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第101号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年3月31日)

Covid-19対策――労働者と使用者へのアドバイス

2020-03-30

COVID-19に対する従業員・雇用者へのアドバイス(英語)

インダストリオール・グローバルユニオンは、労働安全衛生を労働者の権利、使用者の責任の問題ととらえている。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の発生がもたらした非常事態下においても、この基本原則に変わりはない。それどころか、この原則はこれまで以上に重要性が増している。

2、3週間で何もかもが変わったが、その反面、何も変わっていない。

どの国で働いていようと、今までどおり法律が適用される。法規の文言は世界各国でさまざまだが、一般に使用者は従業員の安全衛生を保護しなければならない。この義務には、安全に仕事をするために情報や教育、訓練、適正な装置を提供することが含まれる。加えて、COVID-19発生に対処するために新しい特別法規が制定されているかもしれない。職場が適用されるすべての法規定に従うようにしなければならない。

訳:職場に内部システムを導入しなければならない。

 

労働者は、どのようなリスクがあるか、それらがどのように管理されるかをできるだけ正確に知る権利を要求する。どんな管理を実施するかに関する意思決定への参加権を強く主張する――それは私たちにとって重大な問題である。つまり、合同安全衛生委員会や労働組合安全代表が、講じられるすべての措置の立案と実施、監視に全面的に関与しなければならない。最後に、管理が不十分だと考える理由がある場合に、不健康または危険な仕事の遂行を拒否する権利を主張する。

使用者には、安全で健康的な職場を確保する責任がある。従業員には、導入された管理手段を慎重に守り、実施する責任がある。

新型コロナウイルスとは?

いま全世界で一般に新型コロナウイルス感染症と呼ばれている病気は、専門用語ではCOVID-19と呼ばれ、SAR-CoV-2という新たに発生したウイルスによって引き起こされる。

この感染症は恐ろしい事態を引き起こしている――誰も免疫を持っていないウイルスなのである。このウイルスは世界中に広まっており、感染率を抑えて医療制度が破綻しないようにするための対策が実施されている。

だが同時に、他の多くの病気と同じような感染症であり、このウイルスによる感染症の予防は、ずっと前から知られている原則に従っている

世界保健機関はリーフレット「Getting your Workplace Ready for COVID-19(職場のCOVID-19対策)」(2020年3月19日)で、COVID-19について次のように説明している。

COVID-19の拡大プロセス

COVID-19感染者が咳をしたり息を吐き出したりすると、感染した体液の飛沫が放出される。この飛沫のほとんどは、机やテーブル、電話など、近くの表面や物に付着する。汚染された表面や物に触れたあとに目や鼻、口をさわると、COVID-19に感染するおそれがある。COVID-19感染者の1メートル以内に立っていると、その人の咳や呼吸の飛沫を吸い込んで感染することがある。つまりCOVID-19はインフルエンザと同じような方法で広がるのであるCOVID-19感染者のほとんどは、軽い症状が出たあとに回復する。しかし、重症化して入院治療が必要になる人もいる。重症化のリスクは年齢とともに高くなり、40歳を超える人は40歳以下の人よりもリスクが大きい。免疫力が低下している人や、糖尿病、心臓病、肺疾患といった持病のある人も重症化やすい

訳:新型コロナウイルスの症状・・・発熱、咳、息切れ、咽頭炎、頭痛


症状は?

症状を知っておくことは、自分や同僚がリスクにさらされているかどうか、他人にリスクをもたらさないかどうかを確認するために重要である。COVID-19感染の最も分かりやすい症状は、熱が出ることと、空咳が絶え間なく出始めることである。

これらは感染者に最も頻繁に見られる症状である。

全体の88%       発熱
全体の68%       空咳
全体の38%       疲労感
全体の33%       痰
全体の19%       息切れ
全体の15%       筋肉痛または関節痛

それほど報告頻度の高くない症状として、そのほかに咽頭炎、頭痛、悪寒、吐き気や嘔吐、鼻詰まり、下痢、喀血(血痰)、結膜充血(目の痛み、涙目)が挙げられる。

ほとんどの人は、合併症を起こさずにCOVID-19感染から回復する。しかし、一定割合の人は重症急性呼吸器症候群や肺炎になることがある。そのような重態になると、臓器不全や死に至るおそれがある重篤な合併症のリスクは年齢とともに増大するようである

