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第139号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2021年11月30日)

COP26、中途半端なグラスゴー気候合意で閉幕

2021-11-16

【JCM記事要約】

  • 11月13日にCOP26が閉幕したが、気候変動の対応に向けた発展途上国への資金提供については目標額を達成できず、2025年までに気候資金を倍にするとの約束がされた。また、石炭・化石燃料補助金の段階的廃止については「段階的削減」と表現を弱めて修正された。さらに、気候変動の影響を受けやすい国々を支援するための資金メカニズムの要求は、特に米国とEUによって阻止された。
  • 組合からの要求にもかかわらず、不十分な合意で閉幕したが、パリ協定の実施指針の前文に国際炭素市場を取り扱う公正な移行に関する文言が導入され、公正な移行に関する宣言や南アフリカの石炭の段階的廃止への資金供給約束がされたことは有益な結果である。
  • インダストリオール・ケマル書記次長は、会議では多くの偽善行為や情報操作あり、気候災害に起因する損失・損害への対処を支援する資金メカニズムといった発展途上国からの要求を、EUが阻止したことには失望する、とした。

 

2021年11月16日:第26回締約国会議は11月13日土曜日に閉幕した。会議に出席した組合代表は、土曜日の夕方に取り決められた最終合意(いわゆるグラスゴー気候合意)には、パリ協定に定められるように、地球温暖化を産業革命前と比較して1.5℃以内に抑えるために必要な野心が欠如していると考えている。
                                                      

パンデミック関連の制約にもかかわらず、国際労働組合総連合(ITUC)による調整で、驚くほど多数の労働組合代表がCOPに参加した。ITUCは昨日発表された声明で、公正な移行による雇用計画が合意の実施に必要不可欠だと強調した。

本会議で演説するITUCのバート・デ・ウェル 写真:Kiara Worth/UNFCCC

 

労働組合からの最も重要な要求は、パリ協定の実施指針(いわゆるパリルールブック)への公正な移行の統合、ならびに人権への取り組み、気候資金に関する約束の実施の必要性、気候災害に対処している脆弱な国々の損失・損害を補償するための資金供給であった。

会議に先立って、気候変動に関する政府間パネルは、地球温暖化がすでに産業革命前の水準を1.1℃上回っており、2.7℃に到達しようとしていることを確認した。各国は、2030年の各国が自主的に決定する約束(NDC)の目標も達成できないだろう。必要な排出削減目標である45%の達成どころか、2030年までに排出が13%増加しそうである。各国は2022年に更新NDCを提出するよう促されている。

先進国は、発展途上国が気候変動の影響に適応し、これを緩和できるよう支援するために、毎年1000億ドルを提供するという約束を果たすことができなかった。その代わり、2024年までに新しい資金目標を定め、2025年までに気候資金を倍にすると約束した。

市民社会組織は11月12日、レッドラインを越えたことを象徴するために赤い紐を手にCOP26から退出 写真:Kiara Worth/UNFCCC

 

土曜日夕方の最終本会議で、インドと中国は石炭・化石燃料補助金の段階的廃止という約束を弱め、この言葉を「段階的削減」に変更した。この修正は合意の最終案で強く要求され、他の国々は交渉をまとめるために新たな修正案の提出を思いとどまった。メキシコが人権に関する文言の提出を阻まれたことは、重要であり留意すべきである。

気候変動の影響を受けやすい国々は、この文言の変更によって会議が混乱に陥ったと感じた。それらの国々による損失・損害への対応を支援するための資金メカニズムの要求は、特に米国とEUによって阻止された。

プロスペクトのリチャード・ハーディー

 

グローバルな労働運動を代表して、労働組合プロスペクトのリチャード・ハーディーが最終本会議で演説し、次のように述べた。

「労働者の代弁者として、私たちは本当に困惑している。このCOPの準備段階で、皆さんは誰の話を聞いていたのか。野心、資金、責任、包摂に関する結果は、なぜこれほど不十分なものに終わってしまったのか」

彼は次のように結論づけた。

「労働権は人権だ! 組合は、雇用と公正な移行計画と投資をもたらす社会的対話プロセスで発言する必要がある」

「それによって私たちは、必要とされる気候野心を実現する。私たちはここグラスゴーで、もっと高い野心を望んでいた。世界の労働組合運動は、前進する中で目標をどんどん高くしていくよう要求する」

組合にとって、いくつか勝利があった――ルールブック第6条の前文に国際炭素市場を取り扱う公正な移行に関する文言が導入され、公正な移行に関する宣言や南アフリカの石炭の段階的廃止への資金供給約束など、有望な約束がなされた。

公正な移行を求めて働きかけるインダストリオール・ヨーロッパ労働組合とインダストリオール・グローバルユニオン

 

ジュディス・カートン=ダーリング・インダストリオール・ヨーロッパ労働組合書記次長が述べた。

「公正な移行への野心と約束の欠如を残念に思う。労働組合は、良質な雇用および強力な社会的対話メカニズムの保証と結びついた気候野心を実に積極的に要求した。これを達成するには、公正な移行に関する約束をパリ協定の実施指針に組織的に統合しなければならない」

ケマル・ウズカン・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長が述べた。

「ネットゼロへの移行は、富裕層や政府、多国籍企業、金融機関の移行ではない。すべての人々、すべての国々の移行だ。しかし交渉の最終段階で、最終的な決定を下す有力者たちにとって、これは重要なことではなかったようだ」

