広報ニュース

第151号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2022年11月11日)

インドの組合、労働法変更に抗議

2022-08-23

【JCM記事要約】

  • インド・ビシャカパトナムの組合が、新労働法に反抗すべくデモを実施した。このデモは、インド各州の労働大臣全員と労働法に基づく規則の策定と実施について討議する会合に先立って行われたものである。
  • インダストリオール執行委員のサンジャイSMEFI書記長は、新労働法は公共部門事業の民営化拡大と相まって、不安定雇用と危険な労働条件を悪化させる可能性があるとして、引き続き闘いを続けていくと述べた。

 

2022年8月23日:ビシャカパトナムの組合は昨日と今日、新しい労働法に反対する抗議集会を開いた。組合指導者たちは集会後に地区行政当局に覚書を提出し、企業の利益を促進しながら労働者の権利を弱めようとする新しい労働法について懸念を提起した。
                                                      

このデモは、ビシャカパトナムがあるアンドラプラデシュ州で、インド各州の労働大臣全員との会合に先立って行われた。会合の狙いは、労働法に基づく規則の策定と実施について討議することである。

新労働法が発表されてから、インド全国の労働者が何度かデモを行い、44本の労働法を4本にまとめる政府の措置に反対した。労働組合は、この労働法の変更を、以前の法律に明記されていた権利を勝ち取るために懸命に闘った労働者運動の努力を帳消しにしようとする試みとみなしている。

インダストリオール執行委員のサンジャイ・バダブカール・インド鉄鋼・金属・機械労連(SMEFI)書記長は言う。

「現政権は労働者の権利を完全に無視している。この労働法変更は、公共部門事業の民営化拡大と相まって、不安定雇用と危険な労働条件を悪化させそうだ。闘いを続けるしかない」

インダストリオール加盟組織のSMEFIとインド全国鉄鋼・金属・鉱山・機械従業員連盟(INSMMEEF)は、5月にビシャカパトナム鉄鋼工場でデモを行い、同工場の民営化に反対した。この工場に直接・間接に依存している約10万人が、民営化の影響を受けるだろう。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

 

ILO、ハイコム・マレーシアによる結社の自由の侵害を裁定

2022-08-23

【JCM記事要約】

  • マレーシア・ハイコム社が、2016年に勤務時間後に組合のブリーフィングに参加した事を理由に32人の全国輸送機器・関連産業労組(NUTEAIW)組合員を解雇し、協議後に27人の組合員を復職させてもなお組合指導者を復職させていなかった問題について、ILO結社の自由委員会はこれを結社の自由の侵害であったと結論を下した。
  • インダストリオールとNUTEAIWは、本件を受けて国内の法的手段を尽くした上でILO苦情を申し立てていた。インダストリオールのケマル書記次長は、紛争がさらにエスカレートすれば、同社とブランド各社の信用が国際的に失墜する恐れがあるとして、同社へILO裁定を受け入れて5人の組合指導者を復職させるよう要求する、とした。

 

2022年8月23日:ILO結社の自由委員会(CFA)は、マレーシアのハイコム(フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、三菱のサプライヤー)による組合指導者5人の解雇は結社の自由の侵害であったと結論を下した。
                                                      

ハイコムは2016年2月、勤務時間後に会社の敷地外で組合のブリーフィングに出席したことを理由に、32人のNUTEAIW組合員を解雇した。労使関係局での調停会合後、27人の労働組合員が復職した。しかし、同社は残り5人の支部組合指導者の復職は拒否した。

インダストリオール・グローバルユニオンと全国輸送機器・関連産業労組(NUTEAIW)は、国内のあらゆる法的手段を尽くしたあと、2021年5月にILOに苦情を申し立て、マレーシア政府はハイコムの反組合行動の是正を怠ったと強調した。

ILO CFAの最終報告書第399号によると、使用者の行為は脅迫に相当する。ILOはマレーシア政府に、労働者には平和的な会合を開催する権利があり、使用者は組合活動に干渉してはならないと念を押している。ILOは同国政府に対し、組合指導者の復職などの解決策を探るために調停を促進するよう勧めている。

NUTEAIWはILOの決定を歓迎している。

「5人の労働組合員の復職を手助けするために、政府およびハイコムとの会合に出席する用意がある。自動車ブランド各社は国際労働基準を守ると約束しているのだから、この紛争に介入すべきだ。ILOの裁定は、これらの労働組合員が勤務時間後に権利を行使していたことを明らかにしている。ハイコムには、労働者のプライベートな時間や活動を管理する権利はない」とN・ゴパール・クリシュナムNUTEAIW書記長は言う。

「インダストリオールはハイコムに対し、ILO裁定を受け入れて5人の組合指導者を復職させるよう求めている。紛争がさらにエスカレートすれば、ハイコムとブランド各社の信用が国際的に失墜する恐れがある」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。

 

スリランカの労働組合、共同炊事場で急激なインフレに対抗

2022-08-17

【JCM記事要約】

  • スリランカでは2022年初めから外貨準備の減少で急激なインフレが進んでおり、7月にはインフレ率が60%を超えた。食品や燃料、医薬品などの必需品が不足し、労働者は危機に直面している。
  • この危機的状況の中、インダストリオール加盟組織の自由貿易地域・一般サービス従業員組合(FTZGSEU)をはじめとした複数の労働組合が、共同炊事場プログラムを開始。さらにFTZGSEUは、この機会を利用し労働者の権利問題をめぐって議論等を行っている。

 

2022年8月17日:スリランカのインダストリオール加盟組織は、日常生活を極めて困難にしている大規模な食品価格の暴騰と料理用ガスの不足に取り組むために、共同炊事場プログラムを実施している。
                                                      

スリランカは2022年の初めから、他に類のない経済・政治危機を経験している。外貨準備の減少で、急激にインフレが進み、食品や燃料、医薬品といった必需品の深刻な不足を招いた。

7月にインフレ率が急上昇して60%を超え、日常生活に強烈な影響を与えた。衣料労働者は以前、2万6000スリランカ・ルピー(72米ドル)の平均月額賃金で1日に1回栄養価のある食事を確保しようと苦労していたが、今やはるかに悪い状況にある。

組合は、収入7万5000スリランカ・ルピー(208米ドル)未満の世帯が、2020年1月の価格で燃料や灯油、パン、小麦、米などを買えるようにすることを要求している。

スリランカのインダストリオール加盟組織である自由貿易地域・一般サービス従業員組合(FTZGSEU)、スリランカ全国金属・移民労組(NUMMS)およびセイロン製造労組(統一労働者連盟)は、自由貿易地域(FTZ)で共同炊事場プログラムを実施している。

カトゥナヤケFTZの民間寄宿舎で生活している労働者は、組合からも財政援助を受けて資金を出し合い、週末に寄宿舎や組合事務所で共同で食事を作っている。労働者の大多数は僻地出身の女性で、現在あるいは過去にFTZの衣料製造施設で雇用されている。

「スリランカの労働者は、この先例のない危機に直面して力強く闘っている。私たちは政府に対し、労働組合による正当な要求を考慮に入れて、直ちに問題を解決するよう強く促している」とアントン・マークスFTZGSEU書記長は言う。

FTZGSEUは共同調理活動だけでなく、この機会を利用して労働者の権利問題をめぐって議論したり、労働者間の連帯を構築したりしている。

セイロン製造労組(統一労働者連盟)のスワスシカ・アルリンガム書記次長は言う。

「組合が介入し、政府が引き受けていない責任を果たさなければならない。私たちは、これらの共同炊事場によって燃料不足の事態に取り組もうとしている。まだ長い道のりがある」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

 

 

 

 

インドネシアの労使、暴力とハラスメントに関するゼロ・トレランス(許容しない)方針に署名

2022-08-10

【JCM記事要約】

  • 仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関するILO第190号条約への強い意欲を表明するため、インドネシアの組合が使用者との社会的対話会合を開催した。5回開催された会合にて、いかなる形態の仕事における暴力とハラスメントも拒絶するゼロ・トレランス方針に38社の労使が署名した。
  • インダストリオールのアルメル・ジェンダー/事務技術職労働者担当部長は、労働組合が関与する予防・苦情処理のメカニズムはより効果的かつ公平であることが判明していることからも、今回の事例は他の国々の労働組合も再現できる好例である、とインドネシアの組合の成功を称えた。