症状が現れた場合の対処法

在宅時に症状に気づいたら、外出しない

職場で初めて症状が出た場合は、使用者(誰に知らせるかを明確にしておかなければならない)に知らせて帰宅する。帰りの交通機関を待っている間、他の人たちと少なくとも2メートルは距離を空けておく。

医者を呼ぶ。同居人全員を含めて、自主隔離に関する最新のアドバイスに従う。症状が悪化してきたら、直ちに医師の診察を受ける。

できれば使用者は、曝露の疑いがある労働者が無料でCOVID-19検査を受けられるようにすべきである。本稿執筆時点では検査キットが不足しているが、供給増が予想されることに留意されたい。

職場で講じるべきCOVID-19対策

あらゆる職場の危険要因と同様に、合同安全衛生委員会と安全代表は、適切な職場方針、プログラムおよび手続きの実施を確保すべきである。これらの方針やプログラム、手続きについて合意しなければならない。使用者だけに決定を委ねてはならない。

方針やプログラム、手続きは、遵守して初めて効果を上げる。効果的に実施を監視する手順についても合意すべきである。

危険の確認

危険の確認とリスク評価は共同で行う――リスクを評価する道徳的権限を有するのは,そのリスクに直面している人たちだけである。

*初期の焦点は、旅行から帰った人や感染者と接触した人、あるいは大量の潜在的感染者だった。しかし、世界の大部分の地域は現在、地域感染や市中感染が起こっている状況にある。したがって、もはや旅行者への曝露が唯一の危険というわけではない。

*このウイルスは症状が現れる前に感染することがある。それでも、すべての人が自分のためだけでなく他者のためにも症状を知っておかなければならない。上記の詳細な症状リストを参照のこと。

リスクの管理

個人衛生と産業衛生の原則は、COVID-19の場合も他のバイオハザードの場合と同様である。何よりもまず、危険を除去または完全隔離する。ウイルス感染の機会を極力排除することによってリスクを最小限に抑える。そして最後に、効果的な個人用保護具を提供する。

今回の場合、危険の除去や完全隔離は不可能であり、職場の誰も(労働者、請負業者、顧客、訪問客)が感染している可能性があるので、リスクの最小化とは以下の戦略の実施を意味する。

具体策

個人衛生

石鹸と水をたっぷり使って頻繁かつ徹底的に手を洗う。簡単に手を除菌できる場所を職場全体に戦略的に設ける。

「徹底的な」手洗いの方法を説明するポスターを貼っておけば役に立つ。手を消毒するには、大量の石鹸または洗剤と水で最低20秒は洗う必要がある

洗っていない手で顔(目、鼻、口)に触れないようにする。

ハンドドライヤーは残っているウイルスを拡散させるおそれがあるため、ペーパータオルで拭くほうが望ましい。

職場で良い呼吸衛生を促進する――くしゃみや咳が出る場合はティッシュペーパーで鼻と口を完全に覆うか、ティッシュがないときは腕の曲げたところで覆うよう全員に奨励する。

その他のコミュニケーションや教育・研修も役立つ。

産業・職場衛生

維持管理措置:表面(機械、工具、制御装置、ハンドル、キーボード、タッチスクリーン、電話、オフィス機器、ドア、階段の手すり、備品など)の頻繁な清掃・消毒体制を実施する。表面を消毒するには、十分に高い濃度のアルコールや過酸化水素、塩素系漂白剤(最低62~71%のエタノール、0.5%の過酸化水素または0.1%の次亜塩素酸ナトリウム)で、最低1分間は洗浄する。血液や体液で明らかに汚染されている場合は特に注意して処理し、そのエリアを消毒するとともに清掃スタッフを保護しなければならない。清掃スタッフに適切な消毒方法を通知したり、それに関する訓練を受けさせたりする。特に勤務交代時に職場の表面や機器を頻繁に清掃すると、感染の抑制に役立つ。