「多国間合意に達したが、会議室では多くの偽善行為や情報操作があった。私たちが特に失望したのは、気候災害に起因する損失・損害への対処を支援する資金メカニズムへの発展途上国の要求を、EUが阻止したことだ」

労働組合は来年シャルム・エル・シェイクのCOP27で、ILOガイドラインに沿って、公正な移行と結びつけられた気候野心を求めて闘い続ける。

 

 

 

パキスタンの新しい最低賃金は組合の勝利

2021-11-10

【JCM記事要約】

  • パキスタン・シンド州政府が発表した最低賃金の引き上げ額に対し、使用者側が反対して裁判所に請願書を提出していたが、インダストリオール加盟組織の働きかけにより、裁判所は当初政府が提示した引上げ額を維持すべきと発表した。
  • 裁判所はさらに、女性労働者に同じ区分の男性労働者と同じ最低賃金を支払うべきだと宣言しており、組合指導者は、この決定は州の労働者数百万人のニーズと権利を反映している、と述べた。

 

2021年11月10日:パキスタンのシンド州政府は、非熟練労働者の最低賃金を全国レベルの所定賃上げ率以上に引き上げた。使用者は裁判で争ったが、先月、シンド州政府の最低賃金に干渉すべきではないとの判決が下った。
                                                      

パキスタンのシンド州政府が7月1日から非熟練労働者の最低賃金を1万7500パキスタン・ルピー(103米ドル)から2万5000パキスタン・ルピー(146米ドル)に引き上げると発表すると、使用者側はパキスタン使用者連盟が中心となって裁判所に請願書を提出し、シンド州政府は政治的な点数を稼ごうとしていると非難した。

これを受けて、インダストリオール加盟組織NTUFとHBWWFを含む同州の組合指導者は、月2万5000パキスタン・ルピーの最低賃金の実施を求めて請願書を提出した。

9月の審理を経て、シンド州最高裁判所は10月15日、シンド州政府の決定を支持すること、月2万5000パキスタン・ルピーの最低賃金率を維持すべきことを発表した。

裁判所はさらに、女性労働者に同じ区分の男性労働者と同じ最低賃金を支払うべきだと宣言、最低時給を120パキスタン・ルピー(0.7米ドル)に設定した。

ナシル・マンスールNTUF書記長は次のように言及。

「労働者への基本的権利の提供を確保するというパキスタンの憲法に照らして国家機関が決定を下せば、労働者の問題を解決できない理由はない。州裁判所の決定は、この州の労働者数百万人のニーズと権利を反映している」

 

 

 

拘束力のある国連条約への取り組み強化が必要

2021-11-09

【JCM記事要約】

  • ジュネーブでビジネスと人権に関する国連条約をめぐる7回目の討議が行われ、インダストリオールをはじめとしたグローバル・ユニオンは、交渉の強化のため、政府及びビジネス団体に対し交渉へのより強い支持を求めた。
  • インダストリオールはCOVID-19によって持続不可能なグローバル・サプライチェーンの欠陥が明るみになったと指摘。またITUCやITFなどの組合と共に、ビジネスと人権に関する条約の策定プロセスにおいて、労働者の基本的権利を含めてすべての国際的に認知された人権を対象とすること等を要求している。

 

2021年11月9日:先月末、ジュネーブでビジネスと人権に関する国連条約をめぐる7回目の討議が行われた。インダストリオールは、ITUCならびに他のグローバル・ユニオンとともに、すべての政府に対し、来年も続く交渉を強化し、全面的に支持するよう求めている。
                                                      

政府、企業代表、組合および市民社会組織を巻き込んだ今回の討議の結論を受けて、組合はビジネス団体が交渉の成功に十分専念していないことも批判している。

拘束力のある国連条約が、首尾よく取り決められれば、国際法において企業の説明責任を確立するうえで重要な一歩となり、人権侵害の影響を受けた人々が救済を利用しやすくするだろう。しかし、それを達成するには米国とEUが交渉を全面的に支援しなければならない。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように言及。

「COVID-19は、持続不可能なグローバル・サプライチェーンの欠陥、特に労働者の権利尊重を確保できない任意の報告メカニズムに依存していることを明るみにした。世界は人権侵害を防止する拘束力・強制力のある手段を必要としており、ビジネスと人権に関する国連条約は決定的に重要だ。すべての政府、特にEUと米国が真剣に関与しなければならない。今やらなくていつやるのか?」

ITUC、ITF、BWI、EI、インダストリオール、UNI、ITF、PSIをはじめとする組合は、以下を求めることによってビジネスと人権に関する条約の策定プロセスにかかわっている。

  • 関連国際労働基準で定義されているように、労働者の基本的権利を含めて、すべての国際的に認知された人権を幅広く実質的に対象とする。
  • 規模や部門、事業状況、所有権、構造にかかわらず、すべての企業を対象とする。
  • 親会社ベースの域外適用規制を導入し、多国籍企業による人権侵害の被害者が当該企業の本国で司法制度を利用できるようにする。
  • 企業に人権デュー・ディリジェンスに関する方針や手続きの採択および適用を要求する規制措置を導入する。
  • 企業の事業活動に人権義務を適用できることと、企業に人権を尊重する義務があることを再確認する。
  • 強力な国際監視・実施機構を確立する。

 

 

 

