広報ニュース

第118号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年12月25日)

サムスンは団体交渉の引き延ばしをやめよ

2020-12-22

<JCM記事要約>

  • 韓国金属労組は、サムスングループによる遅々として進まない労働協約交渉プロセスを非難している。サムスンディスプレイでは2020年5月以降10回の交渉が行われているものの具体的成果はなく、組合活動の保障といったILO条約で保障されている部分についても、同社は受け入れがたいと主張している。
  • 同様にサムスンSDI蔚山とサムスン電子の団体交渉も開始したもののペースが遅い。組合は会社側に対し、従業員評価システムを改革して契約労働者の問題に取り組むよう要請している。
  • インダストリオールは、サムスン電子は、エレクトロニクス産業で世界をリードする多国籍企業であり、万人のためのディーセント・ワーク(SDGsの1つ)の達成に向けて組合と協力する責任がある、と主張した。

 

インダストリオール加盟組織の韓国金属労組連盟(FKMTU)はサムスングループに対し、労働協約交渉で牛歩戦術を使うのをやめ、組合の要求を受け入れるよう求めている。

FKMTUは2019年11月以降、サムスン電子、サムスンディスプレイ、サムスンSDI蔚山で組合設立に成功している。2019年12月18日にサムスングループのイ・サンフン会長が組合つぶしの罪で投獄されたことにより、労働者の組合加入がさらに勢いづいた。現在までに、およそ2600人のサムスン労働者が組合に加入し、ほとんどがFKMTU傘下に入った。

しかしサムスンの組合員は、遅々として進まない交渉プロセスに次第に不満を抱くようになっている。サムスンディスプレイでは2020年5月から10回の交渉が行われているが、具体的な成果はない。同社は、協定案のいくつかの部分は受け入れがたいと主張した。例えば、組合活動労働者の経営参加、労働安全衛生問題など、ILO条約で保障されている事項である。

サムスンディスプレイ労組の組織化キャンペーン(キム・マンジェFKMTU委員長も参加)

組合とサムスンディスプレイは調停中であり、決裂すれば組合はストを指示する予定である。サムスンSDI蔚山とサムスン電子の団体交渉は2020年9月、11月に始まったが、やはりペースが非常に遅い。

キム・マンジェFKMTU委員長は言う。

「私たちは賃上げ、派遣労働者の社会的連帯賃金制度の実施、より安全で健康的な労働条件を求めて闘っている。当組合の目的は、筋骨格疾患や騒音性難聴のような職業病をなくすことだ」

「FKMTUは会社側に対し、従業員評価システムを改革して契約労働者の問題に取り組むよう要請している。サムスンの労働組合化は、強力な団結・連帯によって労働者に新たな希望を与える。サムスンで組合旗を掲げるために最後まで闘う」

松崎寛インダストリオール電子担当部長は、サムスンでの組合設立を祝福しながらも、こう強調する。

「サムスン電子は、サムスングループの旗艦企業であると同時に、エレクトロニクス産業で世界をリードする多国籍企業であり、万人のためのディーセント・ワーク(SDGsの1つ)の達成に向けて組合と協力する責任がある。FKMTUとの交渉に対する同社の行動は、業界の注意を集めるだろう」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

 

インドネシアで支部組合指導者を復職させよ

2020-12-22

<JCM記事要約>

  • インドネシア、PTケメット・バタム・エレクトロニクスにて、労働協約に従って組合休暇を取得したインダストリオール加盟組織・ロメニックの組合役員が無許可休暇の疑いで解雇された。組合員がこれを不当解雇として連帯ストを開始したが、会社側は組合員に対してスト参加に関する警告書を発行した。
  • 組合役員は食糧配給の活動をし、その後家族の看病のため自宅へ帰宅したとされるが、インダストリオールは同社に書簡を送付し、会社は組合休暇として容認し、組合役員及びロメニックの社会事業を歓迎すべきだと述べた。
  • 紛争は労使関係裁判所へ付託されており、組合役員は賃金を受け取り続けている。インダストリオールは同社に対し、パンデミックの危機において社会的責任を果たし、直ちに組合役員を復職させるよう要求している。

 

インドネシアのインダストリオール加盟組織ロメニックはPTケメット・バタム・エレクトロニクスに対し、無許可休暇の疑いで11月に解雇されたロメニック支部組合書記長の復職を要求している。

労働協約に従って、ウィスヌ・ヌンキー・サプトラは、組合役員として組合休暇取得権を有し、休暇の取得を上司に知らせていた。その日、サプトラは、バタム島で失業中の労働者に食料を配給するロメニックの活動を組織し、その後、病気にかかっていた息子を看病するために自宅に帰った。

サプトラの同僚たちは、この不当解雇に抗議して連帯ストを開始した。これに対して会社側は、100人を超えるロメニック組合員に、スト参加に関する警告書を発行した。

インダストリオール・グローバルユニオンはPTケメット・バタム・エレクトロニクスに書簡を送付、会社は組合役員が申請した病気休暇にもっと寛容に対応し、バタム島民の一般の福祉を改善するサプトラとロメニックの社会事業を歓迎すべきだと述べた。

インダストリオールとロメニックの介入後、紛争は労使関係裁判所に付託された。判決を待っている間、サプトラは賃金を受け取り続けている。

エドゥアルド・マルパウン・ロメニック副会長は言う。

「PTケメットがサプトラを元のポストに復職させることを願う。パンデミック下にあって、産業平和と双方両得の解決策が必要だ」

アニー・アドビエント・インダストリオール東南アジア地域事務所所長は言う。

「パンデミックの結果、インドネシアでは少なくとも256万人の労働者が失業し、170万人が一時解雇された。使用者は、この危機的な時期に社会的責任を果たすべきだ。私たちはPTケメットに対し、その決定を再考して直ちにサプトラを復職させるよう要請する

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

 

レポート:バッテリーサプライチェーンのデューデリジェンス

2020-12-21

<JCM記事要約>

  • バッテリーの需要・生産は今後増加の一途を辿るが、複雑化されたバッテリーサプライチェーンの中で新規雇用が生まれるものの、原料となる鉱物の採掘現場では既に存在する基本的な労働組合権や環境問題といった問題も増加していく。
  • 大手多国籍企業の自社所有の生産現場とは異なり、サプライチェーンの下流では労働組合権の侵害が急激に増える。精査を行い、サプライチェーン全体の労働者の声を聞き適切な労働条件及び労働者の権利を確保することが求められる。
  • インダストリオールでは、サプライチェーンの調査や専門家との戦略会合を含んだプロジェクトを進める。サプライチェーン全体でディーセント・ワークを達成するため、拘束力のある法律を通じた、国際レベル・国家レベルでの人権と労働権の義務的デューデリジェンスの規制を要求していく。

 

バッテリーの需要・生産は今後数十年にわたって増加の一途を辿る、と予想する報告が数多くある。ほとんどの研究が2030年まで15〜20%の成長率を予想しているが、正確な数字はともかく、大きく伸びることは間違いない。これは、インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織が組織化しているバッテリーサプライチェーンで、鉱業、化学、エネルギー、電子、自動車など、すべての産業部門に重大な影響を与える。

レポート
『グローバル・ワーカー』第2号(2020年11月)より

 

文:ゲオルク・ロイテルト
テーマ:バッテリーサプライチェーン

 

 

 

 


バッテリー生産は今後、最も急成長を遂げる産業活動の1つになるだろう。すでに現在、主な原料(コバルト、リチウム、銅、ニッケル)をめぐる闘いは、児童労働、先住民の居住環境の破壊、環境破壊、水不足など、人権および労働者の権利の甚だしい侵害と受け入れがたい環境的結果を招いている。

現在、中国、日本、韓国の少数の東アジア企業が世界のバッテリー製造を牛耳っており、原料のほとんどが中国の精製所で加工されている。原料の精製所が主に中国企業に支配されていることから、透明性が著しく不足し、大きな課題をもたらしている。

世界がCO2を削減するには、スマートグリッドや環境に優しい再生可能エネルギーを利用する電気自動車や蓄電池システムをはじめ、多様な製品にバッテリーを利用していかなければならない。

バッテリーサプライチェーンは関連企業数ベースでも生産量ベースでも拡大し、複雑になっており、バッテリー電源技術を支える鉱物への需要も増えるだろう。

バッテリーサプライチェーンは関連企業数ベースでも生産量ベースでも拡大し、複雑になっているため、バッテリー電源技術を支える鉱物への需要も増えるだろう。したがって、インダストリオールがデューデリジェンス・プロセスにかかわり、労働者の権利を確保してサプライチェーンで労働者を組織化することが戦略的に重要である。