 

2022年8月10日:インドネシアの組合は、仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関するILO第190号条約への強い意欲を表明する方法として、使用者との社会的対話会合を開催した。
                                                      

インダストリオール・インドネシア協議会の女性委員会の下で、使用者との社会的対話会合が5回開催され、38社の労使が暴力とハラスメントに関するゼロ・トレランス方針に署名した。

このゼロ・トレランス方針によると、使用者と労働組合はいかなる形態の仕事の世界における暴力とハラスメントも拒絶する。対象は常用労働者、契約労働者、外注労働者などである。

さらに、使用者と労働組合は、性的な暴力とハラスメントに関する苦情を取り扱うチーム結成に合意した。このチームの役割は、暴力とハラスメントの犠牲者には苦情を申し立てる権利があり、安全やプライバシー、精神的な支援に関して十分保護されるべきだと強調することである。

「このゼロ・トレランス方針は、政労使協力の格好の出発点だ。まだ先は長いが、合同委員会は仕事の世界における組合員の保護改善に役立つと私たちは信じている」とインダストリオール・インドネシア女性委員会のアイラ・ライラ・ブディマン議長は述べた。

「合同苦情処理制度の確立を促すこの方針は、うまくいけば他の国々の労働組合も再現できる好例だ。労働組合が関与する予防・苦情処理の合同手続きやメカニズムは、より効果的かつ公平であることが判明しており、手厚く保護されていると感じた労働者の信頼も大きい」とインダストリオールのアルメル・セビー・ジェンダー/事務技術職労働者担当部長は述べた。

インドネシア政府は2019年、創設100周年のILO(国際労働機関)総会でILO第190号条約の採択を支持した。しかし、労働組合と市民社会組織からのさまざまな要求にもかかわらず、政府はまだ条約を批准していない。ILOウェブサイトによると、インドネシア政府は第190号条約を検討のために所轄官庁に提出している。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

 

 

インドの組合、労働安全衛生の改善を要求

2022-08-08

【JCM記事要約】

  • 7月29日、デリーにてインドの劣悪な労働安全衛生状況に関する円卓会議が開催され、インダストリオール指導部および加盟組織指導部の他、労働雇用省当局者や公営採炭・製鉄会社代表なども参加した。加盟組織は、政府・使用者が労働災害に関する情報を公表し、労働組合が精査できるようにすることを要求しており、政府当局は組合の要求に応えられるよう努力すると述べた。
  • 会議の司会を務めたインダストリオール・ケマル書記次長は、労働者には自分の身を守るため労働安全衛生に関する権利があるとして、政府・使用者には組合に関与し職場の安全衛生条件改善に努めることを要求する、とした。

 

2022年8月8日:7月29日にデリーで開催されたインドの劣悪な労働安全衛生状況に関する円卓会議で、インダストリオール加盟組織は、すべての労働者の安全性向上を強く要求した。
                                                      

この円卓会議は、インダストリオール指導部とインドの加盟組織指導部が代表するインダストリオール・グローバルユニオンによって組織された。参加者には、労働雇用省当局者(インドの主任労働コミッショナーを含む)、鉱山安全総局、公営採炭・製鉄会社代表、それにインド産業連盟が含まれていた。

2021年にインダストリオールが収集したデータによると、製造業(化学・医薬品、鉱業、鉄鋼)で少なくとも429件の事故が発生し、352人を超える労働者が死亡、負傷者も700人を超えた。2022年前半には、少なくとも78件の労働災害や鉱山事故が報告されており、少なくとも労働者199人が死亡し、負傷者は348人を超えている。この背景を踏まえて、危険な状態にある産業の安全と、講じる必要のある労働災害防止策に焦点を絞るために、この円卓会議が開催された。インドでは、そのような「災害」が大幅に過少報告されている。加盟組織は、政府・使用者が労働災害に関する情報を公表し、労働組合が精査できるようにすることを要求した。

不十分な危険特定プロセスとリスク評価、特に不安定労働者向けの訓練の欠如、安全衛生・工場監督官の不足、工業施設の安全監査の不備、職場の安全に対する経営側の関与不足を政府が公認している状況が、数ある理由の中でも特に、この国の労働災害発生を助長している。

生産活動がサプライチェーンを下っていくにつれて安全衛生状態はさらに悪化し、中小企業は利潤最大化を目指す大企業によるコスト削減の影響をもろに受けている。罰金がわずかであるため、中小企業は職場で安全衛生基準を軽視しがちである。新しい2019年労働安全衛生・労働条件法の可決で、工場監督官の役割が変わった。

「新しい労働法では、職場の安全衛生を確保するための義務規定が削除され、事態は悪化する一方だ。現在、主要な使用者は労働者が死亡しても刑事責任を問われない」とインダストリオール執行委員のサンジャイ・バダブカール・インド鉄鋼・金属・機械労連(SMEFI)書記長は述べた。

政府当局者と鉱業・鉄鋼業代表は、労働安全衛生に関していくつかの二者・三者委員会を定期的に開いている事実を共有し、この円卓会議で労働組合代表が出した要求を取り入れるために努力すると述べた。

円卓会議の司会を務めたケマル・ウズカン・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長は述べた。

「新しい労働法に基づく自己申告制度は、インドで職場の安全を大きく損なうだろう。労働者は実際にリスクに直面しているので、この問題に関する真の専門家であることを忘れてはならない。労働者には、職場の危険要因を知る権利、危険な作業を拒否または中止する権利、安全衛生方針の意思決定と実施に全面参加する権利がある。そこで私たちは、政府・使用者が対等なパートナーとしての組合に関与し、職場の安全衛生条件改善に努めることを要求する。

先ごろ閉幕したILO(国際労働機関)総会で、代議員は、ILOの労働における基本的原則および権利に、安全で健康的な労働環境の原則を追加する決議を採択した。インドはILO加盟国として、職場の安全向上を確保するために処置を取る必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

労働者のための公正な移行に関する社会的対話を要求

2022-08-05

【JCM記事要約】

  • 7月29日、インダストリオールと国際労働組合総連合(ITUC)、LOノルウェーの企画による公正な移行とエネルギー部門イニシアティブ会合が開催さた。オーストラリアやインドネシアから国別事例報告が行われ、石油ガス・バリューチェーンの公正な移行に関する情報交換がされた。
  • 日本からは、気候変動に取り組むための国の野心的なロードマップについてを紹介し、供給を保障するため組合と政府が綿密に連携していると報告した。なお、各国の事例を共有する次回のワークショップは8月31日に予定されている。

 

2022年8月5日:公正な移行に何を期待するかについて労働組合間の合意が生まれようとしており、これは7月29日の公正な移行とエネルギー部門イニシアティブ会合でのオーストラリア、インドネシア、イラク、日本、ニュージーランド、ナイジェリア、南アフリカ、スペインの国別事例研究によって確認されている。
                                                      

国際労働組合総連合(ITUC)、LOノルウェーおよびインダストリオール・グローバルユニオンの企画によるこのイニシアティブは、各国の事例に関するワークショップを開催し、全世界の組合が石油ガス・バリューチェーンの公正な移行に関する情報を交換する場である。

オーストラリアでは現在、新しい労働党政権が、公正な移行を担当する国家機関の設置を求める組合の要求に同意する可能性がある。エネルギー転換における天然ガスの長期的な役割は、まだ形成段階にある。

前オーストラリア労働組合協議会会長であるシャラン・バロウITUC書記長が述べた。

「新政権に関して楽観視する理由がある。オーストラリアの組合は、このプロセスに加わるようにするためにかなり貢献しており、投資と労働者のための公正な移行に力を入れるよう政府に要求している」

今年のG20主催国であるインドネシアは、2060年までに石炭火力発電を段階的に廃止するためのネットゼロ・ロードマップを策定している。しかし組合は、これらの目標をどうやって達成するか、これらの目標は120万人の採炭労働者にとって何を意味するかについて、明確な計画がないことを懸念している。組合は、この計画を練り上げて石油・天然ガス産業の未来に関する議論を盛り込むために、政労使の社会的対話を求めている。

