第46回協議委員会   鈴木議長あいさつ

金属労協第46回協議委員会にご参集の皆さん、大変ご苦労様です。
 本協議委員会はご承知のとおり、2004年闘争の方針を決定する重要な会議でありますが、まずは冒頭先に行われた衆議院議員選挙において、各産別が擁立した組織内候補8名の皆さんが全員当選したことを心からお祝い申し上げると同時に、厳しい選挙に取り組んだ各産別、単組の役員・組合員皆さんのご努力に深く敬意を表したいと思います。


二大政党制を定着させるためにも
応援団としての労組の責任は重大


今回の選挙は民主党の大きな躍進によって、二大政党時代の幕開けを予感させる結果となりましたが、二大政党時代といってもそれはあくまで予感であり、定着したわけではありません。
むしろこれからの民主党が二大政党の一翼を担える責任政党として国民から認知されなければ、政権交代という緊張感を持たない自民党、いや保守新党の合流によっていまや自公党というべきなのでしょう、自公党の単独政権による腐敗と利権誘導政治が今後も続くでありましょう。今回の選挙を通じて自民党は、公明党の力なくして存続し得ない、言い換えれば自民党の中の一大派閥として公明党が存在するといっても過言ではない政党に変質してしまいました。
他党の評価はともかく、民主党自身が多くの国民から、政権を付託するに足る信頼と価値のある政党であるのか否かが問われる時代を迎えたといえるのであります。
そうした評価がなされる時、民主党を応援する労働組合もまた社会の厳しい評価の対象になるでありましょう。
今、国民全体の中に占める労働力人口は約6,700万人、組織率の分母となる給与所得者・サラリーマンは5,300万人、労働組合の組織率20%で約1,000万人の組合員ということになりますから、選挙における意見反映の点から言えば、労働組合の政策・制度方針は、給与所得者・サラリーマンの4分の1程度しか代表していないことになり、有権者1億人との比較ではさらに下がり10%にしかなりません。

何を申し上げたいかですが、小選挙区で応援する政党が過半を制して当選させるためには、労働組合の運動もまた、組合員以外の人々からも支持されなければならないということであり、組合の運動が社会から支持されなければ、政党も組合の主張に耳を貸さないことを意味するからです。この点においても、組織労働者以外、すなわち非典型労働者も含めた全労働者を代表する組合運動の構築が求められているのであります。
もし、私たち労働組合の運動が多くの国民から見て「特定層の利益擁護・既得権擁護集団」との評価を下されれば、私たちの支持する民主党もまた同様に評価され国民の支持を失うことになります。
今後予想されるさまざまな課題、年金、医療を始めとする社会福祉の分野、そして雇用問題の解決など、社会全体で取り組んでいかなければならない社会的合意が必要な課題が山積している中で、労働運動に対する社会的評価は二大政党制の成否に決定的な役割を果たすことになるでありましょう。

私たちは政策・制度要求にとどまらずすべての組合運動について、社会の主体的な構成員としての責任と役割を自覚した運動を推進していかなければならないことを、改めて認識させられた選挙であったと考えます。


「ものつくり産業」「金属産業」が共通の基盤
新しい時代に適応するJC共闘を模索


さて、本題の2004年闘争の方針ですが、この方針をまとめるに当って、一番苦労したのは、関係する産業動向がバラつく中であっても、先進国のいずれもがそうであるように、国の労働条件の規範をつくる使命を持つのは基幹産業であり、その基幹産業としてのJCが、何を基準に共闘の基軸をつくるかでありました。 かつてのように、経済はもちろんのこと、ほとんどの産業や企業が右肩上がりの成長を遂げ、かつ発展途上国に対しては決定的な競争力を持ち、その上に、物価はインフレ、長期間にわたって2%前後という低失業率、典型社員中心の労働市場の時代、そうした時代には可能であった、一律に近い「賃上げ方式」は今日では望むべくもなく、新たな時代環境に適応するJC共闘の共闘軸を構築する時期にあるからであります。
 新しい時代に適応するJC共闘とはどういうものなのか。この命題に対し、関係する諸機関で多くの時間を割いて議論を重ねてきました。そして、それぞれの産業動向、企業の業績動向に応じて主体的に取り組むにあたっても、「ものづくり産業」であり、「金属産業」の一点こそが共通の基盤であり、それを基軸にしてJC共闘を構築することにしたものであります。
したがって今後の課題として、時間が必要ではありますが先進国間における総労務費比較、他産業との関係における金属産業の位置づけなどの国際比較上の調査・研究を宿題にしつつ、「すべての組合で賃金構造の維持分を確保」し、さらに産業・企業の状況に応じて産別が主体的に判断し賃金の引き上げに取り組む方針としたものであります。


