広報ニュース

第149号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2022年8月22日)

良質な雇用と風力技術への公正な移行

2022-06-16

【JCM記事要約】

  • 6月7日、インダストリオールと国際労働組合総連合(ITUC)とLOノルウェーは、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として、風力技術に関する第2回ワークショップを開催した。
  • ワークショップにて参加者は、石油・ガスと陸上・洋上風力のバリューチェーンについて、生産、処理、流通および最終利用(上流、中流、下流)に分類した。また、国別報告が行われ、地域の課題はさまざまだが、よりよく未来に備えるために実例から学んだ。ワークショップは、今年度中にあと2回開催される予定。

 

国際労働組合総連合(ITUC)とLOノルウェー、インダストリオールは6月7日、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として、風力技術に関する第2回ワークショップを開催した。このイニシアティブは、世界中の組合が、エネルギー転換技術とそれに関連する雇用、技能、市場、投資、排出について情報を交換するための基盤となる。

エネルギー部門の労働者は、良質な雇用と公正な移行を求めている。このワークショップでは洋上・陸上風力技術を調べた。使用者と政府は、この技術を、石油・ガス会社が資産を多様化して排出を削減する潜在的経路とみなしている。情報の入手は必ずしも簡単ではないが、組合は、どれくらい多くの雇用があるか、いつ雇用が生まれるか、それらはどんな種類の雇用か、これらの雇用のために労働者はどんな技能を必要とするか、労働者はどのような移行にさらされるかを知りたがっている。

参加者は、将来待ち受けていることをもっとよく見るために、石油・ガスと陸上・洋上風力のバリューチェーンを調べ、両バリューチェーンを生産、処理、流通および最終利用(上流、中流、下流)に分類した。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のマイケル・ブレンナーによると、風力部門は全世界で約130万人の労働者を雇用しており、労働者数でトップ5の再生可能技術に入っている。

「教育の機会、雇用慣行、差別的な職場方針、柔軟性の欠如が主な原因で、この部門ではジェンダーバランスが非常に悪い」とブレンナーは述べた。

「これは、ジェンダー平等とこれらの新興部門への若年者の導入に関しては、組合が公共政策に取り組むべきであることを示している」

新しい設備は建設、製造、プロジェクト設計の分野で雇用を生み出すことになるため、風力部門の雇用を推進する、とブレンナーは説明した。しかし長期雇用は、導入された設備が運転・保守関連の雇用を創出することによって決まる。風力技術はさほど新しいものではなく、多くの設備の耐用年数が終わりに近づいているので、古い風力タービンの解体や再生利用の分野にも潜在的雇用がある。

国によっては、国土計画その他の政策の制限により、風力技術の導入が難しい。新しい風力発電所の許可取得プロセスには時間がかかるため、開発が進んでいるこの技術に大きな影響を与えており、多くの国々で戦略的な産業政策が必要とされている。

英国で焦点となっているのは、コスト、特に人件費の削減である。部品生産が外注化され、オフショア船の乗組員の一部は海外の低賃金労働者を利用している。設備投資はサプライチェーンと建設部門で雇用の原動力となっている。最近の研究で、英国の洋上風力プロジェクトに対する設備投資のうち、英国内で支出されている割合はわずか29%であることが分かった。開発費と保守・運転費を含めると48%に上昇する。

比較すると、はるかに小さい国のデンマークのほうが、ずっと完成度の高い国内サプライチェーンがあり、ベスタスのような主要タービンメーカーがある。デンマーク企業は主に運転・保守分野で、また設備分野でも、ヨーロッパの洋上市場の推定40%を占めている。デンマークの企業が国内外で創出する可能性のある雇用数は多い。

デンマーク金属労組のオーレ・フィリプセンがデンマーク・モデルを紹介した。組織率の高い労働者が風力部門で何とか良質な雇用を確保しており、これは労働者が移行に際して良質な雇用に就けるようにするうえで組合が重要であることを示している。

この産業の装置製造拠点は、雇用が創出される場所に影響を与える大きな要因であり、それによって、国が強力な現地国内サプライチェーンを構築したり、風力電力をグリッドに供給する電力網を実施および改良・更新したりする能力が決まる。

ノルウェーでは、11の浮体式洋上風力設備が使用者、政府および組合によって開発される予定である。これらは洋上石油・ガス設備の原動力となる最初の浮体式風力施設になる。石油・ガス生産排出はノルウェーのCO2排出の4分の1を占めているため、ノルウェーにとって、これらのプラットフォームの電化は重要だった。

「組合は、この部門の開発の明確な目標を定めている――ノルウェーの労働条件、安全な労働条件のために準備を整え、安全を確保することだ」とLOノルウェーのアン=ベス・スクレードは述べた。

スペインUGTのマヌエル・リエラが、UGTとCCOOは自国の風力技術の可能性を考慮して宣言をまとめたと報告した。この部門の企業、バリューチェーンの港と造船所、大学、研究施設を関与させている。この宣言は新しい風力技術を考慮して準備しようとする試みであり、組合は態勢を整え、労働者と地域社会を討議に参加させるようにしたいと考えている。

COSATUのレボガング・ムライシが、南アフリカはエネルギーのために石油、ガス、石炭に大きく依存しているが、クリーンエネルギー需要が急増していると報告した。風力エネルギーを開発し、この新しい部門で労働者を組織化できる可能性がある。

「風力技術は南アフリカで試行されており、研究の結果は矛盾している。だが、特に現地生産があれば、この技術は多くの雇用を創出する見込みがある。私たちの要求は、労働者協同組合などを通して公有や労働者所有にすることだ」とムライシは結論づけた。

国別報告は、各国でどのように技術が発展しているか、組合はどの程度この移行の一部になれるかのスナップショットを示していた。地域の課題はさまざまだが、参加者は、よりよく未来に備えるために実例から学んだ。

今年後半、エネルギー転換技術に関するワークショップがあと2回開かれる。

  • 二酸化炭素回収・貯留
  • バッテリー、太陽光、光電池

水素ワークショップの報告はここをクリック:良質な雇用と水素への公正な移行

 

ICT電機・電子の劇的な変化に応じた組織化

2022-06-16

【JCM記事要約】

  • 6月8日に開催されたICT電機・電子運営委員会のオンライン会合に70人が参加し、変わりゆく産業と、その結果として生じている課題を検討すべく討議を行った。
  • 会合にて参加者は、半導体小部門で労働者を代表している組合は特別組合ネットワークを創出することや、ジェンダーに配慮した労働安全衛生アプローチを採用できるようにする教育と手段に主力すること、デューデリジェンス法を通して労働者の権利促進を促すこと、などを含んだアクション・プランに合意した。

 

ICT電機・電子運営委員会は、6月8日にオンライン会合を開いた。70人の参加者が、変わりゆく産業と、その結果として生じている課題を検討した。未来に備えるために、半導体企業と電子機器受託製造サービス(EMS)企業の組織化、デューデリジェンス法の利用、部門活動へのジェンダーの視点の追加を盛り込んだアクション・プランについて合意した

部会長を務める全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会(電機連合)の神保政史中央執行委員長とインドネシア金属労連(FSPMI)のプリハナニ・ボエナディの両名が、各自の開会の辞で、この産業が過去1年間にいかに劇的に変化したかに触れた。

米中のデカップリングとロシアのウクライナ侵攻の影響が原因でエネルギー・原料価格が急騰しており、各国はサプライチェーンを見直している。半導体やバッテリーへの投資の増加といった前向きな側面がある一方で、パンデミックとさらなる展開が、外部委託の増加や職場の社会心理的圧力のような課題をもたらし、労働者の不安定性を高める一因となっている。

インダストリオール加盟組織の全日本金属産業労働組合協議会は、年内に労働組合のための人権デューデリジェンス・ガイドラインを策定する予定である。さらに、日本の組合は今年の春闘以降、産業・企業両レベルの団体交渉で人権デューデリジェンスに取り組むために措置を取っている。

この部門の組合にとって重要なのは、労働者を組織化して保護し、サプライチェーンで労働者の福祉を改善することである。女性はこの部門の労働者の大半を占めており、女性の組合への参加を促進しなければならない。この会合の代議員の40%が女性だった。

アルメル・セビー・インダストリオール・ジェンダー担当部長が5月のインダストリオール女性委員会の結論とジェンダー賃金格差を発表したあと、参加者たちは、この部門で女性の認知度を高める方法と、ジェンダーに基づく暴力とハラスメントの防止・対処への勧告を検討した。

