広報ニュース

第128号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2021年6月4日)

医薬品労組、COVID-19ワクチンへの普遍的なアクセスを支持

2021-05-27

<JCM記事要約>

  • 5月25日、医薬品労働者を代表している組合代議員がオンライン会議を開催し、パンデミック下で組合員が直面している課題について議論を行った。
  • これまでに投与されたワクチンの75%はわずか10か国での摂取にとどまっており、世界の大多数の国にワクチンが供給されることを妨げる障害の排除が求められている。
  • 会議ではワクチンへの普遍的なアクセスについての声明が採択され、インダストリオール・グローバル製薬産業労組ネットワーク 篠原議長は、すべての人へのワクチン接種は共通の目標であると述べた。

 

2021年5月27日:インダストリオール・グローバル製薬産業労組ネットワークは明確なメッセージを送った――私たちは生産する用意ができており、連帯の精神に基づいてパンデミック対策に貢献したい。
                                                      

27カ国42組合の医薬品労働者を代表している組合代議員が5月25日にオンライン会議を開き、パンデミック下で組合員が直面している課題に取り組んだ。出席者は強硬な態度を示し、COVID-19と闘うためのワクチン、検査、治療および治療薬への普遍的なアクセスや、次のような側面に関する声明を採択した。

「大量のワクチンを貯蔵または備蓄しないという各国による共通のコミットメントを要求し、すべてのワクチン生産国に対し、輸出を許可し、サプライチェーンを混乱させる措置を回避するよう求める」

会合では、これまでに投与されたワクチンの75%がわずか10カ国で接種され、アフリカではワクチン接種率が2%にすぎないという極端な世界的不平等に取り組み、WTOと第三世界ネットワークの専門家の話を聞いた。このグループは年2回会合を開き、一貫して普遍的な医薬品アクセスの政策方針に従っている。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は述べた。

「これは緊急事態であり、連帯を通してのみ、すべての地域に必要な速度でワクチンと治療を届けることができる。インダストリオールの医薬品労働者は、貢献し、生産を転換し、技術と技能を移転する態勢を整えている。このパンデミックの阻止に必要なものを、世界中の大多数の国々に届けるのを妨げている障害を取り除かなければならない

現在、毎日1万人が死亡、新規感染者は少なくとも50万人に上り、ブラジルとインドが最も甚大な影響を受けている。

インダストリオール指導部は、会合の直前にンゴジ・オコンジョ・イウェアラWTO事務局長と会談し、COVID-19ワクチンと医療用品への普遍的なアクセスを妨げる貿易障壁や、COVID-19パンデミック期間中のWTO知的所有権ルールの一時放棄をめぐって討議した。

ネットワークは、この部門の多国籍企業における組合の力の構築に関するセッションも行い、武田、サノフィ、フレゼニウス、グラクソ・スミスクライン(GSK)、ノバルティス、アストラゼネカ、B・ブラウンの組合活動を取り上げた。これらの重点企業で構築されている認識・対話のレベルはさまざまであり、すべての関連組合が意欲的な国際連帯・協調計画の続行を約束している。

インダストリオール・フィリピン製薬産業労組ネットワークが、この部門における組合の力の構築の有力な実例として紹介された。同ネットワークは長年の活動の末、部門別交渉の要求に関して政府の承認を得た。

篠原正人インダストリオール・グローバルユニオン・グローバル製薬産業労組ネットワーク議長は、会議の終わりに次のように述べた。

「本当に重要なのは、安全な労働環境を作れるようにするために協力することだ。COVID-19は重要な主題であり、このパンデミックを克服するために懸命に努力し、全世界のすべての労働者が安全な社会で安全な勤労生活を取り戻すようにしなければならない。すべての人のワクチン接種は、世界中で公衆衛生を改善するために決定的に重要な目標であり、これは私たちの共通の目標だ」

              

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グローバル・ユニオン、ILO総会でミャンマー軍事政権の正当性に異議申し立てへ

2021-05-18

<JCM記事要約>

  • グローバル・ユニオンは、6月に開催される第109回ILO総会にて決議案を提出し、ミャンマー軍事政権の正当性に異議を申し立てることを発表した。さらに組合に対し、各国政府に圧力をかけミャンマーの国家統一政府を承認、基金への寄付によって闘いを支援し、多国籍企業に協調的経済制裁への参加を要求するよう促している。
  • インダストリオールは、ミャンマーの同志を支持し、外国企業は軍事政権とのいかなる形態の協力にも関与してはならないとし、石油・ガス、衣料および繊維部門といった多国籍企業へ、軍事政権関連ビジネスを打ち切るよう要求している。

