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第89号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2019年3月31日)

インダストリオール、ジェンダーに基づく暴力に取り組む強力なILO条約を要求

2019-03-06

暴力やハラスメントは日々、数百万人の女性労働者の生活に影響を与えている。だが、職場における暴力とハラスメント(ジェンダーに基づく暴力(GBV)や嫌がらせを含む)の根絶に向けた行動の基準を定める国際レベルの法律は、まだ存在しない。

2019年6月にスイス・ジュネーブの国際労働総会で、仕事の世界における暴力とハラスメントをめぐる2回目のILO討議が行われる。この討議は何百万人もの労働者、特に女性の保護に関する国際労働基準に見られるこの重大な不備に取り組む拘束力のある文書の採択に向けて、歴史的に重要な機会になる。それで、私たちはどんな条約を求めているのか。

1. 拘束力のある原文が必要
ILOの使用者グループは数カ国の政府とともに、職場における暴力とハラスメントに関する拘束力のある文書の採択の妥当性を疑問視している。これはあってはならないことである。
ジェンダーに基づく暴力とハラスメントをはじめとする暴力やハラスメントのない仕事の世界で働くことは、すべての人の権利である。しかし、GBVは職場で広く見られ、心理的・身体的・性的な健康に破壊的な影響を与えるだけでなく、その余波は家族や労働環境にも波及している。
そのような理由で、万人に最低基準を保証するために、職場における暴力とハラスメントに関する国際基準格が緊急に必要とされる。

2. GBVを重視した条約が必要
GBVは依然、最も黙認されている労働者の人権侵害の1つである。国連によると、15歳を超える女性の35%(全世界で8億1,800万人)が、家庭や地域社会、職場で性的暴力や身体的暴力を経験している。
職場におけるGBVは労働市場参加に影響を与え、女性が男性優位の部門や仕事に加わりにくくするおそれがある。
新しい条約は、GBVの根本原因やリスク要因への取り組みの必要性を強調しなければならない。例えば、ジェンダーに基づく不平等な力関係、複数の差別が入り組んだ状況、ジェンダー・ステレオタイプなどである。

3. あらゆる形態の暴力とハラスメントを対象とする条約が必要
私たちは、いじめや心理的な嫌がらせも含めて、あらゆる種類の「暴力とハラスメント」に対処する条約を求めている。
ILO基準は、セクシャル・ハラスメントなど、仕事の世界における暴力とハラスメントの国際的定義について初めて合意する機会である。

4. この条約は不安定労働者を含む全労働者を保護すべき
新しい条約は労働者全員を対象とし、誰も置き去りにされないようにしなければならない。ILOによると、世界の労働者の4分の3がインフォーマル雇用、臨時雇用、自営または無報酬の仕事に就いている。仕事の世界は、よりインフォーマルな雇用形態に向かって発展している。
すべての労働者が暴力やハラスメントの犠牲者になる可能性があるが、特に攻撃されやすい人たちがいる。いくつかの研究によると、臨時労働者やパートタイム労働者、不安定な雇用に就いている労働者は、フルタイムの常用労働者と比べて暴力やハラスメントの犠牲になるリスクが高い。暴力と女性の経済的脆弱性・貧困・低賃金の間には明白な関連性がある。
新条約は、雇用形態にかかわらず、インフォーマル経済も含めて労働者の広い定義を採用することが不可欠である。

5. 条約の適用範囲は物理的な職場だけに限定しない
条約は職場だけでなく、訓練や出張、通勤、仕事で提供される輸送手段、社交行事など、仕事関連のすべての状況を対象とすべきである。2016年のTUC研究では、無視できない数(14%)の女性が、クリスマスパーティーのような仕事がらみの社交行事で嫌がらせがあったと報告した。
ILO労働者活動局の報告書が強調しているように、グローバル・サプライチェーンにかかわる雇用、特に衣料・電子部門では、注文品の完納を求めるプレッシャー、長時間労働、深夜通勤の必要性によって、女性労働者のリスクが悪化している。経済加工区で働いている若い女性は特に、工場や会社の宿泊設備、あるいは通勤途上で暴力や性的虐待にさらされやすい。
南アフリカの鉱山で行われた調査によれば、夜勤や早朝勤務の女性は、歩いて鉱山に行く途中や夜間に1人でバスを待っているときに攻撃される危険が大きい。

6. 条約は家庭内暴力の影響を認めるべき
親密なパートナーから暴力を受けている世界中の女性の3分の2が就業している。家庭内暴力とそれから逃れるための努力は、労働者の生活に影響を与えている。経済的自立の不足も、女性を暴力的な関係に追い込む要因になることがある。
新しい条約は、職場が家庭内暴力の影響を緩和し得ることを認識しなければならない。女性の雇用維持を支援することができれば、経済的理由で暴力的な関係に陥ってしまう事態を防止できる可能性がある。

7. 条約は確固たる責任の枠組みを提供すべき
この条約は、政府、使用者、企業および組合が職場における暴力とハラスメントに取り組むための枠組みを提供すべきである。
条約の適用対象は政府になるが、暴力やハラスメントのない労働環境を作る主たる責任は使用者にある。使用者に、組合と協議して職場方針を導入することを義務づけ、防止策、透明な部外秘の苦情処理手続き、加害者に対する制裁、労働者に方針や手続きを理解させるための情報、職場における暴力とハラスメントの犠牲者への支援について定めさせるべきである。

インダストリオールは加盟組織に対し、この国際女性デーを利用して、自国のナショナルセンターとともに仕事の世界におけるGBVに関するILO条約を支持して行動を起こすよう促している。

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