その達成には、とりわけ、女性がセクシャル・ハラスメントについて話したり不満を述べたりできる安全な場の創出、苦情処理制度の強化、職場問題でもある家庭内暴力に関する認知度の向上、GBVHに関する訓練と意識向上、既存の労働安全衛生方針へのGBVHの統合、組合指導部や労働協約交渉担当への女性の登用促進が含まれる。

アレクサンダー・イワーノウ・インダストリオールICT電機・電子担当部長が述べた。

「ICT電機・電子市場は成長すると予測されており、防衛産業用エレクトロニクスは現在需要が多く、半導体需要が激増している」

「原料不足、サプライチェーン問題、人材不足と相まって、デジタル・トランスフォーメーションの継続的な加速は労働者と組合に課題をもたらしている。加盟組織を助け、この産業とサプライチェーンの両方でできるだけ多くの労働者を組織化するために努力を急がなければならない」

参加者はアクション・プランについて合意した。半導体小部門で労働者を代表している組合は、特別組合ネットワークを創出することで合意した。電子機器受託製造サービス(EMS)企業の小部門でも同様の戦略を推進していく。

ジェンダーの視点は依然、この部門の活動の重要部分である。労働組合がジェンダーに配慮した労働安全衛生アプローチを採用できるようにする教育と手段に、特に主力を置く。

インダストリオールと加盟組織は、ヨーロッパ内外で採択されている人権とデューデリジェンスに関する一連の法律を通して、この部門で増えている労働者・組合の権利促進の機会を利用することにしている。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

 

TKエレベーターで社会的対話を改善

2022-06-15

【JCM記事要約】

  • 6月9日~10日に開催されたオンライン会合へ世界中のTKエレベーター事業の60人を超える労働組合員と従業員代表委員、職場委員が参加し、同社における社会的対話と、社会的関係の未来について議論した。
  • インダストリオール・マティアス担当部長は、GFAの経験を活かしてグローバル・レベルの社会的対話のために適切な手段を追加するため、労働者と組合が問題を提起して経営陣と適切な対話を始められるよう進歩的で包括的な社会的対話機関を開発していきたい、と述べた。

 

世界中のTKエレベーター事業の60人を超える労働組合員と従業員代表委員、職場委員が、6月9-10日にオンライン会合を開催、同社における社会的対話と、社会的関係の未来について議論した。

代議員は16カ国の男女労働者5万人以上を代表し、同社が活動する主要な地域を網羅していた。社会的対話の強化をめぐって、活発に、時には熱烈に、しかし常に的を射た議論が行われた。

バーチャルミーティング2日目には、TKEグループ役員で最高人事責任者のフィリップ・フート・バン・フォルミジールを代表とする経営陣が参加した。

クリスティン・オリビエ・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長が開会の辞で次のように述べた。

「社会的対話について議論する際の明確なガイドラインを定めることが重要だ。そして、ここで皆さんに、全世界にさまざまな経験や状況があることを考慮に入れて、ガイドラインの策定を支援してもらわなければならない。皆さんのご支援が重要だ。私たちがしたくないことの1つは、出来合いの手続きを考え出し、トップダウンのアプローチを避けることだからだ」

初日には、労働者代表団のための内部準備、クリスティン・オリビエとグループ従業員代表委員会代表、国際委員会からの情報提供が行われた。アルメル・セビー・インダストリオール・ジェンダー担当部長が、ILO第190号条約にも関係があるジェンダーに基づく暴力と反ハラスメント方針について議論した。

2日目は、市場における同社の今後と、それぞれの国や地域、全世界での社会的対話に関する経営陣の見解をめぐって、激しい討議が行われた。

国際委員会スポークスパーソンのウォルフガング・クラウスが次のように述べた。

「グローバルな社会的対話には、すべての参加者・パートナー間の信頼と連帯が必要だ。これらの前提条件は何よりも重要であり、将来の協定の基礎になる」

60人以上の代議員は、今後の方針と、TKE社内の社会的対話機関がどのようなものになるかについて議論した。

グループ従業員代表委員会のスーザン・ヘルベルガー議長が述べた。

「この会合により、一歩先へ進んだ。グローバル・ネットワークが大きくなった。各国からさらに多くの情報が入るようになっており、よりよく支え合うことができる。今後、共同協定の起草に取りかかる」

TKエレベーターは5万人を超える男女を雇用しており、50カ国以上で大規模な事業を展開している。同社は2020年後半にインダストリオールとグローバル枠組み協定(GFA)を締結した。現在、インダストリオールと加盟組織は独FESの支援によって、このグループで労働者の参加を改善するためにグローバルな社会的対話機関を創設しようとしている。

「TKエレベーターでの強力なGFAの経験を活かして、さらに一歩踏み込み、グローバル・レベルの社会的対話のために適切な手段を追加したい。例えばブラジル、フランス、インドで、紛争解決モデル以外にも激しい討議が必要な問題がいくつかある。進歩的で包括的な社会的対話機関を開発し、労働者と組合が問題を提起して経営陣と適切な対話を始められるようにしたい」とマティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長は述べた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

 

 

安全衛生は今や基本原則

2022-06-13

【JCM記事要約】

  • 6月にジュネーブで開催されたILO総会にて、安全衛生を労働における基本的原則および権利に加えることが決定した。これにより、ILO条約の批准状況にかかわらず、すべてのILO加盟国は安全で健康的な労働環境に対する基本的権利の尊重・促進を約束することを意味する。
  • インダストリオール・アトレ書記長は、今回の決定は組合にとって非常に大きな勝利であると称え、これにより安全衛生が労働における基本的原則および権利であることを知ったうえで労働者が安全に働くけるようになる未来が期待できる、と述べた。

 

6月にジュネーブで開催されたILO総会は画期的な決定を下し、安全衛生を労働における基本的原則および権利に加えた。

毎年300万人を超える労働者が仕事のために死亡しており、数千万人が負傷していると推定されている。

安全衛生を労働における基本的原則および権利にするという6月10日のILO総会による決定は、関連ILO条約を批准しているか否かを問わず、すべてのILO加盟国が安全で健康的な労働環境に対する基本的権利の尊重・促進を約束することを意味する。

「これは組合にとって非常に大きな勝利であり、世界の労働者にとって勤労生活の安全性を高める重要な措置だ」とアトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。

「仕事の世界における死亡事故の流れを断ち切ろうとする世界的な努力において、1つの節目となる出来事だ。これで、安全衛生が労働における基本的原則および権利であることを知ったうえで労働者が安全に働くようになる、よりよい明日を期待することができる」

1998年に下記4つの権利が採択されて以来、労働者の基本的人権が拡大されたのは今回が初めてである。

  • 結社の自由および団体交渉権の効果的な承認
  • 強制労働の撤廃
  • 児童労働の撤廃
  • 雇用および職業に関する差別の撤廃

基本原則のそれぞれは最重要のILO条約と関係がある。新しい基本条約は、1981年の職業上の安全および健康に関する条約(第155号)と、2006年の職業上の安全および健康促進枠組条約(第187号)である。

 

マレーシアの移民労働者の虐待を防止

2022-06-10

【JCM記事要約】

  • 5月24~25日、約40人の組合・NGO活動家、移民労働者専門家、研究者ならびにILOとマレーシア労働省の代表が会合を開き、各国政府に対し、マレーシアの移民労働者の権利を保護するために労働者主導の改善プロセスの実施を求めるべく議論を行った。
  • インダストリオール・松崎書記次長は、インダストリオール加盟組織による移民労働者の積極的な組織化のみならず、より強力な手段と組合承認手続きの改革が必要である、と述べた。参加者も、労働組合は正義を求める移民労働者の権利を守るうえで極めて重要な役割を果たすことに合意した。

 

約40人の組合・NGO活動家、移民労働者専門家、研究者ならびにILOとマレーシア労働省の代表が5月24-25日に会合を開き、マレーシアで移民に対する人権および労働者の権利の侵害が広がっている件について討議した。

会合の目的は、移民労働者の斡旋報酬および関連する侵害の改善をめぐって議論し、各国政府に対し、移民労働者の権利を保護するために労働者主導の改善プロセスの実施を求めることだった。

ILOの推計によると、2017年には2490万人が強制労働に従事させられ、800万人が借金に束縛されていた。移民労働者は、リクルーターに不法または過度の手数料を払うために、高利で借金をする。彼らは低賃金で虐待的な現代の奴隷制と言うべき状況に陥っている。