 

2021年5月18日:グローバル・ユニオン評議会はミャンマーの労働組合運動と連帯して、来る第109回国際労働総会(ILO総会)をはじめ、国連システム全体でミャンマー軍事政権の正当性に異議を唱えると誓約した。
                                                      

2月上旬のクーデター以降、国軍による流血の弾圧で、市民的不服従運動の参加者が750人以上も殺害されている。約3000人の選ばれた代表や活動家、労働者、学生が独断的に拘束され、拷問を受けている。

シャラン・バロウ国際労働組合総連合書記長は、ミャンマーの民主主義を求める労働組合の闘いに関する5月12日のウェビナーで発言、グローバル・ユニオンは6月のILO総会で決議案を提出し、軍事政権によるミャンマー代表の正当性に異議を申し立てると述べた。

ILO総会は1999年、軍事政権が強制労働を幅広く利用していることを理由に、あらゆるILO会合への同政権の参加を禁止した。この制裁は、ミャンマーの民主化プロセス開始後の2012年に解除された。

「次回のILO総会で具体的な行動を起こさなければならない。国軍は決議は気にしないが、制裁は恐れている。20年前、ILOがミャンマーに制裁を科すと、軍は態度を変え始めた」とマウン・マウン・ミャンマー労働組合総連合(CTUM)会長は述べた。

人道に反する罪を受けて、国際主体が連帯行動を起こしている。例えば、国軍関連企業に的を絞った政府の制裁、多国籍企業の投資引き揚げ、連帯キャンペーンや寄付、5項目の合意の発表によるASEAN諸国の調停などである。

グローバル・ユニオン評議会(CGU)は世界中の組合に対し、各国政府に圧力をかけてミャンマーの国家統一政府を承認するとともに、CGUストライキ基金への寄付によって闘いを支援し、多国籍企業に協調的経済制裁への参加を要求するよう促している。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は述べた。

「勝利を収めるまでミャンマーの同志を支持する。インダストリオールは多国籍企業に圧力をかけ、特に石油・ガス、衣料および繊維部門で、軍事政権関連ビジネスを打ち切るよう求めている。この不法な政府に一連の重大な人道に反する罪に対する責任を負わせなければならず、外国企業は軍事政権とのいかなる形態の協力にも関与してはならない」

ミャンマーの人権状況を担当するトム・アンドリュース国連特別報告者は、国際社会と労働組合に行動の強化を求め、「軍事政権に対する包括的制裁を要求するために、ミャンマー国外で運動を組織して大胆な行動を起こすことが重要だ」と述べた。

 

レポート:テレワークに関する制度的規制と団体交渉が必要な理由

2021-05-17

<JCM記事要約>

  • インダストリオールは、テレワークに関する社会的対話と団体交渉のための基本原則と実用的指針を作成した。これは、労働組合にテレワークが労働者のためになるようにする手段を与えることを目的としている。
  • テレワークはパンデミック以前から普及していたが、パンデミックによりさらに利用者が増加した。また、研究によると、労使双方がパンデミック終息後もテレワークを継続したいと考えていることが判明した。
  • しかし、テレワークは常に労働者にとって良いということではなく、テレワークにおける労働者の権利や労働安全衛生、待遇の平等に関する問題が発生し、「プラス面が徐々に消えていくかもしれない。そのような理由で、労働協約と法律を通してテレワークを規制することが重要」であると、アトレ書記次長は言う。

 

2021年5月17日:インダストリオールはテレワーク交渉に関するガイドラインをめぐって協議を開始した。
                                                      

特集

『グローバル・ワーカー』第1号(2021年5月)より

文:アーメル・セビー
テーマ:テレワーク交渉のためのガイドライン

 

 

 

 

 

 

テレワークはパンデミック下で大きく広がり、普及している。一部の労働者にとっては有意義な体験になっているが、長期間のリモートワークは限界とリスクも露呈している。労働組合は迅速に対応し、労働者が潜在的な落し穴を避けながらテレワークから利益を得られるようにしなければならない。

テレワークはCOVID-19ロックダウンに端を発するものではなく、新技術とデジタルツールの開発の結果である。OECDによると、2015年には製造業の労働者の25%が、労働時間の少なくとも一部をリモートで働いていた。