イラクでは、国内の政情不安が原因で移行計画と投資が停止しており、政府は依然として組合協力に反発している。イラクの電力部門労組の国際書記を務めるハシュメヤ・アルサーダウィは次のように述べた。

「イラクでは再生可能エネルギーが非常に大きな可能性を秘めているが、国中で火力発電が行われている。気候変動と地球温暖化は普遍的な問題であり、イラク政府に世界的な圧力をかける必要がある」

日本の組合が、気候変動に取り組むための国の野心的なロードマップについて報告した。組合と政府が緊密に協力している。電力供給の不足と天然ガス価格の高騰を受けて、政府と組合は太陽エネルギーと原子力の役割を調べている。供給の安全保障を維持するために、日本政府は天然ガスの供給者を探している。

ニュージーランドは、労働者と地域社会のための包括的な公正移行計画に基づき、石油・ガスの海洋掘削の段階的廃止を発表した最初の国である。さらに、2050年までにネットゼロ排出を達成する計画に関して、組合の支持を得ている。しかし、E tuは楽観的である。

「適正な枠組みがあり、多くの明るい進展がある。私たちはまだ学習しているところだ。移行プロセスは完璧ではない……政権交代があった場合、このプロセスにとってそれが何を意味し得るかを私たちは懸念している」とE tuの研究者アイリーナ・フレイレクマンは述べた。

「エネルギー部門の公正な移行は、いかなる労働者も犠牲にしてはならず、人間的側面が重要だ」とアユーバ・ワバITUC会長兼ナイジェリア労働会議議長が述べ、社会的対話、社会的保護、適正で持続可能な雇用、投資および革新が、労働者が世界のどこにいようと真の公正な移行を経験できるようにする鍵だと主張した。ナイジェリアでは、労働組合が国連気候プロセスに対する国の関与の達成をめぐる政労使の社会的対話プロセスに参加しているが、特に議論に加わるために組合に集団で何ができるかについて、もっと多くのことをする必要がある。

ナイジェリアの石油労組NUPENGのアフォラビ・オラワレ書記長が述べた。「ディーセントな雇用なき無条件の移行は支持しない」

多くの再生可能エネルギー雇用を伴うエネルギー転換計画があるにもかかわらず、政府はまだ石油・ガス探査に多額の投資を行っている、と同書記長は説明した。石油・ガス輸出はナイジェリアの国家収入の65%を占めている。石油雇用は直接雇用の5%に満たないが、利用可能なものでは最も質の高い雇用である。

南アフリカでは、COSATUと加盟組織が、石炭エネルギー・バリューチェーン、農業および輸送で、労働者のための公正な移行青写真を策定している。この青写真は、労働者が経済の大転換の議題を推進できるようにするために、組合に政策手段や団体交渉手段などを提供する。政府による最近の発表を受けて、南アフリカの将来のエネルギーミックスについて討議しているところである。再生可能エネルギーが増え、天然ガスの役割が大きくなる可能性がある。

スペインのエネルギー部門の公正な移行戦略は、経済全体のためのより大きな脱炭素化努力の一部である。社会的対話はこのプロセスの大きな部分であり、組合が密接に関与している。組合総連合のCCOOとUGTは、このプロセスの複雑ではあるが前向きなスタートを報告した。まず石炭の段階的な廃止と再生可能エネルギーの迅速な増強に着手し、昨年は範囲を拡大して新規石油・ガス掘削の禁止も導入した。

各国の事例に関する次のワークショップは2022年8月31日に開かれる。

 

ウクライナに関する最新情報

2022-07-28

【JCM記事要約】

  • ウクライナの状況として、鉱山では労働者が戦争から逃れており、チェルノブイリ原子力発電所は2カ月にわたって占領され、ザポリージャ原子力発電所に至ってはスタッフをロシア人労働者と入れ替えるためロシアの企業へ編入されようとしている。同国では組合員の失業により活動の余地が縮小している。
  • インダストリオールおよびインダストリオール加盟組織はウクライナへの支援を継続しており、インダストリオールを通して調達された資金は、財政援助や国内難民となった組合員の避難所のために使われているが、これまで以上に連帯支援が必要とされている。

 

2022年7月28日:ロシアのウクライナ侵攻からほぼ5カ月、状況は悪化し続けている。インダストリオール加盟組織の指導者によると、組合員が失業しているため、活動の余地が縮小している。
                                                      

国内の鉱山の多くは、ドンバス地域とルハーンシク地域にある。ドンバスとルハーンシクは現在ロシアに占領されており、この地域では、国有企業のLysychanskvugillyaとPervomaiskvugilliaが経営する鉱山の一部が、洪水により閉鎖に追い込まれた。組合の報告によると、鉱山労働者は戦争から逃れるしかなく、地下水を汲み上げる労働者がいなかったため、坑道が水浸しになったという。

チェルノブイリ原子力発電所は2カ月にわたって占領されたのち、現在は解放されているが、悲惨な結果がもたらされ、ベラルーシ領からさらに攻撃が加えられる懸念が依然ある。

ザポリージャ原子力発電所の状況は日ごとに悪化している。インダストリオール加盟組織Atomprofspilkaによると、ロシアは、この発電所を9月1日からロシアの原子力企業ロスアトムに編入したがっている。その目的は、ウクライナ人スタッフの一部をロシア人労働者と入れ替えることである。

インダストリオールと加盟組織は、ウクライナの組合を援助し続けている。これまで以上に連帯支援が必要とされている。

ウクライナの組合に支援を

 

これまでのところ、インダストリオールを通して調達された資金は、財政援助や国内難民となった組合員の避難所のために使われている。

 

マレーシアの新法案で組合が活動不能の危機

2022-07-22

【JCM記事要約】

  • マレーシア政府は労働法の改革に取り組んでおり、労使関係法案は2019年に、雇用法案は2022年に議会を通過した。労働組合法の最新修正案では、違反を国王に対する宣戦布告やテロ行為のような刑法の規定に関連づけている。組合が法律に違反すると、長官は当該組合の認証を取り消すことができる。
  • インダストリオール・ケマル書記次長は、労働組合は安全保障上の脅威ではなくソーシャル・パートナーとして扱われなければならないとし、インダストリオールとしてマレーシア政府に対して最終修正案の破棄を求める、と強調した。

 

2022年7月22日:マレーシアの労働法改革は、労働組合問題を戦争犯罪やテロリズムと関連づけることによって、将来労働組合を麻痺させる恐れがある。
                                                      

マレーシア政府は、2018年から労働法改革に取り組んでいる。労使関係法案と雇用法案が、それぞれ2019年、2022年に議会を通過した。

つまり、組合が付則4に違反すれば、長官は当該組合の認証を取り消しまたは撤回したり、グローバル・ユニオンへの加盟許可を取り下げたりすることができる。

「労働法改革連合(LLRC)は、この法案における結社の自由の実施を支持しているが、労働組合員が戦争犯罪人やテロリストであるとほのめかすことは正気とは思えない。刑法は、組合員であるか否かを問わず、すべての人に適用されるので、刑法を労働組合法案に関連づける必要はない。政府は組合を国家安全保障への脅威とみなしてはならない」とインダストリオールに加盟している全国輸送機器・関連産業労組(NUTEAIW)の書記長を務めるN・ゴパール・クリシュナムLLRC議長は言う。

つまり、組合が付則4に違反すれば、長官は当該組合の証明を取り消しまたは撤回したり、グローバル・ユニオンへの加盟許可を取り下げたりすることができる。

7月15日に覚書を手交

 

この修正案は、労働組合を威嚇して組合を活動不能にするために利用される可能性がある。LLRCは7月15日に人的資源省に覚書を提出し、政府に付則4の即時撤回を要求した。

「インダストリオール・グローバルユニオンはマレーシア政府に対し、付則4に関連する修正案の破棄を強く促している。労働組合は、安全保障上の脅威ではなくソーシャル・パートナーとして扱われなければならない」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。