松﨑寛インダストリオール書記次長は次のように述べた。

「移民労働者を組織化し、高い斡旋報酬、安全衛生の欠如、社会的保護と結社の自由の欠如のような問題に対処することが重要だ」

「インダストリオール加盟組織は積極的に移民労働者を組織化しているが、より強力な手段と組合承認手続きの改革を必要としている」

国家が改善プロセスの設計と実施に権利を持つ者を関与させる人権重視のアプローチが必要である。効果的な救済によって、移民労働者がすべてのプロセスにおいて法的資格を与えられ、参加し、権利を付与されるようにすべきである。

移民労働者の権利を侵害する企業は、もたらされた損害を認めて謝罪し、侵害を繰り返さないようにしなければならない。参加者は双方の国に対し、真の政府間求人プロセスを実施し、数百万ドルを稼ぐ搾取的な仲介者を排除するよう要請した。

ほとんどの参加者が、労働組合は正義を求める移民労働者の権利を守るうえで極めて重要な役割を果たすことに合意した。組織化のための安全な場が必要であり、組合加入に報復してはならない。

ジェンマ・フリードマンUNISON(英国最大の労働組合)国際担当役員が述べた。

「包括的な方針と改善プロセスの共通基準が必要だ。公共部門のバイヤーがこの問題を理解し、自分たちの購買力を利用して他の場所の労働者を援助できるよう、私たちが手助けする必要がある」

この会合はインダストリオール、UNISON、エレクトロニクス・ウォッチ、テナガニータおよび電子産業従業員組合西部地域(EIEUWR)が企画し、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ネパール、バングラデシュ、台湾、ジュネーブ、英国の参加者が出席した。

このワークショップは、デンマーク人権研究所、ビジネス・ヒューマン・ライツ、グリニッジ大学環境研究グループによって支援によって行われた。

 

ベラルーシ政府、ILO総会の結論を無視

2022-06-10

【JCM記事要約】

  • ベラルーシ政府は、2022年のILO総会にて独立労働組合に対する攻撃について非難を浴びているにもかかわらず、同国はさらに弾圧を強化している。同国のアンドレイ・シベド検事総長は独立組合排除計画を発表し、いくつかの労働組合の活動を終了させるために最高裁判所へ要望書を提出した。
  • インダストリオール・アトレ書記長は、ILO調査委員会が同国での労働組合の独立性が損なわれていると判断してから17年が経過しているものの、国際外交プロセスを悪用し状況がさらに悪化している、と同国政府を批判した。

 

ベラルーシ政府は、ILO(国際労働機関)の2022年国際労働総会(ILO総会)で、独立労働組合に対する攻撃を理由に労働者代表、政府および使用者団体から非難を浴びた。それにもかかわらず、同国はILO総会の閉幕さえ待たずに弾圧を強化した。

アンドレイ・シベド検事総長が、ちょうど独立組合排除計画を発表したところである。検事総長は、いくつかの労働組合の活動を終了させるために、最高裁判所に要望書を提出した。

  • 組合連合団体のベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)
  • ベラルーシ自由労組(SPB)
  • 自由金属労組(SPM)
  • ベラルーシ鉱山・化学・燃料エネルギー・運輸等独立労組(BNP)
  • ベラルーシ無線・電子労組(REP)

検事総長は、独立組合の活動は政治色が強く、指導者は「破壊活動」に関与していると主張している。刑事訴訟手続きが開始された。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。

「ベラルーシ政府のCAS出席は明らかに茶番だった――結論が発表もされないうちに組合を禁止する行動に出たという事実に示されているように、同国政府には結論に従う意思がなかった」

ILO調査委員会が、ベラルーシ政府が組合の独立性を損なっていると判断してから17年、何の進展も見られない。それどころか、ベラルーシは逆方向に動いており、国際外交プロセスを悪用して、民主主義からの後退とすべての反対意見の容赦ない弾圧に隠れ蓑を与えている。外交面で深刻な影響を及ぼすに違いない」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

 

 

バングラデシュの船舶解撤場で労働者が死亡

2022-06-10

【JCM記事要約】

  • 6月8日、バングラデシュのサガリカ船舶解撤場にて労働者1人が死亡、1人が重傷を負う事故が発生。同現場では適切な安全対策が守られていなかった。バングラデシュでは香港国際条約に基づいて遵守証明書を発行されている安全な現場は少ない上に、発行されている現場でさえも事故が発生しているのが現状である。
  • インダストリオールのウォルトン部門担当部長は、船舶解撤の安全性と持続可能性を確保するためには、香港条約の批准と安全対策の維持に尽力できる組合が必要であり、使用者と政府は事故防止のため緊急に措置を取らなければならない、と主張した。

 

6月8日にバングラデシュ・チッタゴンのサガリカ船舶解撤場で、LNG船のタンク解体中に労働者1人が死亡し、1人が重傷を負った。

2人とも造船所で切断工として働いており、タンクの鋼板を切断していたときに事故が発生した。タンクの一部を切断したあと、労働者たちは外れた鋼板とともに約8メートルの高さから落下した。Sadekul Islam Bulbul(37歳)が死亡し、Mohammed Harun(40歳)が病院に運ばれて治療を受けた。労働者たちは安全ベルトを支給されておらず、適切な安全対策が守られていなかった

A・M・ナジムディン・バングラデシュ金属労働者連盟(BMF)会長は言う。

「シタクンダでの最近の大事故で少なくとも49人が死亡、450人以上が負傷した傷がまだ癒えないうちに、この地区からまた事故の知らせが届いた。今回の事故は船舶解撤場で起こった」

「この地区は死の落し穴になっており、危険な労働条件と、職場安全を維持していない使用者側の犯罪的過失が原因で、移民労働者が命を落としている。私たちは、これらの事故で亡くなったすべての労働者への十分な補償と、負傷した労働者全員の迅速かつ良質な治療を要求している」

インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織のBMFとバングラデシュ金属・化学・衣料・縫製労連(BMCGTWF)は、船舶解撤場の危険な労働条件の問題を絶えず提起している。

今年だけで20件を超える事故があり、うち5件で死者が出ている。バングラデシュには約100カ所の船舶解撤場があるが、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約に基づいて遵守証明書を発行されているのは、PHPシップブレーキング・アンド・リサイクニングの1カ所だけである。だが証明にもかかわらず、PHPの解撤場ではまだ事故が発生しており、効果的な職場安全メカニズムの欠如を示している。

ウォルトン・パントランド・インダストリオール部門担当部長はこう述べた。

「船舶解撤の安全性と持続可能性を確保しなければならない。そのための方法は、香港条約の批准と、安全対策が適切に守られるようにすることができる強力な組合を組み合わせることだ」

「使用者と政府は、さらなる事故を防止するために緊急に処置を取らなければならない。バングラデシュ政府は香港条約を批准しなければならない」

写真:バングラデシュの船舶解撤場

 

北アイルランドでキャタピラー労働者がスト

2022-06-09

【JCM記事要約】

  • 北アイルランドのキャタピラー工場の労働者が、9週間にわたりストを実施している。イギリスでは生活費上昇率が1%に達しているのにも関わらず、同社は今年インフレ率を下回る6.4%の昇給を提示。さらに、賃上げを強制的超過労働の導入に結び付けようとしている。
  • インダストリオールのマティアス機械エンジニアリング担当部長は、他国の同社工場でも同様なことがあったと労働者の声に耳を傾けない経営陣の態度を批判。同社は交渉の場に戻り、賃金・労働条件に関して真の交渉に入るよう強く求める、と主張した。

 

北アイルランドのキャタピラー工場の労働者が、適正な賃金をめぐって9週間にわたりストを実施している。この米国系機械エンジニアリング大手は莫大な利益を計上しているが、まさにこの富の基礎を築いている労働者は、現在の生活費危機のさなかに暖房と食べ物のどちらかを選ばなければならない状況にある。

現在、イギリスでは生活費上昇率が11.1%に達しており、さらに上がりそうである。キャタピラーは2021年に2.6%、今年は6.4%の昇給を提示したが、インフレ率を下回っており、組合員に圧倒的多数で拒否された。同社は基本的な賃上げを強制的な超過労働の導入に結びつけることも画策している。

インダストリオール加盟組織のユナイト・ザ・ユニオンは、北アイルランドでキャタピラー労働者を代表している。上級組合代表のポーラ・ハーストは言う。

「キャタピラーは賃金を引き下げて労働時間を増やしたがっている。この強制的超過労働モデルを背景に、2020/2021年に労働者700人(時間給制の熟練労働者400人を含む)が解雇された。ユナイトは、基本的な賃上げを強制的な超過労働の導入に結びつけようとするいかなる試みも拒否している。生活費が上昇しており、さらに上昇しそうなことは明白なので、労働者は公正な賃上げを勝ち取るためにストを実施している」