しかし、パンデミック期間中に全世界でテレワークの利用が激増した。欧州連合の数字によると、2019年時点のEUでは、いつも在宅勤務をしている労働者の割合は5.4%にすぎなかったが、パンデミックの結果、40%近くがフルタイムでテレワークを始めた。

これは将来の作業編成方法に大きな影響を及ぼす。研究によると、労使双方が、この健康危機が終息しても日常的にテレワークを続けたいと考えている。世界経済フォーラム(WEF)の調査によれば、使用者の80%以上が、テレワークの利用を増やして作業プロセスをデジタル化する予定である。

この展開は地域によって不均等かもしれない。というのも世界経済フォーラム(WEF)によると、リモートで実施できる仕事の割合は、高所得国では38%と推計されているのに対し、低所得経済では13%だからである。

適切な規制と労働組合との交渉があれば、テレワークは自主性と柔軟性の向上をはじめ、労働者に多くの利点をもたらすかもしれない。通勤しないことによって節約された時間を余暇や私生活に振り向けることができるため、生活の質と職務満足が向上する。

しかし、テレワークは労働者にとって常に良いとは限らない。リモートで働くかどうかを労働者が選べるようにすべきである。テレワークは任意でなければならず、労働者が取り決めを変更できるようにすべきである。

リモートワークのいくつかの要素は、労働者・労働組合の権利に難題を突きつけている。組合はテレワーク協定をめぐる交渉にあたって、これらの権利を保護するためのベースラインを定める必要がある。

国内労働法の主な対象は、使用者の直接管理下において職場で遂行される仕事である。これは労働安全衛生規則にも当てはまる。しかしリモートワークの場合は、使用者が直接管理しない場所で業務が遂行される。

  • どうやって使用者に注意義務を果たさせるか。
  • どうすれば使用者に職場における安全衛生の保証のような責任を果たさせることができるか。

パンデミックは、長期に及ぶその場しのぎのテレワーク利用が労働者の安全衛生にリスクをもたらすことを裏付けている。労働者は、不十分な人間工学によるうずきと痛みや、同僚との接触の減少に起因する孤立感を報告している。リモートワーク中も、使用者が従業員の安全衛生を保護して暴力とハラスメントのない職場を保証する義務を負うことに変わりはない。

使用者による不十分な労働環境管理を克服し、テレワークの安全衛生リスクに取り組むための解決策は、それぞれの労働組合と交渉すべきである。

在宅勤務は公私の区別を曖昧にする。労働者が法定労働時間を守り、働いていないときにネット接続を切断することが難しくなる。労働時間と超過労働に関する法律をテレワークに適用しなければならない。テレワークは、リモートワーカーだけでなく全労働者に、切断する権利を促進する機会を提供すべきである。加えて、ウェブカメラや侵害的なソフトウェアといったデジタル監視ツールの利用は、労働者のプライバシー権を脅かす。これは在宅勤務をする際には特に当てはまる。監視ツールの乱用は何としても防止しなければならない。テレワークは、侵害的な業務管理にではなく相互信頼と自主性に基づく管理スタイルを必要とする。

テレワークは平等の問題も引き起こす。すべての労働者が平等にテレワークを利用できるわけではない。すべての労働者の自宅にテレワークに適したスペースがあるわけではない。共同作業センター/ハブの利用のような解決策を取り決め、家が狭く混み合っている労働者や生活条件が不安定な労働者が、不利な扱いを受けないようにしなければならない。

すべての仕事をリモートで実施できるわけではない。

  • 生産現場に出なければ仕事ができない労働者が不利益を被ったり、逆に有利になったりしないようにするにはどうすればよいか。
  • 事務従事者と生産労働者の間に分断が生じないようにするにはどうすればよいか。

テレワークへのアクセスを拡大するために、使用者と労働組合は、どの職務がリモートで遂行できるか確認すべきである。一部の職務のために職場に出る必要のある労働者が、リモートで遂行できる職務についてテレワークを選択できるようにしなければならない。

さらに、使用者は労働者全員に平等な待遇を保証すべきである。リモートワーカーは姿が見えにくくなる危険がある。使用者は、リモートワーカーにも同じ訓練・経歴開発機会を提供する必要がある。

ジェンダー平等に関しては、テレワークは、女性が職業生活と家事労働を調和させられるようにして無給の家事労働の不平等な分担を解消する手段と考えてはならない。テレワークは共同責任を促進し、労働者全員により多くの時間を与えて家庭と職業生活を両立させられるようにすべきである。テレワークを口実に、平等方針の実施や質の高い公的育児サービスの開発を怠ってはならない。

