金属労協第52回協議委員会

来賓挨拶 古賀伸明連合会長

「人間の幸せ」を
中心に据えた
社会経済政策を
生み出す時


去る10月8〜9日の連合第11回定期大会にて会長に選任された。その際にご協力いただいたIMF-JCの関係者に対し、この場を借りて改めて御礼を申し上げたい。

 以前に連合事務局長として4年間連合運動に直接関わった経験も踏まえて、これからの連合運動の展開を考えることが、自分に課せられた任務であると認識している。

 連合は1989年の官民統一連合の結成以来20周年の大きな節目を迎えている。1989年はベルリンの壁が崩壊した年。1990年代に入り、ソ連崩壊と冷戦終結を経て、世界は単一市場化・市場経済化の方向に加速度的に進んでいった。それから20年が経った今、私たちは新たな経済社会政策を必要する幾度目かの大転換期に立っている。象徴的なのは、昨年2008年秋の世界同時不況である。これは決して単なる景気循環の一局面ではない。むしろさまざまな資本主義的手法――とりわけ最近の10年間の新自由主義・市場経済原理主義、カジノ型金融資本主義の暴走による帰結であり、経済性、効率、競争を過度に追求する価値観が肥大化した中で起きた現象であると認識している。そうした観点に立って、今一度「人間」と「人間の幸せ」を中心に据えた、市場経済原理主義に代わる市場経済の基礎となる経済社会政策を生み出す時期に来ている。

連合が政策提言・要求をしていく上での今後の5つのキーワードは、「連帯」、「公正」、「規律」、「育成」、「包摂(inclusion)」。新政権との距離感や間合いのとり方は多少の試行錯誤を要するかもしれないが、新しい政治の幕開けは、新しい社会づくりのスタート地点でもある。新たな時代の扉を開き、新しい時代を作り出していく――という意味で、これからの連合運動は10年を見据えたものでなければならない。特にこの2年間は次の10年の運動の結集軸を模索・提起する期間と考えている。

 連合が目指す社会像は労働を中心とした「福祉型社会」であるが、これを今日的に再定義した上で、あらゆる政策体系をそれに結びつける努力が最優先に求められる。

雇用不安、デフレ、円高、株安等のさまざまな環境変化が起きている中、すべての労働者の幸せと連帯をどう実現していくのかも連合にとって大きな課題となっている。組織労働者の利益と幸せだけを追求する姿勢は社会からの孤立を意味する。労働運動をもっと社会化する、社会的運動に発展させるために、連合としても衣替えしていく必要がある。すべての労働者の幸せと利益を追求してこそ、連合は「社会の公器」としての役割を果たすことができる。

 非正規労働者の待遇は総じて低いが、その増加を容認することは日本全体の労働条件の悪化を意味する。彼らの問題は我々自身の問題である。そうした認識の下で今後の運動のあり方を共に模索しながら、ナショナルセンターとしての連合の役割を再構築する2年間にしていきたい。

 去る10月の連合定期大会では、「社会の底割れの阻止(雇用確保)」、「運動の見える化・社会化」、「分断の克服と集団的労使関係の再構築」の3つの力点が確認された。そのための具体策が7つの各論で示されているが、それらを1つずつ実施しながら、「連合運動の社会化」と「基軸の再構築」の2つの大きな観点に立って運動を展開していきたい。

2010年春闘に関して、先ほど西原議長から大きな機軸を提起していただいた。今年は「賃金水準の維持」をベースに、「すべての労働者を包含した運動」に向けて、「労働条件の取り組み」と「政策・制度の取り組み」を車の両輪としていきたい。

2009年春闘では、5つの共闘連絡会議を通じて意思疎通を図る新たな闘争スタイルが導入された。IMF-JCは、日本全体の春季運動を牽引する上で引き続き大きな役割を果たしていくこととなる。

最後に、マレンタッキ前書記長には、単組の時代から大変お世話になった。20年間もの長きにわたり、IMFのリーダーとして世界の労働運動を主導し、その中で日本での活動をサポートしていただいた。この場を借りて心からの謝意を表したい。