使用者は、清掃用品やティッシュ、救急用品、個人用保護具などを十分にストックしておかなければならない

職場を十分に換気する。

社会距離戦略:可能な限り労働者間の間隔を広げる(2メートル以上)。できれば在宅勤務やフレックスタイム、時差勤務を認め、互いに密着する労働者の数を減らす。

不要不急の出張や会議はすべてキャンセルし、可能な限りバーチャル会議で代用する

年齢や持病が原因でリスクが高い労働者には特に配慮すべきである。

台所や食堂の備品、調理器具、食事用器具類、食器などには特別な注意を払わなければならない。

使用済みティッシュなど、汚染されている可能性のある廃棄物は安全に処分すべきである。廃棄物の中にウイルスがいる可能性がある場合は、処分について助言を求める。場合によっては、特別な手順を遵守しなければならない。

発症または感染が疑わしい症例の取り扱い

感染が疑われる症例が職場で確認されたら、医師の診察を受けさせ、本人を直ちに帰宅させなければならない(重症の場合は医療機関へ)。自宅で搬送を待っている間は、本人を他者から隔離しておく――感染の疑いがある人がマスクを着用すれば、飛沫を介してウイルスが他の人に移る可能性を抑えることができる。本人が接触したすべての物や表面を消毒する必要があり、接触した可能性のあるすべての人を特定して監視しなければならない。

個人用保護具

COVID-19ウイルスに対抗する特定の保護具の提供を決定するにあたっては、その職場に固有の性質と当該の作業を考慮したリスクアセスメントに従わなければならない。以下の一般的なアドバイスは、個々の状況において最善の解決策ではないかもしれない――必要に応じて別途専門家の助言を求めること。

一般的な紙製マスクやサージカルマスクは通常、医療現場以外や、汚染された可能性のある物質の洗浄や処理、感染が疑われる人との接触といった特定業務以外の作業には必要ない。マスクは病気の感染を抑えるかもしれないが、誤った安心感を与えるおそれもある。湿ったマスクは、取り外して廃棄する際に細心の注意を払って手や顔をすぐに洗わなければ、感染を引き起こす可能性のある汚染表面になることさえある。ぴったり合う適切な種類のマスクを装着しても、ウイルスを防ぐ完全なバリアにはならず、必要に応じて完全な呼吸器保護プログラムを導入し、適切な研修や装着、使用を確保することが望ましい

しかし、仕事中に鼻水や咳が出た労働者には、職場を離れることができるまでサージカルマスクを着用させ、他の人へのリスクを抑えるべきである。

手袋や特別な衣服は、その職場で普段は必要とされないのであれば、一般にCOVID-19対策としては必要ない。ただし、医療現場や、汚染された可能性のある物質の洗浄や処理、感染が疑われる人との接触といった特定業務は別である。それらの衣類は感染を抑制する役割を果たすことがあるが、例えば手袋着用時に顔を触らないようにするために、訓練・教育プログラムを併せて行う必要がある。

清潔にしておくこと、特に手洗いが非常に重要と考えられている。つなぎの作業服や長靴、手袋、ヘルメット、ゴーグル、呼吸マスク、その他の個人用保護具など、すべての作業服の適切な洗浄・消毒手続きが導入されているかどうかを考慮する。

十分な社会的保護の確保

咳や微熱などの軽い症状であっても「外出するな」という意味であることを、職場で働く全員が理解しなければならない。このメッセージをできるだけ強く伝えるべきである。

病欠の場合は賃金全額を保証しなければならない。さもなければ、具合が悪くても出勤する人がいてウイルスを拡散させる危険性が高い。

精神的・情緒的健康に配慮する。この先の見えない時期にあって、誰もが恐怖を感じるだろう。在宅勤務する場合は、社会的隔離によるストレスを経験するかもしれない。

個々人に対処する方針と記録

使用者は、職場で誰かが発症した場合に医療機関に無事搬送されるまで、その状況に対処する計画を立てておかなければならない

職場への訪問者には、最近の旅行歴や現在の症状の有無を尋ねる。

フォローアップが必要な場合に備えて、職場を訪れた請負業者や顧客、訪問者の氏名(訪問先を含む)を記録しておくべきである。

結論

COVID-19は職場の安全衛生に新たな課題を突きつけているが、これまでと変わっていないことが1つある――組合は仕事の安全性を高める!

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