テレワークは、労働組合の組織と開発における職場の中心的役割にも課題を突きつける。現在の労働組合主義モデルは、職場で労働者を組織化することによって、また、仕事への集団的アプローチの採用および労働者と労働者代表との関係によって生まれた。テレワークは仕事の個別化を進め、労働者を自宅で孤立させる危険がある。組合は、労働者による最低限の職場出勤義務を保証し、同僚や労働者代表との社会的絆を維持すべきである。使用者も、組合が労働者との定期的なコミュニケーションを維持するために、会社の通信手段に確実にアクセスできるようにしなければならない。

労働組合は迅速に行動し、社会的対話と団体交渉によるテレワークの規制に取り組むべきである。というのも特に、使用者は、不動産コストの節約と労働時間延長に伴う生産性向上によって、テレワークから利益を得られる可能性があることを認識しているからである。テレワークは、外部委託の増加やデジタルによる仕事のオフショアリングの口実になる恐れもある。

テレワーカーに、在宅勤務に関連する追加費用を負担させてはならない。使用者は労働者に、契約上の職務を遂行するために必要なすべての適切なスペースと設備(技術的装置および備品)を支給すべきである。使用者は、労働者がテレワーク中に負担するすべての費用(インターネット料金、保険料、暖房費、電気代、作業スペースの賃借料、携帯電話サービスなど)を手当によって支給、弁償または補償すべきである。この増加している作業編成形態に伴う節約と利益は、労働者と共有しなければならない。

団体交渉と制度的規制は、最適レベルの保護と権利の尊重を確保しつつ、労働者が作業編成にあたってより大きな柔軟性から利益を得られるようにすることができる。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長は、テレワークはチャンスになり得るが、災いのもとになる恐れもあると言う。

「毎日の通勤時間を家族と一緒に過ごすというのは魅力的な考えであり、それに伴う柔軟性は刺激を与えてくれる。だが、人間工学的な設備が十分に整っていなかったり、自分がテレワーク制度のコストを負担させられていることに気づいたり、同僚がいなくて寂しさを感じ始めたりすれば、そのプラス面が徐々に消えていくかもしれない。そのような理由で、労働協約と法律を通してテレワークを規制することが重要だ」

インダストリオール・グローバルユニオンは、テレワークに関する社会的対話と団体交渉のための基本原則と実用的指針を作成した。この資料の狙いは、労働組合にテレワークが労働者のためになるようにする手段を与えることである。リモートワークが労働者の権利となり、これらの権利の一部を放棄することと引き換えに、特定カテゴリーの労働者に恣意的に与えられる特権にならないよう保証する基準も定めている。

 

 

女性の革命:クーデターがミャンマーのジェンダー平等にとって意味すること

2021-05-12

<JCM記事要約>

  • ミャンマーで民主化を求め街頭でデモを繰り広げている抗議者のうちの約60%、運動のリーダーの70〜80%が女性である。抗議者の多くはパンデミックにより不安定な状況に追い込まれた看護師や繊維工場労働者である。
  • ミャンマーにおける民主主義への移行プロセスにおいては、女性の不在が目立つ。スー・チー管理下の文民政府に政権が移ったあとも、一人の女性の力だけではミャンマーの政治力学を変えることはできなかった。また、ミャンマーの「父権的文化」が女性の政界入りの障害になっている。
  • しかし現在の抗議行動には変化が起こり、女性リーダーのもと、若者や男女双方が参加している。ただ、平和が取り戻された時には、これまでのジェンダー差別の状態に戻る懸念されるが、この間のわずかな改善に希望が持たれる。

 

2021年5月12日:数週間前、ミャンマー(ビルマ)の街頭で奇妙な光景が見られるようになった。女性たちは伝統的なタメイン(スカートとして着用する布切れ)を窓や電柱に結びつけたロープに掛け、パレードの装飾のように通りの上に吊り下げている。棒に付けて旗のように掲げる女性もいる。これらの女性は、ただ洗濯物を干しているわけではない。2月1日にビルマ軍が起こしたクーデターに抗議しているのである。
                                                      