インダストリオール、BWI(国際建設林業労働組合連盟)、PSI(国際公務労連)、IDWF(国際家事労働者連盟)およびEI(教育インターナショナル)の加盟組合58団体とNGOから成るLLRCは2019年以降、雇用法、労働組合法、労使関係法の改革を目指して人的資源省に働きかけてきた。

 

ベラルーシの独立労働組合解体との闘い

2022-07-22

【JCM記事要約】

  • ベラルーシ当局は、国内の独立労働組合の解体を進めており、7月18日に最高裁判所はインダストリオール傘下の団体を含む複数の労働組合の清算・解散を決定した。
  • インダストリオールはこの決定を無効と見なし、これらの組織の支援を続けている。また、投獄中の労働組合指導者・活動家15人の即時釈放、拘束された労働組合員を確認するための入国を許可すること、労働組合員と労働組合組織に対する進行中の裁判を監視できるようにすることなどを要求している。

 

2022年7月22日:ベラルーシ当局は、国内の独立労働組合を解体している。インダストリオールと加盟組織は、同国で独立組合と民主主義を擁護するために断固とした態度を取っている。
                                                      

最高裁判所は7月18日、ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)と、インダストリオール傘下の3団体を含むBKDP加盟組織4団体――ベラルーシ独立労働組合(BITUまたはBNP)、ベラルーシ無線・電子労組(REP)、ベラルーシ自由労組(SPB)、自由金属労組(SPM)――の清算・解散を決定した。

インダストリオールは、この決定を無効とみなし、加盟組織BITU、SPMおよびREPを支援し続けている。

緊急介入を求めるILO(国際労働機関)事務局長への書簡で、次のように述べた。

「インダストリオールは、この判決を最も強い言葉で非難し、これを認めません。組織的連続性を保証するために、ベラルーシの独立労働組合を引き続き支援し、全面的に支持していきます」

ベラルーシにおける独立労働組合の弾圧は政略的なものであり、民主主義ならびに民主主義的な制度に対する攻撃となる。合法的な結社の自由の権利の行使を理由とする労働組合指導者の逮捕は、基本的人権の重大な侵害となる。

インダストリオールは、投獄中の労働組合指導者・活動家15人の即時釈放を要求している。

  1. Aliaksandr Yarashuk――ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)会長。
  2. Siarhei Antusevich――BKDP副会長。
  3. Hennadz Fiadynich――無線・電子労組(REP)副会長。
  4. Vatslau Areshka――REP活動家。
  5. Mikhail Hromau――SPM協議会メンバー・書記。
  6. Iryna But-Husaim――BKDPメディアチーム役員、BKDP経理担当。
  7. Miraslau Sabchuk――SPM活動家。
  8. Yanina Malash――SPM副会長、組織化担当役員。
  9. Vitali Chychmarou――SPM協議会メンバー、労働監督官。
  10. Vasil Berasneu――REP会長代理。
  11. Zinaida Mikhniuk――REP副会長。
  12. Aliaksandr Mishuk――BITU副会長、JSCベラルーシカリのBITU会長。
  13. Ihar Povarau――ベラルーシ冶金工場(BMZ)のBITU活動家。
  14. Yauhen Hovar――ベラルーシ冶金工場(BMZ)のBITU活動家。
  15. Artsiom Zhernak――ミンスク自動車工場のSPM会長。

インダストリオールは、以下も要求している。

「ベラルーシ政府が緊急課題として、同国へのILOミッション、インダストリオール、ITUC(国際労働組合総連合)、その他のグローバルな労働組合組織を含む訪問者の入国を許可し、逮捕・拘留の状況と拘束された労働組合員の健康を確認できるようにすることを要求します」

加えてインダストリオールは、これらの組織が労働組合員と労働組合組織に対する進行中の裁判を監視できるようにすることも要求している。

「インダストリオール・グローバルユニオンは、迫害や拘留を気にせずに、いかなる状況下でも平和的集会・結社の権利、言論・表現の自由、出版の自由、公正な裁判を受ける権利、団結権・団体交渉権を行使するための闘いにおいて、ベラルーシの独立労働組合を支援・援助し続けるために尽力している」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。

「ベラルーシ政府は方針を変更し、グローバルな民主主義の基準にコミットしなければならない」

疑わしい粗悪なフェイクニュースは、ベラルーシ当局による容赦ない攻撃の一部である。国家のプロパガンダ機構は、インダストリオール、ILOならびに全国組合に対する攻撃をエスカレートさせている。ベラルーシの国営テレビは、組合事務所の違法録画や不正に入手したインダストリオールのビデオなどの映像を放送し、腐敗した組合指導部というイメージを描き出そうとした。

これらの言語道断な人権・基本的労働組合権の侵害を十分に考慮に入れて、インダストリオールは加盟組織に対し、各国のベラルーシ大使館に連絡して要請文書を送付するよう求めている。

グローバルな労働運動が支援するレイバースタート・キャンペーンに署名し、共有してほしい。

 

労働基本権に関して資産運用会社に基本的に求めるもの

2022-07-13

【JCM記事要約】

  • グローバル・ユニオンの労働者資本委員会(CWC)は、労働基本権に関する資産運用会社に基本的に求める事項を発表した。この要望事項は労働組合役員と年金基金受託者が共同で開発し、国連ビジネスと人権に関する指導原則およびOECD多国籍企業行動指針に根ざしており、資産所有者が契約している資産運用会社に労働基本権に関して責任を負わせる上で役立つ。
  • インダストリオール・アトレ書記長は、インダストリオールはこれら投資にも職場と同様の基本的労働組合権の尊重を求めており、すべての投資家がこれらの基本的要望を深刻に受け止める必要がある、と強調した。

 

2022年7月13日:グローバル・ユニオンの労働者資本委員会(CWC)は、労働基本権に関する資産運用会社に基本的に求める事項を発表した。この要望事項は、CWC資産運用会社説明責任イニシアティブの一環として労働組合と年金基金理事会が開発したもので、資産所有者が、契約している資産運用会社に労働基本権に関して責任を負わせるうえで役立つ。
                                                      

グローバル資産運用会社は、労働者の退職貯蓄基金に代わって資本を投資する。これらの基金の理事を務め、CWCネットワークに加わっている年金基金受託者は、運用会社が投資において労働権に対する悪影響を緩和する責任を果たし、労働関連の苦情が申し立てられたときに積極的に対処することを求めている。同様に、財団や宗教的投資家など、他の種類の資産所有機関も運用会社への期待を高めている。

「グローバル資産運用会社は、結社の自由や団体交渉権といった労働基本権が侵害されている官民市場投資に、かなりの額の利権を保有していることがある。資産所有者は今後、基本的期待を利用して、資産運用会社が自社の影響力を行使するための行動を促し、最終的に、権利を侵害されている労働者のために現場に影響を与えることができる」と国際運輸労連会長でCWCの資産運用会社説明責任イニシアティブ作業部会議長のパディー・クラムリンは言う。

基本的期待は、優良事例のベースラインから発展したもので、労働基本権の尊重・支持に対する資産運用会社の専念の度合いを評価する4つのカテゴリーに分けられる。

(1)管理枠組み
(2)上場株式の管理慣行(代理投票と株主エンゲージメント)
(3)民間市場の管理慣行
(4)政策提言

この枠組みは、デュー・ディリジェンスを実行して環境的・社会的な悪影響を防止・緩和する投資家責任を定める、国連ビジネスと人権に関する指導原則およびOECD多国籍企業行動指針に根ざしている。

「グローバル投資家、特に年金基金投資家は私たちの資金を投資している。私たちは、これらの投資にも職場と同様に基本的労働組合権の尊重を要求している。団結権・団体交渉権に関して妥協はない。すべての投資家が、これらの基本的要望を深刻に受け止める必要がある」とアトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。

基本的要望事項は、下記組合に加盟する労働組合役員と年金基金受託者が共同で開発した。オーストラリア労働組合評議会(オーストラリア)、アメリカ労働総同盟産別会議(アメリカ)、労働者委員会(スペイン)、FNV(オランダ)、国際労働組合総連合、UNIグローバルユニオン、国際運輸労連、労働組合諮問委員会。

 

