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第105号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年5月31日)

COVID-19蔓延下で万人のための公正貿易が重要

2020-05-28

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に関する交渉が大詰めに入っている。この協定が批准されれば、世界の人口の30%、世界のGDPのほぼ30%が対象となる。世界的パンデミックのまっただ中にあって、医療用品や食料へのアクセスを確保する包括的で公正な取引が重要である。

パンデミック拡大下で開放的なサプライチェーンと貿易を維持することが極めて重要である。万人に利益を与える自由貿易協定を確保し、交渉にあたって組合の意見を聞くことも同様に重要である。域内のほとんどの国々でロックダウンとソーシャルディスタンス措置が実施される中で、過去数カ月間、自由貿易交渉が続けられた。

まず挙げられるのはRCEP交渉であり、2020年4月中旬に行われた最新の交渉で、パートナー各国は2020年のRCEP締結を約束した。インダストリオール・グローバルユニオンの主な関心事は、この貿易協定がいつどこで締結または批准されるかではなく、この地域の貿易協定が、労働者の権利と人々の利益の保護を目的とするインダストリオールの貿易協定10原則に従うかどうかである。

強制力のある労働権がまだ盛り込まれていない

ASEAN当局者によると、参加各国はすでに6つの章を仕上げており、残り14章の完成に向けて努力している。それでも、この協定に強制力のある労働権とILO条約・勧告を盛り込むことは約束されていないようである。非公開のRCEP交渉は労働者を蚊帳の外に置いている。各国政府は労働組合との適切な協議を行い、交渉草案は国会や州・地方議会、地方政府で審議しなければならない。民主的な法手続きに従うべきである。

インドが企業や農民、市民団体から圧力を受けてRCEPから離脱したことは、インドの国民と政府が、輸入品の流入で地元企業が敗退するかもしれないという懸念を持っていることを示している。これは、各国が貿易活動を規制するために政策的余地を利用できるようにしなければならないというインダストリオールの原則の1つの重要性を反映している。インド政府には、国有部門を保護するために貿易関税を課す十分な権利がある。

国家が正当な社会・経済政策を理由に訴えられるようなことがあってはならない

2019年8月、アジア太平洋のインダストリオール加盟組織は各自の政府に書簡を送り、RCEP交渉プロセスで10原則を厳守するよう要求した。その後、マレーシア政府が、RCEP加盟国は今後貿易協定から投資家対国家の紛争解決を削除し、協定実施後に改めてこの問題に取り組むことに合意した、と発表した。あらゆる国が不可解な仲裁メカニズムによって訴えられることを恐れずに、国民のために自由に社会・経済政策を実施できるようにすべきなので、この決定は賞賛に値する。

国際貿易は医薬品と食料へのアクセスを確保しなければならない

COVID-19パンデミックは、地域全体で労働者の生命と生活を脅かしている。同時に、政府と労働者が貿易と人権、連帯経済との絡み合う関係を再考する機会を提供するかもしれない。今回のパンデミックは、東南アジアの国民国家間の相互援助を強化するかもしれない。

いくつかの国々が医薬品の輸出を禁止していることを踏まえて、世界貿易機関(WTO)は医薬品アクセスの確保における国際貿易の役割を強調した。とはいえWTOは、加盟国が政策的余地を利用して公衆衛生を保護するとともに、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)の柔軟性規定によって救命薬を入手できるようにすることを尊重している。

パンデミック下での輸出禁止は、国内用救命薬の輸入に大きく依存している後発開発途上国に不釣り合いに大きな影響を与える。これらの国々には、国内消費のために商品を生産する能力がない。したがって各国は、一方的な貿易政策が後発開発途上国に及ぼす悪影響を緩和するために、WTOのような多国間貿易フォーラムを利用すべきである。

貿易によって人々の健康の権利と食糧の権利を促進することが重要である。インダストリオールは、知的所有権制度は政府が持続可能な開発目標を達成するのを支援すべきであり、妨害してはならないと強調している。今回の健康危機の間じゅう、労働者や国民が救命薬と個人用保護具を利用できるようにしなければならない。

この危機でASEAN諸国間の協力が強化?

実際、ASEANはCOVID-19に積極的に対応、医薬品や医療用品の供給に関する協力強化を要求しており、これは公衆衛生緊急事態に対処するための地域医療用品備蓄の開発に表れている。ASEANは、ASEAN+3緊急米備蓄を利用して食料安全保障の確保を目指すことも宣言した。

だがRCEPに関しては、東南アジア諸国政府は貿易協定交渉が透明な参加型プロセスになるよう確保すべきである。労働組合も含めたすべての利害関係者の意見を聞き、協定で労働者の利益を保護しなければならない

自由貿易は普遍的な人権の実現に役立たなければならない――すべての人が十分な食料と手ごろな医薬品・医療用品に基づく適切な生活水準を確保すべきである

このブログ投稿はアニー・アドビエント・インダストリオール東南アジア地域事務所所長によるもので、初出は『FESアジア』。

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