ジョン・ディア・グローバル組合ネットワーク、社会的対話の未来めぐり討議

2021-11-08

【JCM記事要約】

  • ジョン・ディア社アメリカ工場の労働者が、会社側の賃上げ額と新規採用者の年金廃止に反対しストを開始。ヨーロッパやブラジル、米国の同社従業員が会合を開き、将来の社会的対話に関する共同戦略を策定した。
  • インダストリオールは、労働者が会合を開き連帯したことは正当な闘いであり、同志を支援する素晴らしい実例であると評価。労働者・労働組合の基本的権利を尊重したうえで彼らの声を聴き承認することは有意義な対話の基礎だ、と強調した。

 

2021年11月8日:ヨーロッパ、ブラジル、米国のジョン・ディア事業の労働組合代表30人が11月2日にオンライン会合を開き、全世界の同社の経済状態と団体交渉状況について議論し、同社との将来の社会的対話に関する共同戦略を策定した。参加者は、アメリカ全般、特に同社の労働協約紛争とストライキに関する最新ニュースに熱心に耳を傾けた。
                                                      

アメリカではジョン・ディア工場の労働者1万人が、10月中旬からストを実施している。この35年ぶりのストが始まったのは、ジョン・ディアが大部分の労働者に時給1米ドル相当のインフレ率に満たない賃上げ案を提示し、この世界最大の農機具会社が記録的利益を上げている時期に新規採用者の年金を廃止したときである。

アメリカの加盟組織UAWのチャック・ブラウニング副会長がオープニングスピーチで、スト中の労働者へのインダストリオール、ブラジルおよび欧州従業員代表委員会(EWC)からの連帯と支援の重要性を強調した。

「ジョン・ディアのUAW組合員は、会社が労働者を必要不可欠とみなしたあと、パンデミックを通して働き、アメリカに食料を供給し、アメリカを建設し、アメリカの経済を動かす設備を生産してきた。ジョン・ディアは企業として順調であり、労働者は米国だけでなく他の国々でも自分たちの取り分を求めている」

「このネットワークは、多国籍企業におけるネットワーク構築が意味するもの――さまざまな国の労働者間の交流や支援、連帯を示している。ストが続いている場所で行われるはずの仕事を奪うことによって、同志を不意討ちにしてはならない」とマティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長は述べた。

「ジョン・ディアのような成功した企業は、敬意をもって労働者を扱わなければならない。私たちは変化する世界に生きている――使用者は自分たちが熟練労働者に依存していることを理解する必要がある。デジタル化と機械エンジニアリングの『グリーン化』は、労働者の関与なしには達成できない課題だ」

ネットワークは、世界中の団体交渉やEWC内部の新しい組織機構についても議論。今後は経済情勢や団体交渉についても情報を交換することによって、すべてのメンバーに絶えず事態の展開を知らせることに合意した。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長はこう述べた。

「ディア・アンド・カンパニーは、効率的な連帯機構として完全に機能している。ネットワーク参加者は、正当な闘いで同志を支援する素晴らしい実例を示した。同社は組織労働者の声を聞かなければならない。労働者・労働組合の基本的権利を尊重し、労働者と組合の集団としての声を承認することは、有意義な対話の基礎だ」

 

 

キャタピラー・グローバル組合ネットワーク、グローバルな連帯を強化

2021-11-08

【JCM記事要約】

  • 11月3日に開催されたキャタピラー・グローバル組合ネットワークに日本やヨーロッパなどから約50人の組合代表者が参加し、グリーンテクノロジーとデジタル化に向けた団体交渉と産業開発について議論を行った。
  • インダストリオールは、同社が過去に組合や労働者との対話に反対する姿勢を取り、従業員の雇用を脅かす行為をしていることを批判し、グローバル組合ネットワークとして引き続き連帯していくことを改めて強調した。

 

2021年11月8日:多国籍企業の労働者の間で強力なネットワークを構築し、交流や支援の場を提供することは、労働者の力の構築に必要不可欠である。キャタピラー・グローバル組合ネットワークがオンライン会合を開き、グリーンテクノロジーとデジタル化に向けた団体交渉と産業開発を議論した。
                                                      

11月3日、オーストラリア、日本、ヨーロッパ、ブラジル、アメリカから約50人の労働組合代表が集まり、キャタピラー・グローバル組合ネットワークの一環として会合を開いた。この米国系巨大企業には、世界中の事業で組合や労働者、そして対話をすることにも反対する行動を取ってきた過去がある。同時に、グローバル組合ネットワークもますます成熟しており、米国本社経営陣の決定の影響を受ける国々で同僚に連帯を表明することによって、同社の態度に対抗する態勢を整えている。

「キャタピラーはアメリカ、ドイツおよび全世界で従業員に対して無礼な扱いをしている。しかし、私たちは抵抗する。キャタピラー・ネットワークは労働者の代弁機関となり、労働者の意見が聞き入れられるようにする。連帯が効果を上げ、同社は対話を避け続ければ結局は高い代償を払うことになるだろう」とマティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長は述べた。

参加者はさまざまな国の団体交渉と労働条件について討議し、経営陣の態度が国によって異なることが特に関心の的になった。例えば日本の経営陣は、ドイツの経営陣より礼儀正しく振る舞う。また、ボーナスのような各種の特別報酬制度についても比較して議論が行われた。そして参加者は、交渉の要求内容や結果を共有することについても合意した。

キャタピラーは、他の多くの同業他社と同様に大きな需要があり、生産も順調である。

しかし、経営陣は短期利益予想で動かされることが多く、理解に苦しむ決定を下す。キャタピラーは、船舶エンジンや発電装置の市場が有望であるというのに、これらの設備を設計・生産するドイツ北部の4つの生産現場の閉鎖を決定した。そして米国経営陣は、組合との情報交換や協議もないまま7分間のオンライン会合で、サプライヤーと下請会社の数千人に加えてキャタピラーで950人の雇用を大幅削減するという決定を発表した。