サプライチェーンの全段階からの情報があれば、すべてのステークホルダーと協力し、現場の状況を具体的に改善する戦略を練り上げることができる。

バッテリーサプライチェーン

必要な原料、特にコバルト、リチウム、ニッケル、銅の採掘が激増し、新規雇用を生み出すだろう。だが、基本的な労働組合権、児童労働、環境、先住民の権利などをめぐって、すでに存在している問題も増加していく。

中国(CATL)、日本(パナソニック)、韓国(LG化学)の3大化学・電子企業がバッテリーセル生産を支配し、新興企業も市場に参入しようとしている。

自動車部門は、自製するか購入するかについて集中的に討議している。ほとんどの自動車メーカーが、バッテリーセルを購入してから自社でバッテリーパックを組み立てることを決定している。

エネルギー部門は、主に(グリーンな)エネルギーを貯蔵するための信頼できるソリューションを調べ、需要と生産の変動のバランスを取ろうとしている。この取り組みの主な焦点はスマートグリッドの設置であり、この文脈においては、例えばマイカー所有者からのバッテリーの統合・利用である。

鉱山から自動車に至る全段階で労働者の意見を聞かせる

「適正な労働条件とグローバル・サプライチェーンにおける人権および労働者の権利の実現は、インダストリオール・グローバルユニオンにとって最も重要であり、最も困難な主題だ」とアトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長は言う。

「鉱山からエンドユーザーに至る統合サプライチェーン・アプローチの開発・実施によって、成長するバッテリー市場の勢いを利用したい」

大手多国籍企業は自社所有の生産現場ではうまく整備されているが、サプライチェーンを下ると労働組合権の侵害が急激に増える。サプライチェーンに対する多国籍企業の責任は、国連ビジネスと人権に関する指導原則を通して十分に確立されているが、強制力のある国際・国内規制がなければ、多国籍企業に責任を負わせることはできない。

グローバル・サプライチェーンの精査は、私たちがグローバルな連合団体として、多国籍企業のサプライチェーンのどこで労働組合権の侵害に関する影響力を持っているかを知るために重要である。世界的な自動車会社は、自社のコバルトやリチウムがどこで採掘されているか、どのように自社のバッテリーが製造され、エネルギーが貯蔵されているかに配慮しなければならない。

インダストリオールは、サプライチェーン戦略を開発するためにFESプロジェクトを申請した。これにはサプライチェーンの調査・精査、専門家との戦略会合、サプライチェーンを組織化している組合とのグローバル会合が含まれる。

「目的は、主要ステークホルダーとの社会的対話の制度やプラットフォームを構築し、サプライチェーン全体で万人のためのディーセント・ワークを達成すること。インダストリオールは、世界中の組合を調整し、バッテリーサプライチェーンを中心にディーセント・ワークを達成する政策に貢献できる唯一のグローバル・ユニオンだ。国際労働組合運動は、これまでになく重要になっている」とアトレ・ホイエは言う。

インダストリオールの狙い:

  • サプライチェーンのすべての段階で労働者の意見を聞かせる(そして、まことしやかな持続可能性報告を超える)真のデューデリジェンス
  • 現場の労働条件の改善
  • 部門の垣根を越えた協力

持続不可能なグローバル・サプライチェーンの規制と製造業雇用の確保は、パンデミックを受けたインダストリオールの戦略的活動の鍵である。

製造業は国民経済の原動力であり続けなければならない。今回の危機で、規制されていないグローバル・サプライチェーンにおいて労働権が甚だしいリスクにさらされていることが明らかになったため、このインダストリオールのイニシアティブでは、グローバルな貿易・生産モデルに取り組む。拘束力のある法律によって、国際レベル・国家レベルで人権と労働権の義務的デューデリジェンスを規制することを要求していく。

 

サンチェス書記長からのメッセージ

2020-12-19

同志の皆様

2020年が終わろうとしています(多くの人が「やれやれ!」と言うでしょう)。人類にとって、ここ数十年で最も厳しい1年でした。この1年で7500万人以上が感染し、ほぼ170万人が死亡、約5億人のフォーマル雇用と約16億人のインフォーマル雇用が失われ、短期間で回復しそうな兆しはほとんどありません。一部の国々で予防接種が始まっていますが、今後数カ月間にワクチンへの普遍的アクセスが実現することはまずないだろうという深刻な懸念があります。

残念ながら、パンデミックが拡大を続け、1日当たり感染者数の新記録を更新中です。そのため、今年10月に開催されるはずだった大会の延期を余儀なくされ、その後、執行委員会は、2021年9月に完全オンラインモードで大会を開催することを決定しました。

世界中の加盟組合が、女性や若年者、黒人労働者、LGBTQIA+など、最も影響を受けている人々に特に注意を払って、組合員の安全衛生、雇用、所得を守る闘いの先頭に立ちました。同時に、いくつかの国の加盟組織は、一時帰休や部分的失業、一時解雇、労働時間短縮など、解雇を避けるために何とか代替策を達成することができました。世界の労働者の60%前後が、まだ社会的保護をまったく受けていません。

インダストリオールでは、加盟組織が活動方法を抜本的に変更できるよう支援するために全力を尽くしていますが、何とか世界・地域活動の数を倍以上に増やすことができ、オンラインモードでほぼ1万人が参加しました。ウェブサイトへの月間アクセス数はおよそ20万ビューへと2倍以上に増え、安全衛生ガイドを4つ発表しました。

現在までに、組合員の安全衛生と雇用、所得を守るための加盟組織の闘いを支援して、企業・政府・国際機関への書簡と加盟組織への連帯書簡を400通近く(過去4年間の平均よりも65%増)送りました。

現在、BHP、グレンコア、シェル、第176号条約、香港条約、第190号条約、TGSL部門など、これまで以上に多くのキャンペーンを同時に実施しています。これらのキャンペーンは、まさに私たちがどれだけ多くのことを要求され、対応しているかを示しています。私は執行委員会への書記局報告で、私たちが今年関与したキャンペーンや闘争、連帯行動、#UnionWin事例の数を列挙しました。http://www.industriall-union.org/union-winをご覧ください。

私たちは、加盟組織が抵抗して勝利できたときはともに業績を祝い、常に加盟組織の側に立って労働者のために果敢に闘っています。2021年も闘争を推進して加盟組織を支援していきます。1年の大半をオンラインで活動するという困難にもかかわらず、疲れを知らずに働いた本部・地域事務所のスタッフ全員の努力と柔軟性を、ここに公式に認めたいと思います。

ほとんどの方々がすでにご存じのように、ブライアン・コーラー(安全衛生・持続可能性担当部長)が、今月末にインダストリオールを退職します。長年にわたる貢献と取り組み、私たちとの親交に深く感謝します。

慎重な検討の末、本部の責任分担を以下のとおり変更することに決めました。

  1. ホワイトカラー労働者は、大いに発展させなければならない分野です。というのも、生産プロセスの技術的飛躍が加速する中で、産業全般の労働者総数に占めるホワイトカラー労働者の割合が上昇しているからです。この仕事はアルメレ・セビーに割り当てました。彼女が担当するプロジェクトの一部を入れ替え、女性に対する責任も果たしながら、この新しい任務を効果的に遂行できるようにします。
  2. 安全衛生は、パンデミックで加盟組織の懸念の中心になっているため、インダストリオールにとって引き続き、よりいっそう極めて重要な問題となっています。これは、すべての部門・地域の活動に組み込まなければならない要素です。その分野で最も重要な具体的問題について、すでに担当部長がすべての行動を主導しており、グレンが第176号条約を、寛が香港条約を担当しています。グレン・ムプファンに、労働安全衛生の担当主任の役目を割り当てました。地域事務所がグレンをサポートし続け、鉱業部門の職務をこなしつつ、この新しい役割の追加に対応できるようにします。
  3. 公正な移行/持続可能性は、現在もそうですが、今後ますますインダストリオールにとって極めて重要な部門になるでしょう。というのも、主要エネルギー源が化石燃料から再生可能エネルギーに移行する中で、関連各部門において転換プロセスが加速しているからです。ダイアナ・ジュンケラに、主に公正な移行/持続可能性の担当主任の役目を割り当てました。彼女はエネルギー部門に対する責任の一端として、すでにこの分野でいくつかの行動を牽引しているからです。
  4. インダストリー0はますます、インダストリオール、特に加盟組織が対応しなければならない重要な問題になっていくでしょう。私たちは過去3年間に、世界会議、アクション・プラン、パンフレット(2017年)、地域活動(2018年、2019年)など、加盟組織の認識を高めるために多くのイニシアティブを取りました。担当部長は、さまざまな部門でインダストリー4.0の影響に取り組むにあたって、すでに指導力を発揮しています。この問題に関して、2019年にルノーと最初のGFAを締結し、他社との協定案も進行中です。マティアス・ハートウィッチに、インダストリー4.0の担当主任の役目を割り当てました。これは機械エンジニアリング部門の一部としての「グリーンテクノロジー」に対する彼の責任と調和します。

アルメレ、グレン、ダイアナ、マティアスの新しい職務での成功を祈るとともに、皆様方全員に通常と変わらぬご協力をお願いします。

すべての部門担当部長と地域が、各部門・地域に影響を与える範囲内で、上記の主題に引き続き全面的に責任を負うことを強調しておくことが重要です。上記の同僚たちには、それぞれの主題の窓口担当として、必要な場合いつでも、組織全体(加盟組織、指導部、本部/地域事務所の同僚)に聡明な援助を提供する役目を割り当てました。

クリスマスと新年のご多幸をお祈りします。

2021年も未来への闘いを進めるとともに、今後数年間の強力なアクション・プランが決まる2021年9月の大会を早めに準備しましょう!