ユナイトは、キャタピラーが組合つぶし戦術を展開し、英国の現場で未熟な代替労働者(事務労働者)を雇って報奨金を支払っていることを理由に、監督当局に苦情を申し立てた。

ユナイトと労使関係局(ACAS)の要請にもかかわらず、同社経営陣は紛争を解決するために同労組と話し合うことを拒否している。

マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長は言う。

「以前に他の国々でもこういうことがあった――キャタピラーは今回も労働者を尊重していない。いつも同じだ。経営陣は労働者の意見を聞かずに決定する」

「キャタピラー経営陣に対し、交渉の場に戻り、賃金・労働条件に関して真の交渉に入るよう強く促す。誠実な団体交渉は一方的な発表ではなく、互いに敬意をもって話し合い、会社だけでなく労働者とその家族のためにもなる妥協点を見つけることを意味する」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

 

 

全世界でベラルーシ政府に拘留中の労働組合員の釈放を要求

2022-06-08

【JCM記事要約】

  • 6月7日にジュネーブにて開催された第110回ILO基準適用委員会(CAS)にて、独立労働組合を狙った弾圧を継続しているベラルーシについての議論が行われた。CASは政府に対し、労組の弾圧の終結や拘束された指導者・活動家の釈放とすべての嫌疑の取り下げ等を要求。
  • インダストリオール・ケマル書記次長は、インダストリオール、PSI(国際公務労連)およびITF(国際運輸労連)を代表する共同声明の中で、グローバルな民主主義の基準へコミットするよう要請。また、6月8日の世界行動デーでは、世界中の多くの組合がデモを行い、拘束されている組合指導者との連帯を表明した。

 

ベラルーシでは何十年も労働組合権が侵害されている。このところ独立組合に無数の攻撃が加えられている件について、6月7日にジュネーブで開催された第110回ILO(国際労働機関)の基準適用委員会(CAS)で審理された。そして本日6月8日、世界中の組合が世界行動デーに加わり、ベラルーシの労働組合指導者・活動家の即時釈放を要求した。

ベラルーシ政府は、ILO第87号条約に基づく義務をあからさまに無視し続けている。2004年の調査委員会勧告から18年になるが、その実施に向けた有意義な進展は見られない。

状況は2020年以降劇的に悪化しており、独立労働組合を狙った政略的な弾圧によって、ここ2カ月間にさらに悪化した。政府は独立した民主的な労働組合を組織的に破壊しており、組合指導者は絶えず攻撃されている。

現在、ベラルーシの独立組合のすべての指導者が、逮捕後に釈放されたか、出国や事件に関する情報開示を禁止されているか、今なお獄中にある。

何百人もの組合員がハラスメントや脅迫を受け、組合を脱退するよう圧力をかけられている。活動家が尋問され、組合事務所に盗聴器が仕掛けられている。

ベラルーシの労働者は今も、組合を設立するために認可を得る必要がある。CASは、組合登録を妨げるすべての障害を法律上も事実上も取り除き、特定の組合を特別扱いしてはならないと繰り返し要求している。

ベラルーシ政府は過去2年間、言論・表現・集会の自由、独断的な逮捕・拘束からの自由、独立した公平な裁判機構による公正な裁判を受ける権利(すべて結社の自由の基本的な前提条件)を著しく侵害している。CASは政府に対し、結社の自由の原則に従っていくつかの法律を修正するよう促している。

CASの要求は以下のとおり。

  • 独立労働組合の弾圧の終結
  • 拘束された指導者・活動家の釈放とすべての嫌疑の取り下げ
  • 独立組合とその指導者・活動家が、いかなる種類の暴力、脅迫または脅威もない環境下で労働組合活動を行えるようにするために必要なすべての措置の実施

政府は、2004年調査委員会勧告と2021年CAS決定を実行に移すための措置を明らかに講じていない。これはILO憲章に基づく義務の尊重の確保への献身が欠如しており、ILOの監視システムを尊重していないことを示している。したがってCASは、この問題を2022年11月のILO理事会に付託し、追加措置を検討するよう要求している。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は、インダストリオール、PSI(国際公務労連)およびITF(国際運輸労連)を代表する共同声明の中でこう述べた。

「私たちはベラルーシ政府に対し、方針を変更してグローバルな民主主義の基準にコミットし、逮捕された組合指導者の釈放とすべての嫌疑の取り下げによって、このコミットメントを示すよう要請する」

「はい、はい、はい」

世界中の労働組合員が今日、ベラルーシで収監中の独立組合指導者と連帯してデモをした。ジュネーブでは、グローバルな労働運動の代表が国連広場の国連ビル前に集まり、逮捕された人々の写真を掲げた。これは、組合に対する攻撃は機関に対する攻撃であるだけでなく人々に対する攻撃でもあること、ベラルーシの同志が労働者を代表した罪で投獄されていることを思い出させた。

象徴的なロールコールが行われた。獄中の労働組合員の名前が読み上げられると、群衆が「はい、はい、はい」と返事をした。

演説者たちは、ベラルーシにおける最近の弾圧の高まりをウクライナの戦争と関連づけ、「組合指導者が戦争に声高に反対すると独立労働組合に対する攻撃が強まる」と指摘した。組合指導者は一貫して戦争を非難し、ロシア軍のベラルーシからの撤回を要求している。

このデモにはウクライナの労働組合員の代表団が出席し、鉱山労組NPGUのミハイロ・ボリネッツ会長がベラルーシの同僚への支援を表明した。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

 

 

特集:団体交渉によって賃金平等を達成

2022-06-02

【JCM記事要約】

  • 同一労働に対して男女平等な賃金を受け取る権利があると認知されているものの、ジェンダー賃金格差の課題は根強く残っている。差別的な賃金決定に対処するには、団体交渉が有効である。団体交渉では、女性の仕事の過小評価と職務分類における女性の分離に取り組まなければならない。
  • 賃金の平等を実現するため、女性が機会均等を享受し、同じ経歴開発の見込みから利益を得るようにする必要がある。インダストリオールと加盟組織は、同一価値労働同一賃金に関する意識向上や訓練、教育を優先課題にすることが求められる。

 

同一価値労働同一賃金は認知された人権であり、1951年に採択されたILO条約第100号に明記されている。それにもかかわらず、条約の採択から70年経っても、ジェンダー賃金格差は根強い地球規模の問題であり、世界中で平均20%に達している。

特集

『グローバル・ワーカー』第1号(2022年6月)より

テーマ:ジェンダー賃金格差
文:アルメル・セビー

 

 

 

 

 

賃金格差――インダストリオール

 

ジェンダー賃金格差とは何か?

男女には、同じ価値の仕事に対して同じ報酬を受け取る権利がある。男女は、同一または同様の仕事に対して、また責任や任務、努力、労働条件に関しては異なっていても、客観的基準で見れば同じ価値を持つ仕事を遂行する際、同一賃金を受け取るべきである。

同一価値労働同一報酬(または賃金)は、賃金平等を達成してジェンダー賃金格差に取り組むために立案された原則である。ILOの『同一価値労働・同一報酬のためのガイドブック』によると、ジェンダー賃金格差は、労働力における男女の賃金格差を意味し、男性と女性の平均収入の差を男性の所得に占める割合として測定するものである。

女性労働者は同じ仕事の遂行に対して男性と同じ給料を支払われているので、ジェンダー賃金格差はないと広く信じられている。USWがジェンダー賃金格差の縮小に関するガイドラインで説明しているように、組合は同一労働同一賃金の確保にしばしば成功している。だが、それだけではジェンダー賃金格差はなくならない。給与体系は、女性の仕事の過小評価や、女性が低賃金職種で働く職業分離を防止しない。賃金平等や同一価値労働同一賃金の概念は、女性中心の仕事や部門で低賃金をなくそうとしている。

賃金構造にジェンダー差別があり、間接的な差別を招いている。例えば、体力は器用さや目の集中力よりも価値が高い。後者の技能は価値が低いとみなされ、男性が優遇されている。意識的な偏見ではないが、賃金決定は男性により大きな優位性を与える方法で構成されている(Manuela Tomei, February 2018)。

