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クレマンソーが帰還しても安全衛生は依然荒廃

「ジャック・シラク仏大統領が2月15日、有毒物質を含む戦艦クレマンソーをフランスに帰還させる決定を下したことは、世界船舶解撤産業の危機の深刻さを浮き彫りにしている」と、IMFとグローバル・ユニオン・パートナーは述べた。


ジュネーブ:
ジャック・シラク仏大統領が2月15日、有毒物質を含む戦艦クレマンソーをフランスに帰還させる決定を下したことは、世界船舶解撤産業の危機の深刻さを浮き彫りにしている。アスベストをはじめ多くの危険物質を大量に含むこの航空母艦は、インドのアラン船舶解撤場で解体されている予定だったが、インド・フランス両国の司法当局による決定を受けて、フランス政府は方針を変更した。
 「この事件は、船舶解撤における適切な世界基準の欠如が、いかに深刻なものであるかを示している」と、マルチェロ・マレンタッキIMF書記長は述べ、「国際制度によって基準を確立・実施できていないことが原因で、インド、バングラデシュ、パキスタンなどでは何千人もの労働者が日々搾取され、生命にかかわる危険物質にさらされている」と付け加えた。
 IMFと国際運輸労連(ITF)は、国際海事機関(IMO)が船舶解撤ガイドラインの調和にIMOと国際労働機関(ILO)、バーゼル条約を関与させるプロセスを妨害したことを厳しく非難している。2005年12月に開かれた調和に関する会合でのIMOの姿勢が原因で進展が最大5年遅れた、とIMFは考えている。
 「アランの施設に、クレマンソーに残留するアスベストその他の有毒物質を処理する適切な設備があるかどうかについて強い疑念があるが、この船は氷山の一角にすぎない。アランや多くの国々にある同様の現場で働く何千人もの労働者は、船舶解撤に生活を依存している。現在のところ、それらの労働者が安全かつ衛生的な職場でまともな生活を立てられるようにするための措置は、ほとんど講じられていない」とガイ・ライダー国際自由労連(ICFTU)書記長は述べ、「政府や国際機関、そして特に世界船舶解撤産業には、この混乱をまとめる責任がある」と付け加えた。
 アラン解撤場の労働者の大部分は、賃金が1日1米ドル未満で、日雇いか(たまに)月雇いで働いている。地元の労働組合は、インド各地からの出稼ぎが多い労働者と協力し、労働条件改善と所得増加のために組織化を支援しているが、使用者の抵抗や労働法実施の不備により、これは特に困難になっている。
 IMFは、地元労働組合の組織化努力を引き続き支援する予定であり、ICFTUやITF、その他のグローバル・ユニオン・パートナーとともに、各国政府や国際機関、関連企業への圧力を強め、世界船舶解撤産業の雇用・安全衛生・環境基準を許容できる水準に高めようとしている。


[2006年2月16日]