「男性は、ただ男性であるというだけで、自分が特別な力を持っていると思っている」とミャンマーの女性の権利活動家キン・オーンマーは『Equal Times』に語っている。「そして、婦人服の端切れの下を歩くと、その特別な力がなくなってしまうと信じている」。したがってタメインは、抗議エリアを保護して軍隊の侵入を防止するシールドとして使われている。

女性は最初から、偶像視されるアウン・サン・スー・チー主導の文民政府を倒したクーデターに対する抗議の最前線に立ってきた。

カレン平和支援ネットワークのディレクターで、カレン女性組織のメンバー(いずれもカレン族の関連団体)であるワー・クー・シーは、次のように説明する。「最初に街頭に繰り出した人たち、この運動を先導している人たちは、ミャンマーの若い女性だった。女性が最初に運動を組織し始めた。参加者が増えていき、今では全国的な運動になった」

地方組織のジェンダー平等ネットワークがラジオ・フリー・アジアに提供したデータによると、女性は街頭でデモを繰り広げている抗議者の約60%、運動のリーダーの70〜80%を占めている。多くは看護師や教員、繊維工場労働者であり、COVID-19が原因で、すでに不安定な状況に追い込まれていた。

街頭で抗議している女性の多くは、ミャンマーの脆弱な民主主義を守るために命を投げ出している、とワー・クー・シーは言う。最初は、2月19日に亡くなったあと運動のシンボルになった20才のミャ・トゥエ・トゥエ・カインである。続いて、19歳のチャル・シンも3月初めにミャンマー北部のマンダレーで抗議中に死亡し、その日着ていたTシャツに書かれていた言葉「Everything will be OK」とともにシンボルになった。

国軍は、スー・チーの党が勝った2020年11月の選挙結果の受け入れを数カ月にわたって拒否したのち、2月上旬に政権掌握を発表した。政治犯支援協会によると、それ以来、少なくとも769人が治安部隊に殺害され、3738人以上が逮捕・起訴されたり有罪判決を受けたりした。

民主主義破綻の徴候

今年2月のクーデターは、ミャンマー国民にとって珍しいことではない。ビルマ軍は1962年に最初に政権を握り、50年近くにわたってこの国を厳しく統制した。1990年、国際的承認を高めようと国の公式名称をミャンマーに変えたあと、軍政府は選挙の実施を許可した。ところが、スー・チーの野党・国民民主連盟(NLD)が勝利を収めると、軍事政権は選挙結果を無効とし、弾圧を強化した。

軍政府が2003年に「規律ある民主主義」路線を再び発表したとき、このプロセスも広報活動を改善しようとする試みとみなされた。2008年、国軍に大きな権限を与える新しい憲法が採択され、2010年に最初の選挙が実施された。NLDは、スー・チーの出馬を阻止した選挙枠組みに抗議して、その選挙への参加を拒否した。しかし、2015年の新しい選挙でスー・チー管理下の文民政府に政権が移り、多くの人にとって民主主義への移行に向けた決定的な一歩となった。

オタワ大学国際政策研究センター研究員のガブリエル・バーダルとオランダ先端研究所政治学准教授のElin Bjarnegårdによれば、このプロセス全体を通じて女性の不在が目立つ。例えば新憲法は、議会の議席の25%と数人分の大臣職を、最近女性に開放されたばかりのタッマドゥ(ミャンマー軍)に割り当てている。

「それは、この民主改革が予想どおりには進展していないという証拠だった。そして、女性がいればクーデターが起こらなかったとは限らないが、和平会談への女性の参加はより良い平和構築に貢献するという証拠があるので、事態がもっとよくなっていたかもしれない」とバーダルは言う。

政権の主要ポストにスー・チーがいてもなお(彼女は外国人と結婚し、子どもが外国籍だったため、憲法で大統領就任を禁じられていたが)、この国の政治力学を変えるには不十分だった。「1人の女性[が政権を握っている]だけでは十分ではないという実例だ。女性の問題を理解しており、女性の権利のために立ち上がる女性たちが必要だ」とワー・クー・シーは言う。現在所在が分からないスー・チーは、ジェンダー平等を優先課題に加えなかったことで批判されている。

Bjarnegårdによると、政党内部にもほとんど変化がない。「大きな変化も、改革が政党の重要課題になっているという徴候も、あまり見られない」と彼女は言う。彼女が説明するように、主要な問題の1つは政界に入りたいと考える女性を見つけることである。「面接した女性たち全員が、政界入りするために家族と夫の全面的な支援を必要としていた」と彼女は続け、この国の「父権的文化」を主な障害の1つに挙げる。2020年11月の選挙では、女性が勝ち取った議席の割合はわずか15%だった。

