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第77号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2018年3月31日)

鉄鋼・アルミ関税をめぐる最近の展開に関するインダストリオールの声明

2018-03-23

 インダストリオール・グローバルユニオンは素材金属部門の加盟組合と協議して、本日3月23日に実施される鉄鋼・アルミ輸入関税に関する米国政府の最近の決定と関連して、以下の声明を発表した。

 インダストリオール加盟組織は、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、EU全域、インド、日本、カザフスタン、韓国、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコ、ウクライナなど、この部門の主要国で数百万人の素材金属労働者を代表している。

声明全文は以下のとおり。
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 2016年10月にリオデジャネイロで開催された第2回インダストリオール・グローバルユニオン世界大会において、貿易問題をめぐり集中的に討議した。全会一致で採択された政治決議によると、「インダストリオール・グローバルユニオンは、世界の労働運動とより広い社会の中で主導的役割を果たし、万人のためになる公正な世界貿易のビジョンを支持しなければならない」

 さらに、政治決議は次のように述べている。「貿易と投資は各国間および各国内で富の再分配をより公平にしなければならず、この新世代の貿易協定が依然支持している、規制緩和と自由化、民営化に基づく失敗したネオリベラル経済イデオロギーを拒絶しなければならない。私たちは、公正な貿易枠組みをめぐる新しいグローバルな討議によって、民主主義の基準と公益を保護し、人を最優先する社会政策の余地を生み出すよう求める」

 米国政府は3月初め、アメリカの国家安全保障を守るために鉄鋼輸入に25%、アルミ輸入に10%の関税を課すと発表した。関税が実施される3月23日現在、アメリカは、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、EU、メキシコ、韓国について上記の関税を免除しているが、多くの場合、理由が不確かで期間も定かではなく、国家安全保障との関連も曖昧である。これら各国の政府が米国政府との個別交渉で、よく分からないが何かほかの譲歩をしなければ、免除が取り消されるかもしれないと理解されている。

 このような状況において、インダストリオール・グローバルユニオンと世界中の素材金属部門の加盟組合は、万人のためになる公正な世界貿易を改めて要求し、なかなか解決しない世界的な鉄鋼・アルミ過剰設備問題に取り組むための努力を倍加した。私たちは鉄鋼・アルミ産業で雇用を保護・創出するための努力を強く支持するが、今回のように無差別、一方的かつ不公正で貿易戦争を引き起こすおそれのある関税の実施は批判する。インダストリオール・グローバルユニオンは、万人のためになり、国境を越えた労働者の連帯の原則に基づく、公正な世界貿易制度を改めて要求する。

 加盟組合が2016年11月のインダストリオール・グローバルユニオン素材金属世界会議でグローバルな鉄鋼危機に関する宣言を発表してから、世界の鉄鋼・アルミ市場はいくらか改善しているが、世界中の鉄鋼・アルミ労働者は相変わらず過剰生産能力に脅かされている。この過剰生産能力は中国に集中しており、中国は鉄鋼・アルミ業界に不公平な助成金を支給し続け、関連各国で鉄鋼・アルミのダンピングを継続、第三国経由で間接的に出荷しているケースもある。

 したがって私たちは、「いま押し寄せている産業破壊の波から雇用と地域社会を保護するために緊急行動を求める。この流れは世界的規模で産業雇用を破壊し、労働者の権利と労働条件を組織的に浸食している」という宣言の文言を繰り返す。

 実務的・日常的な試みが持続的な解決になり得ないことは明白だが、第2回大会の政治決議で述べられているように「複雑な政治問題は多面的な政治的取り組みによってしか解決できない」。このような状況において、免除などの一時的な解決法を求めるのではなく、世界貿易のために実行可能な規則を求めることが極めて重要である。保護主義とダンピングの間に適切な進むべき道を見つけることは決してできない。

 私たちは多角的交渉を奨励するとともに、世界規模の貿易戦争、世界中の労働者が最も損をすることになる戦争の誘発を回避するために、可能な限り努力することを約束する。

 各国政府は、OECD鉄鋼委員会や鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムなどの国際フォーラムで取り組みを調整して中国に圧力をかけ、生産能力の削減、過剰生産能力を生み出す不公正な取引方法の撤廃、他国における過剰生産能力の発生や増加の防止を求めなければならない。インダストリオール・グローバルユニオンは引き続き、それらの努力を支援し、OECD鉄鋼委員会に参加し、鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムへの労働組合参加を求めていく。

 私たちは各国政府に対し、鉄鋼・アルミの不公正貿易から組合員を守るために断固たる処置を取るとともに、それらの処置が、その過剰生産能力によって同様に脅かされている鉄鋼・アルミ労働者に損害を与えないよう確保することを要求すべく尽力する。

 私たちは各国政府に対し、鉄鋼・アルミ産業で雇用を保護・創出するための産業政策の導入も要求する。国際的な決定への依存を最小限に抑え、地方開発を促進するために、1人当たり消費量が少ない地域の域内消費量の強化に取り組まなければならない。

 さらに、世界的な鉄鋼・アルミの過剰生産能力の問題と闘うために、組合間の連携強化にも尽力する。この連携は、過剰生産能力が私たちの分裂・弱体化ではなく、グローバルな組合の力と連帯の強化をもたらすよう確保するのに役立つ。

以上

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