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第71号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年9月30日)

韓国の組合、自動車部門で契約労働者数千人の雇用を確保

2017-09-06

296日間にわたり電力送電用の鉄塔を占拠して行われた抗議

 インダストリオール・グローバルユニオンが不安定雇用に対して明確な態度を打ち出す10月7日をちょうど1カ月後に控えて、現代自動車におけるインダストリオール加盟組織・韓国金属労組(KMWU))の堂々たる闘いに目を向けてみよう。

 10年以上前から続いているキャンペーンでストや抗議、法廷闘争を組み合わせて闘った結果、KMWUは傘下の現代非正規職労組とともに、韓国の現代自動車で契約労働者6,000人の常用雇用確保に成功した。

 現代で非正規労働者を常用雇用に転換しようとする取り組みが始まったのは2004年、現代自動車非正規職労組とKMWUが韓国労働部に対し、同社における労働者の違法派遣の停止を要求したときである。

 この行動は、KMWUが現代自動車で実施した契約労働者に関する合同調査に対応するものだった。調査の結果、韓国の現代自動車工場(労働者総数6万人)で契約労働者1万人のうち9,300人前後が、下請労働者として不法に雇用されていることが分かったのである。

 韓国の派遣労働者保護法では、契約労働者を製造業の組立ラインに派遣することは禁じられている。また、契約労働者が2年を超えて同じポストで働いた場合は、正規雇用しなければならない。

 だが、現代の生産ラインでは何千人もの下請労働者が雇用され、正規労働者と並んで働いていた。彼らは正規労働者と同じ工具を使い、現代経営陣の指図を受けて働いていたが、賃金は半分で、福祉給付も雇用保障もない。契約労働者の多くが2年以上にわたって同じ仕事に従事していた。このような偽装雇用は韓国の製造業で広く見られる。

 労働部が蔚山、牙山、全州の工場における現代労働者の違法な下請契約を確認する行政命令を出したにもかかわらず、同社は労働者を正規雇用化せず、最低額の罰金の支払いを選んだ。労働部が同社を告発すべきという意見を提出したものの、2005年に当局は現代自動車の不起訴を決定し、違法派遣は続いた。

 2005年初めに200人を超える下請労働者が常勤契約を要求してストを決行したとき、100人が解雇され、その中の1人だったRyu Ki hyukは絶望のあまり命を絶った。

 事態は長期にわたって遅々として進まず、現代非正規職労組はKMWUとともに抗議行動を継続、KMWUは契約労働者の不法雇用を裁判所に訴えた。

 2010年7月に大きな進展があった。韓国最高裁が、社内下請業者で3年間働いたあと解雇された現代自動車非正規職労組の組合員、チェ・ビョンスンに有利な判決を下したのである。

 最高裁は、「チェ氏は紛れもなく違法派遣労働者であり、工場での同氏の勤続年数が2年を超えた時点で、同氏は現代に直接雇用されているものとみなさなければならない」との裁定を下した。この最高裁判決は、現代自動車の下請労働者全員が不法に派遣されていることを確認するものでもあった。

 この判決(現代は無視しているが)のおかげで、現代自動車非正規職労組は組織化キャンペーンを構築し、組合員数をほぼ2,000人に増やすことができた。

 これを受けて現代は下請会社との契約を打ち切り、非正規労働者は直ちに職を失うことになった。現代はさらに一歩踏み込み、「労働者はKMWUを脱退した場合に限り、新しい下請会社に再雇用される」と主張した。

 これがストの引き金となり、契約労働者は2010年11月25日から25日間、蔚山工場を占領して常用雇用を要求した。会社側は、このストで213億ウォン(当時の為替レートで2億7,700万米ドル相当)の損害を被ったと主張した。

 2012年8月、現代自動車は契約労働者3,000人の常用雇用化を提案した。しかし、KMWUはこれに満足せず、チェは296日間にわたって電力送電用の鉄塔を占拠するという大々的な抗議を開始、現代が契約労働者全員を正規従業員に転換するよう要求した。チェの抗議は世界中で報道され、これに刺激を受けて契約労働者は会社側の提示を拒否し、一連のストを開始した。この行動によって労働者たちは、組織と会社側に対する交渉力を強化すると同時に、人々の共感も得た。

 争議開始から10年が経った2014年8月、現代は契約労働者4,000人の常用雇用化に同意し、この転換は2015年末までに実施された。2016年3月には2回目の合意に達し、2017年末までにさらに2,000人を雇用することが確認された。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。
 「現代自動車で労働者を正規雇用化しようとするKMWUの闘いは、加盟組織が、外部委託や外注によって不安定雇用を偽装する多国籍企業に抵抗するうえで参考にできる実例だ。KMWUの大胆なキャンペーンは現代の行動にスポットライトを当て、これによって同社は政治家や市民社会、より広い労働運動から一斉に非難されることになった。この世論の圧力がKMWUの行動と相まって、最終的に同社は韓国の法律に従い、6,000人の契約労働者を常用雇用化した」

 現代自動車は現在、韓国で4,000人の臨時労働者を雇用しており、その大半が現行労働法で認められた短期契約労働者として雇用されている。文在寅韓国新大統領は非正規労働を一掃すると約束しているが、大統領自身の意欲にもかかわらず厳しい道のりになるだろう。

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