変化するジェンダーロール

キン・オーンマーは、活動の初期に女性であることがいかに困難をもたらしたかを今も覚えている。1988年、1人の学生が警察に殺害されたあと、国民は軍事政権に対して立ち上がった。当時やはり学生だったオーンマーは、家にいることを拒否した。「家族は私が街頭に繰り出すのを止めようとしたので、家族との関係が非常に面倒なことになった」と彼女は言う。オーンマーは、そのころ設立された学生組合の1つの副会長になった。女性が管理・財務ポストに追いやられることが多かった時代である。「女性が特定の指導的地位を占める機会はいくつかあったが、まだ非常に父権的な環境だった」と彼女は続ける。

その後、数十年に及ぶ亡命中も、キン・オーンマーは民主化運動に引き続き関与したが、まだジェンダー平等の問題を深刻に受け止めようとしない人が多いと感じていた。「そういう人たちは、私たちが女性の問題について話したがっているだけだと考えた。けれども、私たちは政治について、連邦制について話したかった」と彼女は説明する。「政治のせいで我が国は行き詰まっている。この家父長制はあまりにも根深い」

だがオーンマーは、現在の抗議の過程でジェンダーロールの変化を感じている。「1988年には、リーダーは男性だった。今回は女性だ。これは刺激的なことだ」と彼女は言う。2019年の報告書『ミャンマーのフェミニズム』によると、2010年以降の政治改革によって、「地域社会の基本的ニーズの満足だけでなく政策改革プロセスにも関与」している行動主義において、「国内外の女性組織による取り組みを調整する余地が生まれた」。この報告書はさらに、女性は民主主義への移行期間中に社会的動員やネットワーク作りの能力を高めたと主張している。

Bjarnegårdも力関係の変化に気づいている「現在の抗議は、何かが変わっていることを明らかにした。若者たちが、男女双方が参加している。この新世代は、いくつかの点でよりリベラルで、フェイスブックを利用しており、他国の影響を受けている」と彼女は言う。

しかしワー・クー・シーは、状況が落ち着いたときに、元の状況に戻ってしまうことを懸念している。「紛争が発生し、男性が恐れているとき、女性は歓迎される。だが、平和が回復したら、いつものジェンダー差別に戻ってしまう」と彼女は言う。

彼女は、政府と主要少数民族ゲリラの一部との和平交渉(2011-2015)を例に挙げる。この交渉代表団には、女性が4人(バーダルとBjarnegårdのデータによると、代表者総数の6%未満)しかいなかった。しかし、彼女はかすかな希望にすがっている。「今回、女性が[民主主義期間中に]意思決定において経験した改善[の影響]を見て取ることができる」。彼女は、これらの変化によって、平和が戻ったときに女性が再び「キッチンに追いやられ」ずにすむことを願っている。「改善が見られるが、まだ非常に厳しい状況にある……成り行きを見守るしかない」

写真:3月8日、ビルマ軍事政権のクーデター反対デモを行う前に、伝統的な「タメイン」をロープに吊り下げる女性たち(STR/AFP)

この記事の初出は『Equal Times

 

 

カナダのアルセロール・ミッタル労働者、団結してスト票決

2021-05-12

<JCM記事要約>

  • カナダ・ケベック地域のアルセロール・ミッタル・マイニング・カナダの労働者2500人が、会社側の提示の拒否と無期限ストに関する投票に参加し、100%近い多数が賛成票を投じた。
  • 組合は、賃金・年金増額、労働条件改善、北部の割増生活手当の他、特定の現場の衛生状態と労働者に出される食事の質に関する約束といった2017年の交渉での約束を果たすよう要求している。
  • インダストリオールは、労働者との連帯を表明し、アルセロール・ミッタルが交渉の場に戻るよう要求した。さらに、アルセロール・ミッタル・グローバル組合ネットワークのメンバーに情報を提供し、カナダ・ケベック州の同志との連帯を表明するよう求めた。

 

2021年5月12日:カナダ・ケベック地域のアルセロール・ミッタル労働者は、100%近い多数で経営陣による最後の提示を拒絶し、賃金と年金、約束の反古をめぐる無期限ストを要求した。
                                                      

ポート・カルティエ、フェルモン、ファイアレイクのアルセロール・ミッタル・マイニング・カナダの労働者2500人が投票に参加し、会社側の提示の拒否と無期限ストを賛成97〜99.8%で支持した。