インダストリオール加盟組織IGメタルは、雇用を求めて闘うためにキャンペーンを開始し、政治家やサプライヤー企業、顧客を討議に引き込み、デモを行っている。そして、ネットワークはドイツの労働者に連帯を表明した。引き続き彼らの闘いを支援していく。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長はこう述べた。

「キャタピラーは最悪の種類の企業欲を示し続けている。毎年、何百人もの雇用が脅かされる事件がある。昨年は北アイルランド、今年はドイツだ。ドイツIGメタルの同志は尊厳と雇用と未来を求めて闘っている。グローバル組合ネットワークは今後とも連帯を表明する。ドイツの闘いは、すべての労働者の闘いでもある。闘いは続く!」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

 

COP26で公正な移行宣言を採択

2021-11-05

【JCM記事要約】

  • COP26にて、気候回復力のある未来への公平な移行のための枠組みを提供する意欲的な公正な移行誓約が採択され、米国や欧州などの経済的重要性を持つ北側諸国が署名をした。
  • 宣言の原文は、インダストリオールやITUCなどが協力して作成。宣言の原則では新規雇用への移行にあたって労働者を支援すること、社会的対話とステークホルダー・エンゲージメントを支援・促進することなどが掲げられており、インダストリオールはこれらの原則やILO指針が厳守されるよう精力的に働きかける、としている。

 

2021年11月5日:14カ国政府と欧州委員会は、気候回復力のある未来への公平な移行のための枠組みを提供する意欲的な公正な移行誓約を採択した。
                                                      

この宣言には、米国、カナダ、英国、欧州委員会、欧州数カ国など、その内容を実現するための経済的重要性を持つ北側諸国が署名した。富裕国は貧困国の気候変動緩和と脱炭素化努力への資金供給を誓約しており、この資金は今後、移行の原則の対象となる。

富裕国は国内の公正な移行計画にも宣言の原則を適用する。

宣言の原文は、英国政府の公正な移行責任者、ITUC、インダストリオール・グローバルユニオンおよびインダストリオール・ヨーロッパ労働組合が緊密に協力して作成した。

この宣言は、パリ協定、国際労働機関(ILO)の公正な移行のための指針、ポーランド・カトウィツェのCOP24で採択されたシレジア宣言をもとにしている。

宣言は、気候変動と経済の脱炭素化が、貧困層や不安定労働者、炭素集約型産業、化石燃料に依存する国の人々に不釣合いに大きな影響を与えること、ジェンダー、人種、年齢その他の不平等を悪化させる恐れがあることを認めている。宣言の目的は、世界が気候に優しい経済に移行する中で、誰も置き去りにされないようにすることである。

宣言の原則は以下のとおり。

  • 新規雇用への移行にあたって労働者を支援
  • 社会的対話とステークホルダー・エンゲージメントを支援・促進
  • 持続可能な開発をもたらす経済戦略(化石燃料に依存している国の経済多角化への支援など)
  • 新規グリーン雇用が外注化されないように現地の包括的なディーセント・ワークを創出
  • 公正な移行原則は認知されたデューデリジェンス基準を用いてサプライチェーン全体で適用
  • パリ協定と各国が自主的に決定する約束の枠内で公正な移行の進展を報告することを約束

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長はこう述べた。

「当事者全員が、このCOPで公正な移行について話している。これだけでも私たちにとって非常に大きな勝利であり、私たちの働きかけが大きな進展をもたらしたことを示している。しかし、私たちが同じものについて話すようにするために、定義をめぐって常に苦闘してきた。公正な移行が実際にどのように実行されるかについても、詳細がはっきりしない」

「この宣言は非常に重要な先例を作る。すべての国の組合がこの宣言を広く普及させ、自国の政府、企業、その他のステークホルダーに宣言の内容を理解させ、これらの原則ならびにILO指針が厳守されるようにするために精力的に働きかけるべきだ」

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合のジュディス・カートン=ダーリング書記次長が付け加えた。

「私たちは、ただ別の宣言について話しているのではない。労働者との効果的な社会的対話への政府による明確な取り組みについて、パリ協定の報告プロセスの中で公正な移行原則を実施する責任を各国政府が受け入れることについて話している。組合は各国政府に大きな期待を抱いており、全面的に関与するよう求めている」

宣言の採択に至るまで、労働運動は長年にわたって熱心にロビー活動を続けてきた。先週、インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は共同宣言を発表、各国政府に対し、机上の空論にとどまらず、社会的対話と労働者参加を尊重した具体的措置によって、公正な移行を実施するよう求めた。

ユナイト・ザ・ユニオン事務所でのCOP26公正な移行会合の参加者

 

組合はCOP26で今週、公正な移行イニシアティブを促進するためにサイドイベントをいくつか開催した。締約国は11月4日のエネルギーの日に、南アフリカのエネルギー部門向けに85億ドル相当の脱炭素提携を発表し、組合はこれを慎重に歓迎した。南アフリカは大規模かつ国際的な公正な移行プロセスの格好のテストケースとなるため、組合は南アフリカにおける事態の展開を厳重に監視していく。

インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、11月10日水曜日にEUパビリオンで行われる組合、使用者、政治家および欧州委員会との共同サイドイベントで、公正な移行ついてさらに討議することを楽しみにしている。

 