EUはミャンマー軍との特恵貿易協定を撤回せよ

2022-07-13

【JCM記事要約】

  • インダストリオールおよびインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は、欧州連合に対し、ミャンマー軍との武器以外すべて(EBA)貿易特恵の撤回を求めている。EBAが促進する雇用は、基本的労働基準を尊重する雇用ではなく、欧州市民がこのような状況下で製造された製品を買うことにより、軍事政権を支援する形になってしまっている。
  • インダストリオール・アトレ書記長は、軍事政権によって統治される国にディーセント・ワークはなく、組合は活動できないと主張する。また、インダストリオール・ヨーロッパ労働組合のリック書記長は、軍事政権にとって不可欠な資金の供給を断ち切るべきであり、EUが今すぐ行動を起こすことを期待する、と述べた。

 

2022年7月13日:インダストリオール・グローバルユニオンとインダストリオール・ヨーロッパ労働組合は欧州連合に、ミャンマーの軍事政権に対して、武器以外すべて(EBA)貿易特恵の撤回など、より強力な処置を取るよう求めている。
                                                      

EUのEBA貿易制度は、EU一般関税特恵制度(GSP)自体の規則を露骨に無視して、ミャンマーに有益な貿易関税を提供している。同規則は、受益国は人権・労働権に関する15本の中核的条約の原則を尊重しなければならない、と定めている。

ミャンマーでは、ほとんどの労働組合が禁止され、組合指導者は逮捕されたり身を隠したりしている。EBAが促進する雇用は、基本的な労働基準を尊重するディーセントな雇用では決してない。インダストリオール加盟組織のミャンマー製造労働者連盟(IWFM)は、この状況を現代の奴隷制になぞらえている。残念ながら、このような状況下では、真の人権デュー・ディリジェンスは絶対に不可能である。

驚くことに、政権は先月、政敵を処刑する意向を発表した。EUはEBA協定を維持することによって、欧州企業が著しい人権侵害から利益を得るとともに、欧州市民がミャンマーでこのようなひどい条件下において製造された製品を買うことによって、はからずも政権を支援しかねない状況を生み出している。

「ミャンマーでは、多国籍企業とブランド(EU系の有名ファッションブランド61社を含む)が、GSP/EBA規則に盛り込まれた国連条約とILO条約に甚だしく違反しており、これには十分な裏付けがある」とカイン・ザーIWFM会長は言う。

「条約の尊重はEBA維持の条件であり、EUは労働者の権利に関して迅速かつ効果的に対応する必要がある」

衣料産業は依然、政権にとって不可欠な外貨獲得手段である。インダストリオールのキャンペーンは、ブランドにミャンマーでの生産中止を要求し、ウクライナ侵攻後にロシアから即時撤退していながら、ミャンマーでは事業を続けているという矛盾を指摘している。

2021年2月のクーデター以降、ミャンマーが悲惨な人権状況にあるにもかかわらず、ほとんどの衣料ブランドが同国からの調達を続けており、これは多くの場合、自社の行動規範に違反していると思われる。ブランド各社は、自社の存在は軍に利益を与えておらず、雇用を提供していると主張しているが、政権に税金の形で重要な外貨や収入を提供している。

「軍事政権によって統治される国にディーセント・ワークはなく、組合は活動できない」とアトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。

「人民と労働者に害を与えることなくミャンマーで営業する方法はない。私たちは欧州連合に対し、ミャンマーとのEBA協定を即時停止するよう促している」

リック・トライアングル・インダストリオール・ヨーロッパ労働組合書記長が付け加えた。

「ミャンマーの衣料労働者からEUへのメッセージは明確だ。行動を起こし、EBA協定を停止し、恐ろしい軍事政権への不可欠な資金を断ち切らなければならない。EUが責任を持って行動し、今すぐ行動を起こすことを期待する」

 

労働者の権利侵害の激化を阻止するために新しい社会契約が必要

2022-06-30

【JCM記事要約】

  • 6月28日にITUCが発表した、148カ国の年次調査結果に基づいた世界労働権利指数によると、13カ国で労働組合員が殺害され、69カ国でハラスメントや独断的な逮捕・拘留が行われた。これらの国々は労働組合に敵意を示しており、組合つぶしや権利の侵害等が見られる。
  • インダストリオール・アトレ書記長は、労働者の権利が侵害されている状況に対して組合は断固反撃しなければならないとして、インダストリオールとして奪われた権利を取り戻して新しい権利を獲得するべく、引き続き加盟組織を支持していく、と述べた。

 

2022年6月30日:2022年のITUC世界労働権利指数は、スト権、組合結成・加入権、組合登録権、団体交渉権など、労働者の基本的権利の衝撃的な侵害に対して警鐘を鳴らしている。正義を求める権利や言論・集会の自由も与えられていない。国によっては、労働者が国内法と国際労働基準に定める労働者保護を受けていない。
                                                      

「新しい社会契約で信頼回復」をテーマに6月28日にオンラインで発表されたITUC指数は、148カ国の年次調査である。

この指数は調査結果に基づいて、労働組合は、労働組合員の殺害、暴力的な攻撃、独断的な逮捕、拘留に見られるように、使用者と政府による労働者の基本的権利に対する弾圧と闘わなければならないと強調している。人権と市民の自由も侵害されている。

ITUC指数によれば、13カ国で労働組合員が殺害された。すなわち、バングラデシュ、コロンビア、エクアドル、エスワティニ、グアテマラ、ハイチ、インド、イラク、イタリア、レソト、ミャンマー、フィリピン、南アフリカである。

さらに、69カ国でハラスメント、独断的な逮捕、拘留があり、カンボジア、香港、ミャンマーで最悪の事例が報告された。

中東・北部アフリカで最悪の労働者の権利侵害が発生し、紛争とクーデターで労働者を取り巻く条件が悪化した。

さらに、アフリカでは司法アクセスの制限も強まっており、報告発生率が2021年の76%から2022年には95%に上昇した。

指数で確認された労働者にとって世界最悪の10カ国は、バングラデシュ、ベラルーシ、ブラジル、コロンビア、エジプト、エスワティニ、グアテマラ、ミャンマー、フィリピン、トルコである。

これらの国々は労働組合に敵意を示しており、退行的・抑圧的な刑法の利用、組合結成の妨害、組合閉鎖の強制、組合指導者の独断的な大量逮捕、組合差別的な措置、組合つぶしや組合指導者の不当解雇、労働協約の違反、殺害と刑事免責、スト参加者の起訴、集会の自由の侵害、警察の暴行、ストや抗議の残虐な国家弾圧が見られる。

何人かの発言者が、ITUC指数で確認された国々で起こっている状況を順序立てて述べた。

ミャンマーのマウン・マウンは、労働組合員が殺害、逮捕、投獄されたり、嫌がらせを受けたりしているにもかかわらず、「革命が持続している」と述べた。しかし、組合指導部のほとんどが身を隠したり亡命したりしている。

「ブラジル政府は労働組合に敵対的で、労働者の権利が退行しており、特に黒人女性労働者の権利が毎日無制限に侵害されている」とローザ・スザ・フェルナンデスが述べた。

マクシム・パズニアコウが次のように述べた。

「ベラルーシでは先例のない抑圧的な施策が実施され、組合指導者が捏造された容疑をかけられている。さらに、検察官は独立労働組合を禁止したがっている」

「労働組合と労働者を含む抗議者に対する敵意がある。国家治安部隊が抗議者を追い払うために実弾を利用した際、労働者が死亡した」とエスワティニのムドゥドゥジ・ジーナが述べた。

「圧制的な政府と虐待的な企業によって損なわれた信頼を取り戻すには、雇用と権利、社会的保護、公正賃金、平等、包摂による新しい社会契約が必要だ。社会契約が引き裂かれてしまった。だが、力を合わせて新しい社会契約を作ることができる」とシャラン・バロウITUC書記長は述べた。

新しい社会契約は不安定雇用、雇用創出、公正な移行に取り組まなければならない、と彼女は述べた。さらに、社会契約は大きな不平等、気候非常事態、COVID-19後の景気後退の解決策を見つけなければならない。