社会的な規範力を持たせたいJCミニマム

均等処遇は人権問題
ワークシェアリングで雇用不安のない産業の構築を

また全体で取り組むものとしては、「JCミニマム運動」の強化があります。
  連合もようやくパート時給と企業内最低賃金の連動を最重点要求に掲げるようになりました。JCはその方針を全面的に支持し、昨年に引き続き「JCミニマム運動」を2004年闘争の主要な柱に位置づけるとともに、実効をあげられるよう各組合皆さんの一層のご努力をお願いしておきたいと思います。

  昨年もふれたように非典型労働者が増加する現実に対応出来ない組合運動は、それこそ「メンバーだけの利益擁護集団」の謗りを免れず、社会から孤立した団体に化すでありましょう。
メンバーズクラブの汚名は自らの手で払拭しなければなりません。去る11月17日に開催した「2004年闘争のシンポジュウム」で議論した今後の「第2次賃金・労働政策(仮称)」にもあるように、今後の処遇制度については、時代を洞察し、時代にふさわしい体系思想を確立していかなければなりません。

典型・非典型という就労形態による処遇格差、男女という性別による処遇格差は、成熟国家においては人権問題ともいえるのであります。「均等処遇」にしろ、「均衡処遇」にしろ、実現のためには現行のあらゆる処遇システム、社会システム、国民の精神文化に至るまで多くの改革が必要な課題でもあります。
それだけに解決までには長い道のりが必要となり、紆余曲折、一進一退を繰り返すかもしれません。だとすれば取り組む時期に猶予はありません。来年よりは今年から、明日よりは今日から取り組まねばならない課題です。JC共闘はその第一歩を昨年踏み出したのであります。企業内最低賃金の締結と、それに連動させる新産業別最賃、加えて「JCミニマム(35歳)」であります。
その集大成が、将来の「大ぐくりの職種別賃金」への移行に結びつくのであります。

そして、政・労・使合意によって均等処遇などの環境整備を進めながら、短時間正社員などを含めた1500労働時間「ワークシェアリング」による、「雇用安定」産業を目指すのであります。
私たちは、「この水準以下で働く人はいない、働かせる企業はない」金属産業を目指していかなければなりません。そのためにもJCミニマムに強い社会的規範力を持たさなければなりません。ミニマムをクリアしている単組も連帯し、かつ社会全体からも「JCの主張は当然である」と受け止められる運動にしなければならないということであります。

運動を通じて社会変革の先頭に

そうした運動の取り組みと熱意が、非典型労働者を含めた全労働者の共感と連帯を呼び起こし社会全体を変革させていくのであります。そこにJC共闘の新しい姿を見出すのであります。
全体で賃金の引き上げが図れた時代の物差しで現在を評価することはできません。
新しい時代には新しい物差しが必要なのであります。私たちは、自らの運動が過去の経験に基づく延長線上の惰性に陥っていないかを検証しつつ、組合員皆さんとの話し合いを通じて、2004年闘争をさらに前進した運動として構築していかなければなりません。

待ったなしの企業行動規範の締結

限界に来ている「事業はグローバル化」なのに
労使関係は「ローカルルール」という矛盾


つぎに、IMFの企業行動規範・COC、現在はIFA・国際枠組み協定と呼ばれる課題についてふれさせていただきます。
各産別はこの秋口から経営側との話し合いを再開し、来年春、遅くとも大会には報告できるよう取り組むことになっていますが、私たちの話し合いが難航している間にも、経営における社会的責任をめぐる国際的な議論はますます高まり、企業の枠内、あるいは日本的労使関係に基づく慣行だけでは通用しない状況が生まれ始めています。

契約概念が馴染まない日本社会においては、労使が協定すべき性格のものか否かをめぐってさまざまな意見があるのは当然ですが、一方では、これだけ企業の海外進出が盛んになっているにもかかわらず、日本的慣行だけを理由にして、ことが進展しない状況は、国際的にも理解されないという現実に眼をふさぐことはできません。
 この運動は、それこそ交渉してまとまらなければ「それ争議」という性格ではありませんから、あくまで話し合いを続けていくしか方法がない問題であります。

地球環境問題を中心に役割を果たしているISOとも関連させる動きもあり、ちょうどヨーロッパがISO認定企業以外とは商取引をしない傾向が強まっている中で、中核的労働基準の労使協定が未締結の企業に対しても同様の動きが起こり、現地での事業活動が制約されるなどの利害が発生しなければ、日本企業の経営者の姿勢が変わらないということであるならなんとも悲しいことといわざるを得ません。
来年4月にはIMF本部主催の「IFAセミナー」が日本で開催される予定です。世界中の眼が日本を注目することになるわけですが、このセミナー開催を節目に現状のこう着状態からの脱却が図れるよう、各組合の格段のご努力を強くお願い申し上げておきたいと思います。



大変限られた時間での協議委員会ですが、皆さん方の真摯、かつ活発な議論を通じてよりよい方針を確立できるようお願い申し上げて冒頭のご挨拶とさせていただきます。