エレクトロラックス労働者、チリとメキシコで合意

2021-11-04

【JCM記事要約】

  • スウェーデン系多国籍企業エレクトロラックス社において、チリでは不十分な退職ボーナスと追加の組合拠出金に関する事件や、メキシコでは希望退職の受け入れを拒否され労働者が解雇された事件などが発生していたが、インダストリオール及びスウェーデンの組合と同社の対話により、両事件が共に和解に達することができた。
  • インダストリオール・松崎書記次長は、今後もウェーデンの組合および同社との対話を続け、グローバル枠組み協定を通して対話と労働条件を改善する方法を探す、とした。

 

2021年11月4日:チリとメキシコのエレクトロラックス労働者は、パンデミック下で不法に解雇された従業員を支援する熱心なキャンペーンを経て合意に達した。これはインダストリオールおよびスウェーデンの組合と同社との対話のおかげである。
                                                      

チリでは、スウェーデン系多国籍エレクトロラックスが所有するカンパニア・テクノ・インダストリアル(CTI)の第1組合と第2組合の労働者が、団体交渉権を求める長い闘いに終止符を打った。

サンティアゴ雇用裁判所は6月14日の判決で、ただ交渉の場を維持し、退職ボーナスと追加の組合拠出金を支払うという会社側の最初の提案を全員一致で却下した。この判決で裁判所は、エレクトロラックスが7カ月もかけてそのような不十分な提案しか示さなかったことに失望を表明し、同社が当初の団体交渉期限を守らなかったため、この案も却下した。

労使がまだ対立しているにもかかわらず、手続きが長引き、法廷闘争の費用がかさんでいたため、労働者はエレクトロラックスとの合意を決定した。

10月26日にはメキシコで、希望退職の受け入れを拒否して解雇され、訴訟を起こしていた労働者6人と和解に達した。この和解は、スウェーデンとアメリカのエレクトロラックス経営陣、インダストリオール、従業員代表委員会を代表するスウェーデンの組合ユニオネンが、18カ月にわたって何度も折衝を重ねた結果だった。労働者たちは、2020年4月にシウダードファレスのエレクトロラックス工場で、何の補償もなしに不当解雇されていた。

しかしエレクトロラックスは、労働者に不当解雇の十分な補償を提供せず、解雇日以降に支払うべき賃金の支払いにも同意しなかった。要求のすべてを勝ち取ったわけではなかったが、労働者たちは、最終的にこの事態を終わらせ、裁判にさらに1年を費やすことを避けるために、協約に署名した。6人の労働者は10月29日に補償金の小切手を受領した。

「両方の事件で和解に達したことに満足している。スウェーデンの組合およびエレクトロラックスとの対話を続け、グローバル枠組み協定を通して対話と労働条件を改善する方法を探す」と松崎寛インダストリオール書記次長は述べた。

 

インダストリオール、企業にミャンマーからの投資引き揚げを要求

2021-11-03

【JCM記事要約】

  • 第3回インダストリオール世界大会で「ミャンマーの民主主義を支持する決議」が採択されたことを受け、多国籍企業との一連の会合やマルチステークホルダー・イニシアティブにて、インダストリオールは企業へミャンマーからの投資を停止することを要求する意見表明を行った。
  • インダストリオールはメッセージにて、軍事政権下で労働者が逮捕や殺害といった被害を受けていることを強く批判し、ミャンマーにて人々の基本的権利の自由な行使を回復するためには、ブランド各社が包括的経済制裁を支持して厳守する必要がある、と主張した。

 

2021年11月3日:インダストリオール・グローバルユニオンは、軍事政権に対する包括的経済制裁キャンペーンの一環として、ミャンマーで事業活動を行う多国籍企業に対し、同国で業務を中止し、新規発注をやめ、取引関係を停止するために、直ちに行動を起こすよう求めている。
                                                      

ミャンマーの代議員が決議案を提出し、参加者が支持を表明

 

この意見表明は、エネルギー・鉄鋼・衣料産業の多国籍企業との一連の会合・連絡ならびにマルチステークホルダー・イニシアティブで行われた。

実施された行動は、111カ国の労働組合434団体が参加して2021年9月14-15日に開催された第3回インダストリオール世界大会において、全会一致で採択された「ミャンマーの民主主義を支持する決議」の結果である。この決議は、軍事政権に対する包括的経済制裁を求めている。制裁要求の決定は、ミャンマーの労働運動によって下され、世界中の労働組合と活動家によって支持された。

インダストリオールの中心的なメッセージは、この国では人権侵害のせいで、企業が労働者の安全を保証できないため、倫理的な取引を行うことができない、ということである。企業へのメッセージは以下のとおり。

「……2021年2月1日、ミャンマーで新議会の宣誓式と新たな組閣の数時間前に国軍によるクーデターが発生し、民主的に選出された国民民主連盟(NLD)指導者のウィン・ミンとアウン・サン・スー・チーおよびその他大勢の政治指導者が拘束された。それ以来、軍事政権はミャンマーで政治家や活動家、労働者に対して、逮捕、殺害、その他の形態の暴力を行使している」

「少なくとも1088人が国軍に殺害され、8100人以上が逮捕され、1984人の逮捕状が発行された」

「すでに数十万人の労働者が失業した。平和デモに参加している労働組合員と労働者は、軍に迫害されている。軍や警察で拘束されている人々は残虐な拷問を受け、しばしば死者が出ている。多くの職場と工業地帯(ラインタヤやシュエピタなど)が軍の猛攻に遭っている」