人々に力を! 公正な未来のために団結!

 

ドゥテルテ大統領に労働組合員の弾圧・殺害の中止を要求

2020-12-16

<JCM記事要約>

  • 赤札(政府に十分に忠実ではないとみなされる個人や団体のブラックリスト掲載やハラスメント)が続くフィリピンに対して、11月30日、世界中の労働組合員が世界行動デーに参加し、労働組合員の弾圧と殺害の中止を求めたが、政府は労働組合員6人を逮捕した。
  • 組合指導者は、反テロ法は自分たちの安全と雇用を守る労働者の権利をさらに抑制する法律であり、廃止すべき主張する。
  • インダストリオールは、特恵貿易協定の問題に関して政府に圧力をかけ、反テロリズム法による組合への干渉をやめさせるべきと主張した。カンボジアや日本などの加盟組織も、当該ソーシャルメディア・キャンペーンに加わった。

 

11月30日、世界中の労働組合員がフィリピンのための世界行動デーに参加、街頭とフィリピン大使館で抗議行動を実施し、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領に労働組合員の弾圧と殺害の中止を求めた。これに対してフィリピン政府は、12月10日に労働組合員6人とジャーナリスト1人を逮捕した。

2019年12月10日の国際人権デーに世界中の労働組合が初めて行動を起こし、フィリピン政府に赤札と労働運動家・人権問題活動家の裁判なしの殺害をやめるよう要求した。だが、赤札(政府に十分に忠実ではないとみなされる個人や団体のブラックリスト掲載やハラスメント)が続いている。

改革派の議員は共産党員呼ばわりされ、最近、武装組織のメンバーと言われている人々が殺害されている。

グローバル・ユニオン評議会(CGU)は11月30日にフィリピンのための世界行動デーを開始し、フィリピン政府が脅迫をやめ、裁判なしの殺害の犯人に責任を負わせ、反テロリズム法を廃止するよう要求した。世界中の労働組合員が加わった。

フィリピンでは、インダストリオール加盟組織がケソン市のフィリピン大学での大集会に参加。労働長官に手紙を書き、大統領府に介入してハイレベル政労使ミッションを受け入れさせるよう要請することにしている。

11月30日のフィリピン

フィリピン金属労働者同盟(MWAP)スポークスパーソンのメアリー・アン・カスティーリョはこう語った

「我が国で広く労働組合が弾圧されていることを非難する。ネクスペリアの傘下組合も、ラグナで赤札とテロリスト指定の標的にされた。労働組合主義は犯罪ではなく、労働者の組合加入権を保護しなければならない」

フィリピン金属労働者同盟(PMA)のナルシソ・ロザーノ、ジョセフ・ボー両副会長は次のように述べた。

「反テロ法は、団結権を行使し、家族を養い、自分たちの安全と雇用を守る労働者の権利をさらに抑制する法律であるため、廃止しなければならない」

シドニーからの連帯

オーストラリア製造労組(AMWU)のアンドリュー・デットマー会長はこう述べた。

「他の組合と連携しながら、シドニー、キャンベラ、パースのフィリピン大使館・領事館で抗議している。弾圧と闘うためにフィリピンの同志と連帯する」

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は次のように述べた。

「反テロリズム法は労働組合員や活動家の迫害に利用されている。特恵貿易協定の問題に関して政府に圧力をかけ、組合への干渉をやめさせなければならない」

カンボジア、インドネシア、日本、韓国、マレーシアのインダストリオール加盟組織も、フィリピンのための世界行動デーに関するソーシャルメディア・キャンペーンに加わった。

韓国からの連帯

フィリピン政府の対応は非人間的なもので、2020年12月10日に治安部隊が労働組合活動家6人とジャーナリスト1人を逮捕した。

CGUは、この行動を非難、逮捕者の即時釈放とすべての起訴の取り下げを要求し、次のように述べた。

「労働組合活動家が犯罪者扱いされ、不法に逮捕・拘留されている。これによって政府は、組合や団体への労働者の組織化を阻止し、労働者の活動に反映される思想や表現の自由を奪おうとしている。弾圧の強化は、まさに国民の間で異議や組織的行動を押さえ込むことを目的としている。恐怖心を植え付けて人々を黙らせる手段としての活動家・権利擁護者の殺害は、まだ終わっていない」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          

 

トルコの組合、自動車産業で力を強化するために団結

2020-12-15

<JCM記事要約>

  • 労働基本権の侵害されているトルコにおいて、すでに結ばれているグローバル枠組み協定(GFA)などにより組合の力を強化し、トルコの自動車部門サプライチェーンを規制する方法に関するオンラインワークショップが行われた。
  • ワークショップでは、多国籍企業のデューデリジェンス・プロセスにおいて、労働者の声がより重要な役割を演じるようになるべく、自動車サプライチェーンの課題や経験、紛争事例の紹介の他、組織化にあたって組合が直面している問題の共有がされ、複数の加盟組織がトルコの自動車労働者への連帯支援を表明した。
  • インダストリオールは、このワークショップは重要な出発点であり、トルコの労使関係は複雑だが、組合の力を強化して国際連帯を表明すれば、私たちには新しい制度を求めて闘う力がある、と強調した。

 

12月8〜9日のワークショップに、金属部門のトルコのインダストリオール加盟組織3団体(トルコ・メタル、ウズチェリク・イス、ビルレシク・メタル・イス)とアメリカ、フランス、イタリア、ドイツから参加者が集まり、グローバル枠組み協定その他の国際文書を組織化の手段として使う方法をめぐり討議した。

結社の自由と団体交渉権はトルコの憲法で規定されている権利だが、労働組合活動は多くの障害に直面している。組織化と組合承認の達成に至る道は障害だらけである。トルコは、労働者の基本的権利の尊重を確保していないことで、ILOやEUによって日ごろから批判されている。

これを受けてインダストリオールは、グローバル枠組み協定(GFA)など発展中の文書を通して組合の力を強化し、トルコの自動車部門サプライチェーンを規制する方法に関するワークショップを企画、トルコの金属部門の加盟組織3団体が集まった。

GFAは多国籍企業の事業全体で労働者の利益を保護するのに役立つ。GFAは、それらの基準が個々の国に存在するかどうかに関係なく、企業のグローバル事業全体で最高水準の労働組合権、安全衛生・環境活動、作業原則を導入する。インダストリオールはルノー、MAN、ダイムラー、フォルクスワーゲン、フォードとGFAを締結しており、全社がトルコで大規模に事業を展開している。

「トルコでは労働基本権が組織的に侵害されているため、私たちはグローバルユニオンとして、そのことを世界に伝える責任がある。多国籍企業に認識させ、その情報に基づいて行動させなければならない」とゲオルク・ロイテルト・インダストリオール自動車担当部長は述べた。

「多国籍企業のデューデリジェンス・プロセスにおいて、労働者の声がより重要な役割を演じるようにする必要がある。労働組合を主要な情報源として認めさせなければならない」

トルコの組合指導者は、自動車サプライチェーンの課題や経験、紛争事例を共有した。

「私たちは組織化にあたって重大な困難に直面しており、組合として、権利を守り、さらに強化していくことが重要だ。私たちは支援を必要としており、私たちにとって国際連帯は欠かせない」とYunus Degirmenciウズチェリク・イス会長がサンパの組合つぶしについて述べた。

Pevrul Kavlakトルコ・メタル会長は、組織化にあたって組合が直面している問題を繰り返し強調した。

「たとえ私たちが職場で労働者の過半数を組織化し、団結権を持っていても、使用者は私たちに対して訴訟を起こすことがある。こういうことが何度も起こっており、職場の組織化がほとんど不可能になっている。私たち全員が、単独では闘えないことを知っている。団結する必要がある」