「インダストリオール・グローバルユニオンはITUC世界労働権利指数を歓迎する。この指数は、ミャンマーにおける人権および労働者の権利の著しい侵害、ベラルーシにおける労働組合指導者の独断的な逮捕と拘束、バングラデシュとエスワティニにおけるスト中の労働者に対する暴力の行使に反対する私たちのキャンペーンを正確に映し出している」

「労働者を取り巻く状況が多くの国で悪化しているのを目にするのは悲劇的だ。組合は断固反撃しなければならない。インダストリオールは、奪われた権利を取り戻して新しい権利を獲得するために、加盟組織を支持していく」とアトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。

ITUC世界労働権利指数には97の指標があり、ILOの労働における基本的権利、特に第87号条約(結社の自由と団結権保護)と第98号条約(団結権・団体交渉権)、それに国際人権法に由来する。今回の報告対象期間は2021年3月から2022年4月まで。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

 

バッテリーサプライチェーンで労働者の意見を主張

2022-06-30

【JCM記事要約】

  • 電機自動車の需要増加を受けて新規雇用が生まれているバッテリーサプライチェーンの分野において労働者の意見を反映すべく、インダストリオールは6月28日に業界の専門家を集めてオンライン会合を開催。バッテリーサプライチェーン戦略を検討・集約した。
  • インダストリオールは今後、労働者を組織化するための効果的なデュー・ディリジェンス・ツールの開発や、多国籍企業やその他のステークホルダーとのプラットフォームの構築を進め、バッテリーサプライチェーンで組合の能力を構築していく。

 

2022年6月30日:インダストリオールは6月28日のオンライン会合に業界専門家を集め、バッテリーサプライチェーン戦略を検討・集約した。
                                                      

バッテリーサプライチェーンは電気自動車(EV)需要の増加を受けて急成長しており、それに伴って新規雇用が生まれている。ヨーロッパだけで、EV産業関連雇用は2030年までに50万人増の85万人に達すると推定される。自動車産業は組合組織率が比較的高いが、サプライチェーンでは組織率が低下しており、労働者の権利侵害や強制労働・児童労働が増加している。

すべての地域がバッテリーサプライチェーンのさまざまな部分を構成している。ラテンアメリカにはリチウム・トライアングルがあり、採掘はほとんどがアフリカで行われ、アジア太平洋ではバッテリーへの新規投資が進んでおり、北米とヨーロッパでは電気自動車への投資が活気づいている。

国際社会研究所のジョジョ・ネム・シンは、組合にとっての課題の中で、鉱業政策の重視が重要だと述べた。原材料へのアクセスはグローバルサウスの戦場である。

中国は世界最大のバッテリー生産国であり、組合はたとえ存在していても、部門交渉で何の役割も果たしていない。アレックス・イワーノウ・インダストリオール電子担当部長が、厳しい生活・労働条件と内部労働移動により、自動車製造業のフォックスコン化が進んでいる現状について語った。

「鉱山に始まり、化学産業の精製所を通過し、バッテリーの包装を経てエンドユーザーに至るバッテリーサプライチェーンで、影響力を強めたい。この拡大に対応するために組織化活動を加速させる必要がある」と松﨑寛インダストリオール書記次長は述べた。

「デュー・ディリジェンス・ツールを開発し、増大する女性労働者と、ジェンダーに基づく暴力などのジェンダー問題に焦点を絞る必要がある」

グローバル・バッテリー・アライアンスからインガ・ペーターゼンが参加した。これは世界的な半官半民プラットフォームで、バッテリー生産がグリーンエネルギーを支援するだけでなく、人権を保護して健康と環境的持続可能性を促進するようにするためにも結集している。この組織はバッテリーパスポート行動パートナーシップを支えており、これはうまくいけば、持続可能で透明なバッテリー市場の世界的な基準、データおよびベンチマークを確立する1つの方法になる可能性がある。

多国籍企業調査センターのアレハンドロ・ゴンザレスが、持続可能性、バッテリーのラベル付けと記載情報、収集・処理・再生利用に関する要件に基づくEUバッテリー規制案について話した。この規制案は、人権および労働者の権利、それに安全衛生を対象とするサプライチェーン・デュー・ディリジェンス義務を定めている。

ジェンダーの視点を統合する方法に関する能力強化は、バッテリーサプライチェーンにおけるジェンダー平等の促進と同様に重要である。それは男女の平等な権利、待遇および機会を意味する、とアルメル・セビー・インダストリオール女性担当部長は述べた。

「最大の課題の1つは、原則から行動への移行だ」とインダストリオールのグレン・ムプファン鉱業担当部長とゲオルク・ロイテルト自動車担当部長が述べた。

「真のデュー・ディリジェンスを実現するには、社会的対話で労働者の意見を表明し、結社の自由、団体交渉、安全衛生およびディーセント・ワークを保護する必要がある」

インダストリオールは今後、以下によってバッテリーサプライチェーンで組合の能力を構築していく。

  • 労働者を組織化するための効果的なデュー・ディリジェンス・ツールの開発
  • 多国籍企業その他のステークホルダーとのプラットフォームの構築
  • 中国の企業・労働者とのコミュニケーションの開発
  • 組合活動へのジェンダー統合の確保
  • 持続可能な産業政策と公正な移行の重視

 

10年間の世界的なキャンペーン

2022-06-21

2022年6月21日:インダストリオールは10年前、組織化、労働者の権利の擁護、グローバル資本への対抗における新しい世界的な勢力として創設された。その後、この組織は数々の闘いを繰り広げ、より良い仕事の世界を求める継続的な闘いで勝利を宣言してきた。
                                                      

インダストリオール・グローバルユニオンは、鉱業、エネルギーおよび製造業部門で140カ国・5000万人の労働者を代表し、グローバル連帯において一大勢力を形成、世界中で労働条件改善と労働組合権を求める闘いに取り組んでいる。

組合加入の5つの理由
もう1つの世界は可能であり、必要である。それを達成するには、平和と民主主義と権利を求めて全世界の組合が連帯し協力する必要がある。私たちの使命は、万人のために適正な生活水準を実現し、社会的公正、平等および公平を確保することである。

インダストリオールのアクション・プラン
インダストリオールは多国籍企業の力に挑戦し、グローバル・レベルで交渉する。インダストリオールは、もう1つのグローバル化モデル、民主主義と社会的公正を基礎に人を最優先する新しい経済・社会モデルを求めて闘う。

インダストリオールは加盟組織や他のステークホルダーとともに、より良い労働条件を求めて運動する。

シェルの隠された恥
貧困ラインで生活するナイジェリアの契約労働者

スペシャル・レポート
なぜ鉱業は今もこれほど危険なのか?

ペシャル・レポート
繊維・衣料産業の勢力均衡を変える

16日間の行動
関連産業と傘下組合の女性には、ジェンダーに基づく暴力のない環境で生活する権利がある

鉱業、素材金属、造船・船舶解撤、自動車、航空宇宙、機械エンジニアリング、ICT電機・電子、化学、ゴム、紙パルプ、繊維、被服、皮革および履物部門の600組合が行動を起こせば、世界規模で響き渡る。

インド
インドで2億5000万人超の労働者が全国ストに参加

ペルー
ユニーク・ヤンバル・ペルーがパンデミック下で労働者600人を解雇

フィンランド
UPMによる交渉拒否を受けてフィンランドの製紙労働者が断固スト

パキスタン
パキスタンの新しい最低賃金は組合の勝利

ジンバブエ
ジンバブエの若い労働組合員が国外退去の試練

特集
組合つぶし、攻撃されるインダストリオール加盟組織

 

スペシャル・レポート:国際労働裁判所を構築するには?

