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第200号インダストリオール・ウェブサイトニュース

インダストリオール、人工知能に関する政策文書を発表

2025-10-08

インダストリオールは、新しい政策文書『人工知能(AI):製造労働者にとっての課題・機会と労働組合の対応』を発表し、全世界で職場を再形成している急速なデジタルトランスフォーメーションに労働組合が対応するための戦略を定めた。


人工知能(AI):製造労働者にとっての課題・機会と労働組合の対応(日本語版)

「AIはもはや遠い未来の話ではなく、すでにオートメーションやロボット工学、データ駆動型管理システムによって産業部門を変革している。この新しい政策文書は警告であると同時にガイドであり、組合がリスクを切り抜けてAIの機会を利用しながら、労働者の権利と尊厳、雇用を守るうえで役立つ資源だ」と松﨑寛インダストリオール書記次長は述べた。

労働者を技術変化の中心に据える

この文書で説明されているように、人工知能は仕事の編成・監視・評価方法を再定義している。多くの労働者が現在、しばしば透明性や説明責任なしで、スケジュールを決めたり、業績を追跡したり、雇用や昇進にまで影響を与えたりするアルゴリズムによって管理されている。

一方、政府と企業は公正を確保するための適切な規制をいまだに導入しておらず、直接AIに取り組む労働協約はまだ極めて少ない。その結果、企業収益は増えているが、多くの労働者が不安定、差別、監視の強化に直面しているという不平等な状況に陥っている。

インダストリオールの政策文書は、これを変えるための明確なロードマップを概説し、技術進歩がディーセント・ワークや平等、公正な移行と連動するようにしている。

労働組合行動の5大分野

この文書は、組合が行動を起こさなければならない5つの優先分野を確認している。

  • アルゴリズム管理とデータプライバシー:透明性、説明責任、職場監視の制限を確保する。
  • 良質な雇用と技能:生涯学習、包括的なリスキリング、公正な移行支援へのアクセスを保証する。
  • 労働安全衛生:AIを新たなストレスやリスクを追加するものではなく、より安全かつ健康的な職場のための手段にする。
  • 富と生産性の再分配:公正な利益分配制、累進課税、より強力な社会的保護を要求する。
  • 労働者の権利と団体交渉:団結権を保護し、法的な保護措置を強化し、組合代表にデジタル時代に交渉する能力をつけさせる。

世界・部門・国家レベルのロードマップ

この政策文書は組合に対し、AIが労働者に利益をもたらすようにするために全レベルでの行動を求めている。

  • 世界レベルでは、ILOとOECDで国際基準に影響を与え、グローバル・ユニオン・フェデレーションと連携し、公正なAIガバナンスを要求する。
  • 部門レベルでは、責任あるAI実施を取り決め、技能ニーズを予測し、労働者が置き去りにされないようにする。
  • 国家レベルでは、包括的なAI政策、政労使の社会的対話、部門横断的な組合連帯を支持する。

AIは利益にではなく人間に貢献しなければならない

この文書は、AIはどう統治するかによって、労働者の権利拡大の促進剤になることもあれば、不平等や組合弾圧の推進力になることもあるとの結論を下している。

組合は、その未来を形作るうえで決定的な役割を担っている。すなわち、透明性を要求し、生産性向上の労働者の取り分を確保し、社会的公正と民主的監督の枠内にAIを埋め込むことである。

「強力な国際連帯と団体交渉を通して、インダストリオールと加盟組織は、AIが搾取のもう1つの原動力ではなく、ディーセント・ワークや持続可能な産業を促す手段になるようにすることができる」と松﨑は言う。

【原文記事URL】
IndustriALL launches policy paper on artificial intelligence | IndustriALL

 

リチウムのもう1つの側面――バッテリーサプライチェーンにおける組合の強化

2025-10-09

リチウムが世界的なエネルギー問題で中心的役割を果たしていることを踏まえて、チリのアントファガスタでリチウム部門の組合を強化する方法に関するセミナーが開催された。9月30日と10月1日に実施され、チリとアルゼンチンの鉱山労組指導者が出席。この行事は、リチウム部門で絶えず労働権が侵害されていることを考慮して、バッテリーサプライチェーンで加盟組織を支援するためのインダストリオールの戦略の一環として行われた。


このセミナーは、フリードリヒ・エーベルト財団(FES)チリの支援を受けてインダストリオール・グローバルユニオンが企画し、アルゼンチンAOMA、Industrial Chile Constramet、チリのその他4組合の代表が参加した。

リチウムは電気自動車や電子装置、エネルギー貯蔵システムに利用される充電式バッテリーの製造に不可欠な鉱物で、ラテンアメリカはグローバル・サプライチェーンの主要な一部となっている。

しかし、労働権、規制、社会的公正に関して言えば、この部門の成長は緊急の課題をもたらしている。

セミナーで、FESチリのプロジェクト・マネージャーを務めるアルレット・ゲイは次のように述べた。

「FESは、グローバル・サプライチェーンにおける労働権と環境基準の促進に重要な役割を果たしている。デュー・ディリジェンス基準は、世界中の組合が権利の尊重を要求できるようにするのに役立つ。私たちは喜んで、これらの新しい手段の可能性を活用する鉱山労組の能力構築に貢献する」

アルゼンチンとチリのリチウム部門現地調査の結果も発表された。この調査はFESの支援を受けて実施され、この部門の権力動態のいくつかを確認した。調査の狙いは、部門横断的な組合協力を強化し、組合に権利を与え、人権デュー・ディリジェンス手段を利用して多国籍企業に責任を負わせることだった。

2日間の議論の結果、チリの組合は、この部門における分裂と組合の力不足をどう克服するかのビジョンを構築するために、一丸となって取り組むことに合意した。アルゼンチンの組合指導者は、労働権・組合権を強化するとともに、付加価値増大と多様化の促進戦略を策定するために、取ることができそうな行動を概説した。参加者は、両国が一致協力して連携強化を確保することの重要性も強調した。

インダストリオールのラテンアメリカ・カリブ海地域事務所のローラ・カーター副所長が、次のように議論をまとめた。

「リチウム部門では非常に多くの労働権侵害が発生している。サプライチェーン戦略は、この重要鉱物を採掘する労働者の権利尊重を改善する大きな機会を提供する」

【原文記事URL】
The other side of lithium: strengthening unions in the battery supply chain | IndustriALL