ビルレシク・メタル・イスのアドナン・セルダログル会長は、団結の必要性を力説した。

「政府による反労働者的な法律の可決、組合つぶし、侵害に抗議する労働者のレイオフに直面して、組合同士が反目している余裕がないことは明らかだ。勝つために力を合わせなければならない」

自動車メーカーのフォルクスワーゲン、MAN、メルセデスの代表がワークショップに参加し、どのようにサプライチェーンで持続可能性と労働者の権利の尊重を確保しているかについて参加者に話した。

VWのフィリップ・ブレックマンによると、このドイツ企業はサプライヤー全社に対し、結社の自由、労働・健康保護、非差別の保証を義務づけている。何万ものサプライヤーや下位サプライヤーがいるフォルクスワーゲンは、全世界で多数の監査を実施し、自己評価データベースを維持している。

MANトルコのMustafa Iskifoğluが、問題が発生する前に対話することの必要性を指摘し、そのために同社には労使双方が署名した憲章があると述べた。

メルセデス・ベンツ・トルコのYiğit Özgünelが、ブルサ市のサプライヤーBodo Bodeにおけるトルコ・メタルの組織化活動で、同社の介入が役割を果たした経緯を説明した。

会合参加者は、グローバルな連帯の必要性と重要性を認めた。国際運動は組合の基本的権利を保護しなければならず、力をつけなければならない。フォード労働者を組織化している米UAW、フランスのFGMM-CFDTとFTM-CGT、ドイツIGメタル、イタリアFIM-CISLが、トルコの自動車労働者への連帯支援を表明した。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長が、トルコの自動車部門で組合の力を強化する必要があると強調した。

「私たちは、サプライチェーン全体がCOVID-19の影響を受けている危機的な時期に集まった。このワークショップは絶好の重要な出発点になる。今後の措置はマッピング、ワークショップ、多国籍企業の組織化だ」

「トルコの労使関係は複雑だが、組合の力を強化して国際連帯を表明すれば、私たちには新しい制度を求めて闘う力がある」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

 

ベラルーシで人権尊重を要求

2020-12-11

<JCM記事要約>

  • ベラルーシでは1994年に現政権が成立してから、労働者の権利が抑圧され続けてきたが、今年8月以降の抑圧はこれまでの規模を凌駕している。
  • 労働者の権利は人権の不可欠な部分であるが、権利を侵害する同国の状況と責任者の刑事免責に対し、国際社会は憤慨している。すべての侵害の責任者は、特に欧州連合から、すでに制裁を受けている。
  • インダストリオールは、民主主義と基本的人権、自由を求めて闘うベラルーシの国民と労働者を全面的に支持し、労働者の権利と人権がベラルーシで完全に安定し、尊重されるようになるまで、連帯行動を続ける、とした。

 

本日12月10日は国際人権デーだが、自由と民主主義を求める4カ月間の闘いを終えてもなお、ほとんどのベラルーシ国民はこの日を心から楽しむことができない。

国連総会が世界人権宣言(UDHR)を採択してから70年後に、不正な大統領選挙でベラルーシが極めて不確実な状況に陥ろうとは、誰も予測できなかっただろう。

人権保護団体によると、今年8月以降、3万人以上が拘留され、抗議者に対して900件以上の刑事告発が行われ、ジャーナリスト373人が逮捕され、156人が政治犯として収容され、抗議に関連して少なくとも7人が殺害されたという。加えて、拘留中および拘留後の拷問が実に4000件も公表されたが、平和的な抗議で侵害や残虐行為にかかわった警察に対する調査は1回も行われなかった。

1994年に現政権が成立してから、労働者の権利が甚だしく抑圧されているが、最近の抑圧の規模は過去に報告されたあらゆる事件を凌駕している。ベラルーシのインダストリオール加盟組織は、組合員の拘留、強制解雇、その他の迫害を何百件も報告している。

適正な労働条件に対する権利、結社の自由、権利平等、差別に対する保護など、労働者の権利は人権の不可欠な部分である。ベラルーシの状況は専制的であり、犯人の刑事免責は政府機関への信頼を損なっている。

国際社会は現状に憤慨しており、すべての侵害の責任者は、特に欧州連合から、すでに制裁を受けている。しかし、もっと多くのことをする必要があり、ベラルーシ当局への圧力を強め、民主的で透明な統治を直ちに回復させなければならない。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。

「インダストリオール・グローバルユニオンは、民主主義と基本的人権、自由を求めて闘うベラルーシの国民と労働者を全面的に支持する。労働者の権利と人権がベラルーシで完全に安定し、尊重されるようになるまで、連帯行動を続ける」

 

家庭内暴力と労働組合の役割に関する説明

2020-12-10

<JCM記事要約>

  • COVID-19パンデミック下の外出禁止や強制的な共同生活により、家庭内暴力のリスクが高まっている。ジェンダーや民族は関係ないが被害者の大多数が女性であり、失業、所得減少により、被害者は虐待者との同居を続けざるを得ない。
  • 家庭内暴力は家庭で始まるかもしれないが、仕事の世界に波及する上、安全衛生問題ともなり、被害者・生存者ならびに同僚の安全衛生リスクを示しうる。
  • ILO190号条約の前文においても、「家庭内暴力が雇用、生産性ならびに健康および安全に影響を及ぼすおそれがあること、ならびに政府、使用者団体および労働者団体ならびに労働市場に関する機関が、他の措置の一部として、家庭内暴力の影響を認識し、これに対応し、対処することに寄与し得る」とされている。
  • 労働組合は、家庭内暴力の兆候に気づき、被害者を支援すること、また差別とジェンダー不平等の影響に対する認識を高め、組合員と労働者を教育することが求められる。

 

家庭内暴力は家庭で始まるかもしれないが、仕事の世界に波及することがある。家庭内暴力は安全衛生問題でもあり、被害者・生存者ならびに同僚の安全衛生リスクを示す。

1. 家庭内暴力とは何か?

家庭内暴力には、家族もしくは家庭単位の中で、または以前もしくは現在の配偶者もしくはパートナーの間で発生する、すべての身体的、性的、精神的または経済的暴力行為が含まれる。家庭内暴力は、ある人が、親密な関係または家族的な関係を持っているか、持っていたことがある別の人を統制または支配するために利用する行動パターンである。

精神的虐待は、ストーキングやハラスメント、強制的管理など、さまざまな形を取ることがある。加害者の行動の狙いは、強制的管理を通して、脅迫、屈辱および威嚇またはその他の虐待によって被害者・生存者に危害を加え、不当に取り扱い、怖がらせ、支援から引き離し、被害者・生存者を従属または依存させることである。

虐待者は経済的暴力によって、ある人が雇用機会や経済資源にアクセスするのを妨げようとする。家庭内暴力の経験は、長期に及ぶ身体的・精神的・情緒的健康問題を招くことがあり、最も極端な場合、女性に対する暴力は死をもたらす恐れがある。これは女性が経験し得る最も極端な形態の抑圧である。

出所:イスタンブール条約、ユナイト・ザ・ユニオン「家庭内暴力と虐待――交渉者ガイド」、2018年ILO報告

2. 家庭内暴力、家族内暴力、親密なパートナーからの暴力の違いは何か?

親密なパートナーからの暴力とは、「現在または以前のパートナーまたは配偶者による身体的、性的または精神的危害」を指す。家庭内暴力とは、「パートナーによる暴力」を指すが、「[……]児童虐待もしくは高齢者虐待、または家族による虐待を含むこともある」。家族内暴力とは、「児童虐待、兄弟による暴力、親密なパートナーからの暴力および高齢者虐待」を指す。

出所:家庭内暴力と仕事の世界におけるその影響に関するILO資料、2020

3. 家庭内暴力の被害者または生存者とは?

暴力的な関係にある間に、または暴力的な関係を断ったあとに援助を求める人をどう呼ぶか。

状況に応じて「被害者」、「生存者」の両方が使われる。「被害者」という言葉は、法執行機関当局者によって、あるいは裁判手続きの枠内で用いられる。しかし、受動的な姿勢を暗示することがある「被害者」と対照的に、虐待への積極的・創造的かつ臨機応変な対応を強調する「生存者」という言葉が好まれることもある。

結局、被害者から生存者に至るプロセスは人それぞれなので、支援を求める人に合わせることが絶対に必要である。そのために、被害者・生存者という言葉を使う人が増え始めている。

出所:ウィメンズ・エイド「生存者ハンドブック」、ウィメン・アゲインスト・アビューズ「私たちが使う言葉」

4. 庭内暴力の主な被害者・生存者は誰か?