基本賃金や最低賃金は多くの場合、労働者が受け取る賃金・給付全体の一部にすぎない。ILO第100号条約の定義によれば、報酬とは、通常の、基本のまたは最低の賃金または給料、および使用者が労働者に対して、その雇用を理由として現金または現物により直接または間接に支払うすべての追加的給与である。報酬には、例えば、使用者が支払う超過労働手当やボーナス、会社株式、家族手当、ならびに現物給付が含まれる。

裁量賃金は、間接的な差別やジェンダー賃金格差の一因になることがある。例えば、女性は無給の仕事や介護の責任が不平等に大きいため、超過労働手当を得る機会が少ない。

スペインの労働者委員会からの最近の報告によると、月給の男女格差のほぼ40%が手当とボーナスである。英国では、従業員250人超の企業に、ボーナスも含めてジェンダー賃金格差の報告が義務づけられている。これはジェンダー賃金格差の要因に対する認識向上に貢献している。

団体交渉は、手当やボーナスの付与にあたって利用すべき透明かつ客観的でジェンダーニュートラルな基準の取り決めによって、ジェンダー賃金格差のうち差別的な賃金決定に起因する部分に取り組むうえで役立つ。

団体交渉の役割と課題

団体交渉は依然、労働組合が同一価値労働同一賃金の原則を実施し、より透明な賃金制度を達成する最も重要な手段である。これまでの証拠によると、団体交渉は男女間の賃金不平等の削減に積極的に貢献する(Jane Pillinger and Nora Wintour, 2019)

団体交渉は、集権化されているか、部門レベルで実施されている場合、より幅広い労働者を対象とし、男女間の賃金不平等の削減により大きな効果がある。労働組合は、最低賃金と労働協約の対象範囲を不安定労働者やパートタイム労働者に広げることによって、包括的な賃金決定の促進を優先すべきである。というのも、女性はこれらの労働者グループに不釣合いに多く見られるからである(ACTRAV/ILO, 2019)

団体交渉が重要なのは、多くの国々の法律が同一価値労働同一賃金の原則を反映していないからである。その結果、団体交渉が賃金条件を決定する主な方法になる。現行法が賃金平等を促進している場合も、団体交渉がこれらの原則を実施・監視するための重要な手段であることに変わりはない。

ジェンダーバランスと、ジェンダー問題に関して訓練を受けた交渉チームが、団体交渉によってジェンダー平等を促進する鍵である。証拠によると、労働組合指導部や交渉チームに女性がいれば、団体交渉の結果は、よりジェンダーに配慮したものになる。ILO労働者活動局の調査によると、女性が労働組合の賃金交渉チームに占める割合は30%にすぎない。半数前後の組合が、ジェンダー問題について交渉チームに概説したり、訓練したりしていると答えた。

英TUCは交渉チームの女性参画のために割り当てを実施している。南アフリカでは、NUMSAの全国ジェンダー機構が、ジェンダー平等(ジェンダー賃金格差を含む)に関する団体交渉チームの訓練を優先している。

最低賃金の引き上げ

証拠によると、最低賃金の増額は所得不平等とジェンダー賃金格差の縮小に貢献する(ILO)

ILO労働者活動局の調査によれば、ジェンダー平等に向けた賃金設定に際して組合が主に重点を置くのは、低賃金労働者の賃金改善と、脆弱な雇用形態の労働者グループの組織化や、そのようなグループへの法定最低賃金または労働協約の拡大である。

女性は最も賃金が低い職種で働く可能性が男性より大きいので、最低賃金や生活賃金はジェンダー賃金格差を縮小する鍵である。かなりの割合の女性労働者が、団体交渉の対象にならない未組織の仕事や不安定な仕事に就いている。国家または部門レベルの最低賃金交渉は、そのような労働者に利益を与えるだろう。

衣料や電子のような産業のグローバル・サプライチェーンの末端で、組織率が低い低賃金雇用に女性が集中している現状は、ジェンダー賃金格差の一因となっている (ACTRAV/ILO, 2019)。インダストリオールはACTで他のステークホルダーと協力し、世界の衣料産業の主要な賃金設定手段として、ブランドの購買慣行に支えられた産業別団体交渉システムの確立に取り組んでいる。これによって衣料産業の労働者(主に女性労働者)のために生活賃金を設定できるようになる。

しかし、最低賃金政策や生活賃金政策だけでは、ジェンダー賃金格差は縮まらない。最低賃金政策や生活賃金政策がジェンダー賃金格差に及ぼす効果を最大限に高めるには、同一価値労働同一賃金をめぐる努力や交渉に関連づけなければならない。女性化された仕事や部門で働く女性の低賃金は、女性の仕事の過小評価と結びついている。それらの賃金は、男性中心の仕事や産業で働く男性の賃金と比較しなければならない。そうしないと、最低・生活賃金政策は(例えば、女性が働いている部門や職業の賃金水準を低く設定したり、移民を最低賃金法の対象から除外したりすることによって)脆弱な労働者グループを直接・間接に差別する恐れがある(Jane Pillinger and Nora Wintour, 2019)

賃金の透明性と同一価値労働同一賃金

同一価値労働同一賃金の原則を適切に実施するために、団体交渉では、女性の仕事の過小評価と職務分類における女性の分離に取り組まなければならない。賃金の透明性の欠如は、賃金差別を隠された現象にする。全レベル(国家、部門および企業レベル)の男女別のデータや統計値は、既存の偏見、差別的な職務評価、分類体系を確認する鍵である。

労働組合は、ジェンダーニュートラルな賃金決定を取り決めるために、この情報を必要とする。欧州数カ国では、これは一定人数の労働者を雇用する企業の賃金報告義務に関する法律によって行われている。オーストリアでは、2011年に導入されたジェンダー賃金透明性法により、ジェンダー賃金格差の程度に関する認識が高まっている。インダストリオール加盟組織PRO-GEは、代表を教育するためのツールやガイドラインを開発している。

現在の賃金監査や賃金報告の規定方法では、既存の職務評価・職務分類体系が差別的であるかどうかについては報告されない。組合は賃金決定方法に関する情報を入手できず、主に女性が遂行している仕事の過小評価に取り組むことができない(Jane Pillinger, 2020)

ETUCと欧州の労働組合は、ジェンダーニュートラルで差別のない方法による雇用の評価・査定を確保する、強力なEU指令を求めて運動している。ETUCは、仕事の価値を評価し、技能、努力、責任、労働条件などの客観的基準と比較するよう要求している。職務評価のための比較を職場レベル、企業レベルまたは部門横断的レベルで行えるようにすることが、組合の要求の中核となっている。

もう1つの要請は、従業員10人超の使用者に対し、労働者・労働組合への定期的な賃金報告と賃金監査の提供を義務づけることである。賃金監査では、それぞれの区分や職務の男女の分析や、利用されている職務評価と分類体系、賃金に関する詳しい情報、ジェンダーに基づく賃金格差を取り上げるべきである。労働組合は、労働者が自分の賃金に関する情報を開示したり、他の労働者から賃金に関する情報を入手しようとしたりするのを制限している、給与明細の守秘義務をなくしたいと考えている。

2021年3月に公表された欧州委員会の賃金透明性指令案は、同一価値労働同一賃金の適用強化を目的とする、賃金の透明性に関する拘束力のある措置に取り組んでいる。しかし、この案は労働組合と団体交渉の中心的役割を認めていない。これを受けてETUCは、労働組合を同一価値労働同一賃金の基準の評価などに関与させ、部門の垣根を越えて比較を行い、労働組合を賃金格差の測定方法の決定に参加させ、使用者にジェンダー賃金格差縮小計画の取り決めを義務づけることを要求している。職務評価に労働組合を関与させることは、ジェンダー差別を考慮し、新しい賃金決定がジェンダー賃金不平等を繰り返さないようにするために欠かせない。

カナダの労働組合は、新しい賃金平等法の定めに従って賃金平等委員会を設置しようとしている。ユニフォーは、委員会の代表が役割を完全に果たせるようにするためのツールとガイドラインを開発した。賃金平等委員会を通して、使用者は同じ価値のすべての仕事を比較して賃金平等計画を策定し、同じ価値の男性中心の仕事に比べて過小評価されている女性中心の職務等級について、報酬増額と賃金調整を規定しなければならない。

「使用者はすでに労働組合代表に接触してきて、もう雇用分類体系を見直したと言っており、強い抵抗が予想される。使用者はコンサルタントに職務評価を外注化しようと画策しており、コンサルタントは労働組合代表に影響を与えようとしている。私たちの代表は、多くの仕事が待ち受けているので委員会の作業を開始させたいと熱望している。私たちは同一価値労働同一賃金の重要性に関する認識を高めている。代表を教育し、新しい手段を提供している」とユニフォーのトレイシー・ラムジー女性担当部長は言う。