「ミャンマーの民主主義を強化・支持するために今すぐ行動を起こし、それによって人権と労働組合権の甚だしい侵害を終わらせるために助力することが絶対に必要である」

「ブランド各社が包括的経済制裁の実施を支持して厳守すれば、ミャンマーにおいて人々の基本的権利の自由な行使を回復するうえで大いに貢献すると私たちは確信している」

先ごろ総会で、国連人権専門家が次のように警告した。「軍事政権がミャンマー北部に何万人もの軍隊と重兵器を配備しているという報告がある中で、ミャンマーは、さらにひどい人権侵害と人命損失の直前の状態にある恐れがある」

 

公正な移行のための工学技術

2021-10-29

【JCM記事要約】

  • 10月27日に開催された機械エンジニアリングの環境技術に関する会議に29か国から80人以上の組合代表者が参加し、グリーンエコノミーへの移行へ向けて労働組合としての取り組みについて議論を行った。
  • 会議では、パリ協定と持続可能な開発目標を受けてインダストリオールが委託した研究が発表され、COVID-19回復計画や炭素価格決定イニシアティブなど、環境技術を推進する強力な要因が掲げられた。
  • 成長が見込まれる分野においては新たな雇用が生まれるが、その雇用の質はどれだけ組合が産業政策に影響を与えるかにかかっている。転換による利益を享受するために、政府と使用者を社会的対話に引き込まなければならない、と会議は締め括られた。

 

2021年10月29日:機械エンジニアリング部門は、他の部門の転換に役立つ設備の生産だけでなく、持続可能な生産プロセスの先導によっても、グリーンエコノミーへの移行において重要な役割を果たす。労働組合が戦略的に行動すれば、この部門には非常に大きな可能性がある。
                                                      

会議には29カ国から45組合を代表する参加者80人以上(代議員69人、スタッフ12人)が出席

 

これは10月27日に開催された機械エンジニアリングの環境技術に関する会議の参加者に、マティアス・ハートウィッチ部門担当部長が伝えたメッセージである。オーストリアのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織Pro-Geの会長を務めるライナー・ウィンマー共同部会長が開会の辞の述べ、こう語った。

「多くの部門と同様に、この部門もパンデミック下で被害を受け、先行きは依然不透明だ。しかし、変化を受け入れれば未来を設計するチャンスがある」

「私たちは2018年にイェテボリでこの取り組みを開始し、2019年にシュトゥットガルトの世界会議で環境技術の重視を決定し、昨年、明確なビジョンに基づく宣言を発表した。今、このビジョンを具体的な現実にするときだ」

気候変動に関するパリ協定と持続可能な開発目標は、世界経済の脱炭素化と持続可能な解決策の構築への取り組みを明確にしており、これは明らかに機械エンジニアリングと関連がある。しかし、これまでの会合で確認された大きな問題は、この移行がどのように起こるか、この移行にどのように影響を及ぼすのが最善かに関する具体的な情報がないことである。

これに取り組むために、インダストリオールは2021年に研究を委託した。この研究はフリードリヒ・エーベルト財団が出資し、シンクタンクのシンデックスが実施、考えられる転換プロセスの必要不可欠な詳細を提供した。

会議で発表されたこの研究は、パリ協定への取り組み、COVID-19回復計画、炭素価格決定イニシアティブ、多国籍企業に対する世論の圧力の強まりなど、環境技術を推進する非常に強力な要因を示している。多額の資金が割り当てられている。例えば、EUは2030年までに1兆ユーロを支出する予定で、米国もパリ協定再加入後にグリーンインフラに多額の支出を行う。世界的な状況はまちまちだが、すべての地域が、事実上グローバルなグリーン・ニューディールに相当する取り組みに深くコミットしている。

主要な成長分野は以下のとおりである。

  • グリーンエネルギーの生成、貯蔵および配給
  • エネルギー効率
  • 資源・材料効率
  • 持続可能なモビリティー

これらすべての分野は著しい成長を遂げ、数百万人の雇用を創出する。中国はこの部門を開発するために長年にわたって産業政策を実施してきたため、これらの雇用の多くは中国で創出されるが、米国、EU、ブラジル、インドなど世界中で多くの雇用が生まれるだろう。

その雇用の質は、労働組合が公正な移行をめぐる社会的対話によって、どの程度まで産業政策に影響を与えることができるかにかかってくる。ほとんどの会議参加者が、労働組合には、グリーンな新規雇用が生まれ、これらの雇用が組合雇用となるようにする十分な影響力があると考えていた。

環境技術の開発に関する参加者の意見

 

この研究は、国家による経済への介入を最小限に抑える方針が長く続いたあと、再び政策が1つの手段となっていることも強調し、組合にはその政策に影響を及ぼす独自の窓口があることを明確にした。

IGメタルのウォルフガング・レムが、次のように会議を締めくくった。

「転換の明確な必要性と多額の利用可能資金のおかげで、再工業化して機械エンジニアリングを転換し、それを通じて社会を転換する絶好の機会が得られる」

「重要な要素は産業政策だ。この転換が私たちに利益を与えてくれるようにしたければ、いま政府と使用者を社会的対話に引き込まなければならない」

 

 

 

参加しなければ何も始まらない――労働組合、グラスゴーのCOP26に向けて出発

2021-10-28

【JCM記事要約】

  • 11月1-12日にCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)が開催される予定であるが、労働組合は、生活の質の維持のため気候変動のための取り組みは重要であると認識しており、労働組合はオブザーバーとして参加し公正な移行への要求を打ち出す。
  • インダストリオールとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合はCOP26へ向けてウェビナーを開催し、COVID-19パンデミック対策は十分な資金による協調的な世界的行動が可能であることを示し、公正な移行の実現を要求した共同宣言を採択した。