誰もが家庭内暴力の被害者・生存者または加害者になる可能性がある。人々は、ジェンダー、民族、階級、年齢、人種、宗教、障害、性的指向または性同一性に関係なく、家庭内暴力を経験する。

しかし、これまでの証拠から、親密なパートナーからの暴力として理解されているように、家庭内暴力で苦しむ人々の大多数が女性であり、加害者の大多数が男性であることは明らかである。

全世界で女性の35%が、親密なパートナーからの身体的または性的な暴力や、パートナー以外の人物による性的暴行を経験している。親密なパートナーからの暴力は、女性が経験する暴力の大多数を占めている。毎日137人の女性が家族に殺されている。

家庭内暴力は、ジェンダーに基づく暴力の現れである。

ジェンダーに基づく暴力と女性に対する暴力は、同じ意味で使われることが多い言葉である。というのも、女性に対する暴力のほとんどはジェンダーに基づく理由で(男性によって)加えられ、ジェンダーに基づく暴力は女性に不釣り合いに悪影響を与えるからである。女性に対するジェンダーに基づく暴力とは、女性であるという理由で女性に向けられる暴力、女性に不釣り合いに悪影響を与える暴力を意味する。

出所:国連ウィメン「データ:女性に対する暴力の撤廃」、「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」、国連、1993年

5. なぜ女性は家庭内暴力の被害者・生存者の大多数を占めているのか?

家庭内暴力は権力の乱用である。女性に対する暴力は、歴史的に不平等な男女の力関係の現れである。これは男性による女性に対する支配および差別を招き、女性が十分に進歩することも妨げている。女性に対する暴力は、女性を男性よりも従属的な立場に追い込んでいる極めて重要な社会メカニズムの1つである。

女性に対する暴力は、公的な場であれ私的な場であれ、男子家長制社会を含む社会を支配している社会的・文化的な構造、基準および価値観に深く根ざしており、しばしば否定と沈黙の文化によって永続化されている。

出所:女性に対する暴力の撤廃に関する宣言、国連、1993

6. 他の女性よりも大きなリスクにさらされている女性がいるか?

すべての女性は、ジェンダー、年齢、民族、社会経済的地位、宗教、性的指向および性同一性に関係なく、家庭内暴力を経験する可能性がある。しかし、障害者、バイセクシャル、移民の若い女性など、特定グループの女性はより大きなリスクにさらされている。

恥と不名誉は強力な文化的概念であり、一部のマイノリティー女性は、助けを求めても社会的に排斥・拒絶されるかもしれない。レスビアンやゲイの男性も家庭内暴力を経験することがあり、警察から、あるいは支援サービス内部で偏見を経験することがある。トランスジェンダーの男女を取り巻く状況を特に認識しておく必要がある。高齢女性や障害を持つ男女、農村居住者も、さらなる障害に直面している。

出所:TUC「職場における家庭内虐待の被害者への支援」、ユナイト・ザ・ユニオン「家庭内暴力と虐待――交渉者ガイド」

7. 家庭内暴力は人権侵害になるか?

女性に対する暴力は、女性の人権と基本的自由の侵害である。

女性には、政治、経済、社会、文化、市民またはその他のあらゆる分野で、すべての人権と基本的自由を平等に享受し、保護される権利がある。

これらの権利には以下が含まれる。

  • 生存権
  • 平等の権利
  • 自由と身の安全に対する権利
  • 法律の下における平等な保護に対する権利
  • あらゆる形態の差別から自由である権利
  • 可能な限り高い心身の健康の基準に対する権利
  • 公正で好ましい労働条件に対する権利
  • 拷問またはその他の残酷な、非人間的な、もしくは名誉を傷つける扱いもしくは処罰を受けない権利

社会的なものであれ、文化的なものであれ、宗教的なものであれ、女性に対する暴力は正当化できない。

出所:女性に対する暴力の撤廃に関する宣言、国連、1993

8. なぜCOVID-19期間中に家庭内暴力が増加しているのか?

COVID-19パンデミック期間中に、世界中で家庭内暴力の報告が増えている。

パンデミック発生とそれに伴う外出禁止の社会的影響が、社会的交流の減少と相まって、強制的な共同生活に固有の緊張と家庭内暴力のリスクを高めているのかもしれない。

男性が犯す場合の多い家庭内暴力は、男性が女性に対して権限を行使し管理する、男性優位の考え方に深く根ざしている。個人レベル、家庭レベルの危機や不確実性が高まる中で、暴力の加害者は支配権を再び主張し、ロックダウンに起因する欲求不満を暴力行為の増加によって表明したくなるのかもしれない。

経済的管理は虐待者の主たる手段であるため、COVID-19がもたらす景気後退は失業の増加および所得の減少とともに、虐待関係にある女性にとって特に危険である。財政的な不安定によって、被害者は虐待者との同居を続けざるを得なくなるかもしれないしたがって、政府がCOVID-19パンデミックへの公共政策対応のすべての部分で、親密なパートナーからの暴力を優先させることが重要である

出所:国連ウィメン「COVID-19と女性・少女に対する暴力の撤廃に関する資料」、OECD「COVID-19危機との闘いの中核を成す女性」

9. アルコールや薬物は家庭内暴力を正当化するか?

家庭内暴力は言い訳も正当化もできない。女性に対する攻撃は、女性を物や財産とみなす考え方の遺産である。虐待するパートナーは多くの場合、女性に対する暴力は「普通のこと」であるという一定レベルの社会的受容によって守られている。

ストレスや薬物、アルコールは、家庭内暴力のリスクを高める要因であり、攻撃を誘発することがある。だが、家庭内虐待をそれらのせいにすることはできない。ストレスにさらされていてアルコールや薬物を使っていても、虐待的ではなく、いかなる形態の虐待もしていない人は多い。

家庭内虐待は「痴情ざた」であり、瞬間的なコントロール不能であるという誤った社会通念も広まっている。だが、家庭内虐待はコントロールの喪失であることはめったになく、コントロールすることなのである。虐待者は虐待相手をコントロールしている。

出所:ウィメンズ・エイド

10. 被害者・生存者の行動は家庭内暴力を正当化する理由になり得るか?

被害者・生存者が非難され、虐待する男性が許されることが多すぎる。おそらく、彼は妻の挑発的な行動に反応していたのだろうとか、彼女がそれを求めていたのだろうとか。女性が自ら招いたことだと責められる場合もあるかもしれない。

だが、家庭内暴力は弁解のしようがない。暴行されたり、精神的に苦しめられたりして当然という人はいない。

この広く行き渡った根深い考え方は危険である。なぜなら、挑発という言葉は、私たちが女性を責めており、虐待者を自らの行為に対する責任から開放することを意味するからである。いかなる種類の虐待や暴力も、決して被害者・生存者のせいではない。加害者だけが非難されるべきである。

出所:ウィメンズ・エイド

11. なぜ被害者を責めることは危険かつ有害なのか?

社会が大きく変化しているにもかかわらず、男性は相変わらず、女性に対する暴力がありふれた許容できることとされる、男子家長制社会と著しく男性優位の文化の中で育つ。悲しいことに、いまだに女性は、被害者になったときにその出来事を報告すると、信じてもらえなかったり、自分の行為を責められたりする。

いかなるジェンダーに基づく暴力に関しても、被害者を責めることは有害である。そのような非難は暴力の加害者を見逃し、その責任を一部免除する役目を果たす。この種の暴力を許容する環境は、被害者・生存者が援助を求めたり暴力を報告したりすることを妨げ、加害者の刑事免責を奨励することになりかねない。誰であれ虐待を報告する人が、そのような出来事の報告が深刻に受け止められ、聞き入れられると確信することが不可欠である。

出所: UNISONガイド「家庭内暴力と虐待――労働組合の問題」

12. 男性が家庭内暴力の被害者・生存者になることもあるか?

女性が暴力の被害者・生存者の大多数を占めているとしても、男性や男の子も被害者になることがある。多くの男性被害者・生存者は、信じてもらえなかったり、弱いと思われたりすることを恐れて報告したがらない。

13. なぜ家庭内暴力の被害者・生存者は逃げ出さず、虐待を報告しないのか?