「組合員は厳しい解決策を選び、アルセロール・ミッタルが株主のためだけでなく地域の利益のためにも、莫大な利益を労働者と共有するようにスト決行を決定した」とMetallos(USW)ケベック責任者のドミニク・ルミューは言う。

労働者は、ポート・カルティエとフェルモンの同社施設前で常時ピケラインを張っていた。

同労組は、賃金・年金増額、労働条件改善、北部の割増生活手当を要求している。鉄の価格が過去最高に達しており、労働者は、アルセロール・ミッタルが労働者の極めて大きな貢献を尊重・承認すべき時だと主張している。

加えて、2017年の交渉での約束が果たされていない。例えば、特定の現場の衛生状態と労働者に出される食事の質に関する約束である。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は、労働者との連帯を表明し、アルセロール・ミッタルが交渉の場に戻るよう要求している。

「労働者からの大きな支援は、組合員と組合の信頼関係を如実に示している。これはアルセロール・ミッタル経営陣に対し、直ちに交渉の場に戻って、解決策を見つけるために誠実に交渉するよう求める明確なシグナルだ」

インダストリオールはアルセロール・ミッタル・グローバル組合ネットワークのメンバーに情報を提供し、カナダ・ケベック州の同志との連帯を表明するよう求めた。

               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インドのシーメンス経営陣に遅延した労働協約の未払金支給を要求

2021-05-08

<JCM記事要約>

  • インドのシーメンスでは、2019年9月に失効した労働協約に対して、新たな協約の締結が28カ月以上も引き延ばされている。これまでも協約締結後に遅延期間の賃上げ分は未払い金として支払われてきたが、現在、経営陣はパンデミックを理由にこの慣行すら廃止しようとしている。
  • 交渉当初、経営陣はパンデミックを理由にわずかな賃上げしか提示せず、さらに未払い金の削減要求も表明したため、組合側はパンデミック下ゆえの減額受入の意向を示したものの、経営陣は組合側の友好的姿勢を無視し、引き延ばし続けている。
  • インダストリオールは、同社経営陣がCOVID-19を理由に賃金の支払いを先延ばしていることを批判し、IGメタルとともに、シーメンス労組の闘いを全面的に支持する、とした。

 

2021年5月8日:インドのシーメンス労組は、使用者が28カ月以上も労働協約交渉を引き延ばしている結果、労働者約1000人の賃金が未払いになっているため、国際的な支援を要請している。
                                                      

Kalwa Switchgear & Switchboard, Transformer, Nashik & Aurangabadの各部門の労働協約は、2018年12月31日から2019年9月までに失効した。

同社には労働協約の締結を引き延ばしてきた前歴があり、期限までに締結された労働協約は50年間で1本もない。遅延は10〜30カ月に及んでいるが、同社は合意された賃上げ分を、常に当該期間の未払金として支払ってきた

同社は今、この慣行を廃止し、ブルーカラー労動者から未払金を奪いたいと考えている。この遅延は組合のせいで生じたわけではなく、私たちはCOVID下で能力を増強するために経営側と協力した。その見返りが会社側による賃金遅配にほかならない」とシーメンス労組のギリッシュ・アシュテカー書記長は言う。

交渉の初めに、経営側はパンデミックに起因する破綻の恐れを理由に、ごくわずかな賃上げしか提示しなかった。その後、経営側は未払金の支払額を削減したいという希望を表明した。

 

ギリッシュ・アシュテカーによれば、パンデミック下で、同労組は未払金をかなり減額する意向を表明した。それに対して、2019〜2020年に利益を計上したにもかかわらず、経営陣は同労組をさらに意気消沈させることを狙っているようである。

「インダストリオールはドイツの加盟組織IGメタルとともに、インドにおけるシーメンス労組の闘いを全面的に支持する。同労組が友好的な解決策を見つけようと懸命に努力している一方で、経営側がパンデミックを引き延ばし作戦として利用することは許容できない」

「パンデミックがもたらしている現下の困難の克服に労使が協力して集中するために、未払金についてすぐに合意に達することを願う」とヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。

                       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロフィール:インドで船舶解撤労組が前進

2021-05-03

2021年5月3日:アラン・ソシヤ船舶再利用一般労組(ASSRGWA)は、インドのインフォーマル部門労働者の組織化の成功例である。しばしば世界で最も危険な産業と呼ばれる部門で、同労組は賃金、社会保障政策、労働安全衛生の改善に貢献している。
                                                      