 

2021年10月28日:グローバルな労働組合員代表団が、世界気候会議で公正な移行の要求を強く打ち出すためにグラスゴーへ向かっている。
                                                      

11月1-12日にスコットランドのグラスゴーでCOP26(第26回締約国会議)が開かれる。この国連気候変動枠組条約会議では、気候変動と闘うために各国政府が国際環境条約への取り組みについて交渉する。

COP26で各国政府は、2015年のCOP21でパリ気候協定の一環として約束した2050年までのネットゼロ達成に向けて、更新された気候計画(国が決定する貢献(NDC))を発表する。ネットゼロは、大気圏に入る温室効果ガスと除去される温室効果ガスとが相殺されるため、地球温暖化が止まるといった状態である。

ネットゼロの達成は世界経済の根本的な再編を意味し、COP協議がうまくいけば、これを達成するための資金が供給される。各国は持続可能な開発目標のために満たすべきターゲットも定めており、その多くはネットゼロ目標と重なる。富裕国は、グローバルサウスを脱炭素化するための資金提供も約束している。

労働組合は、この転換がこの惑星で生活の質を守るために必要であることを認識しており、この移行を公正なものとするよう要求している。労働者に代償を払わせてはならない。

労働組合は、2008年のCOP14からオブザーバーとして参加を許可されている。組合はパリ気候協定への公正な移行の包含を求めて運動し、2018年にポーランド・カトウィツェのCOP24で、公正な移行に関するシレジア宣言が採択された。これは組合の重要な勝利であった。

公正な移行に関するILO原則は、労働組合をはじめとする社会的活動主体の積極的な貢献により、公正な移行計画をNDCに統合する必要があると明記している。しかし、インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合が先ごろ共催したウェビナー「COP26への道――産業・エネルギー・鉱山労働者、公正な移行を要求」の参加者は、美辞麗句と現実に不一致があると指摘した。

多くの出席者が、鉱山の閉鎖、化石燃料からのシフト、製造業の変化が原因で、数百万人が失業するという現状や見通しの具体例を挙げた。また政治家は数百万人のグリーン雇用が失業を埋め合わせるという思いがけもしない約束しているが、詳細は示されていない。その雇用がどこで生まれ、誰がその雇用に就けるのか判然としない。政府はこれらの新規雇用について信頼できる計画を策定していないし、その仕事を遂行するための労働者の訓練にも着手していない。

英国政府で公正な移行を主導しているケイト・ジェームズが会議で発言、この問題を認め、鍵は地元の労働組合が積極的に政策立案に関与し、政府・使用者に責任を負わせるために団結して影響力を行使することだと述べた。

「転換が迫っている」と彼女は述べた。「未来を押しつけられるよりも、自分たちで未来を設計するほうがいい」

ITUC気候政策担当役員のバート・デ・ウェルが、英国政府はこの会合の期待を下げようとし、科学的に必要なことよりも政治的に好ましいことに焦点を合わせていると述べた。しかし、排出曲線を正しい方向に曲げるつもりなら、いま野心的な気候目標が必要である。デ・ウェルは、COP26に向けたグローバルな労働運動の主要優先課題を発表した。すなわち、公正な移行、人権・労働権、気候資金、産業政策・投資を伴う気候野心である。

この会議では共同宣言を採択、COVID-19パンデミック対策は十分な資金による協調的な世界的行動が可能であることを示したと述べ、公正な移行の実現を要求した。

インダストリオールのダイアナ・ジュンケラ・キュリエル・エネルギー担当部長は次のように述べた。

「世界は途方もない転換を経験している。根本的に経済を変革して脱炭素化するために、莫大な資金が費やされる。これは正しく利用すれば、新しいグリーンなインフラによって再工業化し、何百万人もの良質な組合雇用を創出する機会だ。組合は世界・国家両レベルで、政策立案において積極的な役割を果たす必要がある」

「私たちは意見を述べるためにグラスゴーへ行く」

 

 

 

ビジネスと人権に関する拘束力のある条約めぐる交渉

2021-10-27

【JCM記事要約】

  • サプライチェーンの人権侵害に対して、企業に法的責任を負わせる文書の完成を目指し、インダストリオールはITUCおよび他のグローバル・ユニオンとともにジュネーブにてビジネスと人権に関する国連条約をめぐる7回目の交渉を実施。
  • アクション・プランにも盛り込まれているように、インダストリオールはビジネスと人権に関する拘束力のある国連文書に取り組んでいる。また、IGメタルとサイドイベントを開催し、企業の自主規制アプローチおよびビジネスと人権に関する拘束力のある国連条約が、どのようにより公正な世界経済をもたらし得るか検討をし、グローバル協定の必要性を提唱。

 

2021年10月27日:今週、ジュネーブでビジネスと人権に関する国連条約をめぐる討議が続いている。これは7回目の交渉であり、サプライチェーンの人権侵害に対して企業に法的責任を負わせる文書を目指している。
                                                      

インダストリオール・グローバルユニオンはITUCおよび他のグローバル・ユニオンとともに、共同ポジションペーパーで交渉に関する立場を詳述している。今週の会合では、改訂文書(第3版)を取り上げている。