虐待関係から抜け出すことは容易ではない。家庭内暴力の重要な要素は、恥と孤立である。

多くの女性が信じてもらえないことを恐れ、子どもを失うこと(加害者がよく使う脅し)を恐れている。これらの問題に、虐待関係の中で押し付けられる社会的孤立、低い自尊心、金銭面の心配、将来の暴力に対する恐怖も加わって、女性は、特に自分に依存している子どもや他の大人がいる場合は、関係を続ける以外に選択肢がないと感じてしまうかもしれない。

女性がその場にとどまるのは、パートナーが変わってくれる可能性があると信じているからである。これによって状況が非常に複雑になり、簡単に解決できることはめったにない。女性たちは、家族が一緒にいられるようにしておき、関係を維持する責任がまだあると感じている。さらに虐待者は、多くの場合、他人には分からないかもしれない巧妙な方法で、被害者・生存者に影響を与えたり傷つけたりする術を知っている。

被害者・生存者は、仮の宿泊施設で、生活保護を受けて、あるいは子どもを施設に入れることを心配しながら、生活する羽目になるかもしれない。家を去ることは、家族や友人から離れて馴染みの薄い地域に引っ越すことを意味するかもしれない。

出所:ユナイト・ザ・ユニオン「家庭内暴力と虐待――交渉者ガイド」、UNISONガイド「家庭内暴力と虐待――労働組合の問題」

14. 第190号条約と第206号勧告はジェンダーに基づく暴力について何と言っているか?

条約の前文は、「家庭内暴力が雇用、生産性ならびに健康および安全に影響を及ぼすおそれがあること、ならびに政府、使用者団体および労働者団体ならびに労働市場に関する機関が、他の措置の一部として、家庭内暴力の影響を認識し、これに対応し、対処することに寄与し得る」と強調している。

よって、同条約は加盟国に対し、「家庭内暴力の影響を認識し、合理的に実行可能な限り、仕事の世界におけるその影響を緩和すること」(第10条(f))を要求している。

勧告は、さらなる指針を提供し、「加盟国は[……]仕事の世界における家庭内暴力の影響を緩和する手段として、団体交渉権の実効的な承認をすべての段階において促進するための適当な措置を取るべきである」(4(a))と述べている。

この文書は、これらの影響を緩和するために取り得る措置を列挙している。すなわち、「家庭内暴力の被害者のための休暇」、「家庭内暴力の被害者のための柔軟な就業形態および保護」、「適当な場合には、家庭内虐待暴力の被害者の解雇(家庭内暴力およびその結果とは関連しない理由による解雇を除く)からの一時的な保護」、「職場の危険性の評価に家庭内暴力を含めること」、「家庭内暴力の公的な緩和のための措置が存在する場合には、当該措置を紹介する制度」、「家庭内暴力の影響についての啓発」(18)である。

出所:ILO第190号条約、ILO第206号勧告

15. なぜ家庭内暴力は職場問題でもあるのか?

家庭内暴力は家庭で始まるかもしれないが、仕事の世界に波及する可能性がある。

虐待するパートナーは被害者を職場まで追いかけたり、仕事用の電話やコンピューター技術を使って脅迫、嫌がらせあるいはコントロールしようとしたりするかもしれないし、被害者と同じ場所で働いていることもあるだろう。

家庭内暴力は、家庭内暴力の被害者・生存者にもたらすストレスやトラウマを通して仕事の世界にも波及し、職場での業績に影響を与えることがある。

家庭内虐待の経験者は虐待の結果、休暇を取得しなければならなくなったり、仕事に遅刻したりするかもしれない。虐待者は被害者を負傷させたり、脅したり、車のキーや金銭を盗んだりして出勤を妨害するので、被害者は仕事に行けなくなってしまう。

家庭内虐待は個人の安全に影響を及ぼすだけでなく、他の従業員の安全や労働環境に悪影響を与えることもある。他の従業員は、仕事量の増加やストレス、同僚の虐待者による電話や訪問、その他の潜在的な安全上のリスクによって、家庭内暴力の悪影響を経験する。家庭内虐待は、生存者・被害者と同僚の間に対立や緊張を引き起こすことがある。

コロナウイルス危機対策の導入や在宅勤務の増加で、多くの人にとって家庭が新たな職場になっている。それは家庭内虐待の危険にさらされている女性にとって、安全とは言えない職場である。

出所:家庭内暴力と仕事の世界におけるその影響に関するILO資料、2020年、TUC「職場における家庭内虐待の被害者への支援」

16. なぜ使用者は家庭内暴力が職場に与える影響に取り組むべきなのか?

家庭内暴力は、影響を受けた従業員の健康、福祉および安全を著しく妨げる恐れがある。すべての使用者には労働者に対する「注意義務」がある。安全衛生法は、労働者が、健康と福祉に対するリスクが考慮され、効率的に対処される安全な環境で働く権利を持てるようにする。仕事場における被害者の殺害は、家庭内暴力が職場でいかに重大な影響を及ぼし得るかを如実に示している。

使用者は、従業員を危害から安全に守るために、その状況下で合理的なあらゆる措置を講じなければ、注意義務を怠ったとみなされることがある。

家庭内虐待は、生産性の低下、欠勤の増加、ミスの増加、従業員の離職率の上昇をもたらす。他の従業員にも影響を与え、欠勤した同僚や生産性の低い同僚の代わりを務めなければならなくなったり、被害者・生存者に憤りを感じたり、被害者・生存者を迷惑な電話や訪問から守ろうとしたり、無力感を覚えて仕事に集中できなくなったり、自分の身の安全を心配したりする従業員がいるかもしれない。

人権デューデリジェンスに関する国連ジェンダー指針は、企業は「変革をもたらす」、すなわち「差別的な権力構造に系統的変化をもたらす」ことができる措置や是正策を立案すべきである、と定めている。企業が家庭内暴力と虐待は受け入れがたいというメッセージを送れば、波及効果をもたらして強いメッセージを社会全体に広げ、家庭内暴力を当たり前のこととして受け入れさせている社会規範の変化に貢献する可能性がある。

出所:TUC「職場における家庭内虐待の被害者への支援」、UNISONガイド「家庭内暴力と虐待――労働組合の問題」、ビジネスと人権に関する指導原則のジェンダー側面

17. なぜ労働組合は行動を起こすべきなのか?

家庭内暴力の被害者・生存者にとって、仕事は虐待者からの避難所であり、そこで働いて能力を評価してもらうことができ、同僚との交流によって孤立感を和らげることができる場所である。仕事は収入源と経済的自立も示す。

家庭内暴力は職場での業績に影響を及ぼし、被害者・生存者は処罰や解雇に直面するかもしれない。家庭内虐待を経験した結果、雇用や所得を失うようなことがあってはならない。収入源を失うことによって独立性を失い、虐待者から離れにくくなってしまう。労働組合は、これらの組合員や労働者の権利を擁護する必要がある。

連帯と平等は労働組合活動の大きな柱である。女性に対する暴力は差別の過激な表現である。労働組合は、家庭内暴力の被害者・生存者である労働者を支援・保護する方法を見つけなければならない。

家庭内暴力は安全衛生問題でもあり、被害者・生存者および同僚の安全衛生リスクも示す。

出所:TUC「職場における家庭内虐待の被害者への支援」、OFL「家庭内暴力は毎日職場にやってくる――交渉ガイド」、「沈黙を破る、IUF加盟組織向けブリーフィング」

18. 家庭内暴力が職場に及ぼす影響への対処

組合は差別とジェンダー不平等の影響に対する認識を高め、組合員と労働者を教育すべきである。家庭内暴力をはじめ、女性に対する暴力を生み出して正当化する、ジェンダー・ステレオタイプや社会規範に異議を申し立てなければならない。

第190号条約はジェンダーに基づく暴力をなくすために、「根底にある原因および危険要因(定型化されたジェンダーの観念、複合的な形態の差別、ジェンダーに基づく不平等な力関係を含む)に対処」する「ジェンダーに配慮した取組方法」を求めている。

労働組合は、家庭内暴力など、あらゆる形態のジェンダーに基づく暴力を非難するための措置も講じ、以下によって、この問題に関する認識を高めるべきである。すなわち、例えば内部の方針、行動規範または平等声明の策定および暴力とハラスメントのない組合環境の促進、家庭内暴力と職場に関する記事や資料の発表、家庭内暴力と闘っている市民社会組織・団体との協力である。

家庭内暴力に取り組む主要責任は政府にある。労働組合は市民社会組織・団体とともに、法律で有給休暇その他の条項を達成するために運動している。例えば、フィリピンとニュージーランドでは強力なキャンペーンによって家庭内暴力の被害者・生存者の10日間の有給休暇が、オーストラリアでは5日間の無給休暇が、カナダではほとんどすべての州で5日間の有給休暇が導入された。

あなたの国には現在、女性に対する暴力に関するどのような法律があるか調べてみてほしい。

労働組合は、政府に対してロビー活動を行い、ILO第190号条約を批准し、官民いずれの職場であれ、政府・使用者が家庭内暴力によって深刻な影響を受ける労働者への注意義務を果たすようにするためにも取り組んでいる。

出所:ユニフォー「家庭内暴力に直面する労働者――経済支援を求めるロビー活動」、ILO第190号条約、オーストラリアのACTUキャンペーン「私たちは待たない!」

19. 労働組合はどうすれば組合員や労働者を支援することができるか?