2022-06-09

2022年6月9日:多国籍企業は世界経済を支配しているが、労働法は国家レベルで制定されており、サプライチェーンにおける侵害から労働者を擁護する国際機関はない。どうやって世界の労働者のために公正と救済を求めればよいだろうか。
                                                      

スペシャル・レポート
『グローバル・ワーカー』第1号(2022年6月)より

テーマ:世界的な労働紛争解決メカニズム
文:ウォルトン・パントランド

 

 

 

 

 

ILOの役割

国際労働裁判所に最も近いものは国際労働機関(ILO)の基準適用委員会(CAS)で、毎年夏の国際労働総会で労働者の権利侵害の報告を聞いている。だが、CASは企業ではなく政府に対する苦情しか取り扱わず、制裁の権限はほとんどない。

排出に関するUNPCCC協定(パリ協定)や世界人権宣言といった国際協定を通して、ILOが世界的な労働仲裁を管理することは、技術的には可能である。しかし、これは加盟国の政治的意志に依存し、現在のところ、そのような意志は見られない。

ジュネーブのILO本部 写真:マルセル・クロゼ/ILO

 

ILO

ILOは1919年、労資が妥協点を見いだす機関を作るために設立された。三者構成機関が当該国とともに運営し、国際機関が定めた基準によって監督された。

国連システム最古の国際組織であるILO創設の原動力となったのは、第1次世界大戦への対応と革命の恐怖である。戦争で旧世界の構造が崩壊したあと、ロシア、ドイツその他の場所に革命の波が広がった。世界各国の政府は、社会的公正がなければ平和はないことを悟り、社会的対話によって仕事の世界を律するために世界的な機関の創出に取りかかった。

革命の脅威が弱まり、資本主義的リアリズムが支配するようになったため、ILOの価値観からの後退が見られる。各国がスト権を弱めるために共謀し、ILO条約は尊重されないことが多い。独裁政権が世界的規模で復活しているため、全世界で労働者の権利の侵害が増えている。先進民主主義国においてさえ、プラットフォーム労働の発展に伴って労働法が緩和または回避され、労働者の権利が大きく後退している。

ILOの影響力と地位の低下にもかかわらず、資本を管理してその最悪の行き過ぎた行為を防止する必要性は依然あり、労資間の国際的な取り決めの構想は異なる形で再び勢いを取り戻している。グローバルな社会的対話によって支持される確固たる国際システムがない中で、企業に責任を負わせるために、さまざまな措置の寄せ集めが講じられている。

 

デューデリジェンス法

多くの消費者は、自分たちが購入している製品が労働者の搾取によって生産されていることを知って愕然とし、企業・政府に行動を要求している。その結果、グローバル・サプライチェーンに関する法体系が発達している。

その中で最先端の法律は、ドイツのサプライチェーン法(Lieferkettengesetz)である。2023年1月1日から、労働者とその支持者は、労働者の権利侵害を含む環境権・人権侵害を理由に、ドイツの裁判所でドイツ企業を訴えることができるようになる。

他の国々にも、そこまで意欲的ではないが同じ目標を掲げる同様の法律があり、欧州委員会はデューデリジェンス指令を提案している。この指令は欧州議会で可決されれば、加盟国の法令に導入される。

もう1つの救済手段はOECD多国籍企業行動指針である。このガイドラインは法的拘束力はないが、50の遵守国のそれぞれに苦情解決を取り扱うナショナル・コンタクト・ポイントがある。拘束力のあるビジネスと人権に関する国連条約に向けた交渉も進んでいる。

 

国際労働調停・仲裁メカニズム

2021年に大会で採択されたインダストリオールのアクション・プランは、グローバル・ユニオンと多国籍企業の間で拘束力のある協定を実施するために、国際労働調停・仲裁(ILCA)メカニズムの開発を求めている

2016年、インダストリオールとUNIグローバルユニオンは、バングラデシュ協定違反で衣料ブランド2社を常設仲裁裁判所(PCA)に訴えた。ハーグに拠点を置くPCAは、仲裁、調停および斡旋によって契約上の紛争を解決できる国際仲裁サービスである。バングラデシュ事件は、PCAがグローバル・ユニオンと多国籍企業の紛争解決に初めて利用された例である。一方のブランドは2017年12月に、もう一方は2018年1月に和解した。2018年、両ブランドが和解の条件(バングラデシュの既製服工場の危険な条件を是正するための230万米ドル超の支払いなど)をすべて満たしたので、PCAはこの件に決着をつけた。アコードは支払金を適格工場に分配した。

この勝利は重要だったが、手続きは費用と時間がかかる複雑なプロセスで、国際労働争議を解決するより良い方法が必要であることが分かった。解決にあたって、両ブランドはグローバル・ユニオンのサプライチェーン労働者支援基金にも拠出した。この基金は、より適切な手段――ビジネスと人権仲裁に関するハーグ規則に基づくILCAメカニズム――の開発資金に使われた。ハーグ規則は国連ビジネスと人権に関する指導原則を実行に移し、国際基準に沿って、グローバル・ユニオンと多国籍企業との協定に盛り込むことができる強力な手段を生み出した。

 

グローバル枠組み協定

労働運動は、多国籍企業とのグローバル枠組み協定(GFA)によって、国家レベルの団体交渉をグローバル・レベルに引き上げた。1988年に食品労働者の国際組織IUFとダノンが最初のGFAに署名してから、多くの協定が締結されている。

GFAは多国籍企業の本国の組合の団体交渉力を利用して、当該企業が活動する他の国にも労働者の権利を広げ、通常――最低限として――中立性と労働者の組織化の妨害禁止を保証している。しかし、いくつかのGFAは国内法に法的根拠があるが、すべての管轄区域で実施するのは難しい。場合によっては、違反に対する制裁が協定からの離脱以外にないこともある。

紛争解決制度に基づく法的拘束力のあるGFAを創出するために、ILCAメカニズムをグローバル協定に盛り込む必要がある。だが企業は、拘束力のある協定は利益を増やさずに責任を増やす制限的措置であると考え、署名に二の足を踏んでいる。

 

国際アコード

ラナ・プラザ災害後に行動を起こす必要が生じたことから、2013年に多くの世界的な衣料ブランドが、UNIおよびインダストリオール・グローバル・ユニオンと法的拘束力のあるバングラデシュ協定を締結した。バングラデシュ協定は今では国際アコードに拡大され、この部門の安全衛生に焦点を当てている。国際アコードは署名企業の本国で強制力を持つため、その条件には法的拘束力がある。

 

打開策の精査

単一の世界的なシステムがない中で、企業に責任を負わせるために、さまざまなメカニズムの寄せ集めが導入されている。この寄せ集めはますます濃密かつ複雑になっており、今あるコンポーネントを組み合わせて世界的な苦情処理制度を作り上げるために、革新的な作業が行われている。最も効果的な方法は、ILCAを盛り込んだグローバル協定の取り決めである。だが、これがなくても、組合は法律やOECD指針、労働協約での約束、企業行動基準などを組み合わせて、労働者のために公正を勝ち取ることができている。

例えば繊維・衣料部門には、組合が利用している手段がいくつかある。

  • 174のブランドが署名している法的拘束力のある国際アコード
  • アコード加盟企業が紛争解決に利用できるILCA
  • グローバル・ユニオンとブランドのGFA
  • 本国の組合が生産国の組合に代わって問題を提起できる労働組合ネットワーク
  • ますます多くの国で制定されている、ブランドにデューデリジェンスの証明を義務づける法律

多くの発展途上国では労使関係や社会保障制度が十分に発達していないので、一部のブランドは組合と提携して、行動・協力・転換(ACT)プログラムを通して政労使の社会的対話を発展させている。ACTには苦情解決メカニズムが含まれ、関係者(世界的ブランド、サプライヤー工場、グローバル・ユニオン、全国組合)が、これを拘束力のある制度として受け入れることに合意している。

その他多くの部門にも、組み合わせて同様の方法で苦情に対処できる独自のコンポーネントがある。この次第に濃密になっている法律、協定およびメカニズムのネットワークが成長する中で、世界的なシステムの枠組みが具体化し始めている。

 

労働者の権利が尊重されていない国の問題

国内法と協定の寄せ集めから成る世界的な苦情処理制度の課題は、一部の管轄区域でしか拘束力を持たないことである。これはほぼ間違いなく、自由に労働者の権利を侵害できる国に拠点を置く企業に競争優位を与え、デューデリジェンスを示す必要がある企業に費用のかかるデメリットをもたらす。一番分かりやすい例は中国で、世界の製品の多くが、独立代表に対する権利がない労働者によって生産されている。