プロフィール
『グローバル・ワーカー』第1号(2021年5月)より


国:インド
組合:アラン・ソシヤ船舶再利用一般労組(ASSRGWA)

 

 

 

 

 

アランで船舶解撤労働者を組織化する取り組みは2003年に始まり、2005年に組合員11人の正式な組合が登録された。アランは169区画から成る世界最大の船舶解撤場で、すべての解撤場が埋まれば労働者数は6万人になる。川下産業で10万人以上が働いている。

同労組は、労働者の権利に関する認識向上、労働安全衛生問題に取り組む訓練、給付の獲得、組合員の利益保護に絶えず取り組んだ。現在、1万8000人以上の船舶解撤労働者を組合員に擁し、ほぼ全員が移民労働者である。

オランダのインダストリオール加盟組織FNVは造船部門専門家を派遣し、ASSRGWAと協力しながら、船舶解撤の安全面に関するトレーナー訓練を実施。例えば、個人用保護具の利用、船舶の構造に関する知識、機械の配置、パイプラインの色分け、化学薬品・ガス・有害廃棄物の取り扱い、重量物の持ち上げ、危険な船舶解体方法を避けるための安全対策の利用を取り上げている。この訓練には監督者と経営代表者も関与した。

組合の介入によって、政府が大勢の労働者を対象に安全訓練プログラムを実施し、労働者が安全訓練を受けずに雇用されることのないようにしている。同時に、同労組は定期的な安全トレーナー訓練を組織し、ガス切断工や溶接工のような特定の職務に焦点を当てている。今では使用者も、同労組が組織する訓練で労働者を訓練するために専門家を派遣している。

ビジャーダール・ラネーASSRGWA書記長は言う。

「インダストリオールとFNVによる一貫した支援と協力は、組合の組織化努力を強化し、労働者の権利を擁護する能力を高めるうえで重要な役割を果たしている。ここアランで、私たちは使用者団体および地区行政当局と有用な協力関係を深めており、COVID-19下で労働者を救済するための支援も受けた」

COVID-19が進展する中で、ASSRGWAは救済によって労働者の利益を保護するうえで重要な役割を演じている。同労組は定期会合を開き、パンデミックの影響を評価するとともに、労働者がどんな支援を必要としているか理解しようとしている。

インドが全国的なロックダウンを導入したとき、ASSRGWAは使用者に対し、ロックダウン期間中の賃金支給を確保するよう求めた。地区行政当局と使用者団体の支援を受けて、同労組は2万1500人以上の労働者に、2段階に分けて助成金による無料の食品材料を提供した。ASSRGWAは、グジャラートとムンバイの当局に解撤場を消毒させた。同労組は銀行当局に対し、労働者が家族に送金できるよう業務再開を求めた。

ロックダウンの間、船舶解撤場が閉鎖されたため、労働者は家に帰りたがった。だが、公共交通機関がなかったため、ASSRGWAは即座に行動に移り、地区行政当局と協力しながら、労働者が目的地を目指して数百キロメートルも歩くという事態を回避した。同労組は労働者の行き先に関するデータベースを地区行政当局と共有し、当局が船舶解撤労働者を輸送するためにバスや電車を手配できるようにした。

ロックダウンが緩和され、産業活動が再開し始めると、ASSRGWAは使用者代表と協力し、労働者を見つけ出して職場復帰させるうえで手助けした。同労組は、解撤場で適切なCOVID-19安全対策を採用させるために、使用者に圧力もかけている。

世界最大の船舶解撤国であるインドは2019年、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約を批准した。ASSRGWAは香港条約の促進において重要な役割を果たし、現在、同条約に沿った船舶解撤ルールの策定に関与している。

「私たちは船舶解撤場のグリーン化と香港条約の実施に取り組み続けており、そのすべてが労働者のためにより良い労働条件を生み出す。自分たちの成果を誇りに思うと同時に、組合員が現在抱えている課題を意識している。将来、組合員数を増やし、社会的対話を促進し、持続可能性を高めなければならない」とビジャーダール・ラネーは言う。

アラン・ソシヤ船舶再利用一般労組(ASSRGWA)は、ナショナルセンターであるインド労働者連盟(HMS)傘下のインダストリオール加盟組織、インド鉄鋼・機械労連(SMEFI)に加盟している。ASSRGWAは1万8295人の組合員を擁する。