団体交渉がジェンダー賃金格差の縮小に効果的に貢献するには、賃金交渉を抜本的に変更し、すべての部門のすべての賃金交渉で、実施された仕事の価値を交渉の中心に据えるようにする必要がある(Jane Pillinger, 2020)。

賃金の透明性に関する措置は、すべての交差的形態の差別を考慮し、報告や行動計画で交差的なデータや分析の提供を義務づける必要がある。

女性のための公正で包括的な経歴開発の確保

賃金平等を完全に実施するために、組合は、女性が機会均等を享受し、同じ経歴開発の見込みから利益を得るようにする必要がある。

南アフリカではNUMSAとNUMが、出産休暇から復帰する女性向けの訓練を取り決めた。両組合の報告によると、女性は妊娠・出産休暇中に進化した技術に対処するための新しい技能を身につけていないことが多く、経歴開発の妨げになっている。

労働組合は、より多くの女性が技術的・管理的職務に採用されるようにするためにも交渉している。

「使用者に、高賃金の仕事にもっと多くの女性を採用させるために交渉している。ケニアの自動車部門では、ほとんどすべてのエンジニアが男性であり、秘書は全員女性だ。人事部長に占める女性の割合は、この職種で女性の割合が高まっているにもかかわらず、25%にすぎない。女性が男性と同じ機会を得るようにする必要がある」とケニア金属合同労組のローズ・オマモ書記長は言う。

賃金平等を実施するために、同一価値労働同一賃金に関する意識向上や訓練、教育をインダストリオールと加盟組織の優先課題にすべきである。ジェンダー賃金格差や賃金平等を中心とするキャンペーンや、ガイドラインその他の資料の開発は、認識を高め、労働組合とこの問題に対する理解を深めるうえで貢献する。

「インダストリオールと加盟組織は、ネットワークや部門が行うすべての活動に賃金平等を盛り込むべきだ」とルシネイデ・バルジョン・インダストリオール・ラテンアメリカ副会長は言う。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

 

「労働者には強力な独立した代弁機関が必要」

2022-06-02

【JCM記事要約】

  • 6月1日にオンラインで開催されたインダストリオール執行委員会に200人以上が参加し、先立ってインダストリオール女性委員会や青年に関する大会決議の実施に向けたロードマップの報告が行われた他、ウクライナの戦争についての議論を行った。
  • 会議では、不平等に反対する世界行動デーの他、公正な移行に関するキャンペーンウィークや性差別と女性蔑視に関する大会決議の実施のためのロードマップ案、インダストリオール関連部門におけるジェンダー平等促進策(案)が承認された。

 

6月1日のインダストリオール執行委員会に200人以上がオンラインで参加し、国際連帯が議題に上った。

イェルク・ホフマン・インダストリオール会長が開会の辞を述べ、ウクライナの戦争のさらなる激化を避けなければならず、私たちには国際労働組合運動の一角として責任があると強調した。

「インダストリオールは、この戦争に対して強硬な態度を取っており、連帯基金を設立し、キーウを訪問した。ヨーロッパの労働者はウクライナの同僚のために必需品を集めている。戦争は私たち全員に影響を与えており、サプライチェーンが崩壊し、エネルギー・食品価格が暴騰している。戦争前にその日暮らしをしていた人たちは、さらに大きな打撃を受けている。グローバルサウスの人々にプーチンの戦争の代償を払わせてはならない」

「ウクライナの戦争を理由に、世界の他の紛争地域に目をつぶってはならない。パンデミックに続く戦争、暴力、気候変動――自由と平和、権利平等への強い意欲が、かつてないほど必要とされている。労働者の強力な独立した代弁機関が必要であり、私たちはその強力な代弁機関になることができる」

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長が書記局報告で、民主主義と権利のために立ち上がらなければならないと述べた。

「団結権・団体交渉権は平和の基盤だ。しかし、悲惨な話ばかりではない。ブラジルでは、ルノー労働者が16日間のストを経て賃上げを獲得した。メキシコのSINTTIAはゼネラル・モーターズ工場で団体交渉権を獲得し、重要な象徴的勝利を達成した。ハイチの衣料労働者はゴム弾にさらされたが引き下がらず、GOSTTRAは組合員のために最低賃金を勝ち取った。タイでは、13カ月のキャンペーンの結果、ついにパンデミック下で不当解雇された衣料労働者に法定退職金が支払われた。フィンランドの製紙労働者は112日間のストで、労働協約を破ろうとした使用者に抵抗して大勝利を収めた」

ウクライナのインダストリオール加盟組織が現場の状況を報告し、非常に危険な状態にあることを説明した。例えば、ある鉱山では停電が原因で、鉱山労働者が暗闇の地下に閉じ込められた。この戦争で、学校や教育機関が修復できないほど破壊されている。数百人の子どもが負傷したり殺されたりし、レイプや殺害、拷問も行われている。

「しかし、私たちは自分たちにできることを続けており、皆さんの支援が必要だ」

加盟組織はウクライナの人々を支持して発言した。執行委員会は、ロシアのウクライナ侵攻を非難して攻撃の即時中止を求める声明を承認した。

5月に会合を開いたインダストリオール女性委員会が、執行委員会に討議内容を報告した。すべてのインダストリオール関連部門におけるジェンダー平等の促進、若い女性の権利拡大と参画促進、ジェンダー平等の促進にグローバル枠組み協定を利用する方法、ジェンダー賃金格差の解消――ジェンダー賃金格差とは何なのかが、それが実際に存在することが理解されていない。分類だけでジェンダー賃金格差を防止することはできない。

会合では、青年に関する大会決議を実行に移し、来年決議を実施するためのロードマップに先立って、各地域の若年労働者が一年かけて自分たちの優先事項を決めることが報告された。女性委員会は、能力強化が必要であり、第2層の指導部の構築を優先すべきことを承認し、若手指導者を促進するためのメンタープログラムを提案した。

執行委員会は、多国籍企業に関するインダストリオールの活動の戦略的方向を検討するよう求められた。これには、グローバル枠組み協定に関する作業部会の対象範囲と委任事項が含まれる。対象範囲を広げ、GFAだけでなく、多国籍企業に影響を及ぼすすべての手段を取り扱わなければならないことで合意した。さまざまな課題に対処するために、作業部会を小規模行動グループに分割しなければならないかもしれない。サプライチェーンで労働者の権利を保護するために、拘束力・強制力のあるグローバルな規則によってグローバルな企業の力に対抗する必要がある。討議は11月の次期執行委員会に持ち越され、そこで新しい作業部会が確定する。

会合は、10月7日の不平等に反対する世界行動デーを承認した。案の抜粋:

「生産性向上にもかかわらず世界中で不平等が拡大しており、多くの国々の労働者が生活費危機に直面している。労働者は、自分たちが生み出す富の公平な分配を必要としている。富の不平等な分配の問題に取り組まない限り、公正な移行も含めて他の分野で前進することはできない」

執行委員会は以下も承認した。

  • 公正な移行に関するキャンペーンウィーク(11月8-20日にエジプトで開催されるCOP27前)
  • 性差別と女性蔑視に関する大会決議の実施のためのロードマップ案
  • インダストリオール関連部門におけるジェンダー平等促進策(案)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

 

 

スペシャル・レポート:ロシアに対する包括的制裁――なぜミャンマーは制裁を受けないのか?