しかし、アメリカが中核的ILO条約を批准していないことを忘れてはならない。米国では多くの州に制限的な反組合的法律があり、北米企業は一般に国際アコード、GFA、その他のグローバル協定に署名していない。

 

世界的なシステムへの政治的意志の構築

短期から中期的に、組合の焦点は、企業に責任を負わせるために、ますます濃密になっている法律、協定および義務のネットワーク構築(GFAへのILCA統合を含む)に絞らなければならない。これらの手段が利用されればされるほど、先例が作られていく。

しかし長期的に見れば、サプライチェーンに関する拘束力のある国連条約やILO条約、それにIPCCCの方針に沿ってILOまたは別個のパネルが管理する世界的な仲裁システムが必要である。これに向けた政治的意志を達成する最善の方法は、世界的なシステムがぎこちない基準の寄せ集めほど複雑ではなく、より公正であることを証明することである。世界貿易機関が貿易分野でしているように、労働者の権利のために平等な競争条件を要求することは企業と国の利益になる。

最善の紛争解決は現場レベルである。世界的な仲裁制度は、確固たる国家仲裁制度を開発し、独立組合、使用者団体および政府が可能な限り低いレベル(理想を言えば職場)で、組合の関与によって紛争を解決しようと目指す体制を支援することによって機能する。これが不調に終わった場合は、国家仲裁制度を通して、そして最後の手段としてのみ世界的なシステムを通して、救済を求めることができる。

これを機能させるために、各国は、労働者救済策や失業手当、年金などを分配できる社会保障制度も開発する必要がある。

労働基本権を普遍的に認知・尊重することを求める声が、世界中で高まっている。先進国の多くの労働者は、発展途上国における搾取と自国における賃金低下・権利侵害との関係を理解している。世界的な労働基準は底辺への競争を阻止し、あらゆる場所で労働者を保護する。

組合は、この要求をもとに、資本家に責任を負わせ、すべての場所の労働者のために公正を実現できる世界的なシステムを形成できるよう助力する必要がある。

 

インタビュー:アトレ・ホイエ・インダストリオール・グローバルユニオン書記長

2022-06-01

2022年6月1日:2021年9月の第3回インダストリオール大会で、アトレ・ホイエが書記長に選出された。ノルウェー出身のホイエは、2016年のリオ大会で書記次長に選出されたため、すでに5年間インダストリオール指導部に加わっていた。
                                                      

インタビュー
『グローバル・ワーカー』第1号(2022年6月)より

インタビュー:アトレ・ホイエ
文:ペトラ・ブランマーク

 

 

 

 

どのように労働組合でのキャリアを開始したのか?

「大学卒業後、ノルウェーの労働組合総連合LOで働いた。欧州問題と持続可能な開発に関するアドバイザーを数年務めたあと、合同産業労組に国際担当書記として移った。当時、合同産業労組はいくつかのグローバル・ユニオン・フェデレーション(ITGLWF(国際繊維被服皮革労組同盟)、ICEM(国際化学エネルギー鉱山一般労連)、IMF(国際金属労連))に加盟していた。私は1990年代に3団体すべての執行委員会に出席し始めた」

あなたは2016年に書記次長に、その後2021年に書記長に選出された――立候補を決めた理由は?

「私はIMF、ICEMおよびITGLWFの統合によるインダストリオール結成プロセスに、非常に積極的に取り組んだ。統合に関する最初の決議が可決された2005年のウィーン大会で、私は動議委員会に加わっていた」

「2016年にリオで開催された第2回インダストリオール大会の前に、引き続き活動したいが、今後は違うレベルで働きたいと感じた。私はインダストリオールが理想の構造だと本気で信じており、活動に貢献したいと思っている」

「書記次長を5年務めたあと、変革が必要であり、自分は変革の実施に助力できると思った。より透明で包括的な組織を創出するために書記長に立候補した。全員が自分も参加していると感じ、アクション・プランに対して責任を感じてほしい」

あなたの優先課題は?

「私の主な優先課題は、必要な基盤を構築し、インダストリオールが職務を遂行できるようにすることだ。技術的な話に聞こえるかもしれないが、ジュネーブ本部、地域事務所、加盟組織を含めて組織全体が、戦略と実施を背景に一致団結する必要がある」

「これは活動方法を変える必要があることを意味する。執行委員会で、また加盟組織と、よりオープンに、より徹底的に討議する必要がある。結果を達成するには全員を参加させる必要があり、そのためには、人々に当事者意識を持たせる必要がある」

「インダストリオールにとって最大かつ最重要の任務は、基盤となる基本的労働組合権、すなわち団結権および団体交渉権を提供することだ。それは労働者たちに、安全な職場や差別からの自由など、他のすべての基礎を提供する」

インダストリオールはどうやってこれを達成するのか?

「使用者と政府に、団結権・団体交渉権を実施させなければならない。すべての活動で、これらの基本的権利を念頭に置かなければならない――能力強化に焦点を当て、組合が組合員に接触しようとするのを助け、企業に組合を受け入れさせ、ILO基準適用委員会、OECD、国際金融機関、WTOなど、貿易と産業について議論するすべての場で、団結権を議題に盛り込ませなければならない」

「現在、個別事件と国内法違反の両方に関して、消火活動に力を入れている。労働者の権利が侵害されているという連絡が毎日入ってくる。それを受けて、法令遵守を確保するために工場の所有者、工場から調達している企業、政府に接触し、国際支援を求めている。自社の事件が国外でも知られていることを使用者が知ることが圧力になり、効果を発揮する」

「大会は、拘束力・強制力のある協定に向かって進まなければならないという明確なメッセージを送った。私たちはUNIグローバルユニオンとともに、ハーグ裁判所による仲裁メカニズムを開発した。そのメカニズムは国際アコード(安全衛生に関する協定)に導入されている。これは他の協定にも適用できる。グローバル枠組み協定に組み入れるべく努めていく。利用できる手段を利用し、国際アコードのような新しい手段――10年前には誰もが不可能と考えていたであろう手段の構築に取り組む必要がある」

「労働組合の組合員になり、力を合わせて使用者と政府に抵抗することがいかに重要であるかを、人々に理解してもらわなければならない。私たちはインダストリオールが運営するプロジェクトによって、膨大な量の能力強化活動を実施している。前大会期間には、団体交渉、女性、安全衛生、青年に関する1000件の活動に7万5000人の組合員が参加した。参加者たちは、職場に戻って学んだことを活かし、同僚の向上を手助けすることができる。そして、私たちはプロジェクトを通じて68万人の新規組合員を組織化した」

COVIDでインダストリオールの戦略目標は変わったか?

「戦略目標はこれまでどおり重要だが、例えば衣料産業の賃金窃盗を受けて、世界的な社会保障の必要性がより明らかになった」

「社会保障制度がある国の人々は、かなりうまくパンデミックを切り抜けた。しかし貧困国では、職場の閉鎖で毎日失業者が出て、貧しい人たちがますます貧しくなった。公共交通機関が閉鎖されたので、移民労働者は故郷に帰ることができなかった」

「現在のサプライチェーン・モデルは、低賃金労働力と責任回避の上に成り立っており、労働権がまったくなく、社会的保護もほとんどない国々に生産を移転している。社会的保護がなければ、社会は崩壊してしまう。社会的保護は公の問題だが、それが実現されるまで、生産国で社会保障を強く要求するために企業と協力する必要がある。貧困国にとって社会保障制度の確立には多大なコストがかかるので、つなぎの解決策が必要だ」

インダストリオールの前途に待ち受ける最大の課題は?

「組合にとって最大の課題は、明日のために労働者にとって魅力的な存在になることだ。1000人の大規模職場は、おそらく明日の職場ではないだろう。明日の職場は、もっと小さく、より急速に変化しやすい。人々はますます個人に重きを置くようになっており、50年前に人々を引きつけたことが明日も同じというわけではない」

「加盟組織は適応する必要があり、私たちは支援することができるので、これは議論すべき重要な問題だ。アクション・プランは私たちに世界の変革を求めている。これは明らかに書記局だけで実施できることではなく、私たちが代表している5000万人の人々とともに行わなければならない」