被害者・生存者は、特に職場では、暴力を受けていることを隠そうと大変な努力を払う。女性は黙って悩み、恐怖のあまり、あるいは羞恥のあまり助けを求めることができない。組合が家庭内暴力に異議を申し立て、被害者を擁護してくれると信じている組合員は、名乗り出て信頼できる組合代表に頼る可能性が高い。

組合代表は配慮していることを示すことによって、被害者の孤立を打破することができる。虐待を報告する人が、そのような出来事の報告が真摯に受け止められると確信できるようにすることが欠かせない。組合が代表を訓練し、家庭内暴力の兆候に気づき、被害者・生存者の話を聞いて秘密裏に支援し、既存のサービスに連絡をつけられるようにすることが重要である。

AMWUの「代議員向けべし・べからず集ガイドライン」のように、労働組合は組合代表や代議員向けにガイドラインや訓練を企画し、彼らの支援の試みが損害の拡大や逆効果を招いたり、誰かをさらに危険な状況に追い込んだりしないようにしている。

カナダのユニフォーは「女性擁護者プログラム」を取り決め、現在、全国の職場に400人を超える女性擁護者がいる。使用者は、職場や私生活でハラスメントや暴力を経験している女性を助ける専門組合代表のために、訓練やオフィススペースの費用を負担している。擁護者は、個人的判断を避けて内々に支援したり、職場や地域社会で取り得る方策について説明したり、組合員がそれらの制度を利用するのを手伝ったりする。擁護者は、虐待の兆候に気づき、紹介を行い、安全計画に関して使用者と協力するために訓練を受ける。

20. 団体交渉で使用者と何を交渉すべきか?

家庭内暴力に関する確固たる職場方針の策定は、家庭内暴力が職場に与える影響に取り組むうえで重要である。使用者は、安全衛生委員会や労働者代表とともに方針を立案すべきである。

この方針には以下を盛り込む。

  • 家庭内暴力に反対する声明
  • 家庭内暴力の兆候に気づく方法、安全かつ適切に対応する方法に関する人事担当者・管理者ならびに従業員向けの訓練や認識向上セッション
  • 被害者・生存者のための保護対策と就業形態
  • 公表に対する報復・差別からの保護
  • 厳格な守秘義務条項
  • 家庭内暴力を公表した場合の職場安全戦略(被害者・生存者と同僚のリスク評価や安全計画など)

労働組合は、全レベル(国家、地域、部門、企業または職場レベル)の労働協約や、職場の暴力とハラスメントに関する方針に、家庭内暴力を盛り込むために交渉することもできる。

労働協約や方針の対象となる暴力の一例として家庭内暴力を挙げたり、家庭内暴力を重要な職場問題として認め、具体的なフォローアップと保護対策を要求する独立した規定を取り決めたりすることができる。安全衛生職場方針で公然と家庭内暴力に挙げることによって、家庭内暴力を恥ずかしいことと思わせないようにするために取り組んでいる。

被害者・生存者向けの保護対策には、次のようなものがあるだろう。

  • 被害者・生存者のための解雇に対する一時的な保護
  • 仕事のスケジュールを調整したり、偽名を使ったり、フレックスタイム制で働いたりできる就業形態
  • 労働時間や職場に関する知識を利用する虐待者から身を守るために必要な変更を加えることの許可

家庭内暴力の被害者・生存者専用の休暇は、被害者・生存者が逃げ出したり、訴訟手続きに対処したり、支援やサービス、救済策を利用して安全に暮らしたりできるようにするので重要である。

家庭内暴力の生存者が、自分の安全、家族の安全、雇用の中から選ばなければならないようなことがあってはならないため、労働組合は、現行の休暇条項に加えて年間最低10日間の有給休暇を取り決め、特別な事情がある場合は延長すべきである。使用者が有給休暇条項に同意しない場合は、生存者のポストが保証されることを条件として、無給休暇が暫定的な基本方針となる。

出所:TUC「家庭内暴力職場のためのガイド」、USW「労働協約で家庭内暴力に取り組む方法に関する交渉ガイド」、ユナイト・ザ・ユニオン「家庭内暴力と虐待――交渉者ガイド」、OFL「家庭内暴力は毎日職場にやってくる――交渉ガイド」、CUPE「家庭内暴力と職場に関するガイド」、CLC「労働協約のためのモデル規定」、IUF加盟組織向けブリーフィング

21. ロックダウンやテレワーク増加という状況下で、労働組合は何ができるか?

家庭内暴力の増加を受けて、労働組合は、家庭内暴力の被害者・生存者向けの支援・緊急サービスの連絡先を積極的に公表している。政府にも働きかけ、シェルターのためのサポートやジェンダーに基づく暴力支援サービスの拡充や、女性が暴力のスパイラルから脱け出せるようにすることを目的とする基金の設立を求めている。

社会的に孤立すれば、危険にさらされた人々が、通常なら虐待の兆候に気づくかもしれない人たちと接触しにくくなってしまう。代表や同僚は、電話やビデオ電話で秘密裏に連絡を取る口実があるので、支援できるチャンスが最も大きいだろう。

職場委員は、組合のコミュニケーション・チャンネルやウェブサイト、携帯メールを通して組合員と連絡を保ち、家庭で安全を感じているかどうか尋ねることができる。労働組合は、家庭内暴力安全対策や援助を求める方法について、定期的に情報を回覧すべきである。代表は家庭内暴力が起こっていそうな兆候を見極め、ロックダウンや在宅勤務のために自宅にいる被害者・生存者をサポートすることができる。

労働組合は、在宅勤務中の従業員の被害者・生存者を支援する新しい方法を見つけたり、職場や家庭への警備計画を調整・導入したりするためにも、使用者と協力・交渉すべきである。

出所:「代表のためのTUC指針――家庭内虐待とコロナウイルス」、「労働組合のための指針」(dv@worknet

22. 家庭内暴力の加害者が労働者や労働組合員である場合は、どうすべきか?

加害者が同僚や組合員、組合代表である場合の対処という問題の解決策を見つけることは、重要かつ困難である。

虐待者は、仕事時間や職場の機器を使って虐待的なメッセージを送ったり、暴力行為を計画・実行したりするかもしれない。そのことで頭が一杯になったり集中できなかったりし、業績に影響が出ることもあるだろう。安全な労働環境を提供し、虐待行為にかかわる労働者に説明責任を負わせることは、使用者の責任である。

解雇を含む懲戒処分や制裁を適用せざるを得ないこともある。使用者は、加害者が虐待行為をやめられるよう手助けすることができる。懲戒処分には、加害者向けのカウンセリングや治療プログラムへの参加を含めることができる。

組合が、話の仕方や家庭内暴力の加害者である組合員の扱い方について、労働組合役員・代表向けに明確なガイドラインを設けることが重要である。労働組合は組合代表に、同僚や組合員が家庭内虐待を行っているかもしれないと考える場合は、彼らに連絡を取って支援のために指針を与えるよう勧めることができる。

懲戒処分にあたって、組合は加害者を代表することを要求されるかもしれない。組合代表は合理的に適応するために、あらゆる選択肢を見直すべきである。虐待者は、自分の行為が間違っており、容認されないことを知る必要がある。

被害者・生存者と加害者が同じ会社で働いている場合は、両者が職場で接触しないよう確保するために措置を講じる必要があるかもしれない。一方または両方の従業員の職務変更や情報アクセスの取り消しのような対策が必要になることもあるだろう。

出所:「代表のためのTUC指針――家庭内虐待とコロナウイルス」、OFL「家庭内暴力は毎日職場にやってくる――交渉ガイド」、「労働組合のための指針」(dv@worknet)

 

エレクトロラックスはCOVID関連の抗議を理由に解雇された労働者に補償せよ

2020-12-09

<JCM記事要約>

  • メキシコ・シウダードファレスのエレクトロラックス工場の従業員がCOVID-19に感染し、労働者が工場の閉鎖を求めたが、経営陣はこれを拒否し操業を継続した。労働者がこれに抗議したところ、99名の労働者が自発的解雇を強制された。
  • その後同社は一連の出来事の外部調査を実施した結果、内部プロセスに従わなかったことが明らかになった。同社は、元従業員と個人的に対話を開始し、解雇に関連するあらゆる紛争を完全かつ最終的に解決するために努力する、と発表した。
  • エレクトロラックス社はスウェーデンの組合およびインダストリオールとグローバル枠組み協定を締結しており、協定に定めるとおり職場で適切な予防対策を講じるよう経営陣に求めた労働者たちを尊重すべきで、十分な保護と補償に対する権利を無視してはならないとインダストリオールは主張した。