2022-06-01

【JCM記事要約】

  • 軍事政権下のミャンマーでは、組合指導者が逮捕されるなど労働組合が自由に活動できない状況が続き、労働者の権利を保護することができていない。インダストリオールはミャンマーで活動している企業に書簡を送付し、民主主義と労働基本権が回復するまで事業活動を停止するよう求めるも、多くの世界的衣料ブランドがミャンマーに留まり業務を行っている。
  • インダストリオール・アトレ書記長は、ミャンマーの人々は身を守るために武装勢力に加わろうとしており、同国の状況は内戦に発展する恐れがあると危惧している。世界的衣料ブランドがミャンマーで調達する期間が長くなればブランドの共謀が深まり、ミャンマーの苦しみが長く続くことになる、と主張した。

 

ミャンマーの労働組合が軍事政権に対する包括的経済制裁を要求しているにもかかわらず、多くの世界的衣料ブランドが同国からの調達を続けている。ミャンマーの人権侵害への国際社会の対応は、ロシアの状況とまったく対照的である。

スペシャル・レポート
『グローバル・ワーカー』第1号(2022年6月)より

国:ミャンマー
文:ウォルトン・パントランド

 

 

 

 

 

2021年2月1日の軍事クーデター以降、ミャンマーの軍事政権は、ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官が「戦争犯罪と人道に反する罪に当たるかもしれない」と述べた人権侵害を犯している。「ミャンマー国民が被っている国際法違反の驚くべき幅広さと規模を考えれば、毅然とした統一的な断固たる国際的対応が必要だ」と彼女は付け加えた。

1万人を超える政治犯(組合活動家を含む)が拘留されており、労働活動家54人を含めて、少なくとも1800人の民間人が軍事政権によって殺害された。インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織のミャンマー製造労働者連盟(IWFM)を含む16の組合と連合団体が活動を禁止されている。

にもかかわらず、まだ多くの世界的衣料ブランドが平常どおり業務を行っている。ウクライナ侵攻から数日のうちにロシアを去ったブランドは、ミャンマーにとどまる口実をいくつか挙げているが、最も一般的なのは、自分たちは善を促進する力であり、「強化されたデュー・ディリジェンス」の実施によって労働者を保護することができる、という主張である。

労働者と労働組合員にとって、状況は非常に厳しい。ILOの推計では、22万人の衣料労働者が失業した。そしてIWFMの見積もりによれば、一時閉鎖や一時解雇、減産によって、さらに12万人が職を失った可能性があるが、これは失業者数では報告されていない。

クーデター前に労働協約で保護されていた組織労働者が解雇され、何の権利もない臨時労働者と入れ替えられている。IWFMは、労働者が補償なしで解雇されたり、治安部隊が工場長から詳細な個人情報を引き出し、組合指導者を逮捕するために自宅に押しかけたりした事例を数多く確認している。抗議中の労働者が撃たれたり、労働者が不当に解雇されたり、組合指導者が脅迫され、治安部隊の標的にされたりする事件が発生している。

IWFMのオルグや教育担当者、交渉者、指導者は軍につけ狙われている。ほとんどの衣料労働者の日給が現在1.80米ドル未満であり、軍のために働くことを拒否したために、数十万人が公共部門や病院、学校、大学、鉄道会社から解雇された。

IWFMはILOへの書簡で次のように述べた。

「軍事独裁政権下では民主的労働組合が自由に活動できないので、労働者の権利を適切に保護することができません。それでもなお、私たちは2021年、構築した対話メカニズムを通してブランドと協力することによって労働者の保護に努めました」

「丸1年の交渉で得た経験から、欧米ブランドが労働者の権利を保護できないことは今や明らかです」

アディダス、H&M、C&A、テスコ、ベストセラー、インディテックスといったブランド向けに生産している工場(多くの場合中国系)で、数々の事件が報告されている。IWFMはこれらの違反をブランドに提起しており、解決された事件も少なくない。だが、軍事独裁政権ではデュー・ディリジェンスが不可能なので、工場が申し立てをはねつけ、未解決の事件もある。IWFMは、労働者が現状について嘘をつかなければ解雇すると言って脅されたり、軍に銃を突きつけられて報酬の返還を強制されたりした事例を確認している。

労働組合が自由に活動できず、デュー・ディリジェンスの実施が不可能であるため、ミャンマーの組合は、この国は巨大な奴隷労働収容所になる恐れがあると考えている。ミャンマーの労働運動は2021年夏、包括的経済制裁を要求し、軍事政権の資源、特に外貨を枯渇させることを優先しなければならないと主張した。

インダストリオールは2021年9月の大会で制裁要求を支持し、ミャンマーで活動している企業に書簡を送付、民主主義と労働基本権が回復するまで事業活動を停止するよう求めた。その後、ボルタリア、ポスコ、テレノール、トタル、シェブロン、シェル、ウッドサイド・ペトロリアム、ブリヂストンなど、多くの企業がミャンマーから撤退。トタルは、人権侵害が増加しているため、もはやこの国に積極的な貢献を行うことができないと述べた。

ミャンマーの衣料工場、2015年

 

しかし、ほとんどの衣料メーカーがミャンマーにとどまっている。新規注文を出さないと約束したメーカーもあるが、生産サイクルの関係で、多くの企業が2022年を通じて継続的に関与している。繊維・衣料産業はミャンマーにとって重要な外貨獲得手段であり、組合は時の経過とともに軍事独裁政権との協力が常態化することを懸念している。

衣料ブランドは、責任をもってミャンマーから撤退することは複雑な作業だと主張しているが、ロシアに関する経験から、政治的意志があれば迅速に行動できることは明らかである。世界的な制裁と一般大衆の幅広い怒りに直面して、例えばH&Mは、ウクライナ侵攻から数日のうちにロシアの全店舗を閉鎖した。同社は今もミャンマーから調達している。

最大の障害の1つは、ロシアの場合とは異なり、ミャンマーの状況と制裁の有用性をめぐっては国際社会で意見が割れていることである。軍事政権の国家行政評議会(SAC)は国際外交からますます分離されている(例えば、国連から信任状を与えられていない)が、ミャンマーの民主的亡命政権である国民統一政府(NUG)は、国際社会で合法政府として幅広く認知されていない。世界の労働組合運動は、NUGの外交的承認を求めるミャンマー組合の要求を支持している。

NUGは軍事政権に収入を与えないことの重要性を強調し、最近の声明で次のように述べた。「すべての企業がミャンマーの軍事政権にいかなる税金も支払わず、いかなる収入も与えないよう指示されていることを想起して欲しい。軍への支払いを回避できない場合、唯一の選択肢は、ミャンマーで民主主義が完全に回復するまで営業活動を中止することである」

ミャンマーで活動している世界的ブランドにとって、税金や織物輸入税、軍所有企業への光熱費、ミャンマーの2つの港(いずれも軍所有)の手数料の形で、軍に収入を提供することを回避するのは不可能である。

制裁を求めるキャンペーンを妨げる最大の障害はEUである。EUは現在、武器以外すべて(EBA)の貿易特恵プログラムによってミャンマーにEU市場への無関税アクセスを与えている。EBAはミャンマー経済に大きな利益を与えており、EUはミャンマーのアパレル輸出の過半を受け入れている。

EUは過去に制裁を利用してミャンマーに民主化を促したが、商業的利益からこのアプローチに反対する動きがあり、EUの現在の立場は、経済連携と建設的関与が前進するための最善の方法だというものである。これはヨーロッパがロシアの石油・ガスに大きく依存することになったものと同じ考え方である。ヨーロッパ大陸で戦争の脅威が現に存在し、大量の難民がEUに押し寄せているため、EUはロシアを経済的に孤立させるために迅速かつ力強く行動したが、ミャンマーは距離的に遠いため、同等の行動を起こすことを控えているようである。

EBAは当初、貿易によって民主主義を支援する手段として開発されたが、EUはグローバル・バリューチェーンでの廉価生産にばかりとらわれている。ミャンマーは衣料ブランドにとって非常に魅力的な投資先であり、各社はこの国に多額の投資をしている。EBA撤回の回避は、ドイツのデュー・ディリジェンス法やEU指令などの法体系の拡大と矛盾する。

ミャンマーの組合は、ウクライナ危機その他の問題が原因で、世界の関心が新しい話題に移ってしまうことを懸念している。軍は十分な時間を稼ぐことができれば、不正な選挙プロセスによって統治を強化・統合し、外交・経済関係の正常化に取り組むことができる。

ミャンマーでは平和的変革をもたらす余地が縮小しているため、多くの人々が武装闘争に加わっている。これは衣料ブランドに深刻な環境・社会・統治(ESG)リスクをもたらす。ブランド各社は戦闘地域での事業活動を選ぶことによって、人権デュー・ディリジェンスを示し、違反への共謀を避ける責任を負うことになる。ブランドは、評判の悪化、訴訟、OECD提訴、株主の抵抗に遭う危険がある。紛争の拡大が原因で、サプライチェーンが混乱するリスクもある。

2021年インダストリオール大会

 

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は述べた。

「ミャンマーの状況は内戦に発展する恐れがある。軍が民間人に武力攻撃を加える状況が1年以上続いた結果、人々は現在、身を守るために武装勢力に加わろうとしている。これは変革のための民主的手段が閉ざされているからだ」