労働組合運動にとっての主な優先課題は、次のようなものである。

  • 条約の対象範囲は広く実質的であり、労働者・労働組合の基本的権利も含めて、国際的に認知されたすべての人権を対象としなければならない。
  • 規模、部門、事業状況、所有・構造または親会社に基づく域外適用規制に関係なく、すべての企業を対象としなければならない。
  • 企業の本国における多国籍企業による人権侵害の犠牲者を公正に扱わなければならない。
  • 企業に人権デュー・ディリジェンスに関する方針や手続きの採択および適用を要求する規制措置を導入しなければならない。

この文書は、国際法において企業の説明責任を確立するうえで重要な一歩となるもので、人権侵害の影響を受けた人々が救済を利用しやすくするだろう。

9月の第3回インダストリオール大会で採択されたアクション・プランは、次のように述べている。

インダストリオール・グローバルユニオンは、多国籍企業による人権侵害から人々を保護するために拘束力のある法律文書を求めて闘い続け、例えば、有効な救済制度に支えられたビジネスと人権に関する拘束力のある国連条約を支持し、拘束力のある法律によって、国際レベル・国家レベルで人権と労働権の義務的デュー・ディリジェンスを規制することを求めて運動する。

「インダストリオールは、企業による人権侵害の免責をなくすために、ビジネスと人権に関する拘束力のある国連文書に取り組んでいる。企業の免責の根絶を持続可能な回復の中心としなければならない」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言及。

独サプライチェーン法のような国家レベルの拘束力のある規制や、欧州レベルの対応する規制に関する討議は重要な措置である。しかし、そのような措置は、既存の労使協定と重要な関連を持たせることができるグローバルな枠組みを必要とする。

そのために、インダストリオールとドイツの加盟組織IGメタルは、10月28日の交渉でサイドイベントを主催し、企業の自主規制アプローチおよびビジネスと人権に関する拘束力のある国連条約が、どのようにより公正な世界経済をもたらし得るか検討する。

 

TKエレベーターの社会的対話は労使双方にとって有益

2021-10-27

【JCM記事要約】

  • 10月25-26日にTKエレベーター事業の労働組合員50名がオンライン会合を開き、現行および将来考えられる組織機構をグローバルな社会的対話システムに転換する機会について議論を行った。
  • インダストリオールは、TKエレベーター・グローバル組合ネットワークの結成は、組合の力の構築を目指す戦略の一例であるとし、労働者の基本的権利を尊重・承認する真の社会的対話を求め、引き続きこのプロセスを支援していく、とした。

 

2021年10月27日:世界中のTKエレベーター事業の労働組合員約50人が、10月25-26日にオンライン会合を開き、グローバル・レベルで社会的対話を改善する方法に検討を加えた。
                                                      

最近創設されたTKエレベーターにおける社会的対話の改善・強化が、ヨーロッパ、北米、ラテンアメリカ、東南アジアから集まった50人を超える代議員の主な焦点となり、代議員たちは現行および将来考えられる組織機構をグローバルな社会的対話システムに転換する機会を検討した。

「TKエレベーターは全世界に5万人以上の従業員を擁し、グローバルな社会的対話が必要だ。インダストリオール加盟組織の間で、これについて一般的合意があり、このグローバル・ネットワーク構築への支援と意欲が見られるのはうれしい」とグループ従業員代表委員会の委員長で監視委員会メンバーのスーザン・ヘルベルガーは述べた。

「国際連帯を共通の目標に掲げて実現させることは、すでに私たちが常に取り組む課題になっている。全世界で全従業員の権利を支持する立場を表明すること――それがこのネットワークの共同の取り組みだ」とTKエレベーター国際委員会の講演者ウォルフガング・クラウスは述べた。

オンライン会合2日目には、TKエレベーターグループ役員で最高人事責任者のフィリップ・フート・バン・フォルミジールを代表とする経営陣が参加した。

「TKエレベーターでは、従業員の関与を高く評価し、従業員代表や組合との交流や討議を歓迎して楽しんでいる。グローバルな対話の実施をとても楽しみにしている」とフィリップ・フート・バン・フォルミジールは述べた。

TKエレベーターは5万人を超える男女を雇用しており、50カ国以上で大規模な事業を展開している。同社は2020年後半にインダストリオール・グローバルユニオンとグローバル枠組み協定(GFA)を締結した。

「TKエレベーターで当事者が署名した協定は充実したGFAだと思う。しかし、私たちが設置しようとしている新しい追加の機関によって、グローバルな社会的対話が単なる協議にとどまらないものであることを示すメッセージを送りたい。この種の対話によって新しい基準を定め、労使の交流を未来に適したものにしたい。このネットワークは始まったばかりだが、良い方向に向かっていると思う。インダストリオールは、この過程で皆さんを支援する」とマティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長は述べた。

「声をそろえて発言し、力を合わせて初めて、TKエレベーター従業員の重要性が相応に評価される」とTKエレベーター欧州従業員代表委員会のユスフ・トゥフェックチー委員長は述べた。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように述べた。

「グローバル組合ネットワークを確立・維持して組合の力を構築することがインダストリオールの戦略であり、TKエレベーター・グローバル組合ネットワークの結成は絶好の例だ。このグローバル・ネットワークは、TKエレベーター経営陣との世界的な労使関係の枠組みを開発する本部になるだろう」

「私たちが求めているのは、全レベルの苦情処理制度と救済およびグローバル枠組み協定の強制力のある実施に基づき、労働者の基本的権利を尊重・承認する真の社会的対話だ。インダストリオールは引き続きこのプロセスを支援していく」