各組織の組合員からの委任事項を反映して、労働法へのアプローチは加盟組織によって異なる」
 「この戦術の組み合わせ(ストと交渉)はフランス政府に対し、労働者の権利を弱体化させることは経済を築く方法ではない、という明確なメッセージを送ると思う」
 「歴史が教えるとおり、投資をもたらし、したがって雇用をもたらすのは、ダイナミックな消費市場だ。そしてダイナミックな消費市場を生み出すのは、高賃金労働者を生み出す労働協約であって、組合の力を弱める法律ではない」