「包括的経済制裁は、ミャンマーに民主主義を取り戻すための非暴力的な解決策だ。世界的衣料ブランドがミャンマーで調達する期間が長くなるほど、ブランドの共謀が深まり、ミャンマーの苦しみが長く続くことになる」

 

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

 

製造業からモビリティーへ レポート:製造業からモビリティーへ――未来のモビリティー部門に備える労働組合

2022-06-01

【JCM記事要約】

  • 未来のモビリティーコンセプトは、人と車とインフラのデジタル接続が進み、無人の車両が増えていくなど、現在とは異なったものになる。その中での雇用は、不安定な労働条件を特徴とするものもあり、労働者の権利を擁護するためには戦略的な討議が必要。
  • インダストリオールは、国際運輸労連(ITF)、UNIグローバルユニオンおよび独フリードリヒ・エーベルト財団とともに、未来のモビリティーコンセプトに関する3カ年プロジェクト(2021-2023)を実施している。プロジェクトには、労働への影響・未来の技能要件および訓練ニーズの分析や、部門の組合間の戦略志向型討議の開始などが含まれている。

 

都市環境における未来のモビリティーコンセプトは、現在私たちが知っているものとは違ったものになるだろう。サービスの共有が増え、個人モビリティーが減少し、人と車とインフラのデジタル接続が進み、無人の車両が増えていく。

レポート
『グローバル・ワーカー』第1号(2022年6月)より

テーマ:モビリティー
文:ゲオルク・ロイテルト

 

 

 

 

 

未来はモビリティーの都市化によってすでに始まっている。運転者と乗客を結びつけるプラットフォームは、運転手や他のサービス要員の不安定な労働条件に基づいている。どのような変化を予想でき、労働者と組合にどんな影響が及ぶだろうか。

事実

未来のモビリティーコンセプトの主要素:

  • 交通渋滞から脱して温室効果ガス排出を削減するために、都市部の車の量を減らす必要がある。
  • 個人的モビリティー(主に車による)が大きく減少しても移動性を維持あるいは改善さえするには、共有サービスを大幅に拡大しなければならない。これは既存の形態の公共交通機関(電車、地下鉄、路面電車、バスなど)と、新しい配車サービスや相乗りサービス(バス、タクシー、オートバイ、自転車、スクーターなど)の両方に関係がある。
  • デジタル・プラットフォーム事業者は、柔軟な複合/多重選択輸送ソリューションの導入によって、あらゆる種類の交通手段の組み合わせを可能にする。
  • 人工知能システムにおけるビッグデータの収集と利用は、モビリティーコンセプトをデジタル化するすべてのプロジェクトの重要な要素である。
  • 新技術により、自律走行車(例えば「ロボタクシー」)の導入も可能になる。これは各種デジタル装置(インターネット、センサー、レーダー、ライダーなど)の設置を必要とし、車両同士が、また車両と(道路)インフラが適切に通信できるようにする。
  • 自律走行車は、公共交通機関による農村地帯へのアクセスを可能にする。人件費の削減によって過疎地での顧客サービスの利益が増えるだろう。
  • 現在、モビリティー市場に参入しているのは主に技術企業である。というのも、これらの企業には、この部門のデジタル化と新しいサービスや交通手段の実施に必要なソフトウェアと技術、製品があるからだ。
  • それらの技術企業は、伝統的なモビリティープロバイダーとは異なるビジネスモデルに基づいて、経済的行動を実施している。ベンチャーキャピタルへのアクセスを得るために、信頼できる形でビジネス概念を提示することが最も重要である。四半期貸借対照表や短中期的な収益性は二の次になる。
  • 技術企業は、ただ伝統的なモビリティープロバイダーに取って代わるだけではない。さまざまな形の協力やネットワークが生まれる。未解決の問題は、誰が付加価値の大部分を創出するか、誰が労働条件などを設定するかである。
  • 輸送システムの改革とデジタル化は、伝統的な公共交通機関と自動車産業に失業をもたらすが、特にIT、サービス部門、デジタル輸送インフラで新規雇用を創出する。新規雇用の量が失われる雇用を埋め合わせる可能性が高い。
  • 新規雇用の中には、賃金の高い高技能職がある一方で、主にサービス分野で、不安定な労働条件を特徴とすることの多い雇用も生まれる。

課題

 

課題

雇用の減少と増加の定量分析は大した問題ではないように思われるが、今日と明日の雇用の技能格差は難しい課題である。

実例:

アルトゥーロ、52

過去31年間、アルゼンチンの大手自動車会社の変速装置工場でCNC旋盤工として働いてきた。電気自動車は(複雑な)変速装置を必要としないため、彼の工場は数年後に閉鎖される。過去30年間にアルトゥーロが習得した主な技能は、高精度金属機械加工、数値制御機械の操作、保守活動、品質管理、複雑な製造プロセスの理解、チームワーク、交代勤務などである。

アルトゥーロが技能の向上や再習得によって新しい仕事を見つけられるようにするには何が必要か。エレクトロニクスやメカトロニクスの分野の新しい技能を追加し、自律走行車の安全な運転に必要なデジタル道路インフラを設置できるようにするというのはどうだろうか。

クリスティン、43

チケット販売員として、その後は駅監督者と

して働き、フランスの地下鉄で安全と清潔を確保してきた。10年以上前、券売機にチケット販売員の仕事を奪われた。人工知能のせいで、5年後には監督者としての仕事も失うことになるだろう。彼女の主な技能は現在、かなり複雑な輸送システムや警戒システムの監督、基本的なコンピューター技能、チームワーク、交代勤務に関するものである。

クリスティンが技能の向上や再習得によって新しい仕事を見つけられるようにするには何が必要か。いくつか新しいコンピューター技能を習得し、将来ロボタクシーの導入を監視できるようにするというのはどうだろうか。

キアラ、28

過去8年間、インドのB2Bコールセンターに雇用されてきた。主に、ある大手米国企業の簿記業務を担当した。新しいソフトウェアにより、間もなく彼女の仕事は不要になる。彼女が身につけた技能は、簿記と関連コンピュータープログラム、基本制御、顧客関係の分野である。

キアラが技能の向上や再習得によって新しい仕事を見つけられるようにするには何が必要か。彼女が長期的展望のある新しい仕事を見つけるには、おそらく本格的かつ継続的なIT技能向上が必要だろう。

研究

 

研究:

輸送システム分野の2人のドイツ人研究者、アンドレアス・ニー博士・教授とヴェールト・キャンズラー博士は、未来のモビリティーシステムが労働に与える影響を調べている(関連研究は間もなくここで入手可能)。

討議

労働組合が労働者の権利を擁護し、将来のディーセント・ワークと適正な賃金を強く要求する態勢を整えるようにするために、戦略的な討議が必要である。

中心的な主題は以下のとおり。

  • 組織化:この研究によると、自動車産業と公共交通機関の伝統的な大企業は、規模と重要性が低下している。これらの企業は現在かなり組織率が高いため、組合は敗退する可能性がある。他方、これらの企業は、技術企業と競争するために新しい子会社や合弁事業を設立している。現在の交渉関係は組合に、モビリティー市場の新しい分野に手を広げるために一定の影響力を与える可能性がある。
  • キャンペーン:この研究は、新しいモビリティーコンセプトの導入には公共の場の再配分が必要になると示唆している。さらに、労働組合が――おそらくNGOと協力して――これらのプロセスを利用し、不安定で危険な労働条件を提供するすべての企業を排除するために、関連ルールを求めるキャンペーンによって適正な労働条件を擁護・促進するよう勧めている。
  • 戦略構築:9月27-29日にスペインで関連加盟組織向けに開かれるワークショップで、戦略的討議プロセスを開始する。

プロジェクト

 

プロジェクト

インダストリオール・グローバルユニオンは、国際運輸労連(ITF)、UNIグローバルユニオンおよび独フリードリヒ・エーベルト財団とともに、ディーセント・ワークと適正な賃金を確保するために、未来のモビリティーコンセプトに関する3カ年プロジェクト(2021-2023)を実施している。

モビリティー――インダストリオール

 

プロジェクトの主要素:

  • 未来のモビリティーコンセプトとモビリティー市場の詳細な理解の深化:構造、交通手段、活動主体、雇用、ビジネスモデル、組合の役割
  • 労働への影響、未来の技能要件および訓練ニーズの分析
  • すべてのジェンダー関連側面の評価と包摂
  • 南北両方からの平等な情報に基づく真にグローバルな視点の設定
  • 外部専門家による研究の委託
  • 部門の組合間の戦略志向型討議の開始