 

メキシコ・シウダードファレスのエレクトロラックス工場の労働者は今年前半、必要不可欠な仕事だけを許可する緊急命令が出され、従業員がCOVIDに感染し、個人用保護具がないにもかかわらず、経営陣が操業継続を主張した際、会社側を会話に引き入れようとした。それが失敗に終わると4月7日に抗議行動を開始、それに対して、このスウェーデンの多国籍企業は100人近くを解雇した。

COVID-19パンデミックが3月末にメキシコに波及し、従業員がウイルスに感染したあと、シウダードファレスのエレクトロラックス工場の労働者は経営陣に工場の閉鎖を求めた。ところが、生産は4月20日まで続き、その時までに16人の労働者が感染、2人がCOVIDで亡くなっていた。

経営側が工場閉鎖を拒否したことに抗議した労働者たちは、強制的に自発的解雇に同意させられた。合計99人が解雇された。何人かの労働者が自発的解雇に同意したのは、お金が必要だったからであり、メキシコでスウェーデンの多国籍企業を相手取って法的請求を行えば最大4年かかる可能性があることを知っていたからである。

エレクトロラックスは一連の出来事の外部調査を実施、その結果、同社が内部プロセスに従わなかったことが明らかになった。

「当社は、これらの出来事が不運な形でエスカレートしたことを認める。そこで当社は、元従業員と個人的に対話を開始し、解雇に関連するあらゆる紛争を完全かつ最終的に解決するために努力する。さらにエレクトロラックスは、現在の方針や慣例、訓練プログラムを見直し、極めて難しい状況下でも職場指令に従えるようにする」

スウェーデンのエレクトロラックス事業で労働者を代表しているインダストリオール加盟組織ユニオネンは、この調査とその結論を歓迎し、同社との真の対話を続けたいと考えている。

「解雇された労働者は正当な補償を受け、自ら選択する場合は代表される権利を与えられなければならない。エレクトロラックスは、現在の方針や慣例を見直すと発表した。これは心強いことであり、正しい方向への一歩だ。直接の対話と労働者への発言権の付与が極めて重要だ」

松崎寛インダストリオール電子担当部長は言う。

「エレクトロラックスがスウェーデンの組合およびインダストリオールと締結したグローバル枠組み協定は、世界中で労働者の権利を尊重するための枠組みを提供している。自らの権利を平和的に行使し、協定に定めるとおり職場で適切な予防対策を講じるよう経営陣に求めた労働者たちを、同社は尊重しなければならない」

「シウダードファレスの状況はまだ予断を許さず、エレクトロラックスは十分な保護と補償に対する労働者の権利を無視してはならない」

ユニオネンとインダストリオールは、引き続き状況を注意深く監視していく。

 

WTO加盟国は手頃な価格の医薬品へのアクセスを確保すべき

2020-11-25

<JCM記事要約>

  • COVID-19パンデミック危機から回復するうえで最も重要な手頃な価格の医薬品やツールなどへのアクセスの不足に多くの国々が直面している。
  • 特にワクチンおよび薬剤など手頃な価格の医薬品に関わるWTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)に対して、インドと南アフリカはTRIPS放棄案を提案している。WHOは、TRIPS協定は医薬品の製造能力のない国の人々を救う能力を制限してしまうとし、放棄案を歓迎している。
  • インダストリオールは、この目的を達成するために、WTO加盟国に対し、COVID-19 TRIPS放棄案の採択を支持するよう要求し、さらに他のグローバル・ユニオンとともに、400を超える国内・国際組織が署名したグローバルな市民社会声明を支持している。

 

インダストリオール・グローバルユニオンはWTO加盟国に、TRIPSコロナ放棄案を支持し、手頃な医薬品アクセスを確保するよう求めている。

COVID-19パンデミックは仕事の世界に深刻な影響を与え、何百万もの労働者が職を失った。商品・サービスの生産、流通および消費と関連経済活動は、前例のない混乱と不確かな将来に直面している。世界経済が景気後退に陥っており、パンデミックは健康危機にとどまらず、世界の社会的・政治的・経済的安全保障の基礎を脅かしている。

COVID-19用の手頃な価格の医薬品やツール、ワクチン、診断および治療へのアクセスは、危機から回復するうえで最も重要である。誰も置き去りにしてはならず、全員が保護されるまで誰も安全ではない。パンデミック発生当初から、医薬品の生産、技術の共有、手頃な価格の治療へのアクセス確保のために、協調的努力が求められてきた。

多くの国々が、医薬品と診断・検査・治療へのアクセスの不足に直面している。これらの課題、特にWTOの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)に起因する課題を克服するために、インドと南アフリカは、COVID-19の予防、抑制および治療のために特定条項の放棄を提案している。

放棄案は次のように強調している。

「特許、工業デザイン、著作権および未公開情報保護といった知的所有権は、ワクチンおよび薬剤など手頃な価格の医薬品へのタイムリーなアクセス、またはCOVID-19対策に不可欠な医薬品の研究、開発、製造および供給の拡大を妨げる障害を設けない」

世界保健機関(WHO)は、この提案を歓迎している。これらの規則の放棄が重要なのは、TRIPS協定に定められている柔軟性には限界があり、製造能力がない国々は医薬品を輸入するために煩雑な手続きに従う必要があり、緊急に必要としている人を救う能力を制限されてしまうからである。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。

「世界中の労働者が手頃な価格の医薬品への迅速なアクセスを必要としており、各国政府が協力して速やかに行動し、アクセスを確保して回避可能な死を防止する必要がある。パンデミック下での独占や不当利得行為は容認できない。治療、診断およびワクチンの手頃な価格による公正な分配を優先すべきだ」

「この目的を達成するために、私たちはWTO加盟国に対し、COVID-19 TRIPS放棄案の採択を支持するよう求める」

インダストリオールは他のグローバル・ユニオンとともに、400を超える国内・国際組織が署名したグローバルな市民社会声明を支持している。

 

アルゼンチン議会、第190号条約の批准を支持

2020-11-23

<JCM記事要約>

  • 11月11日、アルゼンチン下院議会はILO第190号条約批准法案を承認した。条約採択国としてはウルグアイ、フィジーに続き3番目となり、条約の批准にはアルベルト・フェルナンデス政権が、ILO本部に正式な批准書を寄託することが必要である。
  • アルゼンチンの組合は法案の承認を促進するにあたって重要な役割を果たした。組合は、これまで政府に条約の批准を求め続け、国内で暴力と職場のハラスメントの問題に関する認識も高め、広く条約の批准を促進している。
  • インダストリオールは、アルゼンチンは条約の批准が、より品位ある作業環境を生み出し、職場に暴力の入る余地はないというメッセージの発信をもたらし、さらに今後もすべての加盟組織に対し、第190号条約の批准達成に向けた取り組みの強化を促す、とした。

 

アルゼンチンで下院が批准法案を承認、同国はウルグアイとフィジーに続いて世界で3番目に、世界と仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関するILO第190号条約を採択しようとしている。

この法案は11月11日に大差で承認された。アルゼンチンが第190号条約と関連勧告(第206号)を批准するには、アルベルト・フェルナンデス政権が、スイス・ジュネーブのILO本部に正式な批准書を寄託しなければならない。

アルゼンチンは、条約を批准したら国内法を調整し、暴力と職場のハラスメントの両方の防止・対処に関する内容を盛り込まなければならない。

アルゼンチンの組合は、法案の承認を促進するにあたって重要な役割を果たした。CGTの連邦女性労働組合員グループのスポークスマンを務めるバネーゼ・シレイ議員は下院のセッションで、職場暴力撤廃キャンペーンにおいて組合間ネットワーク(ナショナルセンター3団体傘下の100を超える組合で構成)が果たした役割を強調した。

2019年6月に第190号条約が承認されてから、組合総連合は政府に同条約の批准を正式に求めてきた。組合は、アルゼンチンで暴力と職場のハラスメントの問題に関する認識も高め、広く条約の批准を促進している。

ジェンダー・繊維・電子・エネルギー・鉱業・鉄鋼担当のローラ・カーター・インダストリオール地域事務所所長代理は言う。

「アルゼンチンは第190号条約の批准によって、より品位ある作業環境を生み出し、職場に暴力の入る余地はないというメッセージを送る」

「パンデミック下でドメスティック・バイオレンスが増えている。この条約は、家庭の暴力は仕事の世界に影響を与えないという考えも一蹴している。すべての加盟組織に対し、第190号条約の批准達成に向けた